「にゃ〜、今日はみんなに紹介したい人がいるのにゃ〜」
それは夕食前の大徳寺先生の発言から始まった。
「オシリスレッドに編入してきた早乙女レイ君だにゃ〜」
大徳寺先生が紹介したのは帽子をかぶった小さな子供だった。
ずいぶん身長が小さいな、小学生みたいだな。
うつむいているので表情まではわからないが、レッド寮になって落ち込んでると判断した十代が励ましに声をかける。
「レッド寮の仲間が増えるのは大歓迎だぜ! レッドだからって落ち込まないでがんばろうぜ」
相変わらず十代はテンションが高い。レイも若干引き気味だぞ。
「なに言ってるんですかにゃ〜。転入生は必ずレッド寮からスタートする決まりなのにゃ。早乙女君は優秀だからすぐに上の寮に上がってしまうのにゃ」
「なんだ〜そうだったのかよ。てっきりレッド寮だから落ち込んでるのかと思って…」
「あ、そうそう空き部屋はないので現在一人で部屋を使っている鈴本君と同室でお願いしますのにゃ」
あらら、完全に十代の空回りだったようだ。でも編入生って初めて見るけどそんな規則があったんだな。
ぶはっ!! 俺かよ!! ううむ、冷静に考えれば一人部屋は俺だけだし妥当といえば妥当か…。
ふむ、そういえば作ったはいいが騒がれるのが嫌でお蔵入りになったデッキがいくつかあったな。
ちょうどいいから部屋でこっそりテストプレイの実験台になってもらおう。
「まぁ、仕方ないですね。短い付き合いになると思いますが引き受けましょう」
「君ならそういってくれると思ったのにゃ〜」
「と、いうわけでよろしく早乙女レイ君」
「あ、ああ……よろしく」
というわけでレイは俺と同居することになった。
もの珍しそうに見渡している。
一人だったから広々と使えたが、ちょっと荷物まとめないとな
「ここが俺の部屋だ。ベッドは上を使ってくれ」
「わかった…」
「トランクケースには俺のカードが入ってるからあまりいじらないでくれ。見るのはいいが必ず元に戻すこと。俺が指定するルールはこのくらいかな君のほうで何かあるかい?」
「…いや、特にない」
「お〜い、厚志、レイ、風呂行こうぜ風呂! 男同士の友情を深めるのは裸の付き合いが一番だ!」
案内を済ませたところで十代が風呂に誘いに来た。十代ならデュエルが一番っていいそうな気がするのだが、すごい意外だ。
「お、俺風邪気味だからいいよ……ゴホッ、ゴホッ」
「なんだしょうがねぇなぁ。早く風邪治せよな。じゃあ厚志! 行こうぜ!」
「レイ君。無理しないほうがいいっすよ」
「いや、レイが風邪を引いているなら、氷枕とか準備しないといけないからな。悪いが俺も遠慮しておこう」
「ええ〜〜!!」
「そっか。それもしょうがないな」
「ああ、すまんな」
「いいって事よ、じゃあ翔行こうぜ!」
「あ、待ってよ〜アニキ〜」
「すまんな。騒がしくて」
「いや、別にいい」
転入していきなり風邪とは、前途多難だな。
とりあえず熱でも測ろうか。体温計ってどこしまったっけかな。
それにしてもレイのやついつまで帽子かぶってるんだ?
