花に月〜(無職転生だけど)コナ○騒動〜    作:麓63

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※あとがき部分に拙い挿絵を1枚付けています。
 イメージが壊れたり、限定される恐れもありますので。好まれない方はご注意を。





花に月〜コナ○騒動〜 2

ー2ー

 

夕食後、順番に入浴を済ませて、そろそろ床に就こうかという時間。

シルフィもロキシーも、少し前にそれぞれ娘を抱いて寝室に入ってしまった。

 

エリスは玄関の気配を気にしつつ、ルーデウスの帰りを待っていた。

今日は戻らないかもしれない。仕事の予定は、あくまで予定だ。

それでももうしばらく、眠くなるまで待っていようと思う。

 

〝難しい内容じゃないから。大丈夫、夕方には帰るよ〟

そう言って出かけていったのだ。

心配はいらないと思うけれど、時々妙に抜けたところのあるルーデウスのこと。

気になってしまうのは仕方がない。

ほかのふたりもベッドの中にいるものの、門扉やドアの開く音がしたら、きっとすぐに降りてくるだろう。

ひょっとしてロキシーは、ララと一緒に眠りこけているかもしれないが。

 

「お茶でも飲みませんか?」

気を効かせたリーリャが、紅茶を持って現れた。

「ありがとう、いただくわ」

どちらも口数は多いほうではない。静かな時間が流れる。

最後の一口を飲もうとカップに指をかけた瞬間、エリスはハッとした。

カシャンというかすかな音ともに、なんともいえない嫌悪感……

 

「オルステッド!」

 

椅子を蹴るように立ち上がると、玄関に飛んでいってドアを思い切り押し開けた。

「いてっ!」

なにか聞こえた気もしたが、外には夜の闇が広がるばかりだった。

オルステッドらしき姿は既にどこにもない。

「ちっ!」 舌打ちして閉めようとしたら、そうはさせじとばかりに何者かが外側からドアを引っ張ってきた。

「ちょっと待って! とりあえず入れてくれ」

少年の声だ。今時分に、子どもがなんの用だというのか。

そのまま力任せに閉めた。

 

「……エリス様、中に入れてあげてください」

心当たりがあるのかないのか、思案気な表情のリーリャ。

エリスはしぶしぶドアを開けてみた。

 

「ええ??」

……確かに、この子どもはよく知っている。でも……

 

ドアに手を掛けた姿勢で硬直したエリスの脇から、リーリャは小さな訪問者を覗き込んだ。

「ぼ……坊ちゃん?!」

「いや、その、リーリャさん……坊ちゃんはやめてください」

 

薄茶色の髪にローブ姿の少年が、幼い顔に似合わぬ苦笑を浮かべて立っていた。

 

 

いつまでも動かないエリスに業を煮やしてか、少年はその腕の下をスルリと抜けて、そのまま我が物顔でペタペタ歩いてリビングに向かった。

裸足だ。冷たくないのだろうか。

 

「まあまあルーデウス坊ちゃん、懐かしいお姿でどうされたんですか」

「どうしたもこうしたも……困ったことに、俺にもよくわからないんですよね」

ソファーによっこらせと腰掛ける少年。

「靴は? まさか裸足で帰ってこられたんですか?」

「さすがに、オルステッド様が送ってくれましたよ」

「それは良かったですね。それで、お食事はどうされます?」

 

普通に会話が展開していくさまを、エリスは呆然と見守った。

リーリャの適応力はなんだ?

一流のメイドはなにがあっても取り乱さない。

これがプロフェッショナルの仕事の流儀なのか。

 

とはいえ、エリスもまた物事を複雑に考える性質ではなかった。

起こってしまったことを、あれこれ言ってもままならない。受け入れるのみだ。

剣王らしく、心の混乱をスパッと斬って捨てた。

 

「そう、仕方ないわね!」

ルーデウスだという少年の横に勢いよく腰を下ろせば、隣に座る軽い体が小さくバウンドした。

 

なるほど、この姿は懐かしい。

ロアの屋敷で、一緒に過ごした日々が脳裏に蘇える。

わがままいっぱい、子どもらしく伸び伸びと暮らしていたかけがえのない時期だ。

お祖父様、お父様、お母様……

 

