ゴルシがバレンタインにチョコを渡すお話
三点リーダーから行間を読んだ結果
「ハッピーバレンタイン。プロの味には劣るでしょうが、心を込めて作ったチョコレートです。食べていただけますか?」
「ハッピーバレンタイン☆よ~く味わってね。アタシの手作り…マ・グ・ロ・の・さ・し・み★」
突如差し出されたチョコとマグロを前に、アタシたちのトレーナーは透き通った笑顔を浮かべ、
「ありがとう。マックイーン。ゴルシ」
と本当に嬉しそうに答えた。
これは面倒臭くなってツッコミを放棄した顔だ。
マグロに対して何のリアクションも取らないのは、海に対する宣戦布告だと思うんだけどな。
何の疑問も
「はぁ…」
アタシらしくないため息を一つ。カフェテリアの机に突っ伏し、マックちゃんの紅茶のポットを片手で
「自己責任です。今からでも遅くありませんわ。とっとと行ってらっしゃいまし」
リマン海流くらい冷たくマックイーンが言い放つ。
アタシのせいなのも、今からでも全然遅くないのも頭では分かってる。だからこそ、大人な態度のマックイーンに子供っぽいアタシが反論する。
「だけどよぉ、ゴルシちゃんからのチョコがこんな普通のチョコでいいのかよ?」
今日ずっと持っているピンクのラッピングに赤いリボンが
どう見ても普通の本命チョコだ。
ここ一週間くらい知恵を絞って、トレーナーが楽しめそうな面白いチョコレートをずっと考えていたのだが、結局良さそうなのを思い付かなかった結果がこれだ。
たまには真面目に感謝と好意を伝えても面白いんじゃね?とか一瞬でも考えた過去の自分が死ぬほど憎い。
「トレーナーさんは貴方のチョコがどんなものでも必ずや受け入れてくださいますわ。気負わずに貴方らしく行ってらっしゃいまし」
さっきと一転して金星くらい暖かくマックイーンは笑顔で語りかけてくる。
が、その笑顔がグニャリとイジワルな猫みたいに歪んで付け加えられる。
「私と一緒に渡していれば良かったのに。なぜそこで逃げてしまったのですか?」
あの顔は答えは分かってるけど、アタシの口から直接聞きたいって思ってる顔だ。ブリティッシュショートヘアくらい性格悪いぞ、と心の中で毒づく。
単に恥ずかしくなったなんて"ゴールドシップ"らしくないこと絶対に言えない。結局、恥ずかしさを
アタシが煙に巻こうと口を開くのに合わせて、マックイーンが微笑を
「ゴールドシップ。そのチョコレートはトレーナーさんを想って作ったのでしょう?」
「……当たり前だろ」
「なら、それは既に"普通のチョコ"ではありませんわ」
一呼吸入れてマックイーンは続ける。
「貴方の想いのこもった、世界にたった一つだけのチョコレートです。自信を持って、行ってらっしゃいまし」
……キザったらしいセリフだが、マックちゃんが言うとなかなか
今度、このお礼にコーンポタージュ味の例のアイスをプレゼントしてやろう。
「……ありがとな、マックイーン」
「ようやく元気になりましたわね。さぁ行って、思いの丈をぶつけてきなさい」
「あたぼうよぉ!タケもキノコもスギノコもぶつけてくるぜぇ!」
「あー……な、なぁ、トレーナー。渡したい物が、あるんだけどさぁ……」