友人同士ってことでお目こぼしいただきたいです。
「よし! これで佐藤先生からの頼まれごとは何とかなりそうだな」
万丈目との対抗戦が終わり一息ついたタイミングだ。
今回はサボり魔の十代にお灸をすえるという目的だが……普通に説教しても煙たがられるだけで効果はあるまい。十代相手ならデュエルで何とかせねばならないだろう。
「おい、厚志。買い置きのカップラーメンはどうした?」
「ん? 流し台の下になかったか?」
「なかったから言ってる。さっさと補充しろ」
「いや、あれ俺の非常食だぞ」
確かに食べてもいいとは言ったが箱で買ってきたカップ麺をひと月たたずに使い切るとは思わねえよ。
少しは遠慮しろ。
「仕方ない、俺様直々に買ってやろう」
「サンダーっていいとこの出なのにやけに庶民的になったな」
「ぐっ、庶民的というな! 郷に入っては郷に従えというだろうが」
とっつきやすくていいと思うけどね。
ブルー時代はなんというか小物臭がぷんぷんしてたけど、今のサンダーはノリとカリスマがあるな。
「そういえば厚志。お前デッキを組んでいたようだが、そんな使いにくいカードで何をするつもりだ?」
「十代専用のデッキだよ。お前や三沢には使わんよ」
「そんなカードであいつに勝てるとは思えんがな」
「まぁ見てなって、考えがあるんだよ」
あとは十代を釣る餌がいるな。この前引いたHEROは対抗戦のご褒美にあげちゃったしな。
さてどうしようか?
万丈目とか十代がほしそうなカード持ってないかな?
「なぁサンダー」
「なんだ?」
「十代がほしがりそうなカードとか持ってない?」
「なんだ藪から棒に、そんなもの持ってるわけがないだろうが」
「そうだよなぁ、そうそう都合よく持ってるわけないよなぁ」
「むしろ、お前の方がカードの数は多いだろうが」
「俺のカードはちょっと人にあげるわけにはいかないんだよな」
俺は膨大な量のカードを持ってはいるが厳密にいうと俺のカードじゃないから勝手に人に譲るわけにはいかない。
となると、購買行って新しいHEROでも当てるしかないか。
「ちょっと購買行ってくる」
「ならついでにカップ麺も買ってきてくれ。金なら出してやる」
「へいへい」
なんだかんだ言って馴染んでるなぁ。
購買でカップ麺の買い置きと適当にパックを買ってみるが……。
まず最初のパック。
ギミック・パペット-ネクロ・ドール
ヴェルズ・ヘリオロープ
ゴーストリック・アルカード
ガード・オブ・フレムベル
ハウスダストン
ううむ、そうそう都合よくは出ないか。
結構知らないカードも多いなってエクシーズモンスター引いてるじゃねぇか!!
まだたいして出回ってないから結構値段高いはずなんだけどな……。
それにこれってシンクロに使うチューナーモンスター?
うわぁこのパック大当たりもいいところだな。
もう少し買ってみるか?
