めっちゃアプローチしてくるミーク概念
この作品を書くにあたってミークのイベントを見返していたのですが、ミークってちゃんと敬語使うキャラだったんですね
桐生院さんには基本タメ口なので敬語喋れないキャラだと思ってました
本年もよろしくお願いします(激遅)
今年の目標は活動報告に上げてます
押し掛けハーレム、ハッピーミーク
私と初めての担当ウマ娘とのURAファイナルズ挑戦も終わり、トレセン学園の中庭にある桜が散り始め、みんなが新学期にも慣れてきた頃。
今日の分のデスクワークももうすぐ終わろうかと言うところ。コン、コンと一拍置く独特なリズムのノック音が西日の差し込むトレーナー室に響く。
また来たのかと辟易とする一方で、自己表現が得意ではない彼女が頑張ってアピールしていると考えると微笑ましくも思えてしまう。だからこそ、強く言えなくて現在進行形で困っているのだが。
「……こんにちは」
返事を待たずに扉を開いてトレーナー室へと入って来たのは、紫色をした制服との対比がよく映える新雪のような白い髪と肌のウマ娘だ。相も変わらず幼い顔立ちに不思議と無表情がよく似合っている。
「いらっしゃい、ミーク」
私の言葉にニコリともせずにコクンと頷いたミーク……私の同期である桐生院トレーナーの担当ウマ娘ハッピーミークは、URAファイナルズが終わった頃から、トレーニングが終わって私の担当ウマ娘が帰った後のこの時間帯にこのトレーナー室まで足
そして、するりと音も立てずに膝の上に。
「なんで?」
「……ハグ、しよ?」
「もうしてるんだよなぁ……」
私が目の前で愚痴ろうとミークは気にも留めない。数年間の付き合いでそれくらいは私にも分かっている。それでも今日こそはミークに積極的なアプローチを控えてもらおうと決心してきたのだ。
「離れて、ミーク」
「……誰も見てないよ?」
ミークはこてんと表情を変えずに首を
ただ学園内で学生と向かい合って抱き合っている状況はどう考えてもよろしくない。
「ミーク、君が私のことを好いてるのはわかった。でも、私はまだトレセン学園のトレーナーで居たいから、その好意は受け取れないよ」
「……どうして?」
「どうしてって、生徒と恋仲になるような人は教職としてあまり世間体がよろしくなくて仕事していけなくなっちゃうからだよ」
「……バレなきゃ大丈夫。……ぶい」
「ぶいじゃないが」
ペシペシと抗議の意を無防備な背中に示してみるが、ユラユラとご機嫌に揺れる尻尾の彼女には届かない。ましてや、
「……私のこと、嫌い?」
などと酷い殺し文句が返ってくる始末。
ここで自分に好意を寄せてくれている少女にハッキリと嫌いと言えるほど私の心は強くないし、ここでハッキリと嫌いと言えるなら今まさにこの子のことで困っていたりなどしない。
「嫌いじゃないよ。でも私のような大人には立場や体裁というものも大事でね」
「……むん」
わかっているのかいないのか全くわからない相槌が返ってくる。感性が独特なだけで、こんな迂遠な言い方をしても真意を察してくれる賢い子のはずなんだが、はてさてどうしたものか。
などと考えていたが、ちゃんとミークは理解していたのかもしれない。
「……私と私のトレーナー、どっちの方が好き?」
「なんて?」
「私と私の「いや聞こえなかった訳じゃないんだけどね?」
ミークと葵さんの?どっちの方が好き?