「体調悪いなら着替えて横になってた方がいいよ」
「え? あ、ああ……」
「ほら、いつまでも室内で帽子かぶってないで」
レイの帽子をとったそのあとには。
禿……ではなくふんわりとした、長い髪だった。
これってどう見ても……女性の髪だよなぁ。
「あ、きゃあ!! か、返せ!」
「わ、おっと」
剥いだ帽子は驚いてる隙にレイに奪い返される。そしてたいして大きくもない帽子にレイの腰まで届く髪が手品のようにおさめられていった。
四次元にもつながってるのかよ、あの帽子……。
「み、見なかったことにしてくれ」
「いやその、とりあえずだな」
それでなにか態度が妙だったのか。
さあて、どうするかな。
今俺にはいくつか選択肢がある。
1、レイの男装は気づかなかったことにする
2、レイの男装のことを指摘して、それを黙っている
3、レイの男装のことをばらす
ふむ、1は却下だな。ルームメイトにここまであからさまな隠し事をされるのも気分が悪いし、なによりこいつの演技だと誰にばれるかわかったもんじゃない。
ばれたとき俺にロリコン疑惑がかかるのが一番つらい、アカデミアは閉鎖空間だ。こんなところでロリコン疑惑が広まったら、卒業まで言われ続けるだろう……。
あ、悪夢だ……。
それを防ぐには自分の手でばらして話を大事にしてこいつを女子寮にぶち込むか、せめてばれないように演技指導するくらいしかない…。
さて、どうするかな?
とりあえず事情を聞いてみないとわからんな。
「とりあえず、たたき出したりいきなりみんなにばらしたりしないから事情を説明してくれ。ロリコン疑惑なんてかけられた日には俺はいたたまれなくなって退学届けを出しそうだ」
「……僕が何でこの学園に来たかはいえない……」
「参ったな…じゃあせめて何で男装する必要があったのだけでも教えてくれないか?」
「デュエルアカデミアは編入試験も難しいって聞いてた。だけど女子よりは男子のほうが試験が易しいって噂も」
「へぇ〜、そんな話があったのか………ん? とするとお前は噂だけで男装したのか?」
「う、うん。そうだけど」
ありえねぇ。そんなあいまいな情報だけで男装してたのかよ…。
目的は聞き出せなかったが仕方ないか。あんなに決意に満ちた目をされたら全員にばらすのも躊躇われる。
あとはこいつの演技をフォローしてやってせめて俺にロリコン疑惑がかかるのは防がねば。
「仕方ない、黙っててやるよ。そのかわりばれたら俺も困るんだから、お前の大根演技を何とかするぞ」
「だ、大根って……」
「いちいち、顔や態度に出すぎなんだよ。十代や翔はこういう方面は疎いから何とかなるが、普通はばれるもんだぞ」
「そ、そうなのかな?」
「まぁ、そんなに難しいことをするわけじゃない。自己暗示をかけるだけだ」
「自己暗示?」
「要は自分が男の子だと思い込めばいい。そして自分が男だったらどういう反応をするかといったことも常に意識するんだ」
「自分は男……」
「付け焼刃の演技指導よりかは役に立つと思う。本当は嘘ストーリーとかもきちんと考えればいいんだけどな」
「なるほど……」
やらせてみるとレイはなかなか筋がいい、すぐにコツをつかんでだいぶ動揺することはなくなってきた。これならドジをしないかぎりばれることはないだろう。
しかし男装するなら髪の毛ぐらい切ればいいと思うのだが、女性にとって髪はそれほど大事ということなのだろうな。
何とかレイとの共同生活はうまくいっている。トイレや風呂は室内にないから、せいぜい着替えなどに気をつければ問題はない。
着替え中に入って裸を見たりするようなラブコメ要素が俺にあるわけないだろう。
「おーいレイ、ちょっとデッキの調整付き合ってもらってもいいか?」
「…ん、いいよ」
「十代ばっかりだとマンネリでさぁ、やっぱりいろんな人間とデュエルして見ないとな」
「外に出る?」
「うんにゃ。めんどくさいから床でいいだろう。ギャラリーが増えるのも好きじゃないしな」
「わかった」
「「決闘」」
「僕のターンドロー、恋する乙女を攻撃表示で召喚。ターンエンド」
恋する乙女って何だっけ? 伏せカードもなしということは特殊な効果があるはずだけどな。
持ってたような持ってなかったような。
恋する乙女
効果モンスター
星2/光属性/魔法使い族/攻400/守300