エリスには珍しく、甘酸っぱい、泣きたくなるような感傷がこみ上げてきた。

もっとも当時のルーデウス本人は、たいして子どもらしくなかったかもしれないが。

 

「もっとよく見せて!」

「な、なに? おい、こら、やめて……!」

抵抗するルーデウスをあっさり捕獲すると、膝に乗せてじっくり観察する。

この頃から思春期の入り口まで、成長していく姿を間近に見てきたのだ。

 

でも……と、エリスは微かに眉根を寄せた。

その時の印象より、今のこのルーデウスはなんだか……

 

「やたら可愛らしいわ」

「もちろんですとも」

なぜかリーリャが誇らしげに頷いた。

 

 

「あ—————っ!」

 

シルフィだ。

もう寝てるのかと思っていたら、物音で起こしちゃったか。

 

「あ、ただいま。シルフィ」

俺はエリスの膝に抱えられたまま、「よっ!」と片手をあげた。

こんなんなっちゃったけど大したことないよ、ってな感じで。

できれば、大ごとにせずにスンナリ受け止めてもらえたら助かる。

 

「え————————っ? 

なに、なに、なに、なに?

ちょっと待って、これってルディ? ルディだよね?

えっ、うそ、うそ! なんでっ? 」

 

やっぱり無理か……

シルフィは部屋の入り口に立って大騒ぎしながら、ひとり百面相だ。

いっぽうでエリスは、俺をガッチリとホールドしたまま、今は犬みたいに匂いを嗅いでいる。

倉庫から引っ張り出したローブは、カビ臭いと思うんだが。

 

……みんなリーリャのような対応だったら、どんなに楽か。

まあ難しいだろうな。俺だって、できるもんなら大声で叫びたいくらいだもん。

しっかし、まいった。

はあ、やれやれ……

前髪をクシャリとかきあげたところに、シルフィが猛然とこっちに近付いてきた。

よくわからないが、驚愕モードから突然スイッチが切り替わったらしい。

 

「おでこっ! タンコブできてるよ!」

「そういえば、さっきドアにぶつかってたわ。危ないわね!」

 

ぶつかったんじゃないの、ぶつけられたの。

反論しても無駄なので、ペロンと前髪をあげて素直に額を差し出した。

シルフィのヒーリングだ。

目をつぶって味わおう。

うーん、気持ちいい……

 

……………あれ?

いっこうに終わる気配がない。

なにをやってるのかと目を開けてみると、女性3人が俺を凝視していた。

 

「やだ〜っ! まつ毛長い、か〜わいいっ!」

女子高生のような声をあげたのはシルフィ。

エリスの表情にはモフモフ系動物を愛でるような萌え、リーリャは聖母のごとき慈愛溢れる微笑みをたたえている。

 

いや、このくらいの年恰好だったころ、可愛いなんて誰も言わなかったぞ。

母さん以外はテレーズ叔母さんくらいだ。

 

「髪が長めだからかな。こうして見ると女の子みたい」

「そうね。昔は眉なんかもこうキリッと……エッチじゃなくて真面目な顔してる時は、もっと凛々しい感じだったわ」

「あの頃はボクらも子どもだったし、ルディってなんでも知ってて、なんでもできて凄いって思い込んでたせいもあるよね。

大人の目線で見ると、また印象が違うのかも」

 

そうか、思い出を壊してスマンね。

 

「ルーデウス坊ちゃんは幼い頃から、ゼニス様に面差しが似ていました。

ノルン様は、もう少しパウロ様寄りだと感じます。

もちろんご兄妹なので、おふたりもよく似てらっしゃいますが」

「ああ〜、異性の親に似るってよく聞くよね」

「ルーシーもルーデウス寄りかもしれないわ」

「あ、でもアイシャちゃんは——」

「……へっくしょん」

 

深夜のガールズトークは、俺のクシャミで強制終了となった。

夜食をもらったあと、身体を洗ってくれるという妻たちを断固断って、ひとりで風呂に入るのにわりと苦労した。

なんか恥ずかしいじゃん。

 

ちなみに、8才前後という判定結果だったよ。

 

 

 

 

 





【挿絵表示】

美女に囲まれ、愛でられる。
ちょっと羨ましいけれど、個人的には抱っこする側に回りたいです。


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