「あら? 購買で難しい顔をしてどうしたのかしら?」
「ああ、雪乃じゃないか。大したことじゃないんだけど十代を釣り上げる餌になるようなカードを探しててね」
「ふぅん、あのボウヤをねぇ。何をたくらんでいるかすごく興味があるわね」
「先生からもっとまじめに授業を受けさせるために何とかできないかって言われたんだよ」
「なるほど……納得したわ」
「でもなぁ、カード自体は大当たりなんだけど、取り立てて十代の興味は引けそうにないんだよな」
「うふふ、いいカード持ってるわよ」
「良ければ譲ってほしいんだけど……」
「そうねぇ……貸しひとつでどうかしら?」
「貸しひとつかぁ」
なぜだろう、雪乃に貸しを作るととんでもない要求をされそうで……。
いや、言動以外はまっとうな人物だというのはわかってるんだけどなぁ。
しかし背に腹は代えられないか……。
「この際仕方ないな。わかったそれで手を打とう」
「交渉成立ね。ちょうど今当てたばかりのカードよ」
「E・HEROキャプテンゴールドか。うん、確かこれは十代が持っていなかったはずだ。すまん恩に着る」
「正当な交渉よ気にする必要ないわ。むしろ貸しを返すことを心配なさいな」
そうだった……。そっちの方が問題だった。
怖いなぁ、何を要求してくるんだろうなぁ。
「言っておくが、できないものはどうあがいてもできないからな」
「当然よ、そんな要求するつもりはないわ」
「それなら助かる。さて俺は十代という魚を釣り上げてくるわ」
「せいぜい頑張りなさいな」
「あいよ。じゃあまたな」
これで準備は整った。覚悟しろよ十代。
あいつはあいつで割とふらふらしているからどこにいるかいまいちわからないが、夕食には戻ってくるだろう。夕食後が勝負だな。
寮にもどり、夕飯の時間になった。食堂内にはやはり十代が翔やコアラ先輩と食事をとっていた。
しかしいつ見てもあいつはいい食いっぷりするなぁ。
「いやぁ食った食った。もう食えねぇ」
「アニキはいつもそれっスね」
「オシリスレッドの食事をそんなにうまそうに食べるのは十代だけなんだな」
「いやぁ腹へっちまってさぁ」
「ああ、食後にくつろいでるところ悪いが十代。俺と賭けデュエルしないか?」
「賭けデュエル? 普通にデュエルすればいいじゃねぇか」
「実は先生に十代のサボり癖を何とかしてほしいって頼まれてるんだよ」
「げ! とうとう厚志のところまで手が回ってきたのかよ。どの先生だろ?」
まぁ自覚はあるようで何よりだ。
筆記試験110番のうえ、授業態度もいい加減だからな。
間違っても優等生に数えられる部類じゃないからなぁ。
「内容は簡単だ。俺が勝ったら授業を真面目に受ける」
「お前が勝ったら先生に頼まれようが俺はもう何も言わない。勉強を教えてくれと言われれば教えることはするけどな」
「アニキ相手は厚志君っスよ。どんな手を使ってくるかわからないっス」
「ほうほう、お前が普段どんな目で俺を見ているかわかったような気がするな」
「あ」
「要するにデュエルで勝てばいいんだろ! 挑まれたデュエルは受けるのが俺のポリシーだぜ」
さすが十代……。餌なんていらんかったんや。
せっかく譲ってもらったし俺は使わないから、デュエルが終わったらプレゼントしよう。
「あっさり受けてくれて助かるよ。勝ち負けに関係なくこのカードをやろう」
「お、いいのか? 新しいHEROじゃんか!! 悪いなぁ」
「ああ、それとデュエルディスクなしのテーブルデュエルでやるからな」
「えー! それじゃかっこいいHEROたちが見れねぇじゃねえか」
「ならキャプテンゴールドはやらん」
「うう、しょうがねぇなぁ。わかったよそれでいい」
「じゃあ部屋に戻って早速始めようか」
さぁてここからが正念場だな。
部屋に戻りデッキを用意して向かい合う。
テーブルデュエルといってもテーブルがないから畳の上なんだけどね。
「「決闘」」
「俺の先攻、モンスターをセットしてターンエンド」
「なんだよ。ずいぶん消極的だな」
「さぁて、俺のセットモンスターに挑む勇気はあるかな?」
「へへ、そんな程度じゃひるまないぜ。俺はスパークマンを攻撃表示で召喚。厚志のモンスターに攻撃だ」
