校長先生の話が長いのは全国共通らしい。
入学式を終えた俺は、簡単なマップを見て自分の入る”レッド寮”までの道を歩いていた。
どうやら、終焉のカウントダウンやバーンなどのデッキは客受けが悪いため、プロデュエリストを養成するデュエルアカデミアではマイナス対象らしい。
1月以内にあのデッキを封印し新しいデッキを作成せよとのお達しが出てしまった。
使っててもワンパターンになりやすく楽しくないため、あまり使わないデッキではあるが、完全封印となると少し寂しい気もする。
新しいデッキ作成に関しては、もともと10以上のデッキを持っているため問題はない。
しかし、まさか自分がデュエルアカデミアに入るとはなぁ。あんまり入る気なかったんだけど、とある人に半分無理やり入れられたんだよなぁ
人生何が起こるかわからんもんだなぁ。
荷物はすでに送って部屋の中に運んでもらってるはず。荷物といっても着替えなどの日用品とカードだけだが。
両親にあまり負担をかけたくないため自分の私物はそこまで多くはない、捨て子だった自分をここまで育ててくれた両親に報いるためにもさっさと就職したい。プロデュエリストは安定した職業とは言いがたいが、デュエル評論家やI2社でカードデザイナーなどの道もある。
そしてカードに関わる職業は基本的に高給取りだ。
いきなり躓いてしまうとは思わなかったなぁ。
過ぎたことを悔やんでも仕方がない。一番下ならこれ以上落ちる事はないだろう!後は這い上がるだけだ!
ポジティブにいこう!!
と言う俺の決意は5分後には早くもくじけそうになった。
「遠い、ぼろい、狭いの三重苦だなこりゃ………」
ぼろいのはまぁいいだろう、住めば都という言葉もあるし最低限の機能はそろってるようだ。
狭いのも問題ない、自分は広いと落ち着かない貧乏性?なためこれくらいの狭さでちょうどいいくらいだ。
ただ遠いのはいただけない。自分は朝に弱い性質なので生半可な目覚ましじゃ起きれない。願わくばルームメイトが朝に強くて俺を起こしてくれるやさしい人でありますように……。
結論から言うとルームメイトはいなかった。どうやら自分はあの部屋を一人で使うことになったらしい。来年に期待……。
しかしどうでもいいが大徳寺先生のにゃーにゃー言うのはどうにかならんものか。
女の子ならともかく、いい年した大人がにゃーにゃー言うのは正直きしょい………。
歓迎会という名のささやかな晩餐が終了したあと、部屋でごろごろしようと思っていた俺を呼び止めたのはくらげのような髪型の男だった。
「あー!おまえ終焉のカウントダウン使ってたやつだろ?俺は遊城 十代って言うんだよろしくな」
好青年って感じがするなぁ、平凡な自分とはオーラが違うね、うん。
「俺は鈴本 厚志だ。よろしくな遊城」
「遊城なんて水臭いぜ。同じレッド寮の仲間なんだ十代でいいぜ。かわりにおれも厚志って呼ばせてもらうからよ」
「わかったよ十代」
えらい馴れ馴れしい上に明るいやつだな、レッド寮に入ったやつの大半がうなだれていたり落ち込んでいたりしてるのに。
「なぁなぁ、デュエルしようぜ!!終焉のカウントダウンなんて珍しいデッキ。いっぺんやってみたかったんだ」
アレ単調だから使っても使われてても面白くないと思うんだけどなぁ。
「あ〜、期待してるところに水を差すようで悪いがな、あのデッキは封印指定くらっちまってな、別のデッキを急遽組まなくちゃならなくなったんだ」
「ええ〜!!何でだよ〜、ルール違反でもないのに封印っておかしくないか?」
「なんでもデュエルアカデミアの方針に合わないらしいな。プロデュエリストたるものエンターテイメントなデュエルをして客を喜ばせるための要素も盛り込まなくちゃいけないらしい」
「そっか〜、ならしょーがねぇか。その代わり、新しいデッキを作ったら真っ先に俺とデュエルしてくれよな」
「わかった、そのときを楽しみにしている」
「アニキ〜、どこにいるんすか〜?」
「お、翔のやつに呼ばれてるからまた今度な」
「あいよ〜」
去っていく十代の後姿を眺めながら、好感の持てる人柄だなと一人うなずいていた。
その日の夜突然、夜の海が見たくなって部屋を出て散歩をしていると意外な人物に出会った。
「お、厚志じゃないか。お前も万丈目に呼び出されたのか?」
「む、十代か。俺はただの散歩だよ、そもそも万丈目って誰さ?」
「アニキ〜この人って誰っスか?」
「実は、かくかくしかじかというわけなんだ」
「へ〜この人があの終焉のカウントダウンを使ってた人ッスか」
「ブルー生徒に絡まれるとは災難だったな」
