花に月〜(無職転生だけど)コナ○騒動〜    作:麓63

2 / 10
※あとがき部分に拙い挿絵を1枚付けています。
 イメージが壊れたり、限定される恐れもありますので。好まれない方はご注意を。





花に月〜コナ○騒動〜 2

ー2ー

 

⑴

夕食後、順番に入浴を済ませて、そろそろ床に就こうかという時間。

シルフィもロキシーも、少し前にそれぞれ娘を抱いて寝室に入ってしまった。

 

エリスは玄関の気配を気にしつつ、ルーデウスの帰りを待っていた。

今日は戻らないかもしれない。仕事の予定は、あくまで予定だ。

それでももうしばらく、眠くなるまで待っていようと思う。

 

〝難しい内容じゃないから。大丈夫、夕方には帰るよ〟

そう言って出かけていったのだ。

心配はいらないと思うけれど、時々妙に抜けたところのあるルーデウスのこと。

気になってしまうのは仕方がない。

ほかのふたりもベッドの中にいるものの、門扉やドアの開く音がしたら、きっとすぐに降りてくるだろう。

ひょっとしてロキシーは、ララと一緒に眠りこけているかもしれないが。

 

「お茶でも飲みませんか?」

気を効かせたリーリャが、紅茶を持って現れた。

「ありがとう、いただくわ」

どちらも口数は多いほうではない。静かな時間が流れる。

最後の一口を飲もうとカップに指をかけた瞬間、エリスはハッとした。

カシャンというかすかな音ともに、なんともいえない嫌悪感……

 

「オルステッド!」

 

椅子を蹴るように立ち上がると、玄関に飛んでいってドアを思い切り押し開けた。

「いてっ!」

なにか聞こえた気もしたが、外には夜の闇が広がるばかりだった。

オルステッドらしき姿は既にどこにもない。

「ちっ!」 舌打ちして閉めようとしたら、そうはさせじとばかりに何者かが外側からドアを引っ張ってきた。

「ちょっと待って! とりあえず入れてくれ」

少年の声だ。今時分に、子どもがなんの用だというのか。

そのまま力任せに閉めた。

 

「……エリス様、中に入れてあげてください」

心当たりがあるのかないのか、思案気な表情のリーリャ。

エリスはしぶしぶドアを開けてみた。

 

「ええ??」

……確かに、この子どもはよく知っている。でも……

 

ドアに手を掛けた姿勢で硬直したエリスの脇から、リーリャは小さな訪問者を覗き込んだ。

「ぼ……坊ちゃん?!」

「いや、その、リーリャさん……坊ちゃんはやめてください」

 

薄茶色の髪にローブ姿の少年が、幼い顔に似合わぬ苦笑を浮かべて立っていた。

 

 

⑵

いつまでも動かないエリスに業を煮やしてか、少年はその腕の下をスルリと抜けて、そのまま我が物顔でペタペタ歩いてリビングに向かった。

裸足だ。冷たくないのだろうか。

 

「まあまあルーデウス坊ちゃん、懐かしいお姿でどうされたんですか」

「どうしたもこうしたも……困ったことに、俺にもよくわからないんですよね」

ソファーによっこらせと腰掛ける少年。

「靴は? まさか裸足で帰ってこられたんですか?」

「さすがに、オルステッド様が送ってくれましたよ」

「それは良かったですね。それで、お食事はどうされます?」

 

普通に会話が展開していくさまを、エリスは呆然と見守った。

リーリャの適応力はなんだ?

一流のメイドはなにがあっても取り乱さない。

これがプロフェッショナルの仕事の流儀なのか。

 

とはいえ、エリスもまた物事を複雑に考える性質ではなかった。

起こってしまったことを、あれこれ言ってもままならない。受け入れるのみだ。

剣王らしく、心の混乱をスパッと斬って捨てた。

 

「そう、仕方ないわね!」

ルーデウスだという少年の横に勢いよく腰を下ろせば、隣に座る軽い体が小さくバウンドした。

 

なるほど、この姿は懐かしい。

ロアの屋敷で、一緒に過ごした日々が脳裏に蘇える。

わがままいっぱい、子どもらしく伸び伸びと暮らしていたかけがえのない時期だ。

お祖父様、お父様、お母様……

 