「何その質問?どう答えても角が立たない?」
「……答えなくてもいいよ?」
「そっかぁ」
じゃあ、なんで質問したんだなんて野暮なことは言わない。ミークは不思議な発言をよくするし、理由を聞いても基本的に理由なんてない。この子の感性からするとそれが普通なのだ。
まあ、今回に限っては理由があったみたいだけど。
「……どっちも同じくらい好き。私、わかった」
「そうだね」
「……私のトレーナー、あなたが好き」
「うん?」
「……私がトレーナーにあなたをプレゼントする」
「んん?!」
「……トレーナーは大人。大人なら大丈夫だよね?」
「いや、まあ、それはそうなんだけど」
「……みんな幸せ。ぶい」
「ぶいじゃないが」
葵さんへの酷い流れ弾があったが、それが些事に思えるほどの理解不能な発言が私の思考を混乱させる。
「君がこの部屋に通ったり私にハグしたりするのは、私を葵さんにプレゼントするためかい?」
「うん」
「もっと自分のことを大事にしなさい」
「……でも、私はあなたのこと大好きだよ?」
さらりと語られる恋情。全く変わらない上目遣いの無表情。
くるくると回る耳と上下に揺れる尻尾が彼女の内心を明確に表している。思案、混乱、上機嫌。冬の湖面のような表情の裏では夏の山林のような心情がさざめいているのだろう。
じっくりと時間をかけ、思考をまとめたミークがゆっくりと口を開く。
「……男の人はハーレム好き、聞いた。私とトレーナーでハーレム。むん」
「えっ」
「……あの子もハーレム?」
「いやいやいや」
ミークが私の前であの子と呼ぶのは私の担当ウマ娘だけだ。あの子が私のことをどう思っているかなど私は知りもしないが。
ハーレム?三人?しかもJKが二人?
「いやいやいや、年齢の差があり過ぎるし、日本は一夫一妻制だから結婚もできないよ?」
「……それでいいよ?」
「いいのか……」
「……好きな人と一緒に起きて、一緒に眠れる。幸せ」
「そっかぁ」
にこりと目の前の真一文字が三日月形に曲がる。本人は意識していないのだろうが、ここぞとばかりにいい笑顔を披露するのは本当に反則だ。
それよりも、もう嫌いとか迷惑だとか好意自体を否定する以外にミークを止められないのか?
なんとか穏便に、と思考を再起動させているところに、コンコンコンと規則正しいノックが。
「桐生院です。こちらにミークは来ていませんか?」
扉の向こうからの葵さんの声。私が返事をするよりも早く、するりと扉の前へと降り立ったミーク本人がトレーナー室の扉を開く。
「ミーク!やっぱりここに居たんですね!」
「トレーナー」
するりと喜色満面の葵さんの影に隠れたミークがいつもの無表情のまま両腕を回す。
「ミーク?どうしたんですか?」
葵さんの問いにミークは答えない。
「ミーク?」
葵さんを抱き抱え、ミークが近付いてくる。
そして、二人揃って膝の上に。
「ミーク!?」
「なんで?」
私とミークに挟まれた葵さんが逃げ出そうと体を
葵さんが動く度に色々と当たって余計な感想ばかり脳裏に閃く自分に嫌気が差す。ミークは未成年で学生だと思えば無視できなくもないのだが。
……そういえば私にも葵さんにも苦痛を与えずに二人
などと詮無いことを考えている間に葵さんが混乱から立ち直る。
「ミーク、
葵さんの呼び掛けにミークは応えない。
「ミーク、葵さんの言うことくらいは聞いてあげてくれないか?」
私からの視線を受けてもミークは無表情を崩さない。
「あの、樹さん」
「……なんでしょうか」
頬を赤らめた葵さんが上目遣いで申し訳なさそうに口を開く。
「その、申し訳ないのですが、ミークが離れてくれませんし、結果として、私も身動きできないので、えっと、しばらく、このままでも、よろしいでしょうか…?」
「……仕方ないですね」
私の許可に満面の笑みを浮かべる葵さん。私に好意があると知ってからだと、かなり印象が変わって、というより好意を隠す気すらなさそうだ。
「えへへ♪」
……ただでさえ密着度合いが高いのに胸に頬を擦りつけるのはやめていただきたい。
そんな私たち二人の様子にミークはただ満足そうに目を細めるだけだった。
この後すぐに私の担当ウマ娘がこのトレーナー室までやって来てずるい!と言いながら私の背中にしがみついてくるのだが、それはまた別のお話。
余談だが、もしかしなくても私があまりにも鈍感なだけで、最初から三人にはアプローチされ続けていて、ミークが痺れを切らして発破を掛けに来ただけだった可能性が…?と身動きが取れない中、一人戦慄していたのだった。