ウマ娘短編集   作:カランコエ(Kalanchoe)

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《ラブコメ》
独占欲爆発ネイチャ概念

まーたしっとりネイチャ書いてるよ


ナイスネイチャの『独占力』

「トレーナーさん!私、約束通りGⅢ勝ちましたよ!早くパフェ!メロンパフェ食べに行きましょうよ!」

「わかったわかった。そんなに焦らなくてもパフェは逃げないよ」

 

 

 

「トレーナーさん、お疲れ様です。今日のお仕事が終わったら、一緒にお酒でも飲みませんか?」

「いいですよ、たづなさん。この間気になるお店を見つけたんで、そこでいいですか?」

 

 

 

「お疲れ様です!◯◯トレーナー!この後お時間ありますか?ミークのトレーニングのことで意見を聞きたいのですが」

「桐生院さん、この後は……大丈夫ですよ。カフェテリアでいいですか?」

 

 

 

「兄さん兄さん兄さん、ショッピングモールに出来た新しいお店のハニーチーズオムレツハンバーグ食べに行かない?今なら開店セールでちょっとお安いみたいだよ!」

「はいはい。どうせ行くって言うまで駄々こねるんだろ?お代は割り勘な」

 

 

 

……アタシのトレーナーさんは女性によくモテる。

贔屓(ひいき)目抜きでも優しい顔立ちでかっこいいし、物腰柔らか、困ってる人を見ると放っておけない気質で、頼まれると断れない。

真面目なのに抜けてるところが結構あって、アタシがついてないとって時々思わされる。

そういうところがモテてる要素だと思う。

 

ただ、彼の恋人になったアタシからすると女性にモテるっていうのは気が気でない。

『トレーナーさんの一着だけは誰にも譲らないから』とまで豪語して、ようやく始まった関係だけど、やっぱりアタシはいまいち自分に自信が持てない。

 

トレーナーさんが聞いたら怒るだろうけど、アタシなんかより顔やスタイル、性格の良い女の人なんてたくさんいる訳で、アタシのいいところなんて多少家事ができるくらいだ。

 

「トレーナーさん、今日の晩ご飯は何がいい?」

「今日?うーん……」

 

だからこれは、(みにく)いアタシの独占欲。

(いや)しいアタシの自己顕示欲。

(いや)らしいアタシの愛欲。

 

気心の知れたチームの子たちだけが残ってるトレーナー室で、少し声をひそめてトレーナーさんに話しかける。

ヒトなら聞こえないかもしれないけど、ウマ娘ならバッチリ聞こえるくらいの声量。

アタシのモノなんだぞってアピールするためだけのナイショ話。

 

「照り焼き……ブリがあったらブリ照りがいいな」

「オッケー。帰りに魚屋さん寄ってから帰るね」

「お願いするね。お代は後で出すね」

 

サラッと『帰る』なんて言って『匂わせ』ておく。

ニコッと笑ってるトレーナーさんはこういうことにはニブいから気づきっこない。

ビクッとウマ耳やら尻尾やらが跳ねてるチームメイトにはしっかりと気づかれてる。

 

でも、聞こえてるはずなのにニコニコしてる子もいる。

その余裕がどこから来るものなのか。

卑屈なアタシの頭の中には意地の悪い空想ばかり広がる。

 

実は、アタシより自分の方がトレーナーにお似合いだと思ってる。

実は、とっくにトレーナーと浮気してる。

実は……

 

勝手に悪い想像をして、勝手に嫉妬するような自分に嫌気が差しながらも妄想は止まらない。

 

「じゃあ、アタシはこれで。おさきー」

 

そんなドロリとした自分の闇に耐えきれなくなり、崩れた顔を誰にも見られない内にアタシはトレーナー室を飛び出した。

 

 

 


 

 

 

ジュウジュウと音をたて、香ばしく甘い香りが(ただよ)うキッチンに「ただいまー」なんてのんびりした声が届く。

 

今日持ってきた物が見つからないようにお祈りしながら、愛想良く「おかえりー」なんて返しておく。

 

「ネイチャー、晩ご飯ありがとう。いつも助かるよ」

「どういたしまして。汗かいてるでしょ?お風呂沸かしてあるから、先に入ってきてよ」

「本当にいつもありがとね」

「気にしないで。ほら、とっととお風呂行って」

「はーい」

 

少年のような笑みを浮かべ、手を振りながら脱衣所の方へ消えていくトレーナーさんを見送る。

 

学園では頼れる大人として振る舞っているが、彼の本質は少年だ。

 

甘いものが好きで、苦いものが苦手で、

照り焼きやケチャップが好きで、ピーマンやシイタケが苦手で、

 

