花は散れども舞う風は   作:PP

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えー、大変ご無沙汰しております。
相変わらずの遅さですが、年末までにはもう少しマシなペースに戻せるかと思います。
何卒ゆっくりお付き合い頂ければ幸いですm(_ _)m


第5話「週末騒動」

助っ人参戦から1夜。

ゆっちゃんと東郷さんのクラスに、転校生がやってきたらしい。

名は三好夏凜。

つまり転校生とは、大赦から派遣された新参勇者その人である。

 

「という事で、新しく勇者部に仲間入りしてくれる夏凜ちゃんでーす!」

「ちょっと、私は大赦から直々に派遣された完成型勇者よ。アンタらと馴れ馴れしくやるつもりは無いわ」

 

いいから座って、と部員に着席を促す彼女。

今日はどうも、彼女が大赦から持ってきたお土産……ではなく情報を私たちに教えてくれるらしい。

1日の授業も終わり、部室には5名の部員に1人が加わった計6名が揃っている。

 

「でも、一応は自己紹介しとくわ。私は三好夏凜。大赦で厳しいトレーニングを受け、勇者システムも最新型にチューンされた勇者の完成形よ。この勇者部とかいう緩んだ組織を立て直すために来たから、そこんところよろしく」

「って、箒を振り回しながら言われてもねぇ……」

 

ジト目の風さんがぼそりとこぼす。

 

「こ、これは完成型になるための修行なのよ!」

「でも危ないから止めた方が良いと思うわ。棚にでも当たって小道具が落ちて来たら大変だもの」

「……ま、まぁそんな事より!説明よ説明!」

 

東郷さんの指摘に一瞬固まったものの、すぐに立て直す。

論理は弱くても、勢いだけである程度何とかするタイプみたい。

使いようによってプラスにもマイナスにもなりうる、難しい人間だ。

 

「今から話すのは2つ。”精霊” と “満開” についてよ」

 

三好さんの説明を簡潔にまとめると、およそ次のような事だった。

まず “精霊” とは、勇者の戦いを助けてくれる存在。

その正体は、神樹様の中に蓄積された記憶や伝承が実体化したもの。

次に “満開” とは、勇者が強くなっていくためのシステム。

戦いの中で特定のアクションを起こすと勇者服のどこかにあるゲージが溜まっていき、満タンになると “満開” を発動し強大な力を振るう事が可能となる。

そしてこれを繰り返す事で、勇者はどんどんその力をレベルアップさせていく。

 

「とりあえず、私からあなたたちに話す事はこのくらいね。何か質問ある?」

「その満開って……1回使ったらずっと強い状態のままなんですか?」

「いいえ。時間経過で満開状態は解けるわ。でも、もう1度力を溜めれば使える。ゲージを溜めては解放し、また溜めては解放するって事」

 

なるほど。

このサイクルを回す事で、勇者としての力がどんどん強くなっていくってわけね。

 

「そう言えば私、ゲージ溜まった事あるかも。戦ってる最中、ちょっとだけだけど力が溜まるような感覚になった時があったんだ」

「おっ、じゃあ最初に満開して強くなるのは友奈かもしれないわね」

「えっ、やったぁ!私、もっともーっと頑張ります!」

「流石ね、友奈ちゃん。私も負けてられないわ」

「ま、完成型の私には劣るだろうけど」

 

強気なのは初対面の時から相変わらずだ。

三好さんを見てるとイライラしちゃうし、彼女と上手くやっていけるのかアヤシイところがある。

 

「他に質問は無い?」

 

今度は風さんが部員たちに問いかける。

 

「無さそうね。じゃあ、勇者部の本業、依頼の話もさせてもらうわ」

 

そう言うと彼女は、1人1人に “6月度幼稚園演劇会” と銘打ったプリントを配った。

内容は、地元の幼稚園からの人形劇の依頼。

以前にもやった事があるらしく、好評だった園児からのリピート願いを受けた形だそうだ。

 