「よくきたな、ドロップアウトボーイ。逃げずに来たことは褒めてやる。余計なおまけもいるようだが関係ない。さっさとフィールドにのぼれ」
「万丈目さんあの終焉の奴とやらせてもらってもいいですか?」
「フン、好きにしろ」
「というわけだ、お前もさっさとフィールドに上がれ!」
「勝手に決められても困るんだが……。そもそも自分でデュエルする気はなかったから、デッキ持ってきてないし」
「ハッ腰抜けが。どうせ負けるのが怖くて嘘を並べ立ててるんだろう」
「はいはい怖いですよ〜〜だからお「何やってるの!あなたたち!!」っと」
誰か乱入してきたようだ。きれいな顔立ちをしているが、ちょっと性格がきつそうな女生徒が十代と万丈目に割り込んだ。
「やあ天上院くん。これからドロップアウトボーイにお仕置きをするのさ」
「貴方達もこんな茶番につき合ってないで帰った方がいいわよ」
「デュエルに誘われて逃げる真似はしないぜ」
さすが十代、うすうす思っていたが生粋のデュエル馬鹿だな。
「あなたは確か、終焉のカウントダウンを使っていた鈴本君よね」
「みんなに言われるなぁ……終焉は封印指定されたから、アカデミアで見ることはないと思うぞ。今は別のデッキを調整中だ」
「そうだったの。そういえば自己紹介がまだだったわね。私は天上院 明日香。名字は呼びにくいだろうから明日香でいいわ」
「お言葉に甘えて明日香と呼ばせてもらうよ。俺も厚志の方でいい」
「ええ、そうさせてもらうわ」
「貴様!天上院君に馴れ馴れしいぞ!!」
んなこといわれたってなぁ……。本人から許可も出てるし、そもそも自己紹介しただけなんだが……。
「おーい、そんなのどうでもいいからさっさとデュエルしようぜ!」
「くっ、あとで覚えてろよ」
「「決闘」」
うーん、フレイムウィングマンが取られたか……。十代が不利だな。不利ではあっても負けではないし何とかするんだろうけど……。
どうでもいいが万丈目のデッキはヘルとか地獄とかの名前がついた、あえて言うなら地獄ファンデッキだった。ファンデッキで戦える万丈目がすごいのか、それともそんなデッキしか組めない構築力が弱いのか……。
おっ異次元トンネルミラーゲートとはマニアックなカードを使うな。普通に魔法の筒の方がいいんだが、神秘の中華なべとのコンボでも考えているのかな?
「まずいわ!ガードマンが来るわ!」
おっと、残念だがデュエルは中断だな。
「十代!ずらかるぞ!!」
「いやだ〜決着をつけるんだ〜〜!!」
ごねる十代を引き摺り下ろして、何とかガードマンから逃げる。
「ここまでくれば大丈夫かな」
「どう?ブルーの洗礼を受けた感想は?」
「思ってたよりもたいしたことなかったな」
「でも大事なカードを失うところじゃなかったの?」
「いや、今のデュエル。俺が勝ってたぜ」
「そういえば最後のドローはなんだったんだ?」
十代の場も手札もすっからかんで相手には地獄将軍が残っていたからな。1枚でどうにかするのなら、ミラクルフュージョンしかないはず。あとはバブルマンや壷で手札増やすしかないかな。
「この死者蘇生でフレイムウィングマンを蘇生させればおれの勝ちだ」
なぬ!
「十代、融合HEROは融合召喚以外の特殊召喚はできないと思ったが……」
「え!………ほんとだ、じゃあさっきのデュエルはおれの負け?」
「クレイマンが墓地にいたからまだ見込みはあるんじゃないか?それより自分のカードのテキストくらい熟読しておいたほうがいいぞ……」
あ、明日香もちょっと冷めた目で見ている。まぁ自分のカードの効果の勘違いなんてやっちゃいけないことだしな。
自分も昔はけっこうやったもんだ。リクルーターをスキルドレインで阻止と勘違いしたこともあったな……。
スキルドレインは場のカードの効果しか無効にできない。リクルーターは墓地で発生する効果だからスキルドレインはすり抜けるから、墓地の効果を無効にしないとダメなんだよな。
今思い出すと恥ずかしい、もはや黒歴史だな…。
「明日から授業が始まるしさっさと帰って寝ようぜ。今日は引き分けだったんだからそれで良しとしておけばいいんじゃない?」
「やっぱりデュエルアカデミアは強い奴がごろごろしてるぜ。へへっ明日からが楽しみだなぁ」
全然聞いちゃいねぇ。
「私も寮に戻るわね。おやすみなさい」
「ああ、お休み」
「お休みなさいっス。明日香さん」
「ところで、お前誰?」
「ひどいっス!!最初からいたのに!!」
「自己紹介してないからだろ」
「うっ、そういえば」
「そんなどうでもいいことはおいといて、十代つれてさっさと帰ろうぜ」
「どうでもいいって、ひどいっス〜〜」