明日香とデュエルしてから数日が経過した。あれからは大してトラブルもなくすごしている。
せいぜい、十代と何度かデュエルしているくらいだ。
いや、十代の引きは反則でしょ……。手札0から気がつけば5枚に増えてたりするし。なぜか異様に条件がゆるいバブルマンや強欲な壺が普通に使えることもあって、デッキの回転が早い早い。
いろんなデッキで挑戦しているが勝率は3割ほどだ。
ちなみに『お触れホルス』の使用は暫定的に認められた。ビートもできるけどロックの性質も持つので先生方の評価はあんまり高くなかった。
特殊勝利だけじゃなくて魔法、罠ロックもだめなのか……。
結構要求が厳しいな、この分だとパーミッションやバーンデッキも無理っぽい。やっぱりソリッドビジョンだからどうしても見栄えのいいモンスター同士のガチンコが評価されるんだろうか?
純粋なビート系デッキのレパートリーって少ないんだけどなぁ。
自分はどうしてもロマンコンボ混ぜたくなるから、構築段階で変なカードとか混ざってるしなクイズとか。
しかし他の連中はよくもまぁ同じデッキばっかりで飽きないよなぁ……。
俺なんて3回くらい使ったら調整で手を入れるか、飽きて他のデッキを作るからな。
「おーい、厚志〜いるか〜?」
ん?十代か、今日はデュエルはしないっていってあるし何の用件なんだろ。
「なにやってるんだ?」
「デュエルディスクの整備だよ。専門家じゃないから簡単な分解掃除くらいしかできないけどな」
「それって普段使ってるデュエルディスクじゃないよな。傷だらけだし結構古いのか?」
今俺が分解掃除してるディスクはバトルシティ時代に配られた初期のものだ。
10年以上前のものなので大分くたびれているがデータのアップデートやパーツ交換作業なども依頼して一応使えるようにはなっている。
このディスクにも思い出が詰まってるからな、倉庫の肥やしにするにはちと悲しいものがある。
「ああ、10年以上昔のものだからな」
「10年以上前っていうとバトルシティ時代とかその辺だぜ? よくそんな古いの持ってるよな」
「まぁ、バトルシティには参加してたしな」
「……え? ええーー!!? ちょっと待てよ、そんな話聞いてないぜ!!」
「あれ? 言ってなかったっけ?」
「聞いてないぜそんなの!」
「まぁ聞かれない限りペラペラしゃべるようなことでもないしな」
「てことはさ! あのデュエルキング武藤遊戯さんに会ったことあるのか?」
「まぁ……隣だし」
「へ?」
「遊戯さんの家の隣が俺の家だし、よく遊んでもらってたよ」
「ええーーー!!?」
「じゃあ、厚志のデュエルの腕も遊戯さんに学んだからなのか?」
「うんにゃ、だいたい独学かなぁ。練習相手には何度か付き合ってもらってたけどな」
「いいなぁ、デュエルキングと日常的にデュエルできるなんて夢みたいだぜ」
「そういうもんかなぁ」
あの人ゲームと名の付くものなら、なんでも強いからなぁ。格ゲーなんて俺が苦手だからボコボコにされたことしかないな。
UFOキャッチャーとかもひょいひょいとってくるし、トランプに至っては4人でやってるのに3回純正革命されて場が荒れた荒れた。その中でもちゃっかり大富豪勝ち取ってるし。
「絶対そうだって! みんなうらやましがると思うぜ」
「まぁいいや、あまり騒がれるのもあれだから一応内緒にしておいてくれ、遊戯さんもけっこうふらふらしてるみたいだからサインとかねだられても困るからな」
「オッケー、そのかわり会えたらおれとデュエルしてくれるように頼んでおいてくれよな」
「会えたらね。一応聞いてみるよ」
「サンキュー」
「んで、そもそも何の用事だったんだ?」
「そうだったそうだった。最近暑いからさ〜怪談話でもしようと思ってさ。一緒にどうだ?」
「ん、別にかまわんよ。どこでやるんだい?」
「俺たちの部屋でやろうぜ」
十代に案内されて入った部屋には、すでに2人の人物がいた。
翔と………誰だっけ?
あのコアラ顔も十代たちのルームメイトなんだろうな。
まぁいいや。
とりあえずそれを頭の隅に押しやると、ちょうど十代が話をするときのルールを説明しはじめた。
ルールといってもそこまで大層なものではないが。
1順番は俺→翔→コアラ→十代の順番らしい。
2カードを引いてそのレベルに見合った話をするらしい。
3照明は雰囲気を重視してろうそくのみ。
「というわけで俺がトップバッターだ」
とりあえずカードをひいてっと、なにが出るかな〜?
