新サクラ大戦2 巴里編 ~失われた愛を求めて~   作:ユウーザ

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 蒸気化学の発達した1941年。
 1930年の降魔大戦以来、日本発祥の怨霊"降魔"など、活発化した霊的驚異が世界に蔓延っていた。
 しかし、その牙は、霊力によって都市と人を護り癒やす華撃団に食い止められ、全世界中のそれらを統括するWLOF(世界華撃団連盟)によって平和は保たれていた……と思われていた。
 今代のWLOFの事務総長に立っていた"プレジデントG"は、降魔大戦から生き延びていた上級降魔(上位の降魔)"幻庵葬徹"だった。
 それに加えてWLOF中枢幹部が、『神』を自称する不死の魔人"ヴァレリー・カミンスキー"の配下の人形に成り変わられていた。
 世間からのWLOFの信用は薄くなり、その解体は時間の問題となり。
 世界の平和は崩れかかっていた――

 そこは愛の国仏蘭西(フランス)。 
 恋の首都"巴里(パリ)"の街並みは文にも書けない美しさ。
 人々が笑い、行き交っていく。
 その中に割って入るのは、巨体。
 紫と黒の異形が、人々の畏怖と恐怖を掻き立て、足を止めるか、後ろに走らせる。
「やーれやれやれ……」
 その声の主は、ブーツで巴里の地を踏みしめている。
 その様相、正しく奇術師(レ・マジシヤン)
 金がかった栗色の髪、紫の裏地を出した黒いジャケットと、全身に星をてらったスーツが、細い手足を引き立てている。
 吊り目気味の中の、使命の瞳を、怪物に向けている。
「街に迷惑だろうが」
 手首を捻って放ったのは、トランプ。 柄はダイヤのジャック。
 その一枚が異形に向かって回り吸い込まれると、その身体から十一個、橙の煙が爆ぜた。
 神のおわす天に向って雄叫びを上げる化生。 その青空から弾丸の雨が、魔物の全身に降り注ぐ。
「! 狩人(シャスール)ね……」
 マジシャンが仰ぎ見る空にいたのは鳥ではない。 青い羽根と、機械の羽根を広げた女子だ。 ボロボロに汚れた黒い制服を着ている。
 短い黒髪をたなびかせ、吊り気味の目は、瞳は、地上の目標を見据えている。
 よく見れば青い羽根の正体は、風にたなびくボロボロの青いコートだ。
 両手で携える一丁、大型機関銃は火を噴いている。
 周囲を回る翼人からの鋭い雨に撃たれて、辺り一面に異色の血を噴き出す怪物の正面へ、放られるは、スペードのエース。
 雨あられの中に、青い花火が大地に咲いた。
 爆煙が消えて、魔性の屍が晒されても、少女は引き金の引くのをやめず、雨が止んだのは屍体が溶けはじめたときだった。
 少女の瞳は獲物が溶けるのを見据えると、非対称の翼は広がり、明後日に飛ぶ。
 その軌跡を見上げる奇術師は、おつかれさん、とハートの2を真上に飛ばす。
 赤と桃の二つの花火が打ち上がった。




(旧作)第一話『花の都に降り立つ桜』
Partie1


 怪物の討滅が奇術師と狩人によって行われた丁度その後、巴里駅では。

 有名文化への期待、新天地への希望、帰郷による懐かしさ、様々な思いを以て、列車から駅に降りる人々の中で、大きく息を吸う者がただ一人。

「着――い――た――っ!!!」

 満面の笑顔で、背の安いリュックに、肩にかけてるのは、着替えを大きく詰め込んだ安めのバッグ、茶髪と純白のワンピースを震わせて、長いケースを片手に大の字で空に向かって目一杯の喜びを叫んだ。

 周囲の注目を集めた彼女の名前はアニー・スリジェといった。

 

