花は散れども舞う風は   作:PP

5 / 27
第3話「機転」

多勢に無勢、という言葉をご存知だろうか?人数・勢力に差があるために、それらが少ない方は不利な状況に立たされ勝ち目が薄くなる、という意味である。そして大抵の場合、不利な方がそのまま負けてしまう。

 

今、京極風馬はまさしくその状況下にあった。

 

「お前の実力はそんなもんかー?風馬」

「そうだよ...俺の実力は...この程度だよっ...!」

「でも女子組の方が押してるんよ〜?ふまにゃんが女子に勝てないなんて思わないけどな〜」

「2対1で...勝てるわけ...無いだろ...」

 

行われているのは模擬戦。と言ってもただの模擬戦ではなく、《銀・園子vs風馬》の2対1の対戦カードである。薙刀を模した棒切れ1本で二刀流の銀を相手にしつつ、園子の槍をかわすなり蹴飛ばすなりしていた風馬は、序盤から防戦一方だった。そこに調子に乗った2人からの煽りが入るのだから、たまったものではない。

 

「いや…了承はしたけどさ…?もう少し…手加減ってものがあっても…いいんじゃないのか…?」

「ねぇミノさ〜ん、手加減ってどういう意味だっけ〜?」

「んーアタシはちょっとよく分からないかなー」

「お前ら…わざと…やってんなっ…!」

 

そもそも事の発端は、銀が「男女差があるなら、2対1とかで練習したらちょうどいいんじゃない」と口走った所にある。合同訓練で風馬が見せた余裕さを根拠に須美と園子も同調し、多数決でなし崩し的に実施が決まったのだ。風馬とて無抵抗ではなかったものの、3人の連帯の前に封殺される他は無かった。

 

「隙ありぃ!」

「おぁっ!?」

「っしゃあ!」

「はぁ…参りました。無理だ……」

 

一瞬の隙を突き、銀が風馬の武器を弾き飛ばす。丸腰となった上に体力の限界を迎えていた風馬は、座り込んで両手を挙げた。

 

「風馬君お疲れ様。はい」

「あ…ありがとう」

「大変だったわね」

「ホントだよ…今日はもう動きたくないわ。でもその顔を見る限り、お前も楽しんでたんじゃないのか?須美」

「えぇ。楽しく見させてもらってたわ」

「わっしー、私たちもちょうだ〜い」

「はいこれ。銀もそのっちもお疲れ様」

「ありがと。んーやっぱ強いな風馬」

「私もそう思うな〜。人数少ないのに10分も耐えてたし」

「いや、これは純粋に2人が強かった。それに片方が引いたらもう片方が突っ込んで来て、休む暇無かったし。これだけでもかなりいい連携ができてるんじゃ…ん?」

 

須美が3人にタオルと水を手渡し、感想交流会が始まった、その時。

 

「砂ぼこりが止まってますねー」

「風馬めっちゃ棒読みじゃん」

「さすがにこの状態でお役目はしんどいって……」

「もししんどかったら最初は休んでくれてていいんよ〜。私たちが頑張るから」

「それは悪い。俺もやるかぁ......」

 

風馬が重い腰を上げたのとほぼ同時に、辺りは樹海化の光に飲み込まれた。

 

 

 

 

 

 

* * * * * *

 

 

 

 

 

変身すると、さっきまでの疲労が嘘の様に体が軽い、と風馬君が言う。そのっちと銀も同じらしかった。

 

「疲れ吹っ飛んだわ。全然いけるぞ」

「この服、疲労回復の効果なんてものもあったんだね〜」

「高い値段で売れそう…イヒヒ」

「銀!神樹様に失礼でしょう」

「へへへ、冗談冗談」

「これなら今回も万全で行けそうだね〜」

 

そんな事を言いながら大橋に到着。

 

「また変な形をしたヤツが来たな」

「何だろうなあれ。両側に何かぶら下がってるし…子どものおもちゃ?」

「「「それはない(んよ〜)」」」

「ガーン!」

「とにかく銀、今回は突出しすぎないようにね」

「はいはいっ!分かってる!」

「よし、じゃあ今回も行きますか」

 

一番後ろに私、最前列に銀が陣取り、その間に風馬君とそのっちが入る。前と大体同じ形だ。違うのは、銀が特攻を仕掛けていないおかげで互いの距離が10メートル程しか離れていない点。

 

「まずは……」

 

青い光を放つ矢が3人の頭上を通り過ぎ、敵の中央をめがけて飛んで行く。だがその矢は途中で、目的地を敵の中央からおもりの部分に変えた。

 