このカードはフィールド上に表側攻撃表示で存在する限り戦闘によっては破壊されない。このカードを攻撃したモンスターに乙女カウンターを1個乗せる。
「俺のターンドロー」
むむむ、悪くないけどよくもない手札だ。
「魔法カードおろかな埋葬を発動。黄泉ガエルを墓地に落とす。ターンエンド」
「えっ! それだけ?」
「ああ、別に馬鹿にしてるわけじゃない。こういう戦術なんだ」
「……じゃあ僕のターン、恋する乙女で攻撃」
「ん、了解」
戦術つーか下級モンスターがいなかっただけなんだけどな。黄泉ガエルを落としたから魔法や罠はあんまり張れないし。
厚志
LP4000→3600
「僕はカードを2枚伏せる。そしてターンエンド」
「あいよ、俺のターンドロー、スタンバイフェイズに黄泉ガエルを特殊召喚」
「へ?」
「黄泉ガエルは自分スタンバイフェイズ時に墓地にある場合で、自分の魔法、罠が一枚もないときに復活するんだよ」
「へぇ〜」
《❘黄泉《よみ》ガエル/Treeborn Frog》 †
効果モンスター
星1/水属性/水族/攻 100/守 100
自分のスタンバイフェイズ時にこのカードが墓地に存在し、
自分フィールド上に魔法・罠カードが存在しない場合、
このカードを自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。
この効果は自分フィールド上に「黄泉ガエル」が
表側表示で存在する場合は発動できない。
「で、黄泉ガエルを生贄に、氷帝メビウスを特殊召喚。効果でレイの伏せ2枚を破壊っと」
「ええ! そんなぁ」
破壊したカードは見覚えのない罠カードだ攻撃反応型だったのかもしれないな。
《❘氷帝《ひょうてい》メビウス/Mobius the Frost Monarch》 †
効果モンスター
星6/水属性/水族/攻2400/守1000
このカードがアドバンス召喚に成功した時、
フィールド上に存在する魔法・罠カードを2枚まで選択して破壊する事ができる。
「で、恋する乙女に攻撃」
「う、でも恋する乙女は攻撃表示なら戦闘では破壊されないよ」
「あらら、そんな効果だったか」
レイ
LP4000→2000
「恋する乙女を攻撃したモンスターには乙女カウンターが乗るよ」
「乙女カウンター? まぁいいやターンエンドで」
「うう、どうしよう……僕のターンドロー」
「これならいける!! 僕は魔法カード治療の神ディアン・ケトを使用するよ。ライフポイントを1000回復。そして装備魔法キューピッド・キスを恋する乙女に装備」
レイ
LP2000→3000
ディアン・ケトとはマニアックなご隠居の猛毒薬のほうがいろんな意味で強いんだけどな。生かすなら連弾の魔術師を使うくらいかな?
「恋する乙女でメビウスに攻撃!」
レイ
LP3000→600
「メビウスのコントロールをもらうよ」
「あちゃー、コントロール操作のモンスターだったんだ。んーでもライフダメージ痛そうだな」
「う、実はそうなんだよね。せっかく奪ってもそのままライフ削られたりで負けちゃうんだ」
キューピッド・キス
装備魔法
乙女カウンターが乗っているモンスターを装備モンスターが攻撃し、装備モンスターのコントローラーが戦闘ダメージを受けた場合、
ダメージステップ終了時に戦闘ダメージを与えたモンスターのコントロールを得る。
ぶっちゃけ帝のひとつ奪われてもあんまり痛くない。追撃あると死ねるけど。
「メビウスでダイレクトアタック!!」
「ん〜、しょうがないか」
厚志
LP3600→1200
「……何でそんなに余裕なの? エースモンスターはもらったんだよ」
「まぁまぁ、俺のターンだな。ドロースタンバイフェイズに黄泉ガエルを特殊召喚。そして黄泉ガエルを生贄に炎帝テスタロスを召喚」
「ええ!! 上級モンスターがもう一体……」
「まぁこういう構築だしな。テスタロスの効果でランダムに手札を一枚捨ててもらう」
《❘炎帝《えんてい》テスタロス/Thestalos the Firestorm Monarch》 †
効果モンスター
星6/炎属性/炎族/攻2400/守1000
このカードがアドバンス召喚に成功した時、
相手の手札をランダムに1枚捨てる。
捨てたカードがモンスターカードだった場合、
そのモンスターのレベル×100ポイントダメージを相手ライフに与える。