 ことの始まりは二日前、フランスの田舎村。

 母の乳を飲んでいた頃からの親友の片割れが、愛しい男に操を捧げたと告白してきた夜だった。

「ううううう嘘でしょエマ!? もうお腹に赤ちゃんいるだなんてっ!?」

「ま、まだわかってないの! いいことアニー、あの人とうちの親、ぜんっぜん仲悪いから、このことはペー(お父さん)メー(お母さん)には当分黙っといて……お願い」

「うん、わかった。 ……けどさ、まさか同い年で、まだお酒飲めてないのに、男でそこまで追い越されるなんて……」

 家が向かい同士のエマが、遠くまで行ってしまったような錯覚を覚えた。

「ふふふ……痛みと一緒に、アレ……ホントの幸せと嬉しさを味わったわ。

 ま、あんなすごい感じ、男子に縁のないお馬鹿娘には二十年早いでしょーねー」

 むっ、と悔しくなったアニーは、こんなことをのたまった。

「いーでしょういーでしょう、巴里の都会から良い男をここに引き連れてあげますよーだっ!」

 その明日に家から荷物をまとめ上げ、巴里の美しい文化を村中の数少ない資料で大分かじり上げた。

「歌劇団……歌って踊る歌劇団……すてき……」

 列車代と宿泊代を両親と村長からせびり倒した。

「どうかっ!! エマよりお先越したいのっ……!!」

 その翌日たる今日、電車に乗り込み、初めての興奮と歓喜の中で、巴里に着いたのだった。

 

「ふふふふふ、エマ・モローさん。 私は、憧れの巴里に来た……!

 あなたみたいな友達いっぱいできてる私なら~、男なんてちょちょいのちょーいさー!」

 実際、狭い村の中で知り合いではない者はおらず、同年代から年下の子供全てと交友関係ができている。

「巴里といったらこーんな歌~~。

 ぱーりー♪ はなーさき~~ボンジュール!」

 小さく笑われてるのも気づかずに、歌を口ずさみながら、大荷物をまとったその身で跳ね回り、老人の近くで挨拶をした。

 その後も歌の合間に挨拶を繰り返していき、周りに笑われながらも、やがて駅員に切符を切ってもらった。

 その調子で駅を出ていく。

「これこれ、はしゃいじゃいかん!」

 るんるんとスキップしていくアニーへ、初老で太った男性が大声を上げた。

「人にぶつかって大怪我させたらどうするんだね」

 あっ!とアニーは気恥ずかしくなり、顔を真っ赤にして周りの人々に頭を下げていく。

 そんな初々しい様子に微笑みつつ、初老の男はこう聞いてきた。

「田舎からのおのぼりさんかい?」

「はいっ! 我が友に対抗すべくして、この都で良い男見つけて何やらを前提にお付き合いをしたく思って上京致しましたっ!

 アニー・スリジェでっ……」

 顔を赤くして、慌てて口を塞ぐ少女。

「いいい今のはお忘れくださ~~いっ!」

 大荷物抱えた少女は風か光のように走り去る。

「はっはっは、巴里も一層楽しくなりそうだなぁ」

 帽子を整えながら、初老の男性……ジム・エビヤン警視は小粋に笑う。 しかし、轟音を聞いた途端に、顔を厳しく顰める。

 

 フランス車が、公道と歩道の境目で、横転している。

 その下には、女性が血を流して下敷きになっている。

「おいおい……早く病院に連絡を」

「そうよ、この人死にそうじゃない!」

「ひでえ運転だったぞ、昼間っから酔っ払ってたのかよ……!?」

 顔を青くする民衆の中には、駆け足を止めたアニーもいた。

 しかしアニーの面持ちは疑問で溢れ、頭と心にに苛立ちが募っている。

「……皆さんは助けないんですか?」

「え、しかし……俺達よりも助ける術を知ってる人が来るんだ」

 少女の拳が握り込む。

「それまで、この方に、苦しんでろと言うんですか」

「お、男が女より強いからとでも言うのか!?

