ウマ娘短編集   作:カランコエ(Kalanchoe)

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《ラブコメ》
今回は睡眠○ですわ
一心同体なんで
何をどうしても
可愛いに決まってますわ
可愛いすぎて
手が止まりませんわ
パクパクですわ

一ヶ月も期間を空けるのもなんだかなぁと思ったので速書き練習も兼ねて一本
だいたい二日で書いた
書いてる途中のやつも仕上がり次第上げます


メインストーリー第1章の眠らせてくるやつ

トレーニングも終わり、シャワーも浴び終わって、夕陽が陰っていく中、コンコンコンコンとトレーナー室の扉にノックを四回。

 

トレーナーさんからは『別にノックなんてしなくてもいいよ』なんて言われていますが、淑女として、メジロ家のウマ娘として、そして彼の愛バとして礼節を欠く訳には参りません。

 

「はいはーい?」

「メジロマックイーンですわ」

「マックイーン?鍵は開いてるから、とりあえず入って」

「わかりました。失礼します」

 

お決まりになっているやり取りを終えてから、少し立て付けが悪くて動きの重い扉に力を込め、音を立てて開ける。

 

まったく……この扉も『その内直す』なんて言ってたのに、一向に直す気配がありませんわ。

そろそろ業者の方を勝手に呼んでしまおうかしら?

 

「それで?今日はミーティングはなかったはずだけど、何か俺に用かい?」

 

山積みの紙の資料の中からスケジュール帳を引っ張り出して確認しながら、(いぶか)しげな声音でトレーナーさんが尋ねる。

 

「ええ。先程メジロのお屋敷から紅茶が届きましたので、トレーナーさんも一緒にいかがですか?」

「紅茶か。いいね。ちょうど一息入れようと思ってたんだ」

 

穏やかな口調で(わたくし)に同意しながらも、トレーナーさんは手元にあった資料に(せわ)しなく付箋を貼り、走り書きを添えている。

 

一体なにが『ちょうど』なのでしょうか?

 

「……ごめん。マックイーン。ちょっと時間かかりそうだから、先に紅茶を淹れててもらってもいいかな?」

 

資料を片付け始めて一分と経たずに、資料の山の上から数枚だけを片付けたトレーナーさんが困り顔でそう言う。

 

確かに、このペースでこの紙の山全てを片付けるとなると相当時間がかかりそうですわね。

 

「わかりましたわ。美味しいお茶とお菓子を用意して待ってますわ」

「ありがとう。すぐ終わらせるから待ってて」

 

柔らかく微笑んで、再びトレーナーさんはデスクの上の紙に視線を落とす。

それを見届けてから、トレーナー室備え付けの小さなキッチンに向かう。

 

戸棚から茶器を取り出し、ティーポットにお茶の葉をスプーンですくって二杯ほど入れ、電気ケトルから勢いよくお湯を注ぐ。

ティーポットの蓋を閉じ、ティーカップ2つにもお湯を注いでカップを温め、お湯を捨てる。

 

冷えた牛乳を冷蔵庫から取り出してピッチャーに注ぎ、ティーカップ2つとティーポット、ティーストレーナーにシュガーポット、お皿にクッキーやフィナンシェなどを盛り付け、それら全てをトレイに載せてトレーナーさんの方へと戻る。

 

「おかえり。良い香りだね」

 

キッチンから戻って来て最初に目に入ったのは想い人の笑顔でした。

 

「あら、お仕事はもうよいのですか?」

「後にするよ。ちょっと休憩したいし、なによりマックイーンとお茶したいからね」

「後悔しても知りませんわよ?」

 

トレイをミーティング用の机の真ん中に置き、トレーナーさんの対面へと座る。

 

「今日の紅茶の種類はなんだい?」

「ディンブラですわ。ミルクティーでも美味しいので、ミルクとお砂糖はご自由にどうぞ」

 

他愛のない雑談を楽しみ、蒸らしも終わったのでカップに紅茶を注ぐ。

 

「ありがとう。香りも色もいいね」

「こちらこそ、いつもありがとうございます。ささやかですが、そのお返しですわ」

 

少し照れくさそうに笑うトレーナーさんに見惚れながら、何気ない仕草でポケットから折り畳んだ紙の包みを取り出し、中身をカップの1つに注ぐ。

 

……トレーナーさん、あなたが悪いんですからね…?

私にこのような強硬手段を取らせるなんて……

 

サーッ…

 

「あのさぁ……」

 

呆れを多分に含んだトレーナーさんの声がトレーナー室に響く。

 

「そういうことは俺の見えないところでやるもんじゃないのか…?」

「あら、砂糖を少し入れただけですわよ?」

 

何食わぬ顔を返して、そのティーカップをトレーナーさんの前に差し出す。

 

「……あのな、マックイーン、市販の睡眠薬には青色の着色料が含まれてるんだ」

「あら、そうなのですか?」

「ああ。だから、この紅茶はさっきまでの赤色から暗い紫色になってるんだよ」

 

入れるタイミングがなかったので強行しましたが、やはりバレてしまいました。

さて、どう弁明しましょうか……

 

「はぁ……」とため息を吐いたトレーナーさんは、そのままティーカップを手に持ちグイッと紫色の紅茶を(あお)った。

 

「えっ!?トレーナーさん、何を!?」

 

ゴクリと喉を鳴らしたトレーナーさんがカップを置き、こちらをジットリとした視線で見据える。

 

