素直に甘えるセイウンスカイが可愛くて、油断してたら組み敷かれた…
タイトルがド直球だけど
猥褻は一切ない。いいね?
『スカイが素直に甘えてくるなんて、珍しい日もあるんだな。』と思った時点で警戒すべきだった。
気付いた時には両手を押さえられていて、あっという間に押し倒された。
ウマ娘に組み敷かれた時点で、ヒトが取れる抵抗手段はほとんど無い。
「…くっ…スカイ。…やめるんだ」
スカイの熱っぽい口内と、這い回る舌の感触に動揺して思考がまとまらない。
俺の言葉を聞いて、葦毛に覆われた耳がこちらを向くが、返答は無く、代わりに『じゅるじゅる』と湿った音が返ってくる。
こいつ、わざと音をたててるな。
「…汚いからやめろ」
スカイは、キッと、上目遣いにこちらを睨むと、『チュッ』とわざとらしく音をたてながら、口を離す。
スカイと俺の間に、透明な銀糸の橋がかかり、やがてプツリと切れる。
「…あのさぁ。毎日洗ってるんでしょ?」
「…当たり前だろ」
「じゃあ、汚くなんてないよ」
スカイがニコッと笑う。
「…ここじゃなくて、俺の家とかじゃダメか?」
「そう言って、逃げようとか考えてるんでしょ?今日は逃がさないよ」
そう言って、スカイは先程まで舐めていた唾液でテラテラと輝くモノを、再び口に含む。
「…ぐっ。…せめてトレーナー室でするのは、やめて欲しいんだが…」
スカイは、俺の言葉を無視して、長いストロークで『じゅぶじゅぶ』と淫靡な音を立てながら、恍惚とした表情を浮かべる。
その扇情的な光景と、スカイから伝わる熱の誘惑に、飛びそうになる理性を必死に留める。
そんな攻防を続けていたから、こちらに向かって走ってくるパタパタという音に扉が開くまで二人とも気付けなかった。
バタンと扉が開く音に驚いて、俺もスカイも思わず扉の方を見て固まる。
「セイちゃん!今日なんですけど、みんなで併走…しません…か…?」
勢い良く入って来たスペシャルウィークが固まる。
「どうしたんデスか?スペちゃん?突然固まったりして…ケ?!」
続いて入って来たエルコンドルパサーがマスク越しでもわかるほど真っ赤になる。
「あら、お邪魔でしたか?」
少し意地の悪い微笑みを湛えながらグラスワンダーが部屋に入ってくる。
最後に、呆れ顔のキングヘイローが入って来て、
「…スカイさん。どうして担当トレーナーにウマ乗りになって、トレーナーの指を咥えてらっしゃるの?」
と、当然の質問を投げかけてくる。
俺も聞きたい。
「えっとね…その…」
指から口を離したスカイは、言葉を探すように視線を泳がせる。
言葉に詰まるスカイは初めて見るかもしれない。
耳も尻尾も無茶苦茶な動きをしていて、かなり動揺していることが見て取れる。
「セイちゃん!トレーナーさんは食べちゃいけません!美味しくないですよ!」
「そうですね。食べてはいけませんよ」
スペシャルウィークが子供を叱るように、グラスワンダーが微笑みながら言う。
「…ところで、トレーナーさん。その左手は…」
「やめておきなさい。触れない方がいいわ」
エルコンドルパサーは俺の左手の行方を見ながら、キングヘイローはスカイの両手を見ながら言う。
右手はスカイの口元にあって、左手はスカイに掴まれて彼女のスカートの中に入っている。
色々当たっているが、努めて無視しているし、スカートの中に入れられてからは一切動かしていない。
「はぁ…とにかく、スカイさんは今日は併走出来そうにないし、早くトレーニングに行きましょう」
終始呆れ顔だったキングヘイローがスタスタと部屋を出ていく。
「そうですね。お邪魔したみたいですし、早くお暇致しましょう」
一方、最後まで笑顔を崩さなかったグラスワンダーは綺麗な一礼をして、優雅に退出する。
「ブエノ!そうと決まれば、コースまで競争デース!」
無理矢理いつもの調子に戻った、顔の赤いエルコンドルパサーが走っていく。