 こんな重たい車、俺達にどうしろというんだ!?」

 拳の握り込みと共に、少女の肩が震える。

「……都会の男性方は、非力なんですね」

 アニーは車に近づいていく。

 男達の静止を聞かないその様を、遅い足取りで駆けつけてきたエビヤン警視も目にする。

 大荷物を下ろし、腰を落として片足でしゃがみ込むと、アニーは車と地面の境目に指を入れる。

 ふんっ!と、力強く腕を上げれば、車が高々と持ち上がっていた。

 エビヤン警視は目を見開いた。 民衆の半数も同様、もう半数は腰を抜かした。 女性の痛みが少しは引いた。

「よっ、とっ、とっ……」

 車のバランスを取りつつも、誰もいない場にずてんと乱雑に置くアニー・スリジェ。

 ふ――っ、と両手の煤を払い、手に残った汚れに気づかず、地面に置いた荷物を持ち上げ、女性の方を向くと、それを遮る民衆が奇異と畏怖の視線をこちらに向けていた。

「き……君、何者?」

「えっ? ……恥ずかしながら田舎者で……」

 アニーの口どもる様に、どっ、人々が男女入り乱れて、少女一人に近づいてくる。

「霊力者か何か!?」

「とんでもない豪腕だったよ!?」

「華撃団にいるの!?」

「ジュスタンの後輩だったりするの!?」

 いきなりの事態に、田舎娘の頭脳は混乱を極めた。

(なに!? 都会のルールなの!? 訳わかんないんだけど!?)

 市民と女子一人の間に、エビヤン警視がなんとか割って入ってくる。

「君達! 君達……この娘は私が聴取するから……ね? ……え」

 エビヤン警視が振り返ると、少女はどこにもいなかった。

 代わりに、強い足跡が残っていた。

 

「はーっ、はーっ、はーっ……うれ?

 ここどこですか?」

 いつの間にここまで来たのか、アニーの周りにはカフェばかり。

「ボンジュール。 そんな大荷物でどこから走ってきたの?」

 若い声にアニーは振り向くと、パラソル下の丸机の前、椅子に腰掛けている、若い奇術師がいた。

 髪は金がかった栗色で、精悍で細めの顔立ち、服は紫の裏地を出した黒いジャケットと、全身に星をてらったスーツ、細く長い手足が彼を美しく魅せようとしているが、やる気のない眼差しと、手袋で持った軽めの酒ビンが、それをダメにしている。

「……まじ、しやん、さん?」

「うん、マジシヤン」

 瓶のない方の手袋を歯で脱がし取り、それを片手で丸めて包み、そのまま軽い拳を何度か軽く振って、五本の指を開くと……。

 幾多の花びらと共に白い鳩が舞った。

「わあああああ!?

 え!? なんですかいまの!?

 タネも仕掛けもございませんって奴ですか!?

 はじめて見ました手品なんて!!」

 興奮する女子の問答に対して、酒瓶を飲む手品師。

「……きみ、田舎から来たの?」

 小動物的にこくこくと頷く娘。

「田舎出にしてはまぁまぁ良い服じゃん」

 突然の賛辞に、アニーの頬はアルコールを含んだように真っ赤になり、不安定にゆらゆら揺れる。

「え、へへ、そうですかぁ~~? 実は実は~、記念として村で一番良い服をもらっちゃってですねぇ~~、えへへ~~、お母さんとかおばちゃんにお土産あげないとですよよよ~~」

 そのままバランスが崩れて、地面に倒れると思った瞬間、背中と足に少しの重圧がかかる。

「大丈夫か」

 美しい顔の真剣な眼差しがこちらを見ている。

 自分が抱き抱えられていることを確信した瞬間、

「お酒臭いです」

 コンマのロマンティックをかき消した。

 変な汗が奇術師の左頬から流れる。

 青年は紛らわせるように、女子の身体を地に立たせ、薔薇をその手に渡す。

「……お土産。 田舎にあるかい?」

 首を横に振って感謝をする。

 掌中の花に、自己知識との違和感を感じる。

「薔薇って棘あるって聞きましたけど……」

「ああ、プレゼント用に抜いたのさ」

「マジシャンさんって、ここに何してるんですか?」

 問われて彼は前髪をかき上げて、こう言った。

「ホコリ叩き貴族の振る舞い……サボりさ」

 半目でやれやれといった感じのポーズで、舌を見せる。

 そんなキザな男を、田舎娘は訝しめる。

「貴族って、かっこいいんでは?」

「良いんだよ俺ん家、没落してるから」

 訝しめの眼差しを強くする。

「……巴里って花の都ですよね?」

「そんなに残念がるな。

 全部が全部俺みたいなのじゃないから。

 ……ジュスタン」

「はい?」

「俺の名前。 ジュスタン・オンコリー。

 ……君は?」

「あっ、はい!

