花は散れども舞う風は   作:PP

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大満開の章のPV見ました。もう頼むから平和にしてくれ...(懇願)
平和の皮を被った鬱展開が1番危険ですし。

後、前回名前を明かした風馬の幼馴染ですが、ルビ振りを忘れてました。かがみ光安みつやすくんです。


第6話「レベルアップ」

「乃木さん、あなたにリーダーを任せても良いかしら」

「え…私ですか?」

「えぇ...便宜上だけれど」

 

降りしきる雨の中を疾走する1台の黒い車。その中で伝えられたのは、園子を4人の勇者のリーダーとするという内容だった。

 

「おぉーいいんじゃね?園子のひらめきに助けてもらった事あったし」

「な。発想力は4人の中じゃピカイチだし」

 

驚きつつも、人選に納得する者。

 

「……」

 

自分こそがリーダーだとの自負をへし折られ、ショックを受ける者。

反応はそれぞれである。

 

「鷲尾さんもそれで良いかしら」

「え…あぁはい…大丈夫です」

 

自身のショックを悟られまいと精一杯普段通りの返事をしたつもりの須美。だが、その一言で車内のメンバーは彼女の心持ちを察していた。

 

「でも、お役目の間ずっと戦術を考え続けるのはしんどいから、そこはわっしーに助けてほしいな〜」

「そのっち……」

「いざという時には良いアイデアが出せるように頑張る。戦い方はわっしーの方が沢山知ってると思うから、知恵を貸してほしいんだ〜」

 

園子の言葉に、須美の思い詰めた表情が少し和らいだ。

 

「まあ、実際の作戦は相手が分からない事には考えようが無いしな。閃き担当の園子とじっくり担当の須美にブレーンは任せて、俺たちは敵さんの能力を少しでも引き出しますわ」

「風馬さんや、そんな事言って自分だけ特攻しようなんて考えるなよ?人の事を言えた義理じゃないけどさ」

「分かってる。何事もバランス、だよな」

 

そうして彼らは、今日も訓練場へと向かった。

 

 

 

 

 

* * * * * *

 

 

 

 

 

「いやーこの日をどれ程待ち望んだ事か!」

「銀ははしゃぎすぎよ」

「そう言う須美さんも楽しみな顔してるぞ〜?ほれほれ」

 

そう言いながら後ろに回り込んだ彼女は、頰を包み込むように両手を伸ばす。こうしてほおを触られる事にも随分慣れた。最初期こそ抵抗があったが、今では恥ずかしく思いながらも半ば心地良く感じている自分がいる。

 

「にしても、須美って随分丸くなったよなー。最初は絵に描いたようなカタブツだったのに」

「カタブツだなんて、失礼しちゃうわ。でも…丸くなった実感はあるかも」

「おはよ〜」

「おぁっ!?...って何だ園子かびっくりした……おはよ」

「おはよう、そのっち」

 

須美の後ろに陣取っていた銀に対して、園子が後ろから抱きついていた。

 

「何かこんな体勢でやる競技無かった?ナントカ競争ってやつ」

「う〜ん何だろう〜。ムカデ競争〜?」

「う、その名前は聞きたくないわ……」

「ん、競争はお気に召さない?」

「いや、ムカデとか虫全般が苦手なのよ」

「そうだったのか。まあイメージ通りと言えばイメージ通りだけど」

 

 

 

 

遠足の目的地は学校から少し離れた街にある。予め各々が自由に計画した行程に沿って進行するため、バスを降りればある意味自由行動である。

 

「じゃあまずは、ミノさんご所望のアスレチックだね〜」

「目指すはただ一つ、全制覇。そのためにアタシは今日、ここにいるっ!」

「おぉ〜流石発案者、気合十分だね〜」

「負けないわよ、銀」

「須美も気合い入ってんな。よし、勝負だ!」

 

言うが早いか、銀が駆け出す。やる気満々の須美も追う。園子は少し出遅れてしまった。

 

「え?ちょっと待って〜!」

 

軽々とコースを走破していく3人の姿は、周囲の視線を集めっぱなしだった。何せ普段から訓練に実戦に身体をフル活用しているのだ。いかに小学生と言えどレベルが違う。

 

「おおお揺れる揺れる〜!お願い2人とも待ってここだけは〜!」

 

園子は揺れる丸太の橋に苦戦していたが。

 

「大丈夫だって。自分を信じろ!」

「ここだけは待つわ。頑張ってそのっち」

「う…え…えーい!」

 