トレーニング中は落ち着いた大人の顔をしてるけど、

重賞レースが終わった後にアタシに折り紙のトロフィーを渡す時は子供みたいに恥ずかしそうな顔をしていた。

 

いつだったか彼は言った。

『ネイチャには色々とカッコ悪いとこ見せたけど、他の子には頼れる大人だって思って欲しいんだ』

 

その宣言通り、トレーナー室でも、レース場でも、お出かけ中でも、あの屈託のない子供っぽい笑顔をアタシ以外に見せたことはアタシが知る限り一度もない。

 

あの笑顔だけはアタシだけのものだ。

 

それを再確認して、アタシの独占欲は収まるどころか、もっともっと強くなる。

 

彼の笑い顔も、泣き顔も、辛い顔も、苦しい顔も全部アタシだけのものにしたい。

 

アタシ以外の女を見れないようにしたい。

 

そのために今日は覚悟と用意をしてきたんだ。

 

コンロの火を止め、シャワーの音に耳を澄ます。

 

まだお風呂から出てくる気配はなさそうだ。

 

準備してきた物をどこに隠そうかと悩みながら、彼が出てくるのをアタシは心待ちにしていた。

 

 

 


 

 

 

「ごちそうさまでした!」

「お粗末さまでした」

「いやー、美味しかった!」

「ふふ、ありがと」

 

それなりに量を作ったのだが、この人は「美味しい美味しい」と言いながらペロリと(たい)らげてしまった。

 

「後片付けはやっとくから、お風呂入っておいで」

「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうね」

 

外泊届がどうの、なんて話はしない。

アタシが夕飯を作って、お風呂を沸かしてる日は外泊する日だって決まってるから。

 

こういう二人だけの合図を確認する度に、アタシたちホントに付き合ってるんだなって実感がフツフツと湧いてくる。

思わず頬が緩んでしまうほどに。

 

結局隠し損なった秘密兵器を手に、ニヤケ顔を見られないようにそそくさと脱衣所へと向かった。

 

 

 


 

 

 

お風呂から上がったアタシの姿を見た途端、トレーナーさんの視線はアタシに釘付けになった。

 

……計画通りで嬉しいけど、やっぱこの衣装めっちゃ恥ずい。

 

「ネイチャ、その格好……」

「チアガール、好きなんでしょ?」

 

トレーナーさんの視線が顔からウマ耳、下がっていってお腹、太ももと動いた後、バツが悪そうに顔に戻ってくる。

 

キングと一緒に応援団やってた時に、いつもより熱い視線を感じたからなんとなく察してたけど、この家でチアガールの薄い本を見つけた時は途方に暮れたものだ。

 

まあ、今日はそれを存分に利用させてもらうつもりだけど。

 

「アンタの一着だけは、絶対誰にも譲らないから」

 

それだけ言って、アタシは強引にトレーナーさんを寝室へ連れ込んだ。

 

 

 


 

 

 

「ヤキモチ焼いてるネイチャ先輩可愛いよねー!」

「……分かっててトレーナーとベタベタくっついてんの?あんた、いい性格してんね?」

「だって、可愛いじゃん!ネイチャ先輩のヤキモチ!ガンバってトレーナーさんにアピールしてるとことか!」

「……それはわかる」

 

 

 

「なんで!私と仲の良い男性トレーナーさんは!みんな担当のウマ娘さんといい感じなんですか!」

「いやー……そのー……」

「別にイチャイチャしてるのはいいんですよ!私だってあのくらいの時はトレーナーさんに恋しましたし、当人たちが幸せなら邪魔するつもりもありません!」

「それは……まあ、ありがとうございます」

「でも!私も!それそろ身を固めたいんですよ!すみませーん!日本酒二合お願いします!」

「すいません!お冷やもお願いします!」

 

 

 

「◯◯トレーナー!昨日はありがとうございました!」

「大したことじゃないですよ。桐生院さん」

「お礼と言ってはなんですが、これを受け取ってくれませんか?」

「いや、お礼なんて……水族館のペアチケット?」

「はい!この前ミークと行ってきたのですが、とても喜んでくれたので、◯◯トレーナーもぜひナイスネイチャさんとどうでしょうか?」

 

 

 

「あーあ、兄さんと結婚したいなぁ」

「法律上不可能だし、俺はネイチャと結婚するつもりなんだけど?」

「内縁の妻ってことで家に置いてくれない?家事はそこそこできるし、体型はお義姉ちゃ(ネイチャ)んとそっくりだから、兄さん好みだと思うよ?」

「はよ外行って、男見つけてこい」

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