ファインに強引に迫られるお話
引換券で殿下をお迎えしました
めっちゃ可愛いですね
Look at me, Mr.Right?
「私を見て?」
優しい声で彼女は僕に問いかける。
「見ません!」
対する僕の答えは強い拒絶だ。
時々突拍子もないことをしたり、常識に欠ける行動をするファインだが、良識を欠いた行動をするとは思ってもみなかった。
「今なら私の下着が見放題だよ?」
「だから見ないって言ってるの!」
今現在、僕はトレーナー室のソファに押し倒され、両肩の上にはファインの両膝が乗っている。
僕の頭がファインのスカートに飲み込まれる前に両目を閉じて、それ以降開けていないため、それ以外に情報はない。
どうやってスカートの中の僕を彼女が確認しているのかまるで分からないが、おそらくスカートをたくし上げでもして顔を見ているのだろう。
「貴様~。私の下着は見る価値が無いと申すのかっ!」
「僕が君の下着を見たら大問題でしょ!」
とりあえず目的はハッキリしないが、ファインが僕に下着を見せつけたいことはよく分かった。それ以上のことを要求してこないことも。
弾んだ声や、くだけた口調からして上機嫌なのも分かる。
これが掛かったウマ娘による"暴行事件"に発展する
「むぅ~」
ファインがうなり、両肩から重みが消え、顔の上を布が撫でる。そのすぐ後にお腹の上にズッシリとした重みがゆっくりと乗ってくる。
おそらくファインがたくし上げていたスカートを下ろして、お腹の上に座ったのだろう。
そう判断し、目を開こうとして、思いとどまる。
もし彼女が座った状態でスカートをたくし上げていたら、真っ先に視界に入ってくるのは彼女の下着だろう。
ファインが僕の上から下りてから目を開いても遅くはない。
「ん~。今絶対目を開けると思ったのになぁ」
パサリと胸の上に何か軽い物がかけられる。
憶測でしかないが、読み通りに、ファインはスカートをたくし上げて待ち構えていたのだろう。
ホッと息を吐いたのも束の間、お腹の上のファインが僕の下半身の方へ重心をずらし、グニグニと動きながら衣擦れの音を立て始めた。
嫌な予感が脳裏をよぎり、冷や汗が首筋を伝う。
自由になった両手を動かそうとして、目を閉じたままファインを手探りして変なところを触ってしまう光景を幻視し、力なく両手を下ろす。
そんな一部始終を見ていたファインは心の底から楽しそうに笑い、僕の顔の上に何か布っぽいものがかけられる。
それがほのかに温かいことを否応なしに確認させられ、予感が確信に変わる。
「下着も脱いじゃったよ。今なら私のあられもない姿が見放題だよ♪」
言葉と同時に、お腹の上にあったファインの重みがなくなり、再び両肩にその重みがのしかかってくる。
顔の上の何かから、ほんのりと甘い香りがするのは柔軟剤の香りだと信じたい。
何もできない僕には浅く息をすることで、その匂いを吸わないようにすることくらいしかできない。
その時、ふと閃いた。
「隊長さん!SPの隊長さん!!」
「なんでしょうか、トレーナー様。」
よかった。やっぱり居た。
「ファインを……いや、違う。僕をこの部屋からつまみだしてください!」
「申し訳ありませんが、それはできません」
「なんで?!」
語気が荒くなる僕に対して隊長さんは冷静に言葉を返す。
「現在、我々はトレーナー様に触れることを殿下に禁じられています。よって、つまみだすという事は不可能です」
そんな理由を聞かされても、はいそうですか。と引き下がる訳にはいかない。
「ファインの貞操がかかってるんですよ!?なんとかしてください!」
ファインの貞操ではなくて僕の貞操の危機だろとか思ったけど、ファインのSPに動いてもらうんだから『ファインの危機』と言い張った方がいいだろう。
返事はすぐに返ってきた。
「申し訳ありませんが、我々がするべきことは何もありません」
「どうして?!」
さっきよりも焦っている僕に、隊長さんはあくまで冷静に話す。
「我々SPは皆、王家に仕える身ですが、何よりも殿下の幸せを願っております。そのためにトレーナー様の人生がどうなろうと問題ではありません」
「隊長さん!?」
「そういうことだから、観念して私のことを見て?Mr.Right?」
「見ません!!」
"観念して"って何?とか"Mr.Right"って誰?とか思う余裕はなく、雑念を振り払うために口の中で念仏を唱え、八百万の神に必死に祈る。
私は未成年、それも王族の子をそそのかすような大人じゃないので助けてください、と。
必死の祈りが通じたのか、はたまた単にファインが諦めたのかはわからないが、またしても両肩から重みが消え、お腹の上に重みが乗ってくる。それと同時に顔の上に乗せられていた布っぽい物がなくなる。
「ねえ、トレーナー。私ね、キミのことが好き。大好き。愛してる」
先程までの上機嫌な声から一転して、真面目な声でファインがささやく。
