走ることしか考えていないサイレンススズカと効率的に勝つ方法を考えるタイプのトレーナー。あと割と理解のある友人一同。   作:サイレンススズカ専属トレーナー

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ちょっとあっさり悪趣味。エイプリルフールなのでこれくらいはね?

前半はトレーナー→スズカ、後半はスズカ→トレーナーですが、並行世界なのでどっちが先とかは無いですし、この後の展開にも関わりません。


ドッキリに関わるサイレンススズカ

 

「あ、こんにちはサイレンススズカ。どうしたの?」

「スズカさん! おはようございます!」

「え……え?」

 

 

 四月一日の朝。今日は珍しくスズカが友達との色々で遅れ、スズカに用があるスペシャルウィークはトレーナー室で待機することになっていた。あまりにも暇だったのと、そこそこ私達も仲良くなり、せっかくのエイプリルフールということで、何かスズカにドッキリを掛けようという話になった。

 

 

「トレーナーさん、呼び方、え?」

「そうか、スぺに用があるんだっけ」

「はい。この間頼まれた本、借りてきたので渡そうと思って!」

「え、え?」

 

 

 結構スペシャルウィークも乗り気だったというか、「確かにどんな反応するんでしょうね……」とかなり好奇心もあったらしく、すぐに二人で計画を考えた。その名も、担当トレーナー入れ替わっちゃったドッキリである。

 

 私がスズカの担当であり、スペシャルウィークは別のトレーナーが担当していることなど恐らくトレセンの誰もが知っている話だとは思うが、あえてそれを入れ替えて、私がスペシャルウィークを担当していることにしてみよう、という内容だ。

 

 本当は死亡ドッキリくらいしようと思ったんだけど、流石にそれは悪趣味だし、普通に傷つけてしまう。我ながらかなりマイルドに解りやすいドッキリを考え付いたと思っている。

 

 

「本?」

「はい。スズカさん、風景とかそういう本が好きなんですよ。私が借りてたんですけど、返却して借り直してきました」

「へー。サイレンススズカにもそういう趣味があるのね」

「トレーナーさん、スズカさんのこと何だと思ってるんですか……?」

 

 

 私はスズカのトレーナーではないという設定なので、呼び方とか、知識とか、色々気を付けている。部屋もそこそこ片付けた……けど、まあロッカー開けたらスズカの服があるし、何ならシューズも簡単に見つかる場所に隠してある。そこらへんはちょっと突貫工事だった。

 

 あと、万が一のことを考えてベッドの下にブルボンとグラスワンダーがいる。ブルボンは普通にいたので巻き込み、グラスワンダーも案外ノリノリで看板作りを手伝ってくれた。まあなんだ、本当に恨みとかじゃないけど、普段からしてやられていたり話を聞いていなかったり、そんな可愛い先輩をちょっと困らせてやろう、くらいのものよ。生まれついての善性であるウマ娘の三人が止めなかった時点でラインは守れている。

 

 

「というか寮で渡せば良くない?」

「スズカさん、結構部屋にいないことも多いので」

「あ、あの、え、と、トレーナーさん……? え?」

「どうしたの、サイレンススズカ」

「あ、あの、呼び方……トレーナーさん?」

 

 

 おー困惑している。押され気味のスズカは結構レアだ。学園では結構濃い友人に振り回されていたりしてそういうこともあるらしいけど、私の前ではスズカが中心だからね。困り眉のスズカも可愛い。

 

 わくわくで看板を構える二人への合図は私がうっそーって言ったらということになっている。もう少し引っ張れるかな。ちょっと楽しくなってきたぞ。こんな可愛い反応が見られるとは思ってなかった。

 

 

「呼び方? 別にいつも通りだけど……さん付けするような仲でもないでしょ?」

「あ、あの、そうじゃなくて……」

「そういえばスぺ、最近トレーニングはどう?」

「え? あー……い、良い感じですよ! というかトレーナーさん! 私のトレーナーさんなんだから解っててもらわないと!」

「あっ……そ、そうね! スぺのトレーナーだもんね!」

「トレーナーさん……? わ、私、私のトレーナーさんですよね……?」

 

