ウマ娘短編集   作:カランコエ(Kalanchoe)

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《シリアス》
いつになく真面目な顔のスカイが「一生のお願い」と言ってきた……

シリアス系セイウンスカイは初投稿です


黄色のデイジーをあなたに

「トレーナーさん、一生のお願いがあります」

 

スカイはトレーナー室に入ってくるなり、そう言った。

 

珍しく真剣な表情をして、耳を絞っている愛バを見て、軽口を飲み込む。

こういう真面目な顔、真面目な声音でイタズラするような娘じゃないのは、俺が一番よく知っている。

 

「どうした?スカイ?何かあったか?」

 

彼女に負けないくらい真剣な表情で答える。

 

色々と身に覚えがありすぎて、何を言われるかわかったものではない。最悪の場合、トレーナーを辞める必要があるかもしれない。

 

「フラワーの担当になってくれませんか?」

「はぁ…?」

 

想像の斜め上…いや、斜め下の話で、思わず間の抜けた声が出る。

 

「フラワーは引く手数多(あまた)の優良ウマ娘ですよ?それを優しいセイちゃんはトレーナーさんのためを思って、フラワーとの仲を取り持とうと動いてるんですよ。フラワーに打診したところ好感触でしたし、トレーナーさんは勤勉な方ですから…」

 

スカイが耳を絞ったまま早口で(まく)し立てる。これは良くない徴候だ。

 

「スカイ、何を悩んでいるんだ」

 

スカイのご高説に割り込む。こういう時は無理矢理にでも、こちらから仕掛けないとダメだ。

 

「…やだなぁ。セイちゃんに悩みなんてある訳ないじゃないですかぁ…あはは…」

 

否定しながらも、目からは今にも涙が溢れそうだ。

 

「……。」

「……。」

 

ジッとスカイを見つめ続ける。耳は左右バラバラに動いているし、目は落ち着きなくキョトキョトと泳いでいる。

 

 

 

 

 

たっぷり三十分程掛け、気持ちが固まったのかスカイがこちらを真っ直ぐ見据える。

 

「………屈腱炎と診断されました」

 

一粒、スカイの頬を雫が流れていく。

 

何も言えなかった。

 

屈腱炎はレースに出るウマ娘にとって致命的な病だ。発症した時点でレースを引退するウマ娘も少なくない。仮に引退せずに再びレースに出れたとしても、以前のような走りは出来ないことが多い。

URAファイナルズが終わったこのタイミングで良かったと思うべきか、これから四年目というところで間が悪いと言うべきか。

 

「…まぁ、ちょうど良いタイミングじゃないですかね?去年の戦績はそんなに良くなかったですし、いい感じに引退の理由にもなりますし…」

 

俺の考えを読んだかのようにスカイが話しだす。

 

確かに、去年の成績はG1で一勝も出来ず、URAも決勝までは行けたが、なんとか入着したくらいで奮わなかった。

 

だけど、そうして明るく振る舞う震えた声が、痛々しかった。

 

「…スカイ」

 

居ても立っても居られず、スカイを抱き寄せた。

 

「………私…もっと走りたかったよ…」

 

力いっぱいスカイに抱き締められ、胸の辺りが熱く湿っていく。

 

何も言えず、ただ、ギュッと抱き返した。

 

 

 


 

 

 

トレーナーさんはフラワーと二人になることが増えた。

 

当たり前だ。私が仲立ちに入って、フラワーをスカウトして貰ったのだから。

私は療養中の身で、フラワーはトレーニングだ。当然、トレーナーはフラワーの方へ優先して行く。

私がトレーナー室でお昼寝してても、トレーナーさんは起こしてはくれない。そっと、タオルケットを掛けて出て行ってしまう。

 

それが、とても悲しかった。

 

 

 


 

 

 

フラワーのトレーニングが終わって、トレーナーさんが帰る頃を見計らって、学園前で彼を待つ。

 