2人が待ってくれた甲斐もあり難関を突破した彼女は、その後も3人でコースを駆け抜け、結果的に全てのコースをクリアしてしまったのだった。

 

「有言実行ね、銀」

「まあ、三ノ輪銀様の手にかかればこんなもんよ」

「揺れる丸太の所は死ぬかと思ったよ〜」

「あそこはよく頑張ったな。偉い偉い」

 

よしよし、と園子の頭を撫でる銀。

 

「ん」

「須美?あぁそういう事ね。よしよし」

 

須美が私も、と言わんばかりに頭を押し付ける。両手で2人の頭を撫でる様子は子守さながらである。

 

「ミノさん上手だよね〜なでなでするの」

 

その光景を遠目に見つめる男子集団4名。

 

「おい風馬、お前はあそこに混ざらなくて良いのか?」

「いつもいつも一緒にいる訳じゃないし、別に良いよ。クラスも違うしさ。それにこういう時くらい、お役目から離れても良いだろ?」

「あ、そうだよな…ごめん」

「あぁいや、そんなに気にしてないし大丈夫」

「なら良かったけど」

「うん。そっちは気にならないんだけど、あのアスレチックは気になるんだよな」

「ん、そうなのか。なあ班長、時間あるか?」

「余裕である。どうする、行くか?」

「風馬さんや、気になるなら行きませんかえ?何が気になってるのかは知りませんけども」

「うるせぇ、俺が気になってるのはあくまでアスレチック。後その喋り方、誰の真似だよ」

「お先お先ー、置いてくぜー?」

「ああっちょお前、待ちやがれ!」

 

そうしてアスレチックに突撃していった小6男児たちであったが、完走できたのはグループ4人のうち風馬1人だけだった。

 

「お前おかしいって。スタミナ足らんわ」

「いやほんとそれ。見た目以上にしんどいわこれ」

「伊達に訓練やってないしな」

「あの子ら、これをあのスピードでクリアしてたんか…異次元だよもう」

「おい班長、そんな所で這いつくばってて時間大丈夫か?」

「これは無理だって。少し休ませて……」

「はぁ…しょうがない、少し休憩するか」

 

 

 

 

その頃須美・銀・園子の3人は、商工奨励館に来ていた。ここではガラス細工と陶器作りを体験できるのだが、園子の希望で一行は後者に挑戦する事にした。

 

「須美の、何だよそれ。クオリティ高っ」

「そうだよね〜。わっしー上手〜」

「そういうそのっちも、何だかこう…芸術的なモノができている気がするのだけれど」

「こういうの何て言うんだっけ……きゅうりずむ?」

「それを言うならキュビスムじゃないかしら」

「しっかし一体何を考えればあんなのができるんだか」

「本当ね。1度そのっちの頭の中を覗いてみたいものだわ」

「ん〜?私は何も考えてないよ〜?」

 

そう言い張る園子だが、出来栄えは段違いだ。彼女の作品は奨励館のスタッフが寄贈を検討してほしい、と言う程によく出来ていた。ただただ感じるままにやればいいんよ、と口にする園子の思考を理解するのは、2人にとって至難の業であった。

 

 

 

 

 

* * * * * *

 

 

 

 

 

帰りのバスに乗って神樹館へ帰ってくるまで、バーテックスの襲来は無かった。

 

「あー楽しかった!」

「わっしーは遠足でも平常運転だったね〜。庭園見に行きたがるところとか〜」

「でもテンションはいつもより高めだったぞ?あんなにはしゃぐ須美は初めて見たかも」

 

振り返れば自分でもそう思う。アスレチックでは何もかも忘れて無我夢中で遊んだし、陶芸体験の時はものづくりの過程で自分の世界に浸っていた。庭園でも、魅力を伝えようと普段以上に雄弁になっていたように感じる。

 

「普段は真面目だけど、はしゃぐ時ははしゃぐ。アタシは須美のそういう所、好きだな」

「えっ?そう……ありがと」

「照れ屋さんだなぁ須美は。よしよし」

「……??」

 

昼と同じ様に銀に撫でられていたはずなのに、なぜか違和感を感じる。こういう時は大抵……。

 

「ん、風が止まった……?」

「これは、来ちゃったね〜」

「お楽しみの後はお役目ってか。向こうも抜かりないねぇ」

「しょうがないわ。隊長さん、号令をお願い」

「あーそっか、園子がリーダーだもんな。頼んだぜ」

「よ、よーし、行くよ!わっしー、ミノさん!」

 

