花は散れども舞う風は   作:PP

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ぼちぼち原作との差異が出てきます。


第4話「さざ波」

高台に、40代前半と思われる男が2人。1人は落ち着いた色調の和服に身を包み下駄を履いた、江戸時代からタイムスリップしてきたのかと錯覚する様な格好をしており、もう1人はジーンズにパーカーという比較的現代風の格好に眼鏡をかけている。待ち合わせ場所と思われるそこには和服の男が先に待っており、眼鏡の男はたった今到着した。

 

「ご無沙汰しております、宗徳むねのりサン」

「おぉ、こちらこそ。5年ぶりくらいかな」

「実は昨日お見かけしたんですが……」

「ぬ、気づけていなかったのはこちらの不覚。すまぬ」

「冗談ですぜ」

 

宗徳と呼ばれた和服の男が笑いながらずっこける。5年越しに冗談を言えるあたり、仲が良いのだろう。

 

「ハハハ、すみませんすみません。ところで話というのは?」

「イネス、というのを知ってるか?巨大ショッピングモール」

「知ってますよ。しょっちゅう行きます」

「それが今度、大型拡張工事を計画してるそうだ」

「え。あんなにデカいのにまだ大きくするってどんな神経してるんですか」

「ああいや、建物自体を大きくする訳じゃない。別館を立てて、スポーツ施設を作りたいんだと」

「ほんほん」

「という訳で京極の持っている土地の一部を譲ってくれないかと言われておるんだが、どう思う」

「譲りましょう。イネスに楯突く者は国賊ですよ」

「えぇ……。まあ元々譲るつもりではいたが、国賊とは」

「国賊です。あれを超えるアミューズメント施設が四国にありますか」

 

そう言われると否定はできない。他にアミューズメント施設が無い訳ではないが、売上・規模・客数などの数値上はイネスが不動のトップである。

 

「いやでもさっき『どんな神経してるんですか』って」

「これも四国の更なる発展のためです。不幸になる人がいない以上、進めない手は無いかと」

「うーん…まあまた前向きに検討すると言っておく」

「どうも。でも本題はこれじゃないですよね?」

「あぁ、風馬の事なんだが…妙な話を聞いてな」

「妙、ですか」

「乃木家のご令嬢曰く、戦闘中に人が変わったかの様に敵に向かって突っ込んで行く場面があったらしい。風馬自身も記憶が無い様に思われるとの事だ」

「なるほど。思われるってのは、直接聞いた訳ではないんですかね」

「直接は聞いていない。こちらから根掘り葉掘り聞くのは精神面的にあまり良くないだろう」

「それはそうですね……。して、その原因をウチの技術班で探ってほしいと?」

「お願い…できるか?」

「やってみます。そのためにいるような技術班ですから。ただし、情報が少ないので上手くいくかは分かりませんが」

「かたじけない。大赦は異常なしと結論づけたそうだが、どうにも胸騒ぎがする」

「大赦の調査は信用できませんからね。仮に真面目に調査したとしても発表しない連中ですし」

「ありがとう」

「Yeah. お任せあれ」

 

両者が別れて歩き出そうとした、その刹那。

 

「あぁ、忘れてた。もう1つだけ」

「はいはい?」

「近頃、大赦が勇者システムのアップデートに積極的に動いている。何でも、精霊を使った西暦時代の『切り札』をヒントに開発した強力な装備を作っているらしい」

「切り札…ですか。今度はマイナス要素が減じられていると信じたいですけど」

「あぁ…あれは記録を読むだけでも壮絶だからな」

 

西暦時代に、対バーテックスの必殺技として用いられたとされる「切り札」。勇者の体内に精霊を取り込む事により、一時的に神をもしのぐ力を得るというものだ。しかしその代償もまた小さくなく、使用者の心身に多大な負担を強いるという側面もあった。

 

「ウチで代わりの物が作れればいいんですけどね。残念ながらそこまでの設備は無いもんで」

「その気持ちだけで十分だ。ありがとう」

「いえいえ。今度会う時はゆっくり話しましょう」

「そうだな。わざわざ待ち合わせて話す内容がこれだけとは」

「機密情報ですし仕方ないです。街中で喋って万が一大赦に情報が漏れでもしたら、ウチはこれ以上動けなくなってしまいますから」

 

 

 

 

 

 

* * * * * *

 

 

 

 

 

次の襲撃はすぐだった。その間、わずか3日。

 

「アイツら、休みってものを知らねーのか?」

「来てるのが毎回違うから、それぞれからしてみれば休みをとって来てる、って事になるんじゃないかな〜」

「確かにまた違うのが来たわね……」

 

やって来たのは、焦げ茶色のコア部分に大根が4本くっついた様な形のバーテックス。中央下部には大砲の様な穴が空いている。

 

「高めに浮いてるし、今回こそは須美が適任じゃね?」

「かもしれないわね。でも今までの事もあるし、とどめはお願いしたいわ」

「了解」

「じゃあ先に前でスタンバイしとけばいいかな」

 

後ろから強烈な矢が放たれる。コア部分の中央付近に命中し、敵は下降して来た。前回とは違って効いているらしい。

 

「お!効いてる!」

「今回はわっしーだけでもいけるかも〜」

「だといいけどな」

「じゃあそろそろ前へ…あっ」

 