「やっほー。今日も一緒に帰っていい?」

「今日もか?あんまり外泊してると問題あるんじゃないか?」

 

いつも余裕綽々な顔をして軽口を叩く彼が、私を気遣って、人一倍優しくしてくれることに付け込む。

 

「大丈夫ですよー。治療に専念してるって言えば、誰も何も言いませんしー」

 

彼が何か言いたげな顔をするが、結局何も言わなかった。

 

今日も、私は彼の家に上がりこんで、寂しさを紛らわすためだけに彼を求めるだろう。

彼は優しいから、私を拒絶できない。必ず応えてくれる。

 

愛してるヒトに愛されて、こんなにも爛れた満たされている人生を送っているはずなのに、

 

なぜか、それら全てが空虚に感じた。

 

 

 


 

 

 

「…トレーナーさん、置いていかないで…捨てないで…」

 

今日も、うなされるスカイの声で目を覚ます。

 

スカイが屈腱炎を発症してから、毎日のように(ねや)を共にするようになった。

 

こんな不健全な関係は絶対に良くない。

 

そう思っても、今、自分が彼女を拒んだら…

 

いつも最悪のシナリオが頭に(よぎ)り、今の不安定なスカイなら実際に行うだろう。

 

そう考えると、彼女の要求を拒否できなかった…

 

泣きながら、(すが)るように俺の腕にしがみつく愛バを見つめ、俺が彼女のために出来ることを、必死に考えた…

 

 

 


 

 

 

「また速くなったな、フラワー」

「トレーナーさんのおかげです。ありがとうございます!」

 

今日もフラワーとトレーナーさんをトレーナー室からぼんやりと眺めながら、一日を過ごす。

最近釣りに行ってないなぁとか、授業のあの辺よく分からなかったなぁとか、猫語がどうとか考えることは日によって様々だけど、悩んでいることはいつも同じだ。

 

これからどうしようか…

 

今まで私はレース一筋でやってきた。真面目にやってきたとは胸を張っては言えないけれど。

突然それが無くなった喪失感は形容しがたく、目標も、生き甲斐も、モチベーションも、勝てなくて悩む日々さえ失ってしまった訳で、なーんにもない一日を今日もぼんやりと過ごす。

 

 

 

そんな平坦な一日の中、ふとフラワーの声が耳に留まる。

 

「トレーナーさん!大好きです!」

「俺もフラワーのこと大好きだぞ」

 

私には見せたことがないような笑い方でトレーナーさんが言う。

 

そう言えば、私はトレーナーさんに『好き』って言われたことないなぁ。

『好き』って言うこともほとんどないかも。

 

そう思った途端に、ぼんやりとした不安が、言いようもない暗澹たる不安に変わった。

 

 

 


 

 

 

今日のカフェテリアの日替わり定食は鮭の切り身にお味噌汁、ほうれん草のお浸しに白米。

そう言えば、トレーナーさんは鮭が好きだったなぁと思い、もしかしたら居るかもしれない彼を探して、ぼんやりと周りを見渡し…目が合った。

 

「…げっ」

「セイちゃん!」

 

スペちゃんだ。相変わらず一食分とは思えない量を手に持っている。

最近、意識的に避けていたから、私的にはかなり気まずい。

 

「みんなで一緒にご飯食べませんか?」

「あー…今トレーナーさん探してて…」

「セイちゃんのトレーナーさんなら、さっき食べ終わって出ていくとこを見ましたよ?」

 

不思議そうな顔でスペちゃんが答える。

今のはもっと上手く(かわ)せたなぁ…行くしかないかぁ…

 

「…わかった。みんなのところに行こうか」

「はい!」

 

 

 

「セイちゃん連れて来たよ!」

「…やっほー」

「あらあら、本当に捕まえて来るとはやりますね、スペちゃん」

「こうやってみんなで昼食を頂くのは久しぶりね」

 

キングとグラスちゃんが迎えてくれる。エルは今海外遠征中だ。

 