 アニー・スリジェです」

 名乗った少女に、もひとつおまけと手渡されるのは、黒猫の描かれたチケット。

 手書きのサインが込められている。

「……これ、なんですか?」

「チケット。

 歌劇団の」

 目が爛々と輝く。

「かげきだんって……歌って踊っての奴ですか!?

 マジシャンさんってサーカスじゃなかったんですか!?」

「まあね。

 8時に演目やるから。

 俺に会えるかは、気分次第だけど」

 そういってジュスタンは去っていく。

 

 掲げたチケットを見上げつつ、アニーは歩いていた。

 嬉しい気分が心に咲き誇っていたところで、耳がこんな声を拾う。

「お花は如何でしょうか~」

 お花。

 さっきまで住んでいた田舎にも自分と同じ名の花が舞っていた。

 横を見れば、花束を抱えるエプロンドレスの女性と、建物の窓とその下に多く並んでいる鉢上の花々があった。

 資料で見た花屋の名前と結びつけ、またも瞳を爛々とさせて、女性にすごく近づく。

 その女性の顔は、片目が白髪混じりの黒髪で隠れ、口元にほうれい線が見えるが、総じて整っており、穏やかな印象を見せる。

「あ、あの、そんなに近づかれては……」

 はっと、顔を赤くして、女性から離れる。

「すっ、すいません!

 お花の名字の家に生まれたもので、興味が湧きまして……」

「まぁ、それはそれは」

 商品道具とはいえ、その手に抱える花束と、清楚なエプロンドレス、穏やかな面持ちが、文句のないバランスと一体感を醸し出している。

「お花でしたら、貴重なものでない限り、なんでもありますよ」

「……店員様ですよね?

 花束似合ってます」

「はい?」

 店員は懐の花束を見下ろす。

「ああ……こちらをご希望でしょうか?」

「いえ! 店員様とその花束、セットになってお似合いです。

 うちの田舎にはこんなに花束似合う方はおりませんでした!」

 正直な気持ちが、胸中の感嘆を迸らせ、店員の頬を赤らめてしまう。

「ちょ……困りますよ、もう……」

 店員の縮こんでしまう様子と、その言葉にアニーは気づく。

「……えっと、なんか失礼しちゃいましたか?」

 後ろから声がする。

「パパー、あのお花買ってー」

 男性と手をつないだ少年が、窓下の花を指差している。

「ダメだよ、今はお金使えないから」

「ええー、やああだああああ、あれ買ってええええ黄色いお花ああああ」

 ぶんぶんする手で黄色の花を指して泣き出す少年。

 その顔を見て思わず悲しげな面になるアニーは、人差し指を顎に当てて、頭ごと上げるように思案すると、少年が指した花を自分も指差す。

「……あの、あちらのお花、買いたいんですけど」

「ああ、ミモザの花ですね。

 お代は5ユーロになります」

 財布を開くアニーを見て、子の頭を撫でてなだめる父は花屋の前から去ろうとする。

「まったく……今度買ってあげるから」

 そこに花束を持って、アニーが近づいてくる。

「はいどうぞっ」

 黄色いミモザの花束を、父の腕中の少年に渡す。

「おねーちゃん、くれるの?