「ふむふむ、俺のモンスターは闇晦ましの城だ守備力1930だから反射ダメージが入るな。闇晦ましの城にはリバース効果があるがアンデット族がいないため不発する」
《闇晦やみくらましの城しろ/Castle of Dark Illusions》 †
効果モンスター
星4/闇属性/悪魔族/攻 920/守1930
リバース:フィールド上に表側表示で存在する全ての
アンデット族モンスターの攻撃力と守備力は200ポイントアップする。
また、このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
自分のスタンバイフェイズ毎にさらに200ポイントずつアップする。
この効果は自分の4回目のスタンバイフェイズまで続く。
「げ、なら手札から速攻魔法禁じられた聖杯だ! スパークマンの攻撃力を400ポイントアップ!」
《禁じられた聖杯/Forbidden Chalice》 †
速攻魔法
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。
エンドフェイズ時まで、選択したモンスターの攻撃力は
400ポイントアップし、効果は無効化される
「なら俺も速攻魔法収縮だ。スパークマンの攻撃力を半分にする」
《収縮/Shrink》 †
速攻魔法
フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターの元々の攻撃力はエンドフェイズ時まで半分になる。
「ええと、どうなるんだ?」
「収縮で半分になった攻撃力に禁じられた聖杯の400が加算されるな」
「ええと、スパークマンの攻撃力が1600だから半分は800ポイントでさらに400プラスして……」
「そうそう、一つだけ付け加えておくが。ライフ計算なんかは自分でやれよ」
「わかってるよ。そんなの当り前だろ」
「まぁ普通はそうだな」
考えてる考えてる。ちゃんと数学を勉強しないからこうなるんだ。
算数の分野だけどな。
スパークマン
1600→800→1200
「わかった。730ポイントのダメージだ!」
「おお、正解だ」
十代
LP4000→3270
「俺はカードを一枚伏せてターンエンドだ」
「ならおれのターンドロー」
うーん、ここで動いてもいいんだけどなぁ。
まぁ様子見で黒庭使うか。
「俺はフィールド魔法ブラック・ガーデンを発動する。これ以降召喚されたモンスターは攻守が半分になり対戦相手に攻守800のローズトークンを一体攻撃表示で召喚する。一枚伏せてターンエンド」
《ブラック・ガーデン/Black Garden》 †
フィールド魔法
「ブラック・ガーデン」の効果以外の方法で
モンスターが召喚・特殊召喚に成功した時、
そのモンスターの攻撃力を半分にし、
そのモンスターのコントローラーから見て相手のフィールド上に
「ローズ・トークン」(植物族・闇・星2・攻/守800)1体を攻撃表示で特殊召喚する。
また、自分のメインフェイズ時に発動できる。
このカードとフィールド上の植物族モンスターを全て破壊し、
自分の墓地からこのカードの効果で破壊したモンスターの
攻撃力の合計と同じ攻撃力のモンスター1体を選択して特殊召喚する。
「また面倒なカード使ってきたなぁ」
「頭が混乱しそう」
「俺のターンドロー。俺は魔法カード強欲な壺を発動。カードを2枚ドローする」
「よくよく壺引くよなぁ」
「まぁな。まだ終わりじゃないぜ。手札から魔法カード融合を発動。場のスパークマンと手札のクレイマンを融合させてE・HEROサンダー・ジャイアントを特殊召喚!」
「ならブラック・ガーデンの効果で攻守を半分になる。そして俺のフィールドにローズトークンを出現させる」
サンダージャイアント
2400→1200
「けどサンダージャイアントの効果で闇晦ましの城を破壊するぜ」
「闇晦ましの城は920だからな、半分になったサンダージャイアントでも破壊は問題ない」
「よし、ローズトークンに攻撃だ!」
「あいよ400ダメージな」
厚志
LP4000→3600
うーん、ここでサンダージャイアントかぁ、まぁ何とかなる……か?
