小悪魔ライス概念
育成ストーリー後のライスはつよつよ耳年増であって欲しい
「ふぅ……今日は暑いね、お兄さま」
そんな声と共にジジジ…と長袖のジャージのジッパーが下ろされ、ふわりと蒸気が上がる。冬場に蒸気が出るほどに体が温まっているということは必然汗をかいている訳で──
───黒。
「うわっ!?ごめん、ライス!」
「ふふっ♪大丈夫だよ、お兄さま」
ジャージを下ろした僕の担当ウマ娘の少女、ライスシャワーの真正面に立っていた僕はその汗で張り付いた体操服と、透けて見えてしまっている下着を当然のように視界に入れてしまっていた。
「ちょっとスポブラが透けてたくらいで慌て過ぎだよ?」
「女性の下着が目に入ったら慌てるに決まってるでしょ!?」
「ふふっ、お兄さまは可愛いね♪」
からかうような楽しげな声に、ついムッとして
「お兄さまなら好きなだけ見てくれていいよ?」
「そんなこと軽々しく男の人に言わない!」
「はーい♪お兄さまにだけ言うね?」
トゥインクルシリーズでもベテランウマ娘となったライスは同期の二冠ウマ娘のミホノブルボンや『名優』メジロマックイーンとの死闘を経て、もはや出会った頃の弱気な性格ではなく、こんな感じにずぶと……ずうずうし…………自信満々になってしまった。
「じゃあ、トレーナー室で着替えるから見たくなったら来てね!」
「見ないよ!」
尻尾を上機嫌に揺らしながらライスはトレーナー室へと軽やかに足取りを進める。
自信がついた結果として、最近のライスはやたらと僕への好き好きアピールが激しい。さっきのアレですら挨拶レベルだ。
「おかえり、お兄さま」
たっぷりと時間をかけてトレーナー室へと戻って来た僕を出迎えるのは紫色の制服に着替えたライスだ。もちろんシャワーと着替え、僕を待って
……同じ失敗をしないのが『できる大人』だからね。
「じゃあ、ミーティング始めるよ」
「うん!」
ミーティング用の背の低いテーブルに資料を広げてソファに腰掛ける。それに合わせてライスも僕の反対側に腰掛け、するりと足がソファの上へ、そして三角座りに――
―――黒。
「わあぁあっ!?」
「お兄さまのえっち♪」
「男だから仕方ないの!」
こればっかりはどれだけ気を付けていても同じ失敗ばかりしてしまうのが男の
「ライス!」
「お兄さまにしかしないよ?」
「知ってるけど!」
このチラリズムでのアプローチが僕以外に行われていないのは他の親しいトレーナー、ウマ娘たちに確認済みだ。そもそもライスが僕のことを好きだってことすら前々から知ってる。
「お兄さまはライスのこと好き?」
「……ッ!」
言葉に詰まる。
ライスがからかってきているのは明白だ。だからと言って子供っぽく感情的に『嫌い』だなんて言えるような人間に僕はなれていない。
「ライスは、お兄さまのこと大好きだよ」
「……ッ!?」
「愛してるよ、お兄さま」
あまりにも真剣な言葉に再び言葉が詰まる。
ライスが本気で言っていることは明白だ。だからできる大人として優しく
「ライスはね、お兄さまがいないと、ひとりだと選抜レースにも出られないくらいだめな子だったよね」
あの時のことは今でもよく覚えている。レースに出ることを怖がっていたライス。『ライスがレースに出ても、誰も幸せにできない』かもしれないって悩んでいたライス。僕が背中を押して、ようやく前を、夢を見据えてデビュー戦に出てくれたんだ。
「お兄さまのおかげでライスはメイクデビューできて、菊花賞と春の天皇賞で勝って……ヒールって言われても二人で乗り越えて……」
ミホノブルボンの三冠を阻止した菊花賞。メジロマックイーンの三連覇を阻んだ春の天皇賞。心無い観客から『ブルボンの三冠が見たかった』だの『マックイーンの歴史に残る記録が見たかった』だの『勝つんじゃねえ』だの酷い言葉ばかりもらったものだ。
