ウマ娘短編集   作:カランコエ(Kalanchoe)

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《ラブコメ》
意外と親愛度高い系リトルココン概念

いつもご清覧、お気に入り、ここすき、誤字報告等ありがとうございます
モチベーションになります
まあ、相も変わらず徒然なるままに書いているのですが



〈リトルココン〉
幼なじみのリトルココン


 トレセン学園から少し離れた寂れた公園。暑苦しい喧騒から離れたい時に足を運ぶそこに、見慣れたボサボサ頭が居たのはきっと偶然ではないのだろう。

 

「よっ」

「……なんでアンタが」

 

 言ってしまってから(ほぞ)を噛む。邪険に扱う必要はないじゃん。数少ない()()()()なんだし、カンジ悪いって自分でも少し思って直そうとしてるんだし。

 ……いやでも、コイツに遠慮する必要なんて無いか。腐れ縁だし、連絡も無しに会いに来るバカだし。

 

「ご挨拶だなぁ。わざわざ会いに来てやったのに」

「アンタに会いたいなんて一度も思ったことないけど?」

 

 ヘラヘラと笑う男に嫌気が差す。このアホは照れ隠しだとでも思ってるのだろう。本当に一度も会いたいなんて思ったこと無いのに。

 

「まあ、座んなよ。ジュースもおごるからさ」

「帰りたいんだけど?」

「まあまあ」

 

 ご丁寧にもコイツの座る隣にはわざわざハンカチが敷かれていて、その横にスポドリやらコーヒーやら蛍光色のよくわからん飲料やらのペットボトルがいくつも並べられている。

 走って逃げればヒトでしかないコイツは絶対についてこれない。ただ、ちょっと、好みのスポドリが置いてあったから。そんな言い訳を誰に言うでもなく、ただ思い浮かべて、敷かれたハンカチの上に座った。

 

「まずはココンの重賞勝利に、カンパイ!」

「……」

 

 目の前で空を切るペットボトルを無視してスポドリに口をつける。何が面白いのか笑い声が隣から聞こえるけど気にしない。アタシが気にしないくらいの声量だからであって、何(しゃべ)っていいか分からないからではない。

 

「改めて、重賞勝利おめでとう。ココン」

「……ん」

「最後の追い込み、すっげぇカッコ良かったよ」

「は? 見る目無さすぎ。あれは中盤の消耗戦がメイン。最後は出来レース」

「レースとしてはそうかもな。でも、俺は勝つために本気で走ってるココンがカッコ良いと思うからさ」

「……そ」

 

 コイツが嘘を言わないことは長い付き合いだからよく知ってる。だからこそ、他人のペースを乱す陰湿な中盤戦を見た上で、カッコ良かったと褒めてくれてるのは、こう、なんか、むず痒いような感じがする。

 

「中盤の6番をせっついて焦らせてる時の得意そうな顔も良かったんだけど」

「もういい」

「もうちょっと語りたいんだけど」

「もういいって!」

「照れちゃってかわい痛ッ!蹴り!蹴りはシャレにならないからやめろって!」

 

 わざわざ今日は蹄鉄着けてないことを確認してから蹴ってやってるのに。てゆうか蹴られたくないなら、そのわざとアタシを揶揄(からか)うのやめなよ。

 

「……その体勢で蹴るのしんどくないか?」

「別に」

「こんなことでケガしたら怒るからな?」

「大げさ過ぎ」

「本気だからな!」

「知ってる」

 

 相変わらず一言多い。アンタがお人好しなのはずっと前から知ってるっつーの。

 ……立ち上がったから気付いたけど、ちょっと見ない間に背が伸びてる。ガタイもゴツくなってる気がする。

 

「それで次走はどうすんの?」

 

 座り直した腐れ縁の言葉にハッとする。そう雑談。飲み物飲んで適当に喋って今日は終わり。

 顔を叩いて雑念を消す。完全休養日だからってコイツに構い続けてる理由は無い。とっとと終わらせて他の事をするべきだ。

 

「ココン?」

「次走はまだトレーナーと相談中」

「そっかぁ。まあトントン拍子には行かないわなぁ」

 

 残念そうに勘違いしてる幼馴染みを……テキトーに(けな)そうと思ってたけどやめる。トレセンに居る訳でもないしアタシが近況報告してる訳でもないのに分かる訳ないし。

 

「目標は決まってる。春天」

「マジか!」

「ステップレースと、間でどっか出るかで相談中」

「次のレース決まったら教えてくれよ!絶対応援行くから!」

「絶対教えない」

 

 今回だって重賞勝利とはいえ初勝利な訳でもないのに連絡もなしで会いに来るような奴なのに、レース場まできた日には面倒なことになるのは考えるまでもない。

 だから教えない。春天は出るならどうせ分かるだろうから仕方ない。LANEに鬼メッセされるよりはマシだと思っておく。

 