「はい。夏凜にはこれも」

「はぁ!?これって……入部届じゃない!!」

「それがどうかしたの?」

「どうかするわよ!私は馴れ合いにきたわけじゃないって言ったでしょ!?」

「郷にいれば郷に従えってやつよ。ちゃんとした組織にしたいのなら、まずは部に所属して勇者部のお役目の方にも精を出す事ね」

「はぁ……全くしょうがないわね。やれば良いんでしょ、やれば」

 

ボランティア活動への参加を求められ、不服そうな三好さん。

でも私からすれば、なぜそれが気分を害する要因になるのか理解できない。

むしろ、他人の役に立ち、他人から感謝される事は至上の喜びではないのか。

部の運営上、一応彼女と仲良くした方が良い事は分かっている。

だがこうも考え方が違うとなると、馬が合わないのは必至だ。

現れたのは、勇者部でやっていく上での大きな障壁。

これを何とかせずして先は無いだろう。

 

(うーん、どうしたもんかなぁ……)

 

 

 

 

 

* * * * * *

 

 

 

 

 

「おっはよー」

「「「おはようございます!」」」

「アンタたち早いわねー。まさか、アタシと樹より先に来てる人がいるとは思わなかったわ」

「あ、でも実は、私たちもついさっき着いたところなんですよ」

「そんなに待ってた訳じゃないですよ、風先輩」

「麗もいるし……後は夏凜だけね。先に準備して待ってよっか」

 

……とは言ったものの。

ちゃんと正しい情報を彼女に伝えられていただろうか。

昨日の最終予定確認にも一応いたし、大丈夫だとは思いたいけど。

もし、夏凜が分かっているのに来なかったら?

いや、来れない事情があるとすれば?

……事故?事件?

 

「はぁ……」

「風さん、大丈夫ですか?」

 

つい出てしまった溜め息を、麗は聞き逃さなかった。

 

「あ、大丈夫大丈夫。ちょっと溜め息ついただけだから」

「その溜め息が心配なんですけど……」

「ふふ、ありがとう。でも、ホントに何でもないから。強いて言えば、疲れが溜まってるのかも」

 

心配をほぐすかのように、自分の右肩に左手を乗せてぐるぐると回してみせる。

経験上、麗は洞察力が高いタイプだと思う。

だから、全部嘘で塗り固めるとかえってバレやすくなる。

あえて事実を入れ込むのも、バレにくい嘘の特徴の1つって言うし。

 

「それで、本当は何なんですか?」

「っ!?」

「あ、図星だったんですね……すみません……」

 

素でこういう事を言ってくるのは心臓に悪い。

何も考えず、一途に心配してくれるだけの良い子なのか?

 

「ちょっと心配でね。夏凜がちゃんと時間通りに来るかどうか」

「他のメンバーが揃ってるだけに、なおさらですね」

「しっかりしてそうだし、時間までには来るような気がするのだけれど……」

 

東郷は気を紛らそうとしてくれたのか。

しかしその言葉をよそに、時間の5分前になっても彼女は現れない。

何度かメッセージを送ったが既読も付かない。

 

「お姉ちゃん……これって……」

「んー……待ってくれてる子たちには悪いけど、今日はやめにした方がいいかしら」

 

とそこへ、幼稚園の園舎から先生が1人出て来た。

 

「皆さん、今日はありがとうございます!よろしくお願いします!」

「あ、その事なんですけd」

「もう皆、楽しみで待ちきれないみたいで。今か今かとキリンの首で待ってるんですよ」

「そうですか、ありがとうございます!もうちょっとだけ準備したら始めますね」

「はい。お願いします!」

 

まずい。

これはひょっとして、ひょっとしなくても最悪のパターンだ。

 

「ねぇ、友奈」

「はい?何ですか?」

「もう1回だけ、夏凜に電話してみてくれる?」

「分かりました!」

 

心配の色が混じった真剣な表情で電話を呼び出す友奈を祈るような気持ちで見つめる。

この電話が繋がりさえすれば、まだ救いはある。

5分10分くらいなら、何とか理由を付けて待ってもらえない事も無い。

 

「風先輩」

 

困ったような顔で、ただ私の名前だけをポツリを呟いた友奈。

祈りは届かなかった。

 