 ありがとー!」

「ど、どうして?」

 父親の質問に対してアニーは、片手を後ろ頭にやって、少し赤い頬の間ではにかんで笑った。

「いやー私、お子様が泣いてるのが辛くて嫌いですね。

 お父さんだってお子さんが悲しいままだったら嫌じゃないですか」

 間抜けのような面持ちでアニーを見る父親。

 その微笑みは春のように、暖かった。

「? どうしました?」

「い、いや。 ありがとうございます」

「おねーちゃん、ありがとー! じゃーねー」

 父は花束を持ちながら手を振る息子を更に抱きかかえながら、踵を返して帰路に着いていった。

 さよーならーっと親子に向けて元気に手を振るアニーの後ろ姿に、店員ジェニーは微笑んでいる。

「はっ!? 確か村長様から……」

 財布には、かすかな金音が感じられず。

 中を見てみれば、村長から直接渡された紙しかあらず。

『アニーよ、以下以外のことに、この5ユーロを使ってはならん

 宿代 300セント

 食費代200セント』

 5ユーロ。 ミモザの花も5ユーロ。 空っぽの財布。

 先程の微笑みはどこへやら、青ざめた顔の中で目を丸くして、ギギギギと頭を壊れかけの機械のように回して、店員にかすかな質問をする。

「……もしかして、今のお花って……」

「? あのミモザは、同種の中でも珍しいものでしたから、少し値が張っておりましたが……。

 もしかして……お金の計算を間違えたりとか……?」

 店員が眉をひそめている。

 金を払っておいてそんな顔をさせた申し訳無さと、彼女と村長への罪悪感が身を震わせる。

 その身震をぐっと抑えたアニーは、

「大丈夫ですっ!」

 ぐっと目尻に涙をためて、懇親のドヤ顔とサムズアップを少年に向けた。

 

 襤褸になってしまった青いマントは、右肩から靴の上までの半身を覆い隠し、黒い制服の全身と、腰にベルトを巻いた左半身が露わになっている。

 丸い黒髪の下の、大きな目に収まる丸く黄色い瞳は、誰もいない教会を写していた。

 モンマルトルの西の教会。

 そこにはドジなシスターがいた。

 何もないところで転ぶのは日常茶飯事、教会にとって貴重な物品を壊したり、貧しい人々に不味い料理を配ってより不幸にしてしまったり、それでいていつでも心からすぐに笑って、その明るさが周りに伝播する……そんな少女だった。

 ただ人知れず、その身を以てこの街を救ってきたその乙女は……仲間と共に日本に向かったきり帰ってこない。

「エリ姉……」

 少女の口がボソリと小さく紡いだのは、自分がその乙女に勝手につけていたあだ名。

 眉一つ動かぬ無表情ではあるが、この顔を感のいい人間が見ていたとしたら、それはどこか寂しげに感じることだろう。

 途端に上を見上げると、冷たくなった黄色の瞳は、上空の異形の姿を捉える。

 背中から綺麗につながった丸い頭部に目はなく、赤い口元からは牙が生え、蝙蝠の羽根、鋭い爪を生やした四肢。

 世界に蔓延る怨念の化身、『降魔(コウマ)』である。

 少女の視力は降魔の牙の隙間に挟まれた肉まで捉えると、感情の見えない表情の中、に更なる冷気と温度が重なる。

 少女の背中の堅いリュック……否、四角い機械が、周囲に風を吹かせて大きく展開する。

 それは、硬い質感だが、金色の翼だった。

 風によって、青い襤褸が後ろに大きく広がると、少女の背に二色の異なる翼が生え、舞い上がった。

 少女の左手に握られているのは、金の翼の展開の折に、その先端から排出された部分。

 現代でいうところのアタッシュケースに見えるそれは、空を昇る間にその形を変えていき、黒一色の重機関銃となった。

「降魔は殺す」

 片手で向けられた銃口が怨霊にしっかりと向けられて、その口が火を吹けば、たかだか二秒で物質怨霊の全身に多くの穴が空いていく。

 怨霊は動く力を失っていき、穴という穴から血を吐きながら墜落していく。

 死骸となっていくそれに、空飛ぶ狩人は追い打ちの弾丸を降らせていく。

 死骸の墜落場は、人間のいない方に調整されていく。

 翼人は変わらぬ面持ちのままに、それを成していく。

 

 

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