「どれにしようかなっと、どれどれディフェンス・メイデン? 罠カードならライフダメージは受けないな」
ディフェンス・メイデン
永続罠
自分フィールド上に「恋する乙女」が表側表示で存在する時、相手モンスター1体が自分フィールド上のモンスターに攻撃宣言をした場合、
その攻撃対象を自分フィールド上の「恋する乙女」1体に移し替える事ができる。
「まぁなんだ。テスタロスで恋する乙女に攻撃」
レイ
LP600→-1400
「あ……僕の負け?」
「そうなるな」
「あぅー」
「いろいろ突っ込みどころはあるが、そのデッキはレイの気持ちが詰まってるんだろ?」
「……うん」
「頑張れよ」
「…ありがとう」
本当はもっと突っ込みたかったが自重することにした。
男装なのに恋する乙女ってどうよとか、せめてサーチカード入れようぜとか、ライフ回復が貧弱すぎるとか。
それから何回か調整中のデッキの相手をしてもらった。さらにレイにも俺のデッキをいくつか使わせてやった。だって恋する乙女デッキが特殊すぎて調整にすらならないデッキとかあるんだもん。
自分は一人っ子だが妹がいればこんな感じなのかもしれないな。
こんな感じで俺たちの共同生活はまぁまぁうまくいっていた。
あれから数日が立ちレイとの共同生活もだんだん慣れてきた。
風呂は室内にはないので同室にいるときは着替えだけに注意すればよかったし、風呂はほかの誰も入らないような時間帯を教えて入ってもらっている。
ラブコメのようなラッキースケベな展開とは無縁だったとだけいっておく。
夜には俺の作ったさまざまなデッキのテストプレイ相手をしてもらっている。恋する乙女のデッキだけだと相手としては微妙なので、俺の作ったデッキをいくつか使わせている。
十代や翔などは自分の作ったデッキに愛着があって俺の作ったデッキは使ってくれないので、どうしても飽きが来てしまう。レイも恋する乙女が大好きだが、強く言うとしぶしぶながらも俺のデッキを使ってくれる。おかげでさまざまなデッキの完成度を高めることができた。
そして気づいたこともある。
どうもレイはカイザー亮が好きらしい。というかカイザーを追っかけでここに来たようだ。カイザーをときどき熱い目で見ているし、この間はカイザーの後をつけていたこともある。
お前はどこのストーカーだと突っ込みそうになったが、あまりにもピンクのオーラがすごかったので空気を呼んで自重した。
そんな平穏な日々は扉を激しくたたく音で破られた。
「はいはい、そんな激しくたたかなくても今出るよ」
扉を開けると十代が息を切らせながら立っていた。
「どした〜?」
「厚志! レイ帰ってきてるか!!」
「…いや、部屋には戻ってきてないが」
「そうか、ありがとな。じゃ!!」
「お、おい……行っちまったか。しかしあの慌てよう、何かあったんだろうな」
もしかしたら十代に男装していることがばれたのかもしれないな。レイも結構うっかりさんなところがあるし。
寝ぼけて帽子をかぶらずに外に出て行こうとしたことや、スカート姿でごろごろしていたりなどどうも男装しているという意識が低いのが問題だ。
あいつ真面目に隠す気あるのかな? というかなぜスカートを持ってきたし……。
「しょうがないな、俺も探しに行くか」
十代なら頼めば黙っててくれそうだしな。
とりあえずレイを見つけないことにはにっちもさっちもいかないわけで…。
レイの行動パターンはいまいち読めないんだよなぁ。行動の主体がなにせカイザーの追っかけだからなぁ。
カイザーとは顔見知り程度の付き合いしかない俺にはカイザーの行動もわからない。つまりレイの行動もわからない。
購買とかではぜんぜん見ないからなぁ。ブルー寮に行ってもブルー生徒に邪魔されそうな気がするし、張り込みしてたらあからさまに怪しいし。
適当にぶらぶらしてたら会えるかもしれんな。
ほんとに会えるとは思わなかったよ……。
俺の前にはカイザーと明日香とコアラと翔がいる。どうやら崖の下の何かを見ているようだ。
俺も覗き込んでみると十代とレイがデュエルをしていた。
「え? 何でデュエル?」
「あら、厚志も来たの」
「来たのはいいが状況がまったく見えないんだが……」
男装がばれたのかと思って来てみれば、なぜかデュエルをしている。
馬鹿なの? 死ぬの? デュエル脳なの?