「こうなったらしょうがない、夏凜抜きでやるわ。樹と東郷はサポートお願い」

「うん」

「任務了解です」

「友奈、ありがと。いける?」

「はい、大丈夫です!」

 

友奈も東郷も樹も、皆顔のどこかに不安が表れている。

やっぱり心配は心配なのだ。

 

「でも頑張らなきゃ。だって、勇者ですから!」

「そうね。じゃあ、始めるわよ!」

 

 

 

 

 

* * * * * *

 

 

 

 

 

「という訳で、上がらせてもらうわよ〜」

「おっじゃまっしまーす!」

「ちょっ、勝手に靴を脱ぐなぁっ!」

 

だが多勢に無勢、1人が5人を止める事などできない。

 

「夏凜ちゃんこんなの使ってるの?」

「ああああ触るなああああ!!」

「荷物その辺に置いといて。軽ーくおかず作るし」

「人んちのキッチン使う気でいるんじゃなあああい!!」

「あーいいからいいから。家主様はゆっくりしてなさい」

「いや、厳密には私は家主じゃないんだけど……ってそういう問題じゃないわよ!」

「夏凜さんのお家ってダンボール箱ばっかりですね。何が入ってるんですか?」

「何でもいいじゃない」

「じゃあ、開けてみてもいいですか?」

「何でそういう発想になるのよ!」

 

あー……大変だ。

勇者部って暴走するととんでもない事になるのね。

三好さんは正直好かないけど、こればっかりは同情するかも。

今のところ、まともなのは東郷さんくらいか。

 

「車イスじゃ中まで入りにくかったから、変身して入ってきたわ」

「「は?」」

「さっすが東郷さん!あったまいい!」

「「違う、そうじゃなああああい!!」」

 

やっぱダメだわこの人たち。

さっきだって、許可を得られずとも押し入ってサプライズを強行する作戦はまずいんじゃないかって言ったのに、誰1人として言う事を聞かなかった。

人を笑顔にする事に関しては手段を選ばない。

それがいい事なのか悪い事なのか……。

 

「帰って。全く、何なのよもう」

 

やってる事は不法侵入に近い。

警察でも呼ばれたらとんでもない。

殊に三好さんならやりかねない。

でもそれをしないあたり、悪い気はしていないのか。

 

「何って……はい!」

「えっ……何これ」

「夏凜ちゃん、」

「「「お誕生日おめでとう!」」」

 

……というのがやりたかったんだよね、勇者部員の皆様は。

いかに勇者部に憧れていたと言えど、これはちょっとどうなんだろう。

 

「な……何でアンタたちが私の誕生日知ってるわけ?」

「入部届。こないだバッチリ書いてくれたでしょ」

「あぁ、アレね。なら納得だわ」

「ほーら夏凜、言う事あるでしょ」

「は?」

「ん?」

「いやその……何て言うか。こういうの初めてだから……何て言ったらいいのか分かんないのよ」

 

へー、そういうところあるんだ。

顔真っ赤じゃん。

三好さんの事、ちょっとだけ見る目変わったかも。

 

「ありがとう」

「東郷……」

「日本古来より伝わる、感謝の言葉よ」

「あ……ありがと……」

 

ツンデレだと思えば、あの行動もこの言葉も意味が変わってくる。

 

「どういたしまして!」

「よーし、それじゃあ一同、朝まで飲み明かすわよー!!」

「お姉ちゃん、それ大人の人が言うセリフだよ……」

「ハァ……勝手にすれば」

 

あっ、照れましたね。

そうか、馬が合わないと思ったてたらそういう事だったんだ。

これは磨けば面白いタイプだ。

嫌いじゃない。

 

「ひょっとして勇者部って、変な人が集まる性質が……?」

「え〜、何だって〜?」

「わわっ、聞かれちゃいましたか。でも後ろから突然のご登場はびっくりするので、できればもう少しやんわりと……」

「ごめんごめん。先に聞いときたいんだけどさ、麗って明日時間ある?」

「明日ですか?勇者部の活動が無い限りは空いてますけど」

「そっか。実はちょっと2人で話がしたくて。昼からとかどう?」

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