しかしフィールドが空ってのはちょっといただけないか。
「俺はこれでターンエンドだ」
「エンドフェイズに速攻魔法終焉の焔を発動させてトークンを二体召喚する。元々攻守0だから半減効果は関係ないな」
《終焉の焔/Fires of Doomsday》 †
速攻魔法
このカードを発動するターン、
自分は召喚・反転召喚・特殊召喚できない。
自分フィールド上に「黒焔トークン」
(悪魔族・闇・星1・攻/守0)2体を守備表示で特殊召喚する。
このトークンは闇属性モンスター以外のアドバンス召喚のためにはリリースできない。
「じゃあ俺の場にローズトークンが召喚されるぜ」
「あいあい」
「俺のターン。俺はトークンを生贄にダーク・キメラを召喚する。ブラック・ガーデンの効果で半減して攻撃力は805だ」
「また半端な数字だなぁ」
ダーク・キメラ
1610→805
《ダーク・キメラ》 †
通常モンスター
星5/闇属性/悪魔族/攻1610/守1460
魔界に生息するモンスター。闇の炎をはき攻撃する。
そらそうだ。このデッキのコンセプトは半端な数字ばかり使ったライフ計算と攻守計算がひたすら面倒くさい脳トレデッキだからな!!
さぁ、電卓のないこの状況で十代は計算しきれるのか?
「さらに魔法カードフォースを発動。エンドフェイズまでサンダージャイアントの攻撃力の半分をダークキメラに加える」
「ええと、サンダージャイアントが今半分の1200だから……さらに半分になって」
「ダークキメラでサンダージャイアントを攻撃」
サンダージャイアント
1200→600
ダークキメラ
805→1405
「えーと、うーんと」
「わけがわからなくなってきたんだな」
「教えるのも電卓も禁止だからなー」
「もしかしてこれが狙いか!」
「あ、さすがに気付くか」
「くそーせっかくのデュエルなのになんか勉強してる気分だぜ」
「デュエルディスクの禁止はこういうことだったんだね」
「ああ、ディスクが計算しちまったら頭使わんからな。せっかくだからデュエルディスクの偉大さを実感して勉強不足を嘆くんだな」
「ちくしょう……まんまと乗せられちまったぜ……」
ぶっちゃけ、俺も十分面倒なんだけどね。
フォースはダイレクトアタックと同じダメージと考えればそこまで複雑ではないが、一桁計算はさすがにきついよな。
「わかった! 805のダメージだ」
「正解正解。で自分のライフはいくつだ?」
「ええとええと……2475? 2475だ!!」
「ん~ファイナルアンサー?」
「ちょっと待ってくれ……いや、違う! 2455だ!! これでファイナルアンサーだ!!」
「ん~」
「わーん、全然わかんないよー」
「俺もよくわからないんだな」
「残念~2465だ。惜しかったな十代」
「そ、そんな~」
なぜ2475と2455がでて間の2465が抜けるんだよ。
本当に惜しかったな。
だが残念だ。これはこれでルールだからな。
ジャッジキルだ。
「ライフ計算ミスはテーブルデュエルにおいては」
「反則負け……」
「イエス」
「厚志君卑怯っすよ。ちょっとくらいいいじゃないスか」
「勉強も大事ってことだよ。安心しろ二度と使わないよ。自分の計算もすげー面倒だからな」
「勘弁してくれよ……」
「さて、賭けの件は覚えてるか?」
「う、真面目に授業を受けるって話だよな」
「ああ」
「だけどよ~。どうしても眠くなっちまうんだよ」
「何も勉強でトップになれなんて言わないさ」
「そうはいうけどさぁ」
「ただアカデミアに合格できなかった奴や夢破れて退学する奴もいるんだぞ。せめてある程度真面目に見える程度の勉強はしろってことだよ。それで授業がわからなかったら俺や三沢に聞けばいい。サンダーだって元々ブルーなんだし成績は悪くない。明日香だっていい。努力の痕跡くらい見えるようにしておいてくれってことだ」
「わかったよ……負けは負けだしな」
「じゃあ、俺は部屋に戻る。おやすみ」
「ああ、お休み」
これで一応佐藤先生との約束は果たせたかな?
というわけで、テーブルデュエルしか役に立たない脳トレデッキですw
遊戯王小説数あれど十代にジャッジキルかましたのはうちの厚志君をおいてほかにないでしょうw
ジャッジキルの結末が気に入らない方もいるでしょうけど、勉強にかぎらずやるべきことをやらずにサボると手痛いしっぺ返しがあるということで。