「デュエルをすれば相手のことがより理解できるからだ」
「………」
そーなのかー
カイザーまでデュエル脳に侵されているとはおもわなんだ。
常識人だと思っていたのに!!
この学園の常識だと俺が異端なのかなぁ? 俺は自分で普通だと思っていたんだがなぁ。
俺は心の中の哀愁を押さえつけて。デュエルに意識を集中する。
レイの場にはフェザーマンと恋する乙女。十代の場にはスパークマンがいる。
ふむ、どうやら恋する乙女の能力でフェザーマンが取られたらしい。まぁあの辺の低攻撃力モンスターだとたいしたダメージもなしに取れるよな。……うまみもないけど。
「ボクのターン、ボクは恋する乙女に装備魔法ハッピー・マリッジを装備。恋する乙女の攻撃力をフェザーマンの攻撃力分だけアップする!! そしてスパークマンを攻撃!!」
ハッピー・マリッジ
装備魔法(制限カード)
相手のモンスターが自分フィールド上に表側表示で存在する場合に発動する事ができる。
装備モンスターの攻撃力は、そのモンスターの攻撃力分アップする。
ふむ、今度はスパークマンが奪われたか。しかも強化した恋する乙女の攻撃力は1400。スパークマンは1600。ライフダメージたったの200か。これは十代には厳しい展開だな。
そして幻聴が聞こえるが無視だ無視!! スパークマンさま〜とか私はヒーロー失格だぁ!! とか小芝居じみた幻聴は無視するにかぎる!!
十代も何か喚いているな。こんなのヒーローらしくね〜〜!! とか叫んでる。
どうやらあいつには幻聴だけではなく幻覚も見ているらしい。
変なきのこが昨晩の夕食にでも入っていてそれが今頃効いてきたのかもしれん。
周りにいる明日香たちも不思議そうな顔で見ている。
「どうしちゃったのかしら、十代……」
明日香たちには幻聴すら聞こえないらしい。
中途半端に状況がわかるっていうのも微妙な感じだな。
そしてデュエルは進んでいく。十代が女の子には女の子だ!! とか叫んでバーストレディを出しているが…いや、あのね。バーストレディでも恋する乙女の効果は有効だからね……。このカードゲームは性別ないからね……。
でもバーストレディから感じられるプレッシャーがいつもより迫力あるのは気のせいか?
そして放たれる魔法カードバースト・リターン。ずいぶん限定的な効果のカードを使うなぁ。E・HEROのサポートカードって専用カードが多すぎて使いづらいんだよなぁ。バーストレディのサポートカードの特徴はたしかリセット系か…。
《バースト・リターン/Burst Return》 †
通常魔法
「E・HERO バーストレディ」が自分フィールド上に
表側表示で存在する時のみ発動する事ができる。
フィールド上の「E・HERO バーストレディ」以外の
「E・HERO」と名のついたモンスターを全て持ち主の手札に戻す。
十代は何を考えてこのカードを入れてるんだ? コントロール奪取対策? それともモンスターを回収してバースト・インパクトか? むしろ自分で強制転移とか?