彼女の初めての号令と共に、辺りは光に包まれた。光が収まると、樹海と大橋という見慣れたセットが視界に現れる。

 

「この光景にもずいぶん慣れたな。もう何回目だよって感じ」

「銀、そういう慣れ始めの時期が1番危ないのよ」

「分かってるよ、命は大事にしますって。でも、その命が1つ足りない気がするのはアタシだけ?」

「風馬君、見当たらないわね。初回みたいに遅刻して来るのかしら」

「え〜。リーダーとしてお説教しないと〜」

 

彼の位置を知るべく、連絡を取ろうとするが。

 

「圏外……」

「ひょっとして、まだ帰りのバスの中だった。だからこの近くにはいない、とか?」

「私たちはだいぶ前に着いてたのに〜?」

「渋滞とか赤信号の関係で、バス同士の間隔が空いてしまったのかも」

「なるほど〜」

「園子、どうする?先に行くか、待つか」

「先に行こう。あれを見てほしいんだ〜」

 

目つきを変えたそのっちの指差す先を見ると、2体の敵が侵攻してくるのが見えた。3対の板を身に纏う赤みを帯びた個体と、不気味な液体の入った壺を抱えた個体。

 

「向こうは待ってくれないし、それに......」

「げっ、増えてる!?敵さんもレベルアップしたって事か」

「レベルアップ……」

 

その言葉の意味するところは、これまで同様にはいかないという事。緊張で体に力が入る。

 

「大丈夫、きっと何とかなる。アタシらは1人じゃない」

「そうだよ、わっしー。リラックス〜」

 

2人が肩を揺すってくれる。きっと2人も怖いに違いないのに、気を遣ってこうしてくれるのだろう。自分だけが立ち止まっている訳にはいかない。行こう。

 

「ありがとう、ちょっと楽になったわ。さて…行きましょうか」

「うん!いっくよ〜!」

 

舞い散る花びらと共に現れる勇者服に包まれ、戦いの地へと赴く。

 

「今回は2体か。歓迎されてんなー」

「こちらとしてはむしろ帰ってほしいのだけれど」

「でも結界の外からわざわざ来てくれたお客様だからね〜。丁重におもてなししなくちゃ。私とミノさんで片方ずつ相手するから、わっしーは援護お願い〜!」

 

そう言い残しつつ敵に向かっていくそのっち。銀もすぐさまもう一方の所へ向かう。

 

(まずは交互に攻撃しつつ、どちらかが押されたらそちらに注力する!)

 

敵との距離を詰めながら、状況を確認する。毒のありそうな尻尾を相手するそのっちも、巨大バサミを相手する銀も、今の所は互角以上だ。2人とも攻撃を上手く流しつつ、確実にダメージを与えている。初動は悪くない。

 

(いける!これなら……)

 

これなら勝てる、と一瞬確信してしまった。

 

「上だあぁぁ!!避けろおおぉぉぉぉ!!!」

「!?」

「はわわ〜無理〜!」

 

とっさにそのっちが開いた槍の傘の中に入る。天から雨の様に降り注ぐそれは矢の様に見えた。神樹の根に刺さるものも数多あり、燃え広がる様に傷をつけている。

 

(銀は無事なの?)

 

そう思った瞬間、今度は黄色とも緑ともつかない球体の連なりが眼前に現れ、気づけば体が宙に浮いていた。そして次第に感じる重力。最後には地面に叩きつけられる。

 

(そのっち!!)

 

体は動かない。声を出そうとするも、声の代わりに出たものは赤い液体だった。鉄の香りが鼻と口を覆う。

 

「んっ、動けるのはアタシだけか。ならここは……!」

 

銀が私を片腕で抱え、バーテックスとは逆の方向に跳躍する。両腕でないという事は、もう片方にいるのはそのっちなのだろう。

 

「ここならまだ安全かな。保証はできないけど」

「ぎ……ん……」

「大丈夫、一旦ここで休んでて」

 

神樹の根の下の方に寝かされて、かろうじて少し声が出た。すぐ戻ってくるから、と言う銀は私たちの手を一瞬強く握り、一言告げる。

 

「またね」

 

そうして再び戦場へと戻っていった彼女。視界に映る赤い点が小さくなるにつれて、私の意識も遠のいていった。

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