ウマ娘短編集   作:カランコエ(Kalanchoe)

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《ラブコメ》
Happy Birthday to me.
トレーナーの誕生日セリフを見て書きました


トレーナーにトレデジ本を所望されるデジたん

「好きなシチュは?」

 

「純愛イチャラブ」

 

「推しカプは?」

 

「俺×デジタル」

 

「ファッ!?」

 

ウマ耳と尻尾をピンと伸ばしたまま、器用に席から立ち上がる愛バを見ながら、内心でため息をつく。俺の推しはデジタルだって常日頃から言ってるから、こうなることは予測出来ただろうにのう、デジタル。

 

「なぁ、デジタルやめよう?俺の誕プレに新刊書くって言ってくれるのは嬉しいけど、絶対お互いに恥ずかしくなるだけだって」

「でも、あたし、ずっとトレーナーさんの誕生日プレゼントは、あたしの書いた本にしようと思ってて、他に何も考えてませんよ…?」

 

ゆっくりと席に戻ったデジタルが不安そうな声でそう答える。ヘニャっと曲がった耳と、今にも泣きそうな目からして、今日の俺の誕生日にプレゼントとして本気で新刊書くつもりだったらしい。事前に言ってくれれば代案を二人で考えれたんだがなぁ。

 

「新刊じゃなくても、デジタルがくれるものなら何でも嬉しいよ?」

「いやぁ、既製品はちょっと味気ないですし、だからって、あたしが出来ることって、これくらいしかありませんし…」

 

ドンドン語気が弱くなっていく一方で、詰まることなくスラスラと言葉は出てくるあたり、かなり考えた末に思い付いたのが"俺の推しの新刊"なのだろう。

だからって、本人の前で性癖暴露大会は俺にもデジタルにもダメージが大きすぎる。何が悲しくて想い人に好きなシチュとか語らなイカンのじゃ。

 

……ん?

 

その時、ふと閃いた!

 

「よし。二人で本を作りに行こう」

「……へ?」

 

 

 


 

 

 

「あ、あの、トレーナーさん…」

 

プルプルとデジタルが震えている。繋いでいるすべすべの手にはジットリと汗をかいており、彼女の緊張が手に取るように分かる。

 

唐突に半休と外出届を出して、デジタルに行方(ゆくえ)も告げずに、しばらく車に揺られて来たのがここ。そりゃあ、デジタルも緊張する。めっちゃ余裕ぶってるけど、俺も緊張してる。

 

「なんでテーマパークなんですか…?」

 

そうここは陽キャの聖地、リア充の溜まり場、千葉県の超有名大型テーマパーク。我ら陰の者には全く縁のない場所。だが…

 

「俺たち、恋人、でしょ?」

「そ、そそそそう、デス、ケド…」

「じゃあさ、二人の思い出のアルバムを、誕生日プレゼントにくれないか?」

 

相も変わらず、まーた雰囲気任せでガラにもなくクサいセリフが口をつく。ノリと勢いだけで突っ走るのが俺の悪い癖。後悔するとこまでが1セットだ。

 

「……あの、大丈夫ですか…?顔真っ赤ですよ…?」

「うるせぇ、めっちゃ恥ずいんだよ。こんなとこで駄弁(だべ)ってないで、さっさと行くぞ」

「あっ!?ちょっと!?そんなに引っ張らないでくださいよ!」

 

横目に見えるデジタルの桜色に染まった頬が、共感性羞恥によるものではないことを祈りながら、チケット売り場へと足早に歩いた。

 

 

 


 

 

 

「トレーナーさん!まずは、あそこに見えるジェットコースター行ってみませんか!?」

「いや…俺、絶叫系は苦手で…」

「じゃあ、こっちのアトラクション行ってみましょう!」

「……大丈夫?怖くないヤツ?それ?」

 

 

 

「ハワー…!!あっちにいる二人組のウマ娘ちゃん…!いつもは硬派で、レースでも私生活でもリードする側の()が、赤い顔でリードされてますよ…!!ギャップ系攻守逆転シチュ…!推せるッッッ!!!」

「ブレねぇなぁ……そういうとこも好きなんだけど。」

「……あの、不意打ちで『好き』とか言わないでくれません?」

 

 

 

「そういえば観覧車って無いんだな」

「そういえばそうですね」

「夕焼けの中、観覧車で告白…みたいな王道展開、一生に一度でいいからやってみたかったんだけどなぁ」

「『オールラウンダーになろう』って言われた時も思いましたけど、あなたって結構なロマンチストですよね」

 

 

 

「楽しかったですねぇ!」

「あぁ、久しぶりに楽しい誕生日だった!ありがとう!デジタル!」

 

夜のパレードまで楽しみ尽くした俺たちは帰路に着きながら感想戦を行っていた。車に揺られながら『あれが良かった』だの『これが綺麗だった』だのスマホのアルバムを片手に話を弾ませる。

 

「ところで、トレーナーさん、この後はどうするんですか?」

「この後?」

 

唐突なデジタルの質問に首をひねる。もう日も暮れているし、後はデジタルを送ってから帰るだけなのだが、何か予定でもあるのだろうか。

俺が結論を出すより先にデジタルが続ける。

 

「実は、ですね。外出届を出す時に、一緒に外泊届も出してきたんですよ。だから…その……トレーナーさんのおうちで、個人撮影会でも、やりませんか?」

 

熱を帯びた頬。期待に潤んだ瞳。幼い容姿に似合わぬ色香(いろか)に、俺は首を縦に振ることしか出来なかった。

 

 

 


 

 

 

「お客様!困ります!あーっ!困ります!お客様!お触りはダメです!というか、コスプレを脱がそうとしないでください!!」

 

「うるせえ!恥ずかしがるお前はなッ!サイコーに胸キュンなんだよッ!もうコスプレとかどうでもいいから大人しく脱がされろ!」

 

「脱がしながら撮らないでください!こんなことしてるのバレたら大問題なんですよ!写真は証拠残っちゃいますからダメです!」

 

「バレなきゃ問題じゃねえんだよ!それ以前に一線越えてる時点で大問題だろうが!」

 

「そんなに引っ張ったら服破けちゃいますよ!?純愛好き設定はどこいったんですか!?」

 

「両想いなんだから多少ムリヤリでもイチャラブ純愛に決まってんだろ!オラァ!尻こっち向けろ!四つん這いになるんだよ!」

 

「そうやって勢い任せに行動した後、毎回後悔してるの知って…って、どこ触って、あっ!ちょっ!やめっ…!ひゃん!」

 

 

 

 

 

翌朝、隣で幸せそうに眠るデジタルの顔を見ながら、滅茶苦茶後悔した。

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