そのまま他愛もない話が始まる。今日のご飯も美味しいとか、ウララさんがースズカさんがーとか、明日の小テストの話とか。

偶然か、それとも私を気遣ってかはわからないけど、レースの話は一度も出なかった。

 

トゥインクル・シリーズを走っていた頃と変わらないような空気感で、少しだけ気が楽になる。

 

ただ、あの頃と違うことが二つあって、

 

ここにはエルがいないし、私は全く喋っていない。

 

 

 

「…スカイさん。相槌くらい打ったらどうなの?」

 

さっきからチラチラこっちを見てたキングが、痺れを切らして私に言う。

 

「キングちゃん…」

 

スペちゃんはオロオロしていて、

 

「セイちゃんにだって、喋りたくない日があってもいいんじゃないですか?」

 

グラスちゃんはフォローしてくれる。

それを無視してキングは続ける。

 

「スカイさん。何を悩んでいるの?あなた、この前より酷い顔をしてるわ」

 

心底心配そうな顔でキングが聞いてくる。

 

…いやー、良く見てるねぇ。キングのそういうところ私好きだよ。

どうやって切り出すか考えてたけど、この流れなら聞けるかなぁ。

 

「…みんなは担当のトレーナーさんに『好き』って言われたことある?」

 

ここにいる全員、若干一名は自覚してないだろうけど、担当トレーナーのことが異性として好きだ。その進行度はマチマチだけど、この物憂げな不安を、誰かと共有したかった。

 

「…はぁ?」

 

困惑顔のキングに、

 

「まぁ」

 

微笑を浮かべるグラスちゃん。

 

「うんっ!私が大好きですって言ったら『俺も大好きだぞ。』って言ってくれたよ!」

 

笑顔が眩しいスペちゃん。

 

スペちゃんのトレーナーさんは、裏表のない良いヒトだ。本当にスペちゃんのことが大好きなんだろう。

肝心のスペちゃんがわかってないけど。

 

「…私は一流のウマ娘、キングヘイローよ。そして、私のトレーナーは当然一流のトレーナーよ。お互いに考えていることを言葉にする必要なんてないわ」

 

キングのトレーナーさんは聡いヒトだ。キングの言うようにキングの好意には気付いているだろう。

キングのトレーナーさんが、キングのことを異性として意識しているかは全くわからないけど、この三年間ずっと支え続けてきたことから、少なくともキングのことが好きなのはよくわかる。

 

「私も言ったことも言われたこともありませんね。彼は…朴念仁ですから」

 

グラスちゃんのトレーナーさんは…朴念仁を演じてる。私のトレーナーさん曰く『一目惚れしたから、間違っても一線を越えないため』らしい。

ちなみに、グラスちゃんは演じてるのを知ってるし、グラスちゃんのトレーナーさんは知られてるのを知ってるはずだ。

 

 

 

私のトレーナーさんは…どうなのかな…

私のこと、本当に好きなんだろうか…

 

 

 

「…セイちゃんは言われたことないの?」

 

スペちゃんが恐る恐る聞いてくる。

 

「ないよー。私からは言ったことあるけどねー」

「だから、不安になった。ってところでしょうか?」

 

グラスちゃんが言う。

 

「…そう。もしかしたら、私の我が儘に付き合ってくれてるだけなんじゃ「スカイさん。あなたのトレーナーは、そんなに信用ならないヒトなのかしら?」

 

キングが固い声で割り込んでくる。

 

「『好き』って言葉一つ無いだけで、あなたのことが嫌いかもしれないような、信じるに値しないヒトかしら?」

 

トレーナーさんはいつも飄々としているけど、本当は真面目なヒトで、余裕綽々な態度は私に合わせてくれてるだけだ。

 

「そんな訳ないよ…」

 

この三年間、不真面目な私に彼は真摯に向き合ってくれた。ありのままの私を受け入れてくれた。そんなヒトを信頼出来ない訳ない。

 

「なら、信じてあげなさいよ。あなたのトレーナーでしょ?」

「…ありがと、キング。グラスちゃん。スペちゃん」

 

