タマモと過ごす朝の時間
タマモクロスに毎朝起こされる
朝、今日もお日ぃさん昇る前に起きる。
目ぇ覚ましたら、テキパキ身だしなみ整えて、ジャージ着て、トレーナーん
ウチのトレーナーはめっちゃ朝弱いから、起こしに行かんと、昼まで起きて
ちゃーんと家確認して、合鍵で鍵開けて入る。
「邪魔すんでぇ」
何べんも通うて、勝手知ったるトレーナーの家にズンズン入っていく。
寝室に着くと、ウチのトレーナーはアラーム鳴ってるスマホを布団の下に埋めて、枕元の目覚まし時計を止めたままの腕伸ばした体勢で、二度寝しとった。
「……いや、そうはならんやろ」
一人でビシィッとツッコミ入れてから、布団の下に手ぇ突っ込んでスマホを取る。パパッとアラーム止めて、目覚ましの横に放っといたる。この位置なら絶対目につくやろ。
んで、うるさい邪魔者もおらんくなったし、トレーナーの寝顔を堪能させて貰う。
……相変わらず無防備な寝顔が可愛いやっちゃなぁ。
図体はウチより二回りは大きいし、厳つい顔しとるくせに、朝は弱いわ、方向音痴やわ、めっちゃ優しいわ、可愛いもん好きで自室にもトレーナー室にもぬいぐるみいっぱい飾っとったりする。
なんやコイツ。ギャップ萌えでも
いつの間にか、頬っぺた突っついてたり、ヒト耳の耳たぶフニフニしたりしてたけど、誤差や誤差。
ふっと、目覚まし時計が目に入る。
……アカン。このままやと朝練の時間無くなるわ。
名残惜しいけど、ちょい距離取ってから、声かけて起こす。
いっぺん、耳元で囁いて起こしてみたら、布団の中に引きずりこまれて、抱き枕代わりにされたことあるからなぁ。
あん時は心臓止まったわ。結局、起きるまで添い寝するハメになって、朝練なんか出来んかったなぁ。
「トレーナー。はよ起きぃやぁ?」
「……んー…?…タマモ…いつもありがとぉ…」
「有難い思うんやったら、ちゃんと一人で起きぃやぁ。ええ大人がそれでええんか?」
「んー…」
聞こえてんのか聞こえてへんのか曖昧な生返事したトレーナーが、モゾモゾ起き上がって、洗面所の方に行くんを見送る。
いつもやったら、シュバッと、ボケかツッコミ返ってくんねんけど、寝起きだけは素直に返事すんねんなぁ。
こんなトレーナー、この学園内ではウチしか知らんやろなぁ。ちょいにやける。
パパッと身だしなみ整えて、シュッとしたトレーナーと一緒に、カフェテリアで早めの朝ごはんを食べる。
今日の朝ごはんは雑穀米に味噌汁、玉子焼きに漬物や。腹八分目くらいの量にして、適当な席を取る。
そこに
「いただきます!」
「いただきます」
ガツガツ食べるウチと
「んで、今日は何するんや?」
朝練するだけやったら、昨日の夜にメニュー貰って、ウチ一人だけ早起きでもええねんけど、トレーニング内容も毎回考えたいってトレーナーが言いよるから、わざわざ朝起きて
そういうとこ好きやねんで?
「今日はトレーニングコースが夜中の雨で荒れてるみたいだから、重バ場を想定してダートでパワートレーニングにしようか。多分、昼頃には整備されちゃうだろうし。……朝からあんまり負荷かけてもダメだから軽めにしような?」
「毎回毎回言わんでも分かっとるわ!アンタは心配性の婆さんか!」
ウチのこと心配してくれてんのは分かる。けどな、毎朝同じこと言われるんは、わりとムカつくで。
「……僕は男だから、爺さんでは?」
「ツッコむとこちゃうわ!」
朝、今日は休みの日やから、いつもよりちょい遅めに起きる。
……と言うても、日ぃ昇るんに合わせて起きるから一般的には充分早起きなんやろな。知らんけど。
どうせ会うんやったら、キレイに見せたいやん?