「狙いが良くなかった......?もう1度!」

 

今度は敵の最上部を狙って射る。だがまたしても、途中で矢の軌道が変わってしまった。磁石でも付いているのだろうか。

 

「そんな…効かない……?」

「相性の問題だ。大丈夫、何とかなる」

「だったら、私たちのお仕事だね〜」

「よっし!ここは攻める!」

 

遠距離の相性が良くないと悟るや、前に出て仕掛けようと試みるそのっちと銀。焦った私のフォローに来てくれていた風馬君も前に出ようとした———その時。

 

「うおっ、危ねぇ!」

「わ、わわわ〜!」

「そのっち!!」

 

自分への攻撃を阻止するがごとく、天秤が回転し始めた。回って来た錘は2人とも間一髪かわせたものの、風圧でそのっちが吹き飛ばされてしまう。あの高さから落ちたらどうなるか…受け止めに行かなくては!

 

「わ〜〜〜!!」

「そのっち!」

 

怖くなかった、と言えば嘘になる。そのっちの落下の衝撃に耐えきれず、自分がどうにかなってしまうのではないかとも考えた。だが、そこは仲間。見捨てるという選択肢は無かった。そして受け止めた結果———。

 

意外と上手くできた。やはり勇者の力は侮れない。自分でも不思議なくらいだ。

 

「っ!そのっち、大丈夫?」

「大丈夫だよ〜、わっしー。ありがとう〜」

「どういたしまして。良かったわ」

「園子は大丈夫そうだな。しっかしあれ、どうやって倒すよ?」

「銀たちが近づけない今、私の矢がどうにかできればいいんだけど」

「ずっと回ってんな…竜巻みてぇだ」

「竜巻…ん!ぴっかーんと閃いた!竜巻って、真ん中だけ風が弱いでしょ?真ん中に入っちゃえばいいんよ〜」

「つまり上から行こうって事か。なるほど、天才」

「下から突き上げるのはナシ?」

「下、から?」

「大橋にちょこっとだけ穴を開けて、下に潜り込んじゃおうっていう……。え?いやあの冗談だって。ちょっと有利になる方法を、小さい脳ミソをフル回転させて考えただけだからさぁ。そんな目で見ないで。頼むよぉ」

 

大橋を壊すという銀の爆弾発言にはヒヤッとしたが、そんな事は無かったかの様に近接部隊3人が竜巻の真上に向かって跳躍する。そう言えば行く直前、風馬君が「試したい事がある」と言って私の矢を2本持って行った。何をする気なのだろうか。

 

(3人とも無事ならいいけど……)

 

爆発音とともに、上の方が青く光った。同時に天秤の回転が減速し始め、回り終わるコマの様に少しずつバランスが不安定になる。銀たちの攻撃で、左右バランスが均等でなくなっているのだろう。

 

(今回もこれで撃退できそうね)

 

やがて天秤は、破損部分を修復しながら橋の向こうへと撤退していった。3人の止まらぬ攻撃を受け続けたために失われたバランスが、座礁した船の様な後ろ姿を演出していた。

 

「おーい須美!戻ったぜ」

「お帰り銀、みんな」

「園子はお手柄だったな。おかげで上手くいった」

「私はただ思いついた事を言ってみただけなんよ〜」

「でもその思いつきが無かったら、もっと苦労していたと思うわ。ありがとう」

「須美もちゃんと貢献してくれたぞ。最初の爆発、須美の矢をぶっ刺した時のやつだし」

「え?」

「効いたんだよ。吸い寄せられるのなら、至近距離でちゃんと刺せばいけると思ってさ。だからあの時矢を借りたんだ。返せないけど」

「そうだったのね、ありがとう。何もできてないと思ってたけど、ちょっと気持ちが楽になったわ」

 

自分で直接ダメージを与えた訳ではなかったが、間接的に撃退に貢献できたという事実は救いだった。相性が悪いとは言え、最初の攻撃が通じずに心が折れかけたのをずっと引きずっていたから。

 

(風馬君がフォローしてくれなかったら、あのまま立ち尽くしてたかもしれないわね……)

 

「須美?どうかした?」

「あ、ちょっと考え事してただけよ、銀」

「そっか。どっか遠くを見つめてる様な感じがしたからどうしたのかなって」

 

銀も風馬君も、細かい所まで気を遣ってくれる。それは本当にありがたいし、同時に自分もそのくらい気を遣えるようにならなければという使命感を生む。私にとって2人は、ある意味憧れだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。