どちらにしろ、あまり日の目を見ないようなカードではありそうだ。
とか考えてる間に十代が勝ったらしい。まぁライフもそれなりに減ってたはずだしな。やはり恋する乙女は難しい。
そして始まる告白タイムとフィールド魔法ピンク空間!!
すげぇ気まずい。何が悲しゅーて他人の告白見なけりゃならんのだ……。
というかレイって小学生だったのか…。確かに身長は小さいし、色気もまったく感じられないが……。
小学生でこの行動力は末恐ろしいものがあるな。将来ストーカーとかにならなければいいが…。
「気持ちは嬉しいが、今の俺にはデュエルが全てだ。お前の想いに応えることはできない」
「……亮サマ……」
まぁ小学生の告白にOKしたらいろいろな意味でまずいよなぁ。
お茶を濁さずに誠実に答えてるのはやはりかっこいいな。
レイの告白を断り髪留めを渡し立ち去るカイザー。余計気まずくなった……。
ええい、カイザーめ空気が重くなったじゃないか!!
空気クラッシャーの十代も俺のほうを見て何とかしろと目で訴えてる。
ちょ! おま! 押し付けやがった!!
「あーそのーなんだ……とりあえず寮に戻って夕飯にしないか」
「……うん」
夕飯を食べ部屋に戻る俺とレイ。
くそー!! カイザーめこんな空気にしやがって!! 八つ当たりしてやるからな!!
「……ねぇ、厚志」
「……なんだ?」
「明日、本土に戻るね」
「そうか……」
「いろいろありがとうね。それと…迷惑かけてごめん」
「あー、どういたしまして?」
「プッ、何で疑問系なのさ?」
「こういうのは苦手なんだよ。それに気にするなルームメイトの誼ってもんだ」
「……兄さんがいたら、こんな感じなのかな?」
「ん? なんか言ったか?」
「ううん、なんでもないよ」
少し空気が明るくなった気もするが、全体的に重いのは変わらない。
俺も何回か朝起こしてもらったし餞別でも考えておくかな。
そして翌日、俺たちはレイの見送りに港に来ていた。
見送りに来たのは俺、明日香、カイザー、十代の4人だ。
「それじゃあもう行くね。今度はちゃんと入学してくる」
「恋する乙女って強いな〜」
「そのころには俺は卒業しているがな」
そういえばそうだ。カイザーが学園にいられるのは今年度までだ。レイはそのことをわかってるんだろうか?
「ああそうだ、餞別にこのデッキやるよ。レイが一番気に入ってたやつだ」
「えっ、いいの?」
「ああ、大事に使ってくれればそれでいい」
「ありがとう」
「あらあら、厚志にそんな趣味があったなんてね〜」
「そういうわけじゃないんだけどな」
そしてレイが船に乗りこっちに向かって手を振っている。
「じゃあね〜、また来るよ〜十代サマ〜!!」
「いいっ、オレかよ!」
「持てる男はつらいな〜。がんばれよ〜」
「ちゃんと船が見えなくなるまで見送ってあげなさいよ」
「それにいろいろありがとね~。厚志おにいちゃーん!!」
「ほら、厚志だって呼ばれてるだろ!!」
「いやいや、兄扱いの俺がいつまでもいるのは野暮ってもんだろ」
「ちょっと勘弁してくれよー」
「では、俺たちはこれで失礼する」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ」
「じゃあな〜」
「どうしてこうなったんだよ〜」
こうしてレイはデュエルアカデミアから去って行った。
その後しばらくの間、カイザーと十代にロリータキラーなる異名がはやることになる。
本人達は否定していたが、こういうものは否定すればするほど燃え上がるものなのだ。二人とも特定の恋人がいないことも噂の信憑性を挙げる一因となった。
「ちぃ、犯人はあの時いた面子なのはわかっている。いったい誰が……」
「ちくしょう、なんでこうなったんだよ~」
く〜〜くっくっく。八つ当たり成功だ。