ウマ娘短編集   作:カランコエ(Kalanchoe)

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《ラブコメ》
初発情期ニシノフラワー概念


ニシノフラワー、初めての発情期

朝目を覚ますと、今日はなんだか体がポカポカと暖かくて、キラキラと周りの物全てが色づいて見えるようになってました。

こんなことは初めてで、ルームメイトのブルボンさんに相談したかったのですが、朝練に出ているのか私が起きた時には既に部屋にはいませんでした。

 

全身が暖かいだけで熱っぽくはないですし、喉がイガイガしたり関節が痛かったりもしていないので、なんとなく病気ではない気がします。

頭はハッキリと冴えているので、調子が悪くないなら授業に出て、放課後のトレーニングをするかどうかトレーナーさんに症状を相談してから考えようと思いました。

 

 

 


 

 

 

朝ご飯を済ませ、ホームルームが始まるころ、私はいつになくソワソワとしていました。どうしても落ち着かないんです。トレーナーさんのことを考えると。

 

それに今日は何をしていてもトレーナーさんのことが頭に浮かぶんです。ご飯を食べている時は『トレーナーさんは何を食べているのかな?』とか、友人と話している時は『トレーナーさんも今お喋りしてるのかな?』とか。

 

そうしてトレーナーさんのことを考えると、胸とお腹がキュウっと締め付けられるような感覚がして、居ても立ってもいられなくなるんです。

 

気づいた時にはホームルームは終わっていて、何の話をしていたか全く聞いていませんでした。

 

 

 


 

 

 

結局、午前の授業は全部うわの空のまま終わって行きました。後で誰かに聞かないといけません。

 

それよりも昼食よりも先にトレーナーさんに会いに行こうとトレーナー室に向かっています。この調子では午後の授業にもトレーニングにも身が入らないと思うので、どうすればいいのか相談とお休みの連絡をするためです。

 

ほどなくしてトレーナー室の前まで来ました。コンコンとノックしてから扉を開け、入室します。

 

その瞬間、世界が真っ白に染まりました。

 

部屋の中一杯に広がる濃厚なトレーナーさんの香りがキラキラと輝いているように視界を染め、ワーンという耳鳴りが響き始め、何も見えなく聞こえなくなってしまいました。

 

「フラワー?こんな時間からどうした?」

 

鮮烈な白一色の中、唯一色付いて見えるトレーナーさんがパクパクと口を動かしていますが、残念なことに私には何も聞こえません。

 

「フラワー?大丈夫か?」

 

気付いた時には座っている格好のトレーナーさんに向かって足が勝手に動いていて、考えることなく、その胸の中に飛び込みました。

トレーナーさんはしっかりと向き合う形になるように私を受け止めてくれて、左腕で私を抱えながら困り顔で(つや)やかな唇を動かしています。

 

「えっと、フラワー?何かあったのか?」

 

ゆっくりと私に向かって美味しそうな右手が伸びてきます。それを見て私はーーー

 

「……フラワー、もしかして発情期か?」

 

右手を両手で包んで、口に運びました。人差し指と中指の中程までが私の口の中に収まり、ほんのり塩味とトレーナーさんの香りが口一杯に広がって、とっても美味しいです。

 

ただ、お腹の奥がうずいて仕方ありません。ゴクッとなめとったものを飲み込んでも、喉の辺りまでしかトレーナーさんを感じられなくて、余計にウズウズとしてきます。

 

舌で指を転がしながら、両脚でトレーナーさんの太ももを挟んで、キュンキュンするお腹をギュウッとトレーナーさんに押し付けるようにして、ようやくこのソワソワする気持ちが少しだけ薄れた気がします。

 

「全部聞き流されてるし、薬は飲んでなさそうだな…」

 

背中から左手が離れていってスーっと冷たい風が背筋を撫でていきます。『どうして私から手を離すんですか。』そんな抗議を込めてカプカプと指を甘噛みしながら、怒り顔を作って、上目遣いにトレーナーさんをにらんでみます。

 

「あー、多分聞こえてないだろうけど、左手もどう?」

 

