一口怪文書
ニシノフラワーがプレイアブル化ということで、書いてる途中のお話全部放り投げて書きました
「……え?」
二段重ねのお弁当箱を開けての開口一番に困惑ぎみの声しか出なかった。
そこにはピンクのハートマークがデカデカと描かれていた。
「今日は桜でんぶを作ってみました!」
と対面に座るこのお弁当を作った少女が答える。
140センチにも満たない小柄な体躯。赤いイヤーキャップに艶やかな黒鹿毛。そして、俺の担当ウマ娘。ニシノフラワーだ。
へぇー、桜でんぶって言うのか。と心の片隅にメモしながらも、関心の大部分はハートマークの方に向いている。
「トレーナーさんは甘すぎるのは苦手かなと思ったので、お砂糖は控えめにしてみました!」
俺が口を開くより先に、フラワーが満面の笑みで喋り始める。
「メインはあなたの好きなシャケの塩焼きですよ♪付け合わせはナスの煮びたしと、きんぴらごぼうです」
お弁当箱の二段目を見せながら楽しそうにフラワーは語る。
確かに、鮭の塩焼きは俺の好物だ。それに加えてナスの煮浸しも、きんぴらごぼうも好きな料理だ。
意識せずとも
「お味噌汁もどうぞ。体が温まりますよ」
魔法瓶からカップに味噌汁が注がれ、それを手渡される。
ふんわりと味噌が舞う中にイチョウ切りの大根や短冊切りの油揚げ、わかめなどが垣間見える。
「いつもありがとう。フラワー」
「えへへ、こちらこそありがとうございます♪」
花が咲いたようにフラワーは笑う。
それに釣られて、こちらの口角も上がってしまう。
「前にも言いましたけど、私はトレーナーさんが笑ってくれたら、それが1番うれしいんです」
「それに」と彼女は続け、そこで目を閉じ、一呼吸入れる。
ゆっくりと開かれた目は、驚くほどに大人びた色を
「また背がちょこっと伸びてたんですけど、大きくなったのは背だけじゃないんですよ?」
スッとフラワーの両手が動き、どこへ向かうのかと目で追っていると、その手は彼女の胸を押さえた。
慎ましい胸を凝視してしまい、慌ててそっぽを向く。
コロコロと鈴が鳴るような笑い声が響き、シュタッと床に下りる音。スタスタとこちらに向かって歩く音が聞こえる。
「確かに、胸もちょっとだけ大きくなりましたけど、もっともーっと大きくなったものがあるんです」
未だに、あらぬ方向を向いているため正確には分からないが、恐らくフラワーは左手側の手の届くところまで来ている。
セクハラになるかもしれないと思いつつも、いかにも聞いて欲しそうな彼女の言葉に、当然の質問を投げる。
「何が大きくなったんだ?」
「ふふっ♪」と上機嫌にフラワーは笑い、
左頬に何か柔らかいものが押し当てられる。
それが何かを認識する前に「チュッ」と音を立て、それは頬から離れる。
「好きです。トレーナーさん」
左の耳元で、ささやかれる。
顔が熱くなる中、ふわりと離れて行った気配を探すように左を向くと、ほんのり赤い頬で柔らかな微笑みを浮かべたフラワーがすぐそばに立っていた。
「今はまだ子どもの私ですけど、いつかきっと、あなたのお嫁さんにふさわしいりっぱなオトナの女性になります。だから、それまで見守ってくださいね?」
大輪の花が咲くように、彼女は笑った。