「こ、これは……」
「な、何のカードを引いたんだな?」
「絶対服従魔人だ。レベル10だな。悪いがいきなりクライマックスで行かせてもらう」
「い、いきなりレベル10ッスか!」
ゴクリ
だれかが息を飲む音がやたらと大きく聞こえる。
「いくぞ、女性の○○○は××××で○○○すると×××××になってだな」
「「「ぶふっ!!」」」
「なんだいきなり。リアクションを取るのはもっと後だぞ、ここからがすごいんだからな」
「ちょ、ちょっと待て!」
「何でいきなりエッチな話になってるんスか!」
「そ、それは怪談じゃなくて、きっと猥談なんだな」
「あれ?猥談っていってなかったけ?」
「ちげーよ!か・い・だ・ん!!エッチな話じゃなくて怖い話のほうだ!」
あ〜そういうことだったのか。
「そうだよな、猥談なら女子つれてくるもんな」
「それ完璧にセクハラッスよ!」
「厚志が天然ボケだったとは気づかなかったぜ」
「せっかくの雰囲気が完全に台無しなんだな」
むぅ、紛らわしい言い方しやがって。
それに—————
「翔。鼻血でてるぞ」
「えっ!マジッスか!」
やっぱり翔はスケベだなぁ。女子寮の覗き騒ぎもこいつならやってもおかしくない気がしてきた。
でも実際行動に移せないんだろうな、ヘタレっぽいし。
「気を取り直して、とりあえず幽霊が出てくる話をすればいいんだな?」
「そうなんだな」
「うむ。任せろそっちの話にもとっておきのヤツがある」
「楽しみだぜ」
「よし、じゃあいくぞ」
ゴクリ
みんなの表情が真剣なものに変わっていき、本日2度目の息を呑む音が聞こえる。
「これは、近所の神社に住んでる高校教師が体験した話なんだが」
「微妙に具体的ッスね」
「実話だからな。それでその先生は格闘家でな、若いころ世界を飛び回っていたんだ」
「へぇー、そんな人もいるんだなぁ」
「その人はちょっと特殊だからな。続けるぞ、とある国で安いオンボロホテルに泊まった時のことだった。なんとなく怪しい雰囲気はしてたそうなんだが、夜になるとそれはいっそう深まった。」
「ふ、雰囲気出てきたんだな」
「一度寝ついてから、寝苦しくなって目を開けてみると足元から半透明の男がスゥーと出てきたんだ」
「ひぃぃ、こ、怖いッス」
「後から話を聞いてみたら、プロレスラーの幽霊が出没することでその筋では有名な話だったらしい」
「そ、それでその先生はどうなったんだな」
「ん?何とか勝てたらしい、何しろ幽霊だから関節技が効かなくて大変だったらしいぞ」
「「「ぶほっ!!!」」」
「また噴出したのかよ、きたねぇなぁ」
「何か色々と間違ってるッス!」
「でも関節技が効かないとかリアルだよな……」
「俺の話はこれで終わりだ。次は翔だったな」
「なんか色々台無しッス」
「む、それは心外だな。ほかには増殖する恐怖のいきなり団子とかあるぞ」
「題名からしてすでに微妙ッス」
そんなこんなで怪談話は続いていく。
十代の話が終わった後に、寮長のにゃーじゃなかった大徳寺先生が見回りに来て、アカデミアの廃寮にまつわる怪談話を披露した。
なんでも廃寮で闇のゲームを研究していたとかいないとか。
闇のゲームなんか研究してどうするつもりだったんだろう?というか何故に寮で研究してるんだ?学園内で普通に研究すればいいだけの話だろうが。
それに……闇のゲームってあんまりいい思い出ないしな。
「いってみようぜ!」
「何故に?」
「面白そうじゃん!」
十代の悪癖が始まったな。一度興味を持ったら止まらないからな。
翔やコアラは消極的賛成らしい。
俺は眠いから正直断りたいんだが、十代のことだからどこに行ってもトラブルを巻き起こすに決まってる。
………見物くらいなら問題ないかな?
結局俺も付き合うことにした。というか俺がいないと廃寮までの道がわからなかったらしい。こいつらこんなに道に疎くて大丈夫なのか?まだ入学したばかりだから仕方がないのかもしれないけどな。
この時はまだ気づかなかった。本格的に巻き込まれたのはここからだったことを……。
はい、厚志君の衝撃の過去がさらっと出てきました。
一区切り付いたら過去編である初代遊戯王時代の話も投稿しようと思ってます。
厚志君の境遇その他もろもろに関しても前作とはいろいろ変更してるので前作の設定は忘れた方がいいかもしれませんね。