「それでライスは、お兄さまのおかげで、みんなを幸せにできる『青いバラ』に、みんなを笑顔にできるウマ娘になれたんだよ。夢を叶えたんだよ」
URAファイナルズを走りきって、ミホノブルボンとメジロマックイーンに『ライバル』と明言された頃くらいからライスの人気も安定してきた。
今やライスシャワーと言えば誰もが認めるステイヤーの一人だ。
「だからね、お兄さま、今度はライスがお兄さまを幸せにする番だよ」
こちらを見つめる真剣な眼差しには出会った頃のおどおどとした臆病なライスの面影はなく、立派にGⅠウマ娘となったライスシャワーがそこには居た。
「恋に恋してるんだって言われるかもしれない。だけどライスは、お兄さまのことを愛してるって、本気で思ってるよ」
小柄な身体なのに凛々しく
「お兄さまにはライスよりも幸せになって欲しくて、でも、お兄さまを幸せにするのはライスがいいなって。ライスがお兄さまの隣でお兄さまを支えたいって」
キッパリと言い切られる愛の理論。ずっと子供だと思っていた君が、いつの間にか僕よりも立派な格好いい大人になっている。
……ああ、君が僕の担当ウマ娘でなければ、学生でなければ。そんなトレーナーとしても大人としても失格なことがどうしても心の中に浮かんできてしまう。
いつの間にかうつむいてしまっていた視線を戻すと、ふわりと軽やかにライスが跳ねる。ソファに倒れる僕。
見知った天井。微笑むライス。
「だからね、ライスと、えっちなこと、しよ?」
…………え?今なんて言った…?
「最近がんばって下着とかいっぱい見せてアピールしてたし、お兄さまもそろそろライスでムラムラしてきてない?」
「…………情緒!!雰囲気!!」
「学校の中で、なんてドラマとかマンガみたいでドキドキするね♪」
今の絶対将来の約束とかする流れじゃん!
めっちゃ涙腺にきてたのに一気に雰囲気ぶち壊すじゃん!!
婚約なら間違いなくしてたけど、婚前交渉はダメに決まってんじゃん!!!!
「んしょ、んしょ……」
「待て待て待って、ライス!脱がない!!」
「あっ、もしかしてライスのこと脱がしたかった?」
「違う違う!!」
「ライス、お兄さまがどんな変態さんでもいいよ?なんでもするよ?」
「ちがああぁぁうっ!!!」
ぐちゃぐちゃになった感情のままに力いっぱいライスを押し返す。本気のライスに力で勝てる訳ないんだけど、どういう訳かあっさり退いてくれる。
ライスが離れた隙にサッと上半身を起こす。それに合わせて着崩れしたライスがソファに寝転ぶ。なんで?
「もう……乱暴にしたいのならそう言ってね?」
「違うって!」
「ふふっ、知ってる♪」
はぁ、とため息を吐く。もう僕にはさっきまでのライスのどこからが冗談でどこまでが本気か分からない。少なくとも『愛してる』までは本気だとは思いたい。
「ところで、お兄さま?」
「なに?」
するりと首にライスの細腕が回ってくる。にこりとした笑顔が目と鼻の先まで迫ってきて心臓が跳ねる。
「違うとか脱いじゃダメって言うけど、イヤって言わないってことは、ライスとえっちなことするのはイヤじゃないってことだよね?」
「……ッ!?」
言葉に詰まる。
意識していなかったけど確かに嫌とは一度も言っていないし、なんなら担当ウマ娘や学生でさえなければとすら考えてしまっていた。
僕の沈黙をどう思ったのかはわからないけど、ライスは優しく微笑んで
「じゃあ、卒業してからのお楽しみ、だね?」
チュッと右の頬が鳴り「じゃあミーティングはまた明日ね!」と今更ながら恥ずかしそうに少しだけ赤らめた笑顔のライスが身だしなみを整えつつトレーナー室から逃げるように出て行く。
「……君は魅力的な大人の女性だよ」
ライスがいなくなって、ようやく少しだけ冷静になった僕は、誰にも聞かれないのをいいことに、観念して、そう