わかってはいたが、気づかないようにしてきた。
そもそもファインが好きでもない異性に下着を見せるような子じゃないことは僕もよく知っているし、SPさん達が許す訳もない。
隊長さんの『殿下の幸せを願っております』という言葉も、ファインと僕がくっつくことをSPさん達も望んでいるからこその後押しだろう。
「だからね、キミが私の体で興奮してくれるか知りたかったんだ」
少し落ち込んだ声で付け加えたファインは、慌てたように「もちろん既成事実を作るのも目的だったよ?」と明るい声で取り
「トレーナー、キミは私のこと、好き?」
静かな声が部屋に響く。
率直に言うなら『好き』だ。
ファインのひたむきさ。好奇心に目を輝かせ、なんでも楽しむ心の持ち様。元気ハツラツとしていながら淑女然とした立ち居振る舞い。友人や僕、SPさん達への気配りを忘れない性格。なにより、幼い彼女が祖国のためにと掲げる無私の精神。
端的に言うならファインの全てが『好き』だ。子供としてではなく、大人の女性として。
だが、それを口にすることはできない。
ファインはアイルランドの王族で、僕は一介のサラリーマンに過ぎない。
身分の差、人としての価値が余りにも釣り合っていない。
しかし、ウソをつく訳にもいかない。僕自信、ウソが苦手という自覚もあるし、ファインは
その場合……一般人には想像もできない方法で外堀を埋めてくるイメージしか浮かばない。叙爵されたり、領地を与えられる、なんてありきたりかもしれない。
だから僕は「嫌いじゃない」とどっち付かずな時間稼ぎにもならない答えを返した。
「……やっぱりキミは優しいね」
少し寂しげにファインはつぶやく。
おそらく僕が言葉を
好きとも嫌いとも言えない理由を。
「ごめんね?色々と迷惑かけて。身だしなみを整えるから、ちょっとだけ待ってね?」
明るいけれど震える声で告げられ、お腹の上から重みが離れる。
「あっ!もちろんキミなら私の生着替え見てもいいからね?」
「見ません!」
僕の返事を聞いてクスクスとファインは笑う。
トテトテと足音が離れていき、少し遠くで衣擦れの音がする中、カツカツと足音が近づいて来て「ここだけの話ですが…」と前置きして隊長さんが小声で話し始めた。
「殿下に対して陛下が『一般的な恋愛結婚ならしても良いぞ。政略結婚なんて時代遅れも
「…………え?」
淡々と語られる言葉を理解し、異様な脱力感に襲われる。
ファインは色仕掛けしてきて、陛下からは公認。
この状況、もう詰んでるのでは?
「付け加えると、暴力や財力、権力等で囲い込むのはダメだと何度も仰っておりました。あくまで、お互いに好き合っての恋愛結婚に限るそうです」
「さいですか…」
詰んでないのはわかったが、ファインが本気で僕を落とそうと考えていることを改めて理解させられる。
というか、もしかして断る理由なくなったのか?
ファインと相思相愛なのは確定。
陛下公認ということは身分の差、人としての価値なんて問題ではない。
最後に残った
……ファインが卒業するまで耐えれるだろうか。
一人悶々としていると、ファインの声がする。
「もう目を開けてもいいよ、トレーナー」
ファインに言われるがままに目を開く。
まず目に入ったのは見慣れたトレーナー室の天井。
続いて明らかに困り顔をしているSPの隊長さん。
首を
しばらく寝転んでいたせいで少しクラッときたが、すぐに治まる。
ファインの声がした方向に視線を向け、目を閉じる。
なぜ、今日のファインを信じてしまったのか。
後悔しながらも、まぶたの裏には今さっき見た一糸まとわぬファインの姿がチラついてしまい、顔が熱くなり心臓がバクバクとペースを上げる。
クスクスとファインが笑う中、SP隊長さんが「心中お察しします」と申し訳なさそうに告げる。
ゆっくりと再びソファに寝転び、ソファの背もたれ側を向き目を開く。
今にも叫びだしたいような気持ちを必死に抑えていると、背中に柔らかく温かいものが押し付けられ、脇の下からほっそりとした白い腕が胸の方へと回り、足にも白くて女性らしい丸みを帯びた足が絡められる。
ドンドン動悸が激しくなっている最中に、耳元で優しい声がささやかれる。
「私の裸、見たよね?私もキミの裸が見たいなぁ」
不穏な言葉をしゃべりながら、慣れない手付きでプチプチと僕のシャツのボタンが外されていく。
「やめてくれ!せめて君が学生の間はプラトニックな関係で居させて!」
「よいではないか、よいではないか~♪」
「隊長さん!助けて!」
「誠に申し訳ございません、トレーナー様」
「あああああぁぁぁ!!!」
結論から言うと、その日はなんとか上半身裸にさせられただけで済んだ。
そして、その日以降ファインからの過激すぎる誘惑は行われなかった。
「ねえ、トレーナー」
「なに?」
「大好きだよ」
「……僕も好きだよ」
ただ、毎日お互いの気持ちを確認させられるようになったが。