ううむ、制裁デュエルのデッキマジでどうしよう。
あんまり封殺するようなデッキだったりワンキルデッキだったりするとまた先生からにらまれるし、かといってネタに走りすぎるのもどうかなぁ。
ふむ……。
「テーマデッキにするか」
一つのテーマに絞ってビートダウンすれば文句は言わないだろう。
BF、剣闘獣、ワイト、フォトンなどなど。
そうやって組むべきデッキを考えていると毎度毎度のごとく十代が部屋の扉を勢いよく開ける。
「厚志! 隼人が退学になるかもしれないんだ!」
「まぁまぁ、落ちつけ十代」
隼人って誰? ……ああ、あのコアラ先輩か。
そういえば自己紹介してなかったから名前知らんかった。肝試しとか怪談までやったんだけどな。
「とりあえず詳しい事情を説明してくれよ」
「ああ、隼人の親父さんがやってきて隼人を実家に連れ戻して酒蔵を継がせるって言ってるんだ」
そういえば、留年してるって言ってたな。親としては先の見えないアカデミアより実家で手に職をつけてほしいんだろうな。
ふむふむ、でもそれだけだと家庭の事情だから俺たちは首突っ込めないんじゃないのかな?
「それで、隼人と親父さんがデュエルして勝てば実家に戻らなくてもいいって話になったんだ」
「またデュエルか……」
「ん? どうしたんだ厚志。やさぐれた顔して」
何でもかんでも解決法はデュエルなんだなぁこの島。
「それより、それだけだと俺の部屋に慌てて飛び込んでくる理由にならんと思うが」
「なんでも隼人の親父さんは薩摩示現流の凄腕デュエリストらしいんだ。それでその対策のためのアドバイスがほしいんだよ」
「いや、まるで意味が分からないんだが」
薩摩示現流って剣術の流派だよな! なんで『薩摩示現流の凄腕デュエリスト』って単語が出てくるんだよ!!
意味わかんねぇよ! あれか『カードは剣、デュエルディスクは盾』って誰か言ってたけどそんな感じか!!
もうだめだ……俺の常識が崩れそうだ。
「とりあえず隼人のデッキ組むのを手伝ってくれよ」
「いや、まぁそれは構わないんだけどね」
十代の部屋に連れていかれて早速デッキのチェックを行う。
まずは分解して種類別に分けるか。
「ええと下級がここで上級がこっちと、蘇生系がここで強化系がこっちだな」
「厚志君って変なやり方するんだね」
「そうか? 分類しないと、上級下級のバランスわかりにくいから俺はいつもこのやり方だよ」
デス・コアラにビッグ・コアラと吸血コアラにラッコアラにコアラッコって……。
「コアラしか入ってないじゃねえか!!」
「ほんとだ、コアラばっかりだ」
「コアラデッキなんだな」
イラストと名前だけかよ!! 俺の作るファンデッキでももっとまともな構築するわ!!
いや、好きなら好きで悪いとは言わんがもうちょっとなんとかならんものか。
「あ、じゃあ僕これあげるよ。コアラとカンガルーでオーストラリアデッキになるでしょ」
「じゃあ俺もなんかいいの探してみるぜ」
いや、オーストラリアって……。
いい加減その辺の思考から離れ……ん?
「翔、ちょっとそのカード教えてくれ」
「え? デス・カンガルーだよ」
「ありがとうなんだな。これは持っていなかったんだな」
コアラとカンガルーの組み合わせならありか。
マジでオーストラリアデッキになりそうだ。
コアラとカンガルーと獣族サポートを追加すれば……割といい感じになるかもしれないな。
「十代、このカード持ってる?」
「んーと、確かこの前パックで当たったと思ったんだけど」
「十代が良ければそれも追加しよう。んでこいつとこいつとこれは抜いて」
「そ、そんなに抜くのか」
「んー? モンスターは枚数少ないからあんまり外せないけど実用性の薄い罠とかは減らさんとね」
「ああ、そのコアラカードも抜いちゃうのか……」
「え? コアラカード?」
俺が手に持ってるのは武器庫荒らし、相手のデッキから装備魔法を墓地に送る使い道が限りなく薄いカードだ。
武器庫荒らし→武器『コアラ』し
……………………。
ちょっと待てい!!
誰がうまいこと言えと!!
