ウマ娘短編集   作:カランコエ(Kalanchoe)

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《ラブコメ》
エルエルと朝に二人ベッドの中、何も起きないはずがなく……

私の専攻はドイツ語なので、色々とおかしいかもしれません
ロシア語部分はクドリャフカに頼りました


〈エルコンドルパサー〉
エルエルとラブラブするだけ


目を覚ますと、心地よい暖かさと、ほどよい重みを全身で感じた。胸の辺りに柔らかい弾力もある。

 

ゆっくりと目を開くと、予想通り、エルの素顔が目の前に会った。

 

ただ、彼女にあまり元気がない。

 

Buenos días(ブエナス ディアス)、トレーナーさん」

「おはよう、エル。朝からどうした?」

 

密着した地肌から熱が伝わっていて、欲望がムラムラと湧き上がってくるが、今はそんな雰囲気ではない。

 

左手で肩を抱き、右手で髪を()かすように、エルの頭を撫でる。いつもなら気持ち良さそうに目を細めるのだが、今日は少し沈んだ表情のまま、エルは顔を伏せた。

 

「……ちょっと、ホームシック、かな」

 

震える声音でエルはそう言う。

 

朝から敬語をやめて甘えてくる辺り、相当キテるらしい。

 

「昨日、グラスと電話してたからかな」

「うん…グラスから学園での話を聞いて…スペちゃん、セイちゃん、キング…みんなと会いたくなって…」

 

エルは途切れ途切れにそう呟く。今にも泣き出しそうだ。

 

率直に言うと、いつも元気溌剌(はつらつ)なエルが落ち込んでる姿はめっちゃ可愛い。だが、やっぱり好きな子には笑っていて欲しい。

 

「……帰るか?」

「……まだGⅠ一回しか走ってないのに、帰る訳ない…!」

 

ギュッと握り拳を作り、カッと瞳に炎が(とも)る。

 

予想通りの反応だ。エルならそう言うと思ったからこその提案だ。

もし『帰る』と言われていたら、何も言わずに帰り支度をしていただろうが。

 

「だろうな。なら、しょぼくれた顔してないで、いつもみたいに笑ってくれよ?な?」

 

こういう時は大人らしく余裕を持って、努めて明るく振る舞う。

まだ少し不安そうな彼女に、二の句を継ぐ。

 

「俺で良ければ、いつだって側に居るよ。これまでも、これからも」

 

まるでプロポーズみたいだな。冷静な自分がそう思う。どちらにせよ、エルが卒業したら結婚するんだから別にいいじゃん、と合理的な自分は結論付ける。

 

ほんのり頬を染め、オズオズとぎこちなく笑顔を浮かべる彼女は、まるで雲間から顔を出す太陽のようで、俺の愛バはいつどんな時でも可愛いな。そんな月並みなことを思った。

 

「そっちの方が万倍似合ってるぞ、mon amie(モナミ)

「えへへ…」

 

エルが溢れんばかりの笑顔になったところで、左手を動かし…目的を遂げる前に彼女に掴まれた。

 

「……今、エルのおっぱいを触ろうとしましたよね?」

 

ジトッとした目付きで睨まれる。超可愛い。

 

「目の前に触っていいおっぱいがあるんだぞ?揉むでしょ」

 

真面目な顔をして、真面目な口調で、不真面目な内容を告げる。

右手をエルの頭から離して、おっぱいを目指し、こちらも掴まれる。

 

エルの動きに合わせて、俺の胸の上で形を変えるおっぱいは、それはそれで、いとをかし。

 

「触っていいなんて、一言も言ってません!」

「じゃあ、触っちゃダメなのか…?」

 

エルがわざとらしく怒った顔をしているので、こちらもわざとらしく悲しげな顔をする。

 

返答に詰まったエルがキョトキョトと目を泳がせる。

 

「その…夜…二人きりで、なら…好きなだけ、いいデスよ…?」

 

恥ずかしげに目を逸らし、ボソボソとエルが言う。なんだこの可愛い生き物、天使か?今すぐ堕天させてやろうか?