 

 私とスペシャルウィーク相手にこんなに言葉に詰まっておろおろと視線を彷徨わせるスズカも珍しい。とりあえず何かを解決しようと思ったのか、より近くにいるスペシャルウィークの肩を掴んで揺さぶった。

 

 

「す、スぺちゃん!? 何言ってるの? わ、私のトレーナーさんよね? ね?」

「え? なんですかスズカさん。私のトレーナーさんですよ」

「お、おかしいわ、そんなの、だって、私のトレーナーさんだもの……」

「スズカさん? 流石にそれは困っちゃいますよ。あ、スズカさんもエルナトに入るってことですか? それは私は大歓迎ですけど……」

「あ、あ、え? と、トレーナーさん?」

 

 

 今度は私か。流石に取り乱すスズカが可哀想になって来たし、ちょっと会話したらネタバラシと行こう。

 

 

「どうしたのサイレンススズカ」

「それ、それやめてください……私のトレーナーさんですよね?」

「スぺのトレーナーだけど……」

「え、あ……だって、わ、私に……私のトレーナーさんだって……」

 

 

 スズカが固まってしまった。伸ばした手が行き場を失って、私の方を見たまま動かなくなる。そろそろネタバラシかな。キーワードを言えばすぐに二人が出てくるはずだ。

 

 

「う……スズカ!?」

「え……あれ……? あ、あ……」

 

 

 が、私が何か言う前にスズカがぼろぼろと涙を流してしまった。これはいけない。一瞬でヤバいと感じたのか、ベッドの下の二人も飛び出てきて、スペシャルウィークも慌ててスズカを後ろから抱きしめた。

 

 

「スズカさん! 嘘! 嘘です! エイプリルフールです!」

「ど、ドッキリ! ドッキリ大成功です!」

「スズカさん、落ち着いてください。ジョークです。ジョーク」

 

「え……え……?」

 

 

 混乱した挙句看板を見せつけるように辺りを歩き回るブルボンと、やってしまったと息を荒げるグラスワンダー。私もスズカを抱きしめて撫でる。やり過ぎた、ヤバい。ちょっとこれは洒落にならないことをしたかもしれない。

 

 

「ごめんスズカ! ドッキリなの! エイプリルフールだから!」

「えいぷりるふーる……」

「そう! 四月一日! ね!」

「じゃあ……うそ……?」

「嘘! 嘘だから! ごめん! 申し訳ありません!」

 

 

 変わらず涙を淡々と流すスズカが、顔を上げて真っすぐ見つめてきた。そ、そんな悲しい顔をしないで……私が悪かったから……ごめんて……

 

 

「トレーナーさんは、わたしのトレーナーさんですか?」

「そうだよ! スズカのトレーナーだよ!」

「わたし……あいば?」

「愛バだねえ! スズカは私の愛バ! 間違いない! 大好き!」

 

 

 揺らめくスズカを強く抱き留める。声が震えすぎている。これはその、は、反省、反省しなきゃ……

 

 

「……よかった」

 

 

 その後、スズカを慰めるのに一時間かかった。ストレスが溜まったと言い出したスズカは、そのまま走りに行ってついでにエアグルーヴに死ぬほど怒られた。ブルボンとグラスワンダーについては非常に申し訳ないことをしてしまったと思っている。

 

 

 

 

 

 

 ────

 

 

 

 

 

「トレーナーさんっ」

 

 

 ある日。スズカがトレーナー室に来て、顔だけ出して呼びかけてきた。普通に入ってこないのはとても珍しい。様子を窺うような子じゃないし、こちらも入られて不味かった試しも無いし。とりあえずパソコンを閉じて、どうしたの、と声をかける。