「抜く、ぜってー抜く!! 何が何でも抜く」
「そんな殺生な」
「いつ使うんだよこいつ……」
「そ、それは……」
「あとはディアンケトも抜いてっと」
「それだけは勘弁なんだな!」
「へ?」
何かこだわりがあるようで強硬な反対姿勢を見せるコアラ先輩。
うーん、まぁ初期4000で1000回復だからでかいといえばでかいか、こだわりを捨ててまで抜く必要がないというか入れるカードがない。
「嫌がってるしそれくらいは見逃してやろうぜ」
「まぁ、特に優先順位の高いカードもないしそれはいいか」
「ほっ、助かったんだな」
「あとは俺からも一枚あげるよ。確かパックで当てたはず」
「みんな、ありがとうなんだな」
やはり何かこだわりがあったらしい。まぁそういう気持ちわからんでもないから無理に抜きたくはないな。
こうしてデッキ作成の夜は更けていくのだった。
翌朝なぜか道場でデュエルが開始されてる。
なんで道場なんだよ、剣道部とか一応あるはずだけどさぁ。
「決闘!」
「いざ決闘!!」
戦い火蓋が切って落とされた。
隼人の先攻でデス・コアラがいきなり攻撃表示で召喚された。
デス・コアラってリバースモンスターなんだが……。
本人も忘れてたらしい。
おい、効果読めよ。
《デス・コアラ/Des Koala》 †
効果モンスター
星3/闇属性/獣族/攻1100/守1800
リバース:相手の手札1枚につき400ポイントダメージを相手ライフに与える。
返す親父さんのターンで酔いどれタイガーにさっくり戦闘破壊されてしまう。
酔いどれタイガー(TF3)
効果モンスター
星4/地属性/獣戦士族/攻1800/守600
このカードが攻撃した裏側守備表示モンスターがリバース効果モンスターだった場合、その効果は無効化される。
待て示現流どうした。
示現流というより酔っ払いデッキじゃねぇか。
隼人はコアラの行進で二体の生贄をそろえてビッグ・コアラで酔いどれタイガーを破壊する。
《ビッグ・コアラ/Big Koala》 †
通常モンスター
星7/地属性/獣族/攻2700/守2000
とても巨大なデス・コアラの一種。
おとなしい性格だが、非常に強力なパワーを持っているため恐れられている。
「おおー、最上級をあっさり召喚した。なかなかやるな」
「隼人も負けてないぜ」
そして返す親父さんのターン。今度は酔いどれエンジェルを召喚しお銚子一本とちゃぶ台返しのコンボで隼人に大ダメージを与える。
ちゃぶ台返し(TF3)
永続魔法
自分フィールド上に「酔いどれ」と名のついたモンスターが表側表示で存在する場合、自分フィールド上に存在するこのカード以外のカードを全て破壊する事ができる。
この効果によって破壊し墓地へ送ったカードの枚数分だけ、相手フィールド上のカードを選択して破壊する。
この効果を使用する場合、このターン自分は通常召喚をする事ができない。
酔いどれエンジェル(TF3)
効果モンスター
星4/地属性/天使族/攻1800/守400
このカードは「ちゃぶ台返し」の効果によっては破壊されない。
お銚子一本(アニメ)
永続魔法
このカードが破壊され墓地へ送られた時、相手に500ポイントのダメージを与える。
って、あんたがちゃぶ台ひっくり返すんかーい!!
なんでわざわざプレイヤーがひっくり返すんだよ!!
こんなソリッドビジョンおかしいよ!!
「これが一撃必殺の極意よ!!」
「父ちゃんは都合が悪くなるといつもそれなんだな」
「薩摩示現流関係ねぇじゃん」
「おれもそう思う」
むしろ最初からそう思ってた。
隼人の残りライフは1000になり大詰めになってきた。
「次のターン内に何とかしないと隼人の負けだな」
「ああ、ちゃぶ台返しがある限りどんな壁モンスターもやられちまう。ちゃぶ台返しを破壊するか決着をつけないと……」
「そんな! じゃあ隼人君は……」
さて、どうなるか。
ちゃぶ台返し強いな。ただ自分のカードが全部吹き飛ぶのだけはいただけないな。
除去としてはまぁまぁって感じか。
「俺は黙する死者を発動させて墓地のビッグ・コアラを特殊召喚。そして魔法カード融合を発動。マスター・オブ・OZを召喚なんだな」
《マスター・オブ・❘OZ《オージー》/Master of Oz》 †
融合モンスター
星9/地属性/獣族/攻4200/守3700
「ビッグ・コアラ」+「デス・カンガルー」
ここで融合させられるとは隼人も大したもんだな。
でもマスター・オブ・OZだと攻撃力が足りないがどうするんだ?
「さらに魔法カード野性解放を使うんだな」
「な、なんだと!」
「このカードは獣族モンスターの守備力を攻撃力に加えるカード。これでマスター・オブ・OZの攻撃力をアップさせる!!」
「こ、攻撃力7900だとぉ!」
「いっけぇー、エアーズロッキー!!」
《野性解放/Wild Nature's Release》 †
通常魔法
フィールド上の獣族・獣戦士族モンスター1体を選択して発動できる。
選択した獣族・獣戦士族モンスターの攻撃力は、
そのモンスターの守備力分アップする。
この効果を受けたモンスターはエンドフェイズ時に破壊される。
デス・カンガルーは翔があげたカード、マスターオブ・OZは十代があげたカード、そして野性解放は俺があげたカードだ。
なんというか、そのこういうのってなんか照れくさいな。
どれか一枚欠けてもダメだった。ちょっとくさいが友情の勝利っていうのかね。
「やった! 父ちゃんに勝ったぞー」
「やったな隼人!」
「よかったね隼人君」
「いやはや、おめでとう」
「隼人……強くなったな」
「父ちゃん……」
「約束通りおいはこのまま島を出る。お前は自分の信じた道を進め」
「あ、ありがとうなんだな。父ちゃん」
いい親子だ実に感動的だ。
これで一件落着かな。