「セイちゃん。トレーナーさんは食べられませんからね」
最後まで少しズレたことを言いながら、心配そうな顔でスペシャルウィークが出ていく。
嵐が去った後には、火照った顔のスカイとなんとも言えない顔をした俺だけが残された。
「…トレーナーさん。ごめんなさい」
少しだけ冷えた頭で、最初に言おうと思ったのは、それだった。
「謝らなくていいよ。実害もなかった訳だし」
言外に『気にしてないよ』とトレーナーさんが告げている。
その優しさに何も言えなくなって、思わず両手を彼の背中に回し、彼の胸に顔を埋める。
鼻腔いっぱいに彼の匂いが広がり、安心感と興奮を覚え、下腹部が熱を持つ。
…今度は押し倒した時みたいにならないように気をしっかり保とう。
いつの間にか私の背中に回ってきた彼の腕の暖かさが心地好い。
そんな至福の時間を堪能していると、優しい声でトレーナーさんが尋ねてきた。
「どうして指を舐めようと思ったの?」
誤魔化そうかな。と思ったけど、今日の私は頭の回転が遅いらしく、何も思い付いかなかった。
だから、素直に打ち明けることにする。
「…最初はね。襲っちゃって、既成事実作っちゃおう。と思ってたんだけどね。そんなことして嫌われたくないなぁ。と思ってさ、でも、体は言うこと聞かなくて、気付いたら指を咥えてました」
指をえっちな感じで舐めてたら、彼の方から襲ってきてくれないかなぁ。とか
スカートの中に手を入れたら、触ってきてくれないかなぁ。とか思ってたのは、恥ずかしいから絶対に言わない。
「そうか」
色んな感情の籠った答えが返ってきた。
どんな意味が込められてるのかわからないけど、私の『好き』への返事かなぁ。と感じた。
だから、仕掛けるならここだと思った。
トレーナーさんの目を見つめる。
「トレーナーさん。私、トレーナーさんのことが好き。愛してる」
トレーナーさんの驚く顔が見える。
私が素直に告白したことに驚いてるんだろうなぁ。ちょっとだけ、ほくそ笑む。
「だから、トレーナーさん。私と「待った。スカイ。ステイ」
トレーナーさんが慌てた様子で割り込んでくる。
いつになく真剣な表情をしていて、ドキドキしてしまう。
「トレーナーと担当ウマ娘の関係として、その気持ちに応えることは出来ない。だから…」
予想していた通りの答えが返ってきた。
少しホッとする。
『トレーナーとして、応えられない』と言うことは、応えたい気持ちがあるということ。
つまり、両思いだ。
まだ、この恋のダービーは走れる。
続く言葉は『卒業まで待ってくれないか?』というのが月並みだろうか。
だから、『そんなに長い間待てないよ』って返して、強引にでも言質を取りにいこう。
そこまで考えていた。
だから、続く彼の言葉は、
あまりに予想外で、強力な一手だった。
「辞表、出してくるわ」
「………え?」
頭の中が真っ白になった。
興奮して、熱っぽかった顔から、一気に血の気が引く。
呆然としている間に、彼は私を優しく押し退け、立ち上がってしまう。
いつの間にか、彼の手には『辞表』と書かれた封筒が握られている。
「…なんで?」
言葉足らずの私の言葉を、しっかりと理解して、彼が返答する。
「トレーナーとして、越えてはいけない一線を越えるから。絶対スカイを俺のモノにする」
さっきまでの私だったら、舞い上がるほど喜ぶであろう台詞を貰うが、今の私には死刑宣告にしか聞こえなかった。
トレーナーさんは、
最初に出会った時、担当ウマ娘でもないのに、トレーナー室で眠る私に何も言わないで、毛布までかけてくれて、かなり強引にトレーナー契約を結んだのに、怒りもしなかった。
クラシック三冠の時、一緒に勝つために悩んでくれて、ちょくちょくサボる私の調子に合わせて、トレーニングを考えてくれた。
宝塚記念の後、心の折れた私をずっと励まして、絶対に立ち直るって信じてくれてた。