いつも通り合鍵で鍵開けて、トレーナーの家に上がる。
「邪魔すんでぇ」
いつも通り返事がなくて、ちょい寂しいわ。
ま、いつも働きすぎなトレーナーには朝寝坊がちょうどええやろ。朝ごはんでも作ったるかぁ。
_
「トレーナー、そろそろ起きぃやぁ?」
……ささやくような
「
……夢の
「なっ?!ちょいちょいちょい!?」
つかんだ"それ"が、逃げていくような気がして、ついグイッと力を込めて、ひっぱる。
「寝惚けとるからって、スカート引っ張るヤツがあるかぁーっ!!」
スパーンという炸裂音のような音と共に、左頬に焼けるような痛みが走る。
「いってぇ……」
痛みである程度眠気は飛んだけど、睡魔の残滓に身を任せ、目を瞑ったまま、ぼんやりと惰眠を堪能する。
「ドアホッ!早よ手ぇ放せや!狙ってやっとるんちゃうやろなぁっ!?」
かなり近くからタマモの怒声が聞こえる。
ゆっくりと目を開くと、紺色の布の端を掴む自分の手と、膝までスカートをずり落とされ、服の
白い服の裾と肌色の間にチラチラと見える黒色を、ぼけーっと眺めながら、ようやく脳が状況を把握し始め、スカートを掴んでいた手を放す。
「……おはよー、タマモ」
「おはようやないねん!食われるかと思うたわ!」
目の前の彼女が、スカートを履き直しながら言う。
「……朝から?元気だねー」
「アンタのことやっちゅーねん!」
ペチッとツッコミを入れられる。
「ほら!アホなこと言うとらんと、さっさと朝ごはん食べて、デート行くで!デート!」
朝…って言うにはちょい遅いな…
時計を見るともう十時過ぎや…
背中に回されてる両手をなんとか引き剥がして、そーっと起きる。
無防備に寝てるトレーナーの顔を見て、ちょーっとだけ変な気ぃ起こしそうになるけど、とりまお手洗いと水分補給くらいはしてくるかぁ…
脱ぎ散らかした服も拾わんとなぁ…
戻ってくると、腕の中のぬくもりが無くなったんが、気になるんか知らんけど、眠ったまま眉間にシワ寄せて、布団の中を手探りしとるトレーナーが
「アンタの愛バはここやでー」
起きひんように、声を抑えて、こそっと言う。そのまま、トレーナーの腕の中にスポッと、向かい合うように収まって、胸板に顔を埋める。
ウチが戻って来たんが分かったらしく、トレーナーの方からもギュッと抱き締められる。全身を包み込まれるように匂いと熱が伝わってきて、じんわりと心と体に熱が広がってく。
こういうのを『幸せ』って呼ぶんやろな。
……なんか眠なってきたわ。今日一日くらいお昼過ぎてから起きてもバチ当たらんか…
「んなっ?!」
今にも寝落ちしそうなタイミングで、ウチの上に片脚乗っけるヤツ
さっきより密着度上がっとるし、下腹部になんか当たっとるんやけど?!
一気に眠気吹っ飛んだわ!
「ちょい!トレーナー!起きぃや!」
本気で突き飛ばせば、こんくらいどうとでもなるはずやけど、そんなん絶対コイツ怪我させるやん。
そんなんイヤやから、悪いけど起きて貰うわ。
「……んー?…何?…朝?」
「朝や!早よ起きて、
ウチの存在を確認するように、背中をサワサワ、髪をサラサラと撫でよる。モゾモゾと腰も動いてて……?
「ちょいちょいちょい!ちょい待ち!朝から何するつもりやねん!」
「……うーん…?」
「寝惚けながら、しれっとマウント取るなや!?」
「……こういうの好きじゃなかったっけ…?」
まだ目がトロンとしとる。
……今から目ぇ覚まさしたるから覚悟しときや。
「こんの、ドアホがァーーーッ!!!」
パッチーンと乾いた音が部屋に響いた。