少し、気分が軽くなった。この後、トレーナーさんに直接聞いてみよう。

…逃げるのはやめて、勇気を出してぶつかるだけだ。

不安がなくなった訳じゃないけど、決意は固まった。

 

「やっぱりセイちゃんは笑ってる方がいいよ!」

「にゃはは~☆みんな大好きなセイちゃん復活でーす♪」

 

ちょっとわざとらしく、いつも通りピースなんかしてみる。

 

「悩んでる顔より、そっちの方が似合ってるわよ」

「それにしても、あんなにトレーナーさんにべったりなセイちゃんが色恋で悩んでるなんて。私はてっきり…」

 

グラスちゃんが途中で言葉を切る。失言だと思っているのか、いつもの微笑を崩して、無表情で口を押さえている。

別に私は気にしないけどなぁ。

 

「そっちはさぁ、まだ迷ってるけど諦めもついてるんだよねぇ」

「そう、ですか…」

 

わざと言葉足らずにした内容をグラスちゃんは理解してくれる。

スペちゃんとキングも理解しているのか空気を読んだのか黙ってしまう。

 

思わず苦笑いしてしまう。

こういう雰囲気は苦手だなぁ。

 

「と、こ、ろ、で、そっちのお二方はいつトレーナーさんに『好き』って言うんですか?」

 

冗談めかして言う。我ながら強引すぎる話題の振り方だ。

 

「くっ…一流にふさわしいタイミングで言うわよ」

 

「私は…どうしましょう。『急いては事を仕損じる』と言いますが、そろそろ『堪忍袋の緒が切れそう』ですし…」

 

「………えっ!?もしかして、『好き』ってそういう意味の『好き』?!どうしよう!私そんなつもりじゃ…どんな顔して私はトレーナーさんに会えばいいの!?」

 

「えっ、今、気付くの…?」

 

 

 

久しぶりに、楽しいお昼だ。

 

 

 


 

 

 

あの後、トレーナーさんに会いたくて、トレーナー室にやって来た。普段ならコーヒーでも淹れてる時間だけど…

 

扉の前まで来ても、コーヒーの匂いはしない。

扉を開けると、予想通り誰もいなかった。

 

ここで待つべきか、それとも探しに行くべきか…

 

 

 

「スカイさん!」

 

青い顔のフラワーがこちらへ向かって走ってくる。

フラワーが青い顔をしている時点で嫌な予感がする。

汗が首筋を伝う。

 

「フラワー?」

 

どうしたの?と続けようとして、遮られる。

 

「トレーナーさんが倒れました!」

「…トレーナーさんは今どこ?」

「保健室です!」

 

 

 

気付いた時には走りだしていた。

 

「スカイさん!走っちゃダメです!」

 

フラワーの制止を振り切り、全速力で走る。

地面を踏みしめる度に、蹴る度に左脚が悲鳴を上げる。それでも、走り続けた。

 

 

 

保健室の前まで来た時、左脚の痛みは尋常ではなく、もう歩けるような状態ではなかった。

それでも、歩き続けた。

 

扉に手をかけた時、中から声が聞こえた。

 

「バカだなぁ、お前。適度に休むのも一流のトレーナーの仕事だぞ?」

 

キングのトレーナーさんだ。扉を開けずに、中の様子を伺う。

 

「…担当の娘が苦しんでいる時に、休んでなんか居られるか」

 

私のトレーナーさんが答える。声に疲れが滲んでいるけど、苦しそうな感じはない。

 

「だからって、お前が倒れたら本末転倒だろ。担当の娘に心配掛けさせてどうする」

 

「…返す言葉もねぇわ」

 

「たまには、他人を頼れよ。…ほら、屈腱炎、もしくは、繋靱帯炎を発症してからG1レースで勝利したウマ娘のリストとリハビリ内容だ。まだ途中だけどな」

 

「…ありがとう」

 

