花は散れども舞う風は 作:PP
色々な方のゆゆゆ2次創作を拝読するうち、オリ主が2人いても良いのでは?という思いに至り書き始めたものです。
プロローグ「今、ここから」
父さんに「見せたいものがある」と言われ家の隅にある蔵へと連れられたのは、小学6年生として初めての始業式を迎える前の日だった。
「しっかし古いなこの蔵も…建て替えが必要かもしれん」
「こんな所に何があるっていうのさ」
「京極家、初代様の遺物。我が家に代々受け継がれてきた物」
自分で言うのも何だが、俺の家は大きい。1人では持て余してしまう程の庭があるし、周りは2メートルくらいの塀で囲まれている。そしてこの蔵。何百年も前からあるらしく、所々ひびが入っていたり補修の痕が残っていたりする。
「…初代様」
「初代様の話はお前にもした事があったな」
「隆平様の事?西暦の時代に化け物と渡り合ったっていう」
「そうだ。ついに……」
何か言いたげに言葉を止める父さん。
「ついに…何?」
「風馬、薙刀の修練はよくやっとるようだな」
「急に何だよ」
「これだ…お前に見せたかったもの」
細長い棒状の物に濃い紫色の布が巻き付けられている。これはもしや。
「布を取っていいか?」
「おう。取りな」
「これは…薙刀?」
中身は想像通り1振りの薙刀。保存状態はかなり良く、刃を研ぎさえすれば今すぐにでも使えそうだ。「初代様の」というだけあってもっと古ぼけていると思っていたが、どうやらそうでもないらしい。元勇者の所有物だっただけに、神樹様のご加護があるのかもしれない。
「薙刀だ。ついに…初代様の宿題を解決しなければならない時が来てしまった」
「宿題って…ひょっとしてそういう事か」
俺は物心ついた頃から薙刀の修練を続けてきた。修練の理由は、かつて初代様が戦った敵が再び襲撃してくるのに備えるためだと言われた。そして、さっき言われた「宿題」。これらから導き出される答えは———。
「つまり件の化け物と戦う時が来た、と」
「そういう事だ。お前に全てを背負わせるのは酷だと思っとるが、任せられるのがお前しかおらんのもまた事実。なんせうちの家が例外なだけで、神樹様は若い少女しか相手にせんからな」
「俺は大丈夫なのか?少女どころか男だと思うんだけど」
「そこは大丈夫だ。初代様もバッチリ男だったし、それにもう1人……」
「もう1人?初代は2人いたのか?」
「そういう訳じゃない。まあ今のは忘れてくれ。いずれ来たるべき時が来たらゆっくり話すさ」
西暦時代に初代様以外の男の勇者がいた、という事なのだろう。知らなかったので気にはなったが、今はそれを気にしても仕方がないので諦める。
「…分かった。ともかくやる。その代わり今の話の続き、また聞かしてくれよ」
「もちろんだ。頼んだぞ」
「後これ…どうするんだ?そのまま俺の部屋まで持っていけと?」
「そんなのしなくていい」
「でも武器が無きゃ戦えないぜ」
「安心しろ。ちゃんと戦える仕組みがある。後で分かるさ」
後で分かる?父さんからは言えない何かがあるのだろうか。
「宗徳様、大赦の方がお見えです」
「ありがとう。風馬、行くぞ」
「俺も行くのか…めんどくせぇ」
「何か言ったか?」
「イイエナニモ」
大赦の人の話は小難しい上に長い。正直言ってこのイベントは回避したいのだが、さっきの武器に関する不明点が分かるかもしれないとの期待から渋々父さんについて行く。
「京極宗徳様、風馬様、お待ちしておりました」
「お待ち頂いたか。これは申し訳ない」
「そんな、とんでもございません。お顔をお上げ下さい」
「恐縮です。しかしご自身はお面をお取りにならないのに『顔を上げよ』と仰るとは、これは1本取られましたな」
「ご容赦下さいませ。神樹様にお仕えする者として守るべき規則なのです」
父さんは大赦をあまり好いていない。直接聞いた訳ではないが何となく分かる。今だって笑顔に見えはするが、目が笑っていないのだ。
(けどあそこまで嫌うって絶対何か理由があるよな……)
さすがに面と向かって聞く勇気は無い。普段は温厚な父だが、怒らせると尋常じゃない程当たり散らすから。
(そう考えると母さんよくもまあこんな人を選んだよ)
そんな事を考えているうちに父さんと大赦の人との御託並べ対決も終わり、俺の戦いの話になった。
「ではこちらのアプリのご説明を致します」
「お願いします」
そして、勇者アプリの説明を受けた。戦闘時に着る勇者装束の性能、変身の仕方、武器の呼び出し方———。気になった点の質問まで済ませ、武器に関する疑問も解消した。
「ではその様にお願い致します」
「心得ました。それでは」
* * * * * *
「初代様の薙刀だってさ」
「そんな物があったんか…まああの蔵だしあっても不思議じゃないけど」
「その…お前はどう思うよ。お役目について」
「うーん俺には何とも言えんな。実際に戦う訳じゃないし、それに対して物申すのは違うというか」
「じゃあお前も戦う事になったらどう思うよ」
「まあでも結局、風馬が思うようにやるのがいいと思う。無責任な立場からはこれが限界かな…悪いけど」
幼馴染であり親友の彼はお役目の事を知っている。話が早いので相談しやすく、今日も相談に乗ってもらいに家まで行ったのだ。はぐらかされてしまったが。
「俺は風馬の行ってる神樹館に行ってる訳じゃないし、そっちの事は正直よく分からない。でも友達とか仲間がいない訳じゃないだろ?だったらその人たちに背中を預ける他は無いっしょ」
「そうよなぁ…また考えてみるわ。話したらちょっとスッキリした。ありがと」
「そっか、良かった。じゃあまた。気負いすぎんなよ」
(気負いすぎるな…か。世界がかかってんのに気負わないのは無理だから、せめて軽減する策を見つけろって事だよな)
簡単にできる事ではないと思いながら、親友に別れを告げて帰路に就く。
(どうなる事やら。明日以降、とりあえず他の3人のメンバーと会わなきゃな。とにかく会ってみない事にはどんな人か分からないし)
* * * * * *
2週間後。隣のクラスの担任である安芸先生に呼ばれた俺は、勇者に選ばれた他の3人と初対面を果たした。
「という訳で、お役目に就いてもらうのは4人になったから。よろしく頼むわね」
「ご紹介頂いた、京極風馬。よろしく」
「よろしく〜!私、乃木園子〜」
「三ノ輪銀だ。こっちは鷲尾須美。よろしくな」
「よろしく頼むわね。京極君」
「うん、よろしく」
安芸先生の説明の後に簡単な挨拶だけ交わし、その日は別れた。初めて「樹海」なる世界を目にしたのは、それから3日後の事だった。
京極なのに "隆" 平?日本史エアプか?と思われる方がいらっしゃるかもしれません。
投稿者は日本史に関して付け焼き刃程度の知識しか持ち合わせておりませんが、この件に関して一応の理由づけはあります。
まずはお知らせまで。