甘々純愛セイウンスカイ短編
レジェンドレースのセリフより早書き習作
「愛してるゲームをしよう」
カシュッと二本目の缶チューハイが開く音と共に聞こえる彼の声。
対面に座ってる私の彼氏は酔うとすぐに変な絡み方してくる。今回はえらく直球な感じで、それはそれで恥ずかしくて困るけど。
「それ流行ったの私が高校生の頃だよー?」
「別にいいじゃん。勝った方が負けた方に1回だけ好きな命令できるってことで、やろう?」
好きな命令できるってのは結構魅力的だけど、それ以前に問題になることがあるんだよね。
「えー、負けちゃうよー?私が」
この男、
「スカイだけ体力5でいいから。俺は体力1で」
「私は5回照れてもいいってこと?」
「そ」
即答で5回って返ってきたのがちょっと
それでも勝てる気はしないなぁ。
「でもなぁ」
「勝ったらお願い3つでどう?」
「む」
そういう方向性で攻めてくるか。お願い3つはかなり魅力的。
夕飯の当番代わってもらったり、手作りお弁当をお願いしたり、普段はしてくれない耳のマッサージとか……
クピリとレモンチューハイをひとくち。お酒は別に好きじゃないけど、好きな人と飲むお酒は結構好き。
「まぁ、いいよ。やっても」
勝算はゼロじゃないとしか言えないくらいだけど、この人は私が本気で嫌がることはしないし、愛してるって言われるのは結構好きだし。
「じゃあ、愛してる」
「……いきなりは卑怯じゃない?……私も、愛してるよ」
もう恥ずかしいんだけど、それでも真剣な顔で愛してるって言ってくれる彼はすごく良い。
「世界で一番愛してる」
「んんっ…!?」
「よし一本」
いやいや、真顔でそれはダメでしょ!?
恥ずかしいのと嬉しいのと面白いのが同時に来て、チューハイが変なとこに入るかと思ったよ?!
「スカイ、君の番だよ」
「……こほん。……愛してるよ」
「うん。かわいい」
「うぇっ!?」
「よし二本目」
「えぇーっ!?ずるーい!」
こっちは真面目にやってるのに真面目くさった顔でかわいいって言うのはずるいよ。そんなの無理に決まってるじゃん。
「じゃあ、俺の番。愛してるよ。"俺の"セイウンスカイ」
「ん゛!!」
「ほい三本」
"俺の"って強調するの本当にずるい。普段はそんな俺様ムーヴしないじゃん。
そっちがそういうことするんだったら、こっちにも考えがあるんだからね。
ごくごくとチューハイをふたくち。グラスを置いて立ち上がる。よしよし。注目度はバッチリ。
ここで両手と片足を上げて、
「……愛してる、にゃ♪」
「今照れたよね?」
「……」
「はあぁぁ、めっっっちゃかわいい。俺も愛してる。にゃん♪」
「……なに。その取って付けた『にゃん♪』は?」
「今こっち見れる?」
「見れる訳ないじゃん。わかってるでしょ」
「じゃ、俺の勝ちね」
今、顔めっちゃ熱いもん。あなたの『にゃん♪』が意外とかわいいなとか思っちゃったもん。それに私がどれだけ恥ずかしいことしてたかも。
「そんじゃ1つ目のお願い」
「……1つ目?」
「お願い3つとは言ったけど『スカイが勝ったら』とは言ってないからね」
「……まあ、いいけどさぁ」
あなたが変なこと命令しないってことくらいは信頼してるけどさぁ。わざと主語を抜かしてお願い3つにしておくとか、その抜け目なさは一体誰に似たのかなぁ?
「じゃあ、とりあえずこっち来て」
「はぁい」
両腕を開いて待ち構えてる彼の膝の上に収まる。もちろん頬が緩んでいるのを見られないように背中向きだ。
「……まあ、これはこれでいいか」
「耳元でささやくのやめてー」
「無理。身長差考えてよ」
ギュッと彼の腕に抱きしめられ、私の頭の上に顎が乗せられる。
ジャストフィット感あって、じんわり温かいのは良いんだけど、頭の上で
「お願い2個目、キスしたい」
「体勢しんどくない?」
「背中向けたのはそっちでしょ」
顔だけ振り向いて不意打ちぎみにチュッとひとつ。それで彼が止まってくれる訳もなく、すぐさま伸びてきた彼の手に縫い止められてチュッチュッとふたつ。
お酒でボーっとしてた頭がもっとふわふわしていく。ここまでしておいて探るように唇をなぞる彼の舌を
どれだけ時間が経ったのか。呼吸が続かなくなって、ようやく離れる。私たちの間にかかった橋が光ってる。
「……お願い3つ目。いい日本酒があるんだけど一緒に飲まない?」
「……セイちゃんを酔わせて、どうするつもりー?」
「期待してる癖に」
そりゃあ、ここまでしておいて、ねぇ?