エリスには珍しく、甘酸っぱい、泣きたくなるような感傷がこみ上げてきた。

もっとも当時のルーデウス本人は、たいして子どもらしくなかったかもしれないが。

 

「もっとよく見せて!」

「な、なに? おい、こら、やめて……!」

抵抗するルーデウスをあっさり捕獲すると、膝に乗せてじっくり観察する。

この頃から思春期の入り口まで、成長していく姿を間近に見てきたのだ。

 

でも……と、エリスは微かに眉根を寄せた。

その時の印象より、今のこのルーデウスはなんだか……

 

「やたら可愛らしいわ」

「もちろんですとも」

なぜかリーリャが誇らしげに頷いた。

 

 

⑶

「あ—————っ!」

 

シルフィだ。

もう寝てるのかと思っていたら、物音で起こしちゃったか。

 

「あ、ただいま。シルフィ」

俺はエリスの膝に抱えられたまま、「よっ!」と片手をあげた。

こんなんなっちゃったけど大したことないよ、ってな感じで。

できれば、大ごとにせずにスンナリ受け止めてもらえたら助かる。

 

「え————————っ? 

なに、なに、なに、なに?

ちょっと待って、これってルディ? ルディだよね?

えっ、うそ、うそ! なんでっ? 」

 

やっぱり無理か……

シルフィは部屋の入り口に立って大騒ぎしながら、ひとり百面相だ。

いっぽうでエリスは、俺をガッチリとホールドしたまま、今は犬みたいに匂いを嗅いでいる。

倉庫から引っ張り出したローブは、カビ臭いと思うんだが。

 

……みんなリーリャのような対応だったら、どんなに楽か。

まあ難しいだろうな。俺だって、できるもんなら大声で叫びたいくらいだもん。

しっかし、まいった。

はあ、やれやれ……

前髪をクシャリとかきあげたところに、シルフィが猛然とこっちに近付いてきた。

よくわからないが、驚愕モードから突然スイッチが切り替わったらしい。

 

「おでこっ! タンコブできてるよ!」

「そういえば、さっきドアにぶつかってたわ。危ないわね!」

 

ぶつかったんじゃないの、ぶつけられたの。

反論しても無駄なので、ペロンと前髪をあげて素直に額を差し出した。

シルフィのヒーリングだ。

目をつぶって味わおう。

うーん、気持ちいい……

 

……………あれ?

いっこうに終わる気配がない。

なにをやってるのかと目を開けてみると、女性3人が俺を凝視していた。

 

「やだ〜っ! まつ毛長い、か〜わいいっ!」

女子高生のような声をあげたのはシルフィ。

エリスの表情にはモフモフ系動物を愛でるような萌え、リーリャは聖母のごとき慈愛溢れる微笑みをたたえている。

 

いや、このくらいの年恰好だったころ、可愛いなんて誰も言わなかったぞ。

母さん以外はテレーズ叔母さんくらいだ。

 

「髪が長めだからかな。こうして見ると女の子みたい」

「そうね。昔は眉なんかもこうキリッと……エッチじゃなくて真面目な顔してる時は、もっと凛々しい感じだったわ」

「あの頃はボクらも子どもだったし、ルディってなんでも知ってて、なんでもできて凄いって思い込んでたせいもあるよね。

大人の目線で見ると、また印象が違うのかも」

 

そうか、思い出を壊してスマンね。

 

「ルーデウス坊ちゃんは幼い頃から、ゼニス様に面差しが似ていました。

ノルン様は、もう少しパウロ様寄りだと感じます。

もちろんご兄妹なので、おふたりもよく似てらっしゃいますが」

「ああ〜、異性の親に似るってよく聞くよね」

「ルーシーもルーデウス寄りかもしれないわ」

「あ、でもアイシャちゃんは——」

「……へっくしょん」

 

深夜のガールズトークは、俺のクシャミで強制終了となった。

夜食をもらったあと、身体を洗ってくれるという妻たちを断固断って、ひとりで風呂に入るのにわりと苦労した。

なんか恥ずかしいじゃん。

 

ちなみに、8才前後という判定結果だったよ。

 

 

 

 

 





【挿絵表示】

美女に囲まれ、愛でられる。
ちょっと羨ましいけれど、個人的には抱っこする側に回りたいです。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。