ウマ娘短編集   作:カランコエ(Kalanchoe)

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《ラブコメ》
一口怪文書
私の中でのデジタルはこんな感じの娘


〈アグネスデジタル〉
無自覚にトレーナーを誘惑するデジたん


「ピンクは?」

 

「淫乱」

 

「栗毛は?」

 

「淫乱」

 

「デジタルは?」

 

「……ファッ!?」

 

トレーニング終わりのミーティングの時間。いつもなら担当ウマ娘のデジタルと推しのウマ娘の話をしている時分だが、今日という今日は如何(いか)に目の前のコイツがヤバいことをしているか自覚させようと思っている。

 

「トレーナーさん!?あたしはピンクで栗毛ですけど、淫乱じゃないです!」

 

ズズイッと距離を詰められ密着される。近い。熱い。それに汗の臭いの中に、ほのかに甘い芳香がして、思考がかき乱される。

 

「あのな、デジタル、自分がどんな格好で、何してるかわかってるか?」

 

ほんの少しデジタルと距離を取りながら、出来る限り優しく語りかける。

 

「格好?トレーニングの時から体操着ですけど?それに今はミーティングですよね?」

 

コイツ、本当に分かってないな…

 

「……なんでジャージの上を脱いで、俺の横に座るんだ?で、ミーティングなんだから、ここまで接近する必要あるか?」

「なんでって、暑いじゃないですか。横に座るのは、そっちの方が資料が読みやすいですし、近寄らないと読めないじゃないですか」

 

純真無垢な瞳で見詰められ、なんとも言えない気持ちになる。俺の気にしすぎか?それとも俺の頭の中が真っピンクなだけなのか?

……いや、気圧(けお)されるな俺。教育者としても男としても、ちゃんと言葉にしてコイツに伝えないといけない。

 

「……まず一つ目だ。透けてるぞ」

「すけてる?」

「……水色のが透けてるぞ」

「……!」

 

バッと音を立て、デジタルが俺から離れ、自分自身を抱きしめるように透けている部分を隠す。頬は真っ赤で、耳も尻尾とピンと伸びている。

 

今更ではあるが、しっかり後ろを向くと、気まずい沈黙の中、デジタルがジャージを着る衣擦れの音だけが聞こえてくる。

 

「大変お見苦しい物をお見せしました…」

 

心底申し訳なさそうな声音でそう告げられる。振り向くと、ピッチリとジャージを着直し、俺の横に座り直したデジタルの下げた頭と、萎れた耳、力なく垂れる尻尾が目に入った。

 

「いや、俺としては役得……いや、今のはセクハラ……いや、なんでもない」

 

フォローを入れようとして墓穴を掘る。こんなの何言ってもセクハラにしかならんのでは?

 

「……。」

「……。」

 

……口火の切り方が分からん。

 

「……あー、次になんだが…」

「はい…」

「さっきみたいに密着されると、好意があるように思われるぞ?」

「?あたしはトレーナーさんのこと好きですよ?」

 

一瞬、ドキリとするが、キョトンとした顔から俺の想像したような意味は含まれていないことを悟る。少し悲しいが、年の差を考えると俺なんて保護者みたいなもんだろうと強引に自分を納得させる。

 

「……あのな、普通はあれだけ近付いてきたら、異性として好意があると思われるぞ?」

 

自分でもビックリするぐらい気落ちした自分の声に驚く。そんなにガッカリすることじゃないだろ、俺。デジタルが俺のことを男として意識してないことなんて前々から分かってるだろ。

 

「いせい?イセイ……異性?!」

 

ビクッと肩を動かしたデジタルは、すぐに驚いた顔を崩し、困ったような笑顔になって、

 

「やだなぁ、トレーナーさん。こんなチンチクリンのあたしを異性として意識してくれる人なんていませんよ」

 

と普段と何ら変わらない声音で続けた。

 

『いるさっ ここにひとりな!!』と言いたい気持ちをグッとこらえる。この溢れんばかりの気持ちを伝えるなら、もっと相応(ふさわ)しい誠意のある台詞(セリフ)がいい。

 

「デジタル、少なくとも俺はお前のことを女性として意識してる。だから、もう少し控えてくれないか?」

 

……ん?今日一番の爆弾発言じゃないか…?

やべぇ、どんな顔でデジタルの顔見ればいいんだ…

 

そんな俺の葛藤をよそに微笑んだデジタルが告げる。

 

「あたしに気を遣って、そんなこと言わなくてもいいですよ。身長も胸もお尻も小さくて、コミュ障のあたしに女の子らしい要素なんて一欠片もありませんよ。あ、ちゃんと適切な距離は取りますから、そこはご安心ください」

 

悟りきったような顔のデジタルに苛立(いらだ)ちを覚える。どうしてコイツは他人の可愛さには敏感なのに、自分のこととなると最初から諦めてるんだ。

 

「デジタル、俺はお前のことが女性として好きだ。愛してると言ってもいい」

「だから、トレーナーさん、気を遣わなくてもいいんですよ!どうせあたしは年齢=彼氏いない歴のまま、魔法使いになる運命なんですから!」

 

少し眉を釣り上げながらも、どこか諦めた雰囲気をまとったデジタルがそう言う。

 

何を言ってもデジタルには伝わらないんだろうな。そう思った瞬間、俺の中で何かが切れた。

 

横に居るデジタルをお姫様抱っこする。

 

「ひょわあぁっ!?いきなりどうしたんですか!トレーナーさん!」

「俺がお前を女性として、愛していることを証明する」

 

掛かってしまっているかもしれません。冷静さを取り戻せるといいのですが。

そんな実況を頭の中に浮かべながら、トレーナー室内の仮眠用ベッドへと足を向ける。

 

「あ、あの!も、もしかして、"うまぴょい"ですか!?」

「Exactly(そのとおりでございます)」

「あ、あたしに乱暴する気ですか!?薄い本みたいに!薄い本みたいに!!」

「乱暴はしねぇよ」

 

ウマ娘とヒトの力量差ならいくらでも逃げれるのに、一度も抵抗されないままベッドにデジタルを横たえた。

 

「あ、あの、優しくお願いしますね…?」

 

そこまでが俺の理性の限界だった。

 

 

 


 

 

 

「やっちまった…」

 

冷静さが戻り、後悔と自責の念が込み上げてきて、頭を抱える。

 

落ち着きなく歩き回りながら、視線を動かすとベッドで眠るデジタルが幸せそうな顔で寝ており、たまたまデジタルの口が動く。

 

「……トレーナーさん、しゅき…」

 

……俺がどうなろうと、デジタルが幸せならOKかな。

半ば諦め気味にそう思った。

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