 そんな感じでひとしきりコイツの話を聞いて、目の前の男がペットボトルに口を付けたところを見計らって口を開く。今から言うことに変なとこで水を差されたくないから。

 

「まだトレーナーの勉強してんの?」

 

 ちょっとキツい言い方になったけどコイツなら気にしない、はず。実際、気にしてる様子が全然無い。ペットボトルに口付けたまま首降ってるし。

 

「もうアタシのトレーナーにはなれないのに?」

 

 いつだったかもう忘れた、でも忘れられなかった約束。いや、アタシは了承しなかったから約束でもなんでもないんだけど。それでも目の前の幼なじみが将来の夢を決めた約束。

 ハッキリ言って負い目とかはない。アタシは蹴ったのに、トレーナーになるって決めたのはコイツだし。

 

「ココンのトレーナーにはなれなくても、やっぱり俺はレースが好きだから」

 

 まあ、アンタならそう言うよね。昔っからアンタは諦めだけは悪いから。

 

「アンタはトレーナーに向いてない。甘過ぎる。担当に厳しくとか出来ないっしょ」

「……ココンが優しい。今日は雪でも降るか?」

「蹴るよ」

「ごめんて」

 

 優しくしたつもりなんて全く無いけど。変な茶々入れが照れ隠しなのは分かってる。それを指摘するのは面倒だけど。

 

「つまり」

 

 不自然に言葉を切って口の端を吊り上げる。小さい頃からのコイツの癖。こういう時のコイツは大抵いつも以上にくだらない。

 

「ヤキモチ妬いてるんでしょ。ココンが。トレーナーになった俺の担当に」

 

 ……。

 

「アンタのその顔、嫌い」

「おっ?普段の顔は好きってことか?」

「うっざ」

「ごめんごめん。実はこの近くに穴場っぽい猫カフェ見つけてあるんだけど行く?」

「……行く」

 

 嫌いだったらわざわざ一緒に居る時間作ったりしないっつーの。そんくらい知ってるでしょ。バカ。

 

 

 


 

 

 

 トレセン学園に戻って来てすぐ。陽が傾いて紅く染まる中。

 

「あっ、リトルココン。彼とは会えた?」

「は?」

 

 正門の辺りで偶然ビターグラッセと出会った。ジャージだし汗っぽいし外周帰りかな。

 てか彼って言われても情報少なすぎでしょ。

 ……いや、アイツのことだとは思うけど、それで合ってたらなんか(しゃく)だ。

 

「ほら、私たちと同年代で、いつも髪のセットもおざなりで、毎回君のレース見に来てる彼」

「……ああ、やっぱりアイツか。会ったよ」

 

 単純に毎回アタシのレースを見に来るようなヤツは少ない。その中でビターグラッセが覚えてそうなヤツはアイツくらいだ。

 チーム<ファースト>は個人主義のチームとはいえ、近場のレース場なら観戦に行くこともなくはないから、ビターグラッセがあのバカのことを知っていても違和感はない。

 違和感はないのだが、なんとなく面白くない。

 

「良かった。LANEで彼から電話がかかってきた時はどうしようかと」

「は?」

「え?」

 

 LANEで?電話?アイツが、ビターグラッセに?

 

「先に君に電話したみたいなんだけど繋がらなくて私にかけたみたいだよ」

「……」

 

 ……そういえばスマホの電源切ってた。まあ、アイツから事前に連絡がなかったんだからアイツの自業自得でしょ。

 

「私もリトルココンがどこに行ったかなんて分からなかったけど、休養日に学園内にはいないのを知ってたからさ。それだけは彼に伝えたよ」

「それだけ?」

「それだけだよ」

 

 アイツもアタシが休みの日は外に居ることぐらいは知ってるけど、そもそもアイツ、トレセン学園まで来てアタシが居るか確認しに来てたのか?

 いや、そもそもなんでアイツはビターグラッセの連絡先を知ってた?

 

「あー……彼とは単にレースの話で意気投合しただけの友人で……君たちの仲を引き裂く気はないよ」

「アタシとアイツはそんなんじゃない!!」

 

 結局、アタシが欲しい情報は得られなかったし、なんか余計にムカついた。

 こういうムシャクシャする時のルーティンはチーム<ファースト>内では決まってる。

 

「芝3200」

「明日ね明日。リトルココンは今日完全休養日だろ?」

「…………仕方ないか」

「よし!じゃあ明日の昼に併走だな!」

「模擬レースの間違いでしょ」

 

 釈然としない気分のままシャワーに向かうビターグラッセと別れる。

 完全にアタシが悪いんだけど、アイツのせいでイライラしてるんだと思うと余計にムカつく。理不尽だとは思うけど八つ当たりにスタンプ爆撃してやる。

 

 ───そうしてスマホを触り始めて少し。

 

『どしたん?寂しいん?』

「……きっしょ」

 

 画面の向こうの()()()顔が見えた気がして、急激に冷静になれたから一週間くらい既読無視してやった。

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