 

Я люблю тебя(ヤー ルブリュー ティビャー).」

 

思わず口から出そうになった言葉を、咄嗟に、彼女の分からない言語に置き換える。

この照れ隠し自体何度もしてるから、俺が何を言ってるかエルは絶対分かっているだろうけど。

 

やはり分かっているようで、エルの頬にほんのり朱が差す。

逡巡していたようだが、意を決したように深呼吸して、エルが呟く。

 

「……Te amo(テ アモ).」

 

恥ずかしげに言いながら、エルは朱くなっていく。

負けじと、こちらからも返す。

 

我愛你(ウォー アイ ニー)

 

言う度に、言われる度に、俺の体温も、エルの体温も上がっていく。

お互いにジットリと汗ばみながらも、離れるという選択肢も、言わないという選択肢も、ここには存在しない。

 

Je t'aime(ジュ テーム).」

 

チュッとついばむようなキスを落とされ、抑えきれない想いが言葉になる。

 

「愛してる。エル」

 

ボンッと音を立てそうな勢いで、エルが紅くなる。くっそ可愛い。

 

「いきなりは反則だと思います…」

「ごめん。抑えきれなかった」

 

腕を押さえる力が緩まったので、ゆっくりと抜け出し、両手でエルを抱き締める。

エルは抵抗もせず、逆に抱き締め返してくる。

 

「I love you, El.」

「……I love you more.」

 

どちらからともなく、唇を重ねた。

 

 

 

 

 

「そろそろホームシックは大丈夫そうか?」

「はい。エルにはトレーナーさんが居ますから」

 

太陽のように眩しい笑顔で、そう言い切られる。可愛い。やっぱりエルには笑顔が似合う。

 

「じゃあ、最後におまじない」

「おまじない、デスか?」

 

一呼吸して、エルに告げる。

 

Ты не одна(君は一人じゃない).Всегда рядом(いつだってそばにいる).Жить без тебя(君無しで生きるなんて), Я не могу(俺にはできない).」

 

「……そういうのは、エルに分かる言葉でして欲しいんデスけど」

 

不満気に頬を膨らませてエルが言う。

 

……とっくに日本語で同じこと言ってるんだ。こっちの方が情熱的だけど。

 

「エルだって、俺にスペイン語で喋ったりするじゃん?それと一緒よ」

「つまり……そういうこと?」

「そういうこと」

 

わざわざ相手に分からないように、愛の言葉を告げるのは、どうしてなんだろうね?

 

なんだかおかしくなってくる。

エルも同じように感じたらしく、口の端がひきつっている。

 

「私達、似た者同士デスね」

「だな」

 

ほどなくして、お互いに(こら)えきれなくなり、エルはフフッと、俺はクツクツと笑う。

 

ひとしきり笑った後、エルがこちらに向かって微笑み、ポツリと呟く。

 

Quiero pasar todo este tiempo(キエロ パサー トド エステ ティエンポ).」

 

なんと返そうか、ほんの少し迷っていると、間の悪いことにグゥと腹の虫が鳴ってしまった。

 

二人して顔を合わせ、ほぼ同時にニッと笑う。

 

「エル、ずっとこのまま過ごしてもいいけど、とりあえず朝ごはんにでも行こうか」

 

言ってしまってから(ほぞ)を噛む。そんな内心はおくびにも出さず、笑った表情は崩さずに上体を起こす。

釣られてエルも体勢を変え、ベッドの上に二人で向き合うように座る。

 

「そうデスね。アタシも、なんだかお腹が空いて、き…て……」

 

ゆっくりとエルが目を見開き、こちらを凝視する。

 

あー…やっちまったな…

もう少し楽しみたかったんだがな…

 

「……トレーナーさん?もしかして…スペイン語、分かってる…?」

 

 

 

 

 

この後、ヘソを曲げたエルをなだめるのに、十回以上のキスと十数分を要した。

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