言うが早いか、大砲部分が光りだす。白とも黄色ともつかぬ光はどこか不気味だ。

 

「…散るよ!!」

 

一瞬光に見とれたが、園子の声で我に帰りその場を離れる。1秒も経たぬうちに、さっきまでいた所が光の照射を受けて爆発した。

 

(また園子のおかげで助かったな……)

 

「今だ!行くぞぉおおお!!」

「おう!」

「私も!」

 

光線をかわした勢いそのままに、銀・園子と共に3人で大きく跳躍。敵も負けじと上昇し、穴から小出しに光弾を撃ってくる。

 

「これ…めんどくせぇなっ!」

 

三者三様、思い思いに光弾を弾きつつ、上昇する敵に近付いていく。と言っても無傷ではいれず、3発は両肩と右足をかすってしまった。目視の限り、距離は残り5メートル程度といったところか。ここさえ耐えればまたラッシュに持ち込める。

 

「2人は穴を狙って!私は穴を狙うから」

「おーけい!頼むぞ園子!」

「行こう銀。捕まれっ!!」

 

敵まで後1メートル程の所で、4本ある大根の1つに右手で掴んだ薙刀を刺し、左手で銀を身体全体を使った遠心力を借りて上に投げ上げる。飛んできた勢いを全て投げるのに使ってしまったため、上がれるのはここまで。

 

(後は体勢を立て直して、上手く着地できさえすれば)

 

バーテックスの中央付近で爆発が起こる。園子が上手くやってくれたのだろうが、青い色も見える所を見ると須美も援護してくれているのだろう。銀がいると思われる上部も次々にスライスされていく。

 

(3人ともお強い事で。これ俺いらないんじゃね?)

 

そんな事を考えながら、ふと下に目をやるとすぐそこに神樹の根が迫っている。だが上のバーテックスとの距離はそこまで離れていない。

 

(やばっ…死ぬ!?)

 

生存を諦めかけたその時。急に身体にかかる重力が強くなり、ゆっくりと着地する。だが着地は背中からであり、どうして助かったのか理解ができない。考えを巡らせていると、最近やっと聞き慣れた声が聞こえてきた。

 

「風馬君…大丈夫?」

「す……み……?」

「はぁ、良かった。あまりにも無防備に落ちてきたものだから、何かおかしいと思って」

 

目の前にある顔は口から血が垂れているものの、不安でいっぱいという表情から安堵の表情へと変化した。

 

「助けて…くれたのか?」

「大切な仲間だもの。それにこの間銀を受け止められたから、もしかして風馬君もいけるかなって思って」

「ごめん。ありがとう。そっちこそ大丈夫か?」

「私は何も問題ないわ。大丈夫よ」

「おーい!終わったぞ」

 

銀の声に、立ち上がりながら樹海の壁の方を見やると、4つ足大根が大橋の向こう側に消えようとしている所が目に入った。大橋を挟んだこの距離でも頭部の傷が認識できるあたり、銀がかなり深く傷を入れたに違いない。

 

「わっしーお姫様抱っこしてたよね〜。遠くからじゃよく見えなかったし、もう1回やってよ〜」

「っ!?一瞬そういう姿勢になっただけだから……!」

「え?抱っこされてたの俺!?」

「ほらー本人もよく分かってなかったみたいだしさ。ここは1つ、状況の振り返りを」

「違う、違うのよあれは!」

「はいはい、言い訳は署で聞くんよ〜」

「あっ…お先に失礼しまーす…」

「ん〜?事情聴取には証人も参加するんよ〜?」

「それ警察と裁判所が混じってる!ってかそうじゃなくて」

 

その日学んだ事は、ネタに目覚めた園子から逃げ切るのは至難の技だという事だった。光弾がかすった事で精密検査の対象となったのは不幸中の幸いと言っていい。検査にまでついて来ようとする程の強い執念を園子が持っているとは思っていなかったが。

 

 

 

 

 

 

* * * * * *

 

 

 

 

 

「勇者システムの強化の目処はついたのですか?」

「ええ、大方。後1月もあれば完了するかと」

 

女性の冷ややかな声に、爽やかな男性の声が答えた。2人とも面を被っており、表情を窺い知る事はできない。

 

「そうですか…もう少し早くはなりませんか?」

「こちらとしてもこれが精一杯です。何卒ご容赦を」

「分かりました。ありがとうございます」

 

女性神官は自室に戻り、面を外す。神樹館小学校に勤務する女性教師「安芸」の顔が、そこにはあった。

 

「早いうちに強化ができれば……。あの子たちに命の危険を晒させてばかりでは、とても教師などとは」

 

独り言を呟きながらパソコンで大赦の報告書を開き、目を通す。それは、次に予定されている勇者システムのアップデートの詳細を記したものであった。「近々アップデートがある」とだけ聞いていた彼女は、今初めて詳細を知るのである。

 

「何なのこれ。あの子たちは使い捨ての駒としか思われていないというの?」

 

勇者たちの保護者にアップデート内容を伝えるのは彼女の役目だ。だが当の彼女は納得できないといった様子でパソコンを閉じ、考え込んでいる。

 

「どうしたものかしら」

 

答えが出ないまま、時間だけが過ぎていった。

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