 

 

「あの、ちょっとご報告があるんですけど……」

「報告?」

「はい。あの、えっと」

 

 

 言い淀みつつも、スズカは扉をそのまますべて開ける。スズカの横に、私の知らない人がいた。スズカよりけっこう背が高い、スーツ姿の男性だ。顔に見覚えは無いが、ここにいるということはトレセン関係者だろうか。新人トレーナーさんかな? もしかして、スズカを知らずにスカウトしたとか? いや、流石に無いか。私じゃあるまいし、トレーナーともあろう人がG1ウマ娘を、特にスズカを知らないはずがない。

 

 

「あの、私この人と、お付き合いすることにしましたっ」

「へー。そうなの。良かっ……ん? なんて?」

 

 

 聞き間違いかな。笑顔のスズカが何かを言ったような気がする。

 

 

「この人とお付き合いするんです。えっと、な、名前を……」

「初めましてトレーナーさん。三島と申します。スズカさんとお付き合いをさせていただくことになりました」

 

 

 恭しく一礼をする三島さん。なんだ……? 何が起こっているんだろうか。もしかして私は幻覚を見ているのだろうか。何て言ったのか。スズカがお付き合いだと? 男の人と? いや性別はどうでも良いんだけど、え? 付き合う? どこに? なんで? 

 

 

「あの、トレーナーさん? 聞いてますか? トレーナーさんに教えようと思って手伝っ……つ、連れてきたんですけど……」

「えっと……その、大丈夫ですか?」

 

 

 なんと言ったら良いか解らない私に、二人が話しかける。付き合う、付き合うって何だ……? どういう意味だ……? 私の知っている付き合うという日本語と同じ意味だろうか。

 

 

「つ、付き合うって何……? お買い物とか……?」

「こ、恋人ですっ」

「こい……びと……?」

 

 

 あ、頭が痛くなってきた……吐き気もする……どうして……? す、スズカだってさ、ほら、こ、高校生なわけだし……こ、恋人の一人や二人や三人くらいいたって不思議じゃないし……私の愛バってったって、ほら、あ、あるじゃん……

 

 

「トレーナーさん!?」

「す、スズカ……」

「はい!」

「その恋人は、何人目……?」

「質問の意味が解らないんですけど……」

 

 

 いつの間にか座り直してしまっていたらしく、スズカが私を見下ろすようにしている。わ、私はどうすれば良いの。お、お祝い、そう、お祝いしなきゃ、スズカの、こ、恋人……なんだし……

 

 

「と、トレーナーさん……? あの、これは」

「スズカ……お、おめでとうね……」

「トレーナーさん!?」

 

 

 ああ、しまった、泣いてしまった……なんでだろう、なんで私、こんな胸が痛いんだろう……意味解んないし……泣く必要も無いんだし、か、悲しむ理由も無いし……は? ほんと……バカじゃん……

 

 

「と、トレーナーさん、日付、日付!」

「け、結婚記念日ってこと……?」

「違います、エイプリルフールです、嘘です、ごめんなさい!」

「ごめん! ちょっとからかってみたいと言われて手伝ったんだよ!」

 

 

 前を向けなくなった私にスズカが抱き着いてくる。後ろで、男性が服を脱ぎ捨て髪を取った……髪? カツラ? 

 

 

「私だよ、フジキセキです! 本当に、ちょっと変装を頼まれただけなので!」

「ふ、フジキセキ……?」

「な、泣かないでくださいトレーナーさん、あの、そのっ」

「泣いてないし……」

「な、泣いてないですね、そうですね、良かったです、トレーナーさんの愛バですよー愛バ」

「あいば……」

「そうですよ? ね?」

 

 

 その後、しばらくの間スズカにあやされていた。後日めちゃくちゃフジキセキに謝られたが、冷静に考えると悪いのはスズカなのでスズカにはランニング禁止を課すことにした。




フジキセキの変装、見破れない説。
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