私の顔の前に左手が差し出されました。まるで『食べてくれ』と言っているかのように口の方へ。

思わず怒り顔を作っていることも忘れて、美味しくいただいていた右手から口を離して、はしたないんですけど、左手に口だけでむしゃぶりついてしまいました。両手で包んだままのベタベタの右手は大事に胸に抱えておきます。

 

アムアムと左手を美味しく堪能(たんのう)していると、突如として口の中、喉の奥の方に何か小さな丸いものが押し込まれました。吐き出そうにも左手から口を離すなんて考えたくもなくて、目の端に涙が浮かぶ中、なんとかゴクッと"それ"を飲み込みました。

 

「ありがとう。フラワー。君は良い子で助かるよ」

 

優しく微笑むトレーナーさんの顔に見とれながら、ゆっくりと意識が薄れていくのを感じました。

 

 

 


 

 

 

目が覚めると保健室に居ました。

 

保健室の先生によると、私は眠っているところをトレーナーさんに抱きかかえられて来たらしいです。

 

診断によると、どうやら私は今発情期らしいです。

 

「あの、私、発情期なんて初めてなんです…」

 

そう言うと保健室の先生は快く対処法を教えてくれまして、薬を処方してくださいました。

 

トレーナーさんは私宛てに着ていたシャツまで置いていったみたいで、シャツと薬を持って自室に帰って、私の初めての発情期の日は終わりました。

 

 

 


 

 

 

翌朝、『ごめんなさい、トレーナーさん』そう心の中で呟きながらトレーナー室への道を歩んでいきます。

 

実は昨日は朝の時点で発情期なんじゃないかと思っていたんです。スマホで連絡すればいいのに、わざわざトレーナー室まで会いに行ったのも狙ってやったんです。

今日も本当は顔を合わせたらダメなのに、トレーナー室に向かっているんです。

 

コンコンとノックしてから扉を開け、入室します。

 

「フラワー?今日は休みなんじゃ?」

 

不思議そうな顔のトレーナーさんを前にして、『ごめんなさい、トレーナーさん。』そう心の中で呟きながら答えます。

 

「えっと、私、今、初めての発情期なんです」

 

困った顔になったトレーナーさんを無視して続けます。

 

「それで、発情期って、どうすれば治るのか分からないので、トレーナーさんに教えてもらいに来ました」

 

ごめんなさい、トレーナーさん。うそをつきました。発情期の時、どうすれば良いかは昨日保健室の先生に教えてもらいましたし、前々から知識としては知っています。実践したことは一度もありませんけど。

 

私は()()()に発情期を治して欲しいんです。昨日も()()を期待して、ここまで来ました。

 

「あー……フラワー、保健室行こうか。で、保健室の先生に聞こう」

 

冷や汗を浮かべながらトレーナーさんは席から立ち上がりました。

 

ごめんなさい、トレーナーさん。

 

そっと後退(あとずさ)りし、扉に手をかけ、ガチャリと音をたてトレーナー室の鍵が閉まりました。

 

「フラワー、君がしたいことは分かった。せめて俺の家に行かないか?ここは色々とマズい」

 

普段は頼りがいのあるお兄さんみたいなトレーナーさんが、ほんのりと青い顔で、震える声音で私を説得しようとしています。

そんな姿がとても可愛らしくてキュンキュンしてきます♪

 

「ごめんなさい、トレーナーさん。もう我慢できそうにありません」

 

ブワッとトレーナーさんの顔に汗が浮き、ムッと好きなヒトの匂いが私から理性を奪っていきます。

 

両手でスカートの裾をつまみ、そっとたくしあげると、スカートが上がっていくのに釣られて、トレーナーさんの視線も動いていき、ハッとした表情になって、スカートではなく私の顔を見つめてきました。

 

「だから、我慢できない悪い子のフラワーに"お仕置き"してください♡」

 

もちろん、私に"お仕置き"してくれないなら、私の方から"お仕置き"しちゃいますけどね?

 

 

 

 

 

そうして、私の初めての発情期はたった二日で(おさ)まるのでした。

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