「愛してるゲームをしよう」
ハイボールのシュワシュワと一緒に聞こえる彼の声。対面の彼がグイッとウイスキーを
「またー?」
「理由作らないと愛してるって言ってくれないじゃん」
「いや、まあ、そうだけど」
だって恥ずかしいじゃん。言われるのは好きだけどさ。ハイボールをひとくち。うん美味しい。
「スカイだけ体力5。お願い3つね」
「もうやる前提なの?」
「やらないの?」
「……やるけどさぁ」
言われるのは好きだからね。それに確かに愛してるって、あんまり言ってあげてないし。それはそれとして勝てる気はしないんだけど。
「愛してるよ、スカイ」
「…………ふぅーっ」
「お、耐えた」
まあ、結果から言うと耐えれたのはこの一回だけなんだけど。
「じゃあ、本気で嫌だったら断ってくれていいんだけど」
「あなたがそう言うって相当だね」
「……勝負服、着てくれない?」
「……あんまり汚さないでよね?」
「愛してるゲームをしよう」
心臓のドクドクと一緒に聞こえる彼の声。少し体をひねって視線を合わせると、薄暗闇の中、いつになく真剣な彼が目に映る。
「もう負けてるよ?私が」
「なにそれ?」
ポカンとしてる彼を見つめながらニヤリと口の端を上げると、釣られて彼も口元を緩める。
真面目な顔も笑ってる顔も好きだけど、不安そうな顔してるのは似合わないよ。
「はっきり言って、私に勝ち目ないじゃん」
「それは、まあ、そうだけど」
だって、あなた全然照れてくれないし。そもそも最初の『体力5でいい』って言った時点で『負ける気ない』って宣言でしょ。わかってて付き合ってたところはあるけど。
「だから、愛してるって言ってくれたら、好きなだけ愛してるって言ってあげるし、できるだけお願いも聞くよ?」
「もっと早く聞きたかったなぁ。それ」
「言える訳ないじゃん」
今もめっちゃ恥ずかしいんだよ?
お酒入ってて、薄暗いし、いつでも顔を隠せるから、なんとか素直に話せてるけど。
「じゃあ、スカイ、一生のお願い」
「おお、大きくでたねぇ」
彼から一生のお願いなんて言葉、聞くとは思わなかった。冗談でもそういう言い回しをする人じゃないし。
ゆっくり深呼吸する音。今、胸に耳を当てたらドキドキ聞こえるのかな。
一呼吸置いて、彼が口火を切る。
「スカイ、結婚しよう」
あー、やっぱり。
本当は驚いてあげた方がいいんだろうけど、こないだ部屋の掃除中に指輪のケースと指輪、見つけちゃったんだよねぇ。
「ええー、セイちゃん、もっとロマンチックなのがいいなー」
流石にムードも何もない中で受けとるのは、ちょっと違うかなぁ。私だって女の子らしい願望くらいある。
「じゃあ、どっか美味しいお店でも予約しようか?」
しっかりと彼は私の考えを読んでくれる。その証拠にさっきよりも声がちょっと高い。まあ、私としては美味しいお店よりはもっと雰囲気ある方がいいかな。
「誕生日にスペちゃんとかグラスちゃんとか、みんなを呼んでパーティで、とか。……ダメか。私が恥ずかしいし」
「夜の海で星空を眺めながらとか、どう?」
「いいじゃん。それ。それにしよ」
「了解。いいとこ探しとく」
チュッとひとくち。お願いを内定させて、熱い顔を彼の胸の中に。
私、負けっぱなしってやつ、あんま好きじゃないけど、あなたにだけは負けっぱなしでもいいよ。だって、いま幸せだもん。