「俺の知ってるマックイーンは悪いことをするために薬を盛るようなウマ娘じゃないし、理由もなく薬を盛るようなウマ娘でもない」

 

そこで一旦言葉を切ったトレーナーさんはフワリと笑って、

 

「それに何よりも、俺とマックイーンは"一心同体"だから。俺はマックイーンのことを心から信頼してる」

 

そう言い切った。

 

「トレーナーさん……」

「……ごめん。お茶の最中だけど、ちょっと眠くなってきた。ここで横にならせてもらうね……」

 

のそのそと(にぶ)い動きでトレーナーさんはソファに横になり、それほど間を置かずに穏やかな寝息を立て始めてしまった。

 

「まったく……この人ときたら……」

 

思わず漏れた声に自分で驚き、慌てて口を手で押さえる。

 

音を立てないようにゆっくりと立ち上がってトレーナーさんの側まで移動し、そっとトレーナーさんの頭を持ち上げて、その下に両足を滑りこませる。

 

「今日持ってきた睡眠薬は遅効性のものですよ?

 それなのに、すぐに寝てしまうほどに(こん)を詰めているだなんて、ご自分でもオーバーワークだと思いませんか?」

 

起こさないように小声で(ささや)き、化粧でも隠しきれていない目の下のクマを指先で撫でる。

 

「もうすぐ私の三連覇がかかった春の天皇賞ですが、そんなに自分のことを追い詰めないでくださいまし。

 あなたと私は"一心同体"なのですから。喜びも苦しみも、不安も楽しみも、二人で分かち合いましょう?」

 

当然返答はありませんが、すうすうという安らかな息の音を返事としておきましょう。

 

すうすうと安心しきった寝息と、さらさらと髪を撫でる音だけがトレーナー室に響いた。

 

 

 


 

 

 

───それにしても……

 

体を曲げ、膝の上のトレーナーさんの顔を覗きこむ。

 

───この安心しきった寝顔!可愛らし過ぎて、辛抱堪りませんわ!

 

ムラムラとした激情がお腹の奥の方から湧いてくる。

 

が、頭は至って冷静だ。

 

………いえ、寝込みを襲うのはダメですわ。メジロマックイーン。私は淑女であり、メジロ家のウマ娘であり、そして彼の愛バなのです。寝込みを襲うような(やから)は自分の欲も制御できないケダモノでしかありませんわ。

 

───でも『俺とマックイーンは"一心同体"だから』なんて言って、自分から睡眠薬を飲むなんて、実質合意ではありませんか!そういう趣味がおありなら受け容れるのが妻としての私の務めですわ!

 

そこまで考えが暴走してしまってから、ペチっと軽く頬を叩いて自分を(いまし)める。

 

………ここは神聖なる(まな)()トレセン学園の中です。それに誰かがここを訪ねるやもしれません。そんな場所で(よこしま)な行為に及ぶなど言語道断ですわ。

 

───つまり、メジロのお屋敷に連れ込めば全て解決なのでは?

 

………メジロのお屋敷なら最高級品の寝具もありますし、そちらの方がトレーナーさんも癒されるでしょう。

 

───もちろん人払いは必要ですわね。私以外にトレーナーさんの身体を好きにはさせませんわ。

 

………本番は当然ダメだとしても練習。そう、本番の前の練習なら許されるのではないでしょうか。予習は大事ですし、お情けを少し頂くくらいなら問題ないでしょう。

 

決心が付いたところで、そっとトレーナーさんの頭を退かして立ち上がり、優しくソファの上に寝かせ、音を立てないようにトレーナー室を出て、スマホを取り出す。

 

「メジロマックイーンですわ。至急トレセン学園の前に車を回してもらってもよろしくて?」

 

 

 


 

 

 

あら、テイオー、どうしたのですか?

わざわざ私のトレーナー室の前まで来るなんて。

 

確かに、前々からこのトレーナー室の扉はガタガタとうるさいと私も思っていました。

これを機に直しておきましょう。

 

……トレーナーさんですか?

見ての通り、睡眠薬で眠ってしまったので、これからメジロのお屋敷で介抱するつもりです。

 

……待ってください、テイオー。

物理的に引かないでくださいまし。

せめて弁明させてください。

 

……ありがとうございます。

 

まず最近私のトレーナーさんは働き詰めでした。

あなたも知っての通り、私の三連覇がかかった春の天皇賞が近付いているからです。

 

何度も休んで欲しいとお願いしたのですが『その内休む』などと毎回口では仰るのですが、一向に休んでくれなかったのです。

 

そこで一服盛ろうと考えた訳です。

結果的にはトレーナーさんの目の前で薬を盛ることになり、薬が入っていることを知っているにも関わらず彼は睡眠薬を飲んだのですが。

 

……いえ、彼の家ではなくメジロのお屋敷に行きます。

メジロのお屋敷の方が設備が整っていますし、最高級の寝具があります。

何より防音防犯は完璧ですから、私がトレーナーさんにすることは誰にもバレ……

 

……待ってください、テイオー。

スマホを取り出さないでくださいまし。

 

合意の上!合意の上ですから!

例え眠っていても何も問題はないのです!

電話!?電話だけはやめてくださいまし!

 

 

 

*この後テイオーとテイオーのトレーナー同伴のもと、マックイーンのトレーナーは無事に自宅へと届けられました。

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