「言っておくが、俺は引退を勧めておくぞ。遅かれ早かれ、皆レースを引退するんだ。引き際は肝心だ。お前だって、愛バが自分の脚で歩けない姿なんて見たくないだろ?」

 

「……。」

 

隣にフラワーが立つ。結構長い間、扉の前で聞き耳を立ててたみたい。

 

「…さてと、用事も済んだし帰るわ。後は、二人…いや、三人でやってくれ」

 

キングのトレーナーさんがそう言うと、スタスタと足音が扉に向かって来て、扉が開かれる。彼は私達の顔を見るとニヤッと笑って、そのまま歩いて行ってしまった。

 

「スカイ。フラワー」

 

開いた扉からトレーナーさんに呼びかけられて、フラワーと二人でようやく側まで行く。

 

「トレーナーさん、大丈夫なの…?」

「あぁ、過労らしい。心配かけてごめんな」

 

トレーナーさんが困ったように笑う。

私達にはオーバーワークを注意するのに、トレーナーさんはしちゃうんだもんなぁ…

 

「頑張りすぎは、めっ!ですよ?」

「…これからはちゃんと休むよ」

 

ずっと苦笑いしていたトレーナーさんが真面目な顔を作る。

 

「スカイ。フラワー。この後、トレーナー室まで来てくれないか?」

 

トレーナーさんが立ち上がりながら言う。

 

「…仕事はダメだよ?」

「また倒れたら、私、怒りますからね!」

「…これが終わったら今日は帰るよ」

 

 

 


 

 

 

「えーっと…フラワー」

 

トレーナーさんが自分の机から、何か書類を取り出しながら呼ぶ。

 

「はい」

「もし、俺が倒れたら、ここにトレーニングメニューがあるから使ってくれ」

「まず、倒れないように気をつけてください!」

「………努力するよ」

 

この感じだと、また倒れるだろうなぁ…

 

「…スカイ」

 

いつになく真面目な顔のトレーナーさんだ。

 

「うん」

 

こっちも真面目な顔をしておく。だいたい内容には察しがついてる。

 

「…これからの話をしよう」

「…うん」

「…大きく分けて選択肢は二つだ。『走る』か『走らない』かだ」

 

その選択肢は、私の中ではもう決まってる。ただ、一つ確認したいことがあるだけで。

 

「………私は「その前に一つだけ、言っておくことがある」

 

トレーナーさんが()()()私の言葉に被せてくる。

 

私の隣まで歩いてきて、私と目線を合わせるようにしゃがみ…いや、(ひざまず)き懐から何かを取り出す。

 

そして、銀色に輝く"それ"を私に向かって差し出してきた。

 

目頭が熱くなる。

 

フラワーが息を呑むのが聞こえる。

 

「セイウンスカイ。愛してる。どんな道を君が歩むとしても、俺は一生君を支え続ける。だから、俺と結「待って待って待って!トレーナーさん!ステイ!」

 

荒く息をしながら、バラバラになってしまった思考をまとめる。

 

「…トレーナーさん」

 

「うん」

 

「三つ、お話があります」

 

「うん」

 

「まず、一つ目です。その、指輪は…"まだ"受け取れません」

 

「…うん」

 

「私が学園を卒業したら…もう一度、プロポーズしてくれませんか?」

 

「うん。次はもっと良いプロポーズにするよ」

 

「次に…私、レースを引退します」

 

「………そうか。手筈を整えておくよ」

 

「…今日は働いたら怒るからね?」

 

「………わかった」

 

「…最後に、私がレースを引退するってことは、担当契約は切れますよね?」

 

「…うん」

 

「じゃあ…『トレーナーと担当ウマ娘の関係』じゃなくなりますよね?」

 

「…うん」

 

「なら、トレーナーさん。私とお付き合い…してくれませんか?」

 

「…喜んで」

 

 

 

 

 

『恋人』になって初めてのキスは、不安なんてなくなってしまうような、優しくて甘い幸せの味がしました。

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