有マ記念の時だって…
走マ灯のように思い出が蘇り、消えていく。
あなたのいないレースなんて、もう考えられない。
引き留めたくて、だけど、言葉にならなくて、
気付いた時には、大粒の涙を溢しながら、彼の腕をギュッと掴んでた。
だから、困った顔で笑うトレーナーさんを見ても、
一本取られたことに、すぐには気付けなかった。
「スカイー」
「……。」
「セイウンスカイさーん」
「……。」
「セイちゃーん」
「……。」
あの後、もう一度トレーナーさんをソファに押し倒して、彼にウマ乗りになっている。
さっきのアレのせいで、彼に手の届かないところには絶対に行って欲しくなかった。
「そろそろ機嫌直してくれない?」
「…じゃあ、辞表、ちょーだい」
万が一にも、トレーナーさんが辞めないようにする。それしか今は考えられない。
「あー、俺の切り札がー」
わざとらしい無念そうな声を出しながら、トレーナーさんが辞表を私の見えるところまで持ってくる。
彼から手渡される時間すら惜しくて、彼の手の中から辞表をひったくり、全力を込めてバラバラに引き裂く。
「えぇ…」
笑いながらも、ちょっと引いてるトレーナーさんのことは無視して、彼の胸に頭を押し付ける。
絶対逃がしたりしないんだから。
辞表を抹殺して、ようやく人心地ついたから、聞こうと思っていたことを尋ねる。
「どこから演技だったの?」
「全部本気だよ」
「えっ」
思わず顔を上げて、トレーナーさんを見る。
そこには、普段はあんまりしない真面目な顔の彼が居て、その言葉が嘘じゃないことを強調していた。
「スカイが止めてくれなかったら、辞表出してプロポーズまで考えてたよ」
「えぇっ?!」
一気に顔が熱くなり、尻尾が激しく揺れる。
真顔でそんなこと言っちゃう?
だから、ニヤッと彼が笑った時、ホッとしたような、ちょっと残念なような、そんな気分になった。
「言っただろ?『絶対スカイを俺のモノにする』って」
…心臓が止まるかと思いました。
これ以上、この話を続けると、恥ずか死させられそうだったので、次の質問に逃げる。
「辞表、いつから用意してたの?」
「皐月賞前ぐらいからかな。担当ウマ娘に襲われたって話は飽きるほど聞いたし、襲われたら切り札として切れるように準備してた。スカイなら辞表に動揺すると思ってたし」
実際に、めちゃくちゃ動揺しました。
「…今日は使う気なかったみたいだけど?」
「服破ったり、脱がされたら使う気でいたよ?指しゃぶるだけなら、いいかなって」
…遠回しに私の意気地のなさを貶されてる気がする。
そんな邪推をしてると、困ったような声で彼が言う。
「スカイ。辛いのはわかるんだが、腰を動かすのは、やめてもらっていいか?」
「…えっ?」
全く意識してなかった。
さっきからずっと、彼のお腹の上で前後してたみたい。
でも、今も自分の意思じゃ止められそうにない。
顔から火が出そうなくらい恥ずかしい。
「あー、すまん。一応、確認なんだが、今日"アレの日"だよな?」
「"アレの日"です…薬飲んで、ちょっと落ち着いてて、コレです…」
"アレの日"じゃなかったら、こんなことしません。
私はそんなえっちな娘じゃないです。
「じゃあ、これ。俺の家の合鍵。先に行ってて」
「えっ」
トレーナーさんが鍵を手渡してくる。
「二人で歩いて行くと、面倒な噂が立ちそうだから、時間差で行くべきだろう?」
私は、それを聞いて、鍵を突き返した。
「今日は貴方と離れたくないなぁ。なぁんて」
今日は絶対逃がさないから。
固まった彼を見て、したり顔をする。
「…やり過ぎたか?」
「そう。やり過ぎですよー。ちゃあんとセイちゃんのこと、労ってくださいよー」
その後、トレーナーさんと腕を組んで、家まで行きました。
翌日、二人揃って、学園をサボりましたとさ。
めでたしめでたし。