走ることしか考えていないサイレンススズカと効率的に勝つ方法を考えるタイプのトレーナー。あと割と理解のある友人一同。   作:サイレンススズカ専属トレーナー

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これがお色気ってことだああああああ!!!!(大嘘)


羞恥心に欠けるサイレンススズカ

 

「いや、どうもありがとうございます。いつもフクがご迷惑をお掛けしてます」

「いえこちらこそスズカが仲良くしていただいていて。これからも是非よろしくお願いします」

 

 

 ある日。スズカはマチカネフクキタルに申し込まれ、併走を行うことになっていた。もちろんレース形式のものである。スズカは本来の意味での併走は行えないからね。

 

 本当はやりたくなかったのだけど、まあ二人も仲が良いわけだし、今日はマチカネフクキタルも末吉ということだったので快諾した。性格が悪いようだけど、スズカが負けるようならやらない。暴走が怖いので。

 

 

 マチカネフクキタルのトレーナーさんと挨拶を交わして、どの程度走らせるのか相談を始める。その間にも、二人と見学のブルボン、スカーレットがアップを始めていた。

 

 

「良いですよねえ皐月賞。私も是非出てみたかったです」

「出走できていなかったのですか?」

「フクキタルはデビューがちょっと上手く行かなかったものね。私もだけど……」

「たはは……いやー、迷走していた頃ですからね、お恥ずかしい限りで……」

「でもそこから菊花賞を勝ったんですよね。凄いです!」

 

 

 ぺたんと地面に胸をつけるスズカと、ごく普通の柔軟をするマチカネフクキタル。それぞれ後ろから背中を押すブルボンとスカーレット。微笑ましい光景だ。私もマチカネフクキタルのトレーナーさんとはそこそこ年が近いのでやりやすい。

 

 スペシャルウィークのトレーナーさんとかと話す時は未だに緊張するもんな。ベテラン! って感じがして。

 

 

「では軽く走ってからという感じで」

「はい。距離はとりあえず2200くらいが二人にとってちょうど良いと思います」

「やっぱり2400だと長いですか?」

「そうですね……ジャパンカップに向けた調整はあまり視野に入れてないので……かなり先の話ですから。もちろん2400でもスズカは減速せずに走りきれるので、全然こちらとしても構いませんよ」

「本当ですか? いや、助かります。次走は天皇賞か目黒記念あたりを考えてまして」

「でしたら全然、何なら本数を減らしてブルボンと3000とか2500でも」

「良いんですか? それはもう是非お願いしたいくらいで」

 

 

 諸々話した後、四人で並んで走り出したスズカ達を待ってからメニューを話す。計二回走るスズカは、今回は二回とも先頭を走ることができるのでご満悦だ。差されなければだけどね。

 

 

「あと、ブルボンも一本走って貰うから準備はしておいて」

「はい。距離は同じですか?」

「2500。ダービーよりちょっと長いけど、練習にはなるでしょ」

 

 

 向こうのトレーナーさんに聞こえないようにウマ耳に近付く。

 

 

「末吉のマチカネフクキタルに負けちゃダメよ。向こうの方が強いとはいえ本調子じゃないんだから」

「聞こえてますよーっ!?」

「まあまあ」

「ぐぬぬ……ら、ラッキーアイテムさえあれば……」

 

 

 実際末吉というのがどんなものかは知らないけど、まあ小吉の下くらいだろう。スズカにとって脅威になるのが大大吉、菊花賞が後から聞いた話だと大吉……その遥かに下なわけで怖くも何ともないのは事実だ。

 

 みんながアップを終え、スズカとマチカネフクキタルがコースに出て行く。そして大した会話も無くスタート。予想通りスズカが前に出た。今日のマチカネフクキタルはかなり足を溜め気味に走っているような気がする。使い分けてはいるが彼女の本来の脚質は差し。その方が強いんだろう。

 

 

 レースは淀みなくスズカの勝利に終わり、二人が帰って来た。スズカを迎え入れ気持ち良かった? と聞きながら撫でる私、二人で真面目に反省を話し合っているマチカネフクキタル達。トレーナーとは。

 

 

「もう一本行くから休憩してね。五分空けるから」

「はいっ」

「いやー、スズカさん! 流石速いですねえ!」

 

 

 水筒を持つスズカに、マチカネフクキタルが話しかけてきた。まあ、反省点も大して無いんだろうね。フクキタルはスズカと比べるとアレだが実力者であることは間違いないし、そもそもG1を勝っている時点で歴史に名を残せるウマ娘なのだ。

 

 

「フクキタルこそ、また速くなったんじゃない? 末吉なのに」

「アレですね、スズカさんもトレーナーさんも末吉のことをバカにしてますね?」

「吉の中でも最弱でしょ」

「ちっちっちっ。違いますよぉ?」

 

 

 ベンチに座る私達の前で、マチカネフクキタルはまるで自分のことを自慢するかのように胸を張った。

 

 

「末吉とは、大吉や小吉などとはまた違うものなのです! 言うなればお御籤には吉と凶と末吉があるイメージですね! 吉と凶が現在の運気を示すのに比べて、末吉とはこれからの運勢を示すものになります。末吉と末凶がありまして、つまり、これからの行動によって運勢が上下するということです! 他にも平や半吉というものもありまして、これらはそれぞれ運勢の変化が小さいこと、吉も凶もそれぞれが訪れることとお御籤は内容により様々なのです!」

「へえー。そうなの」

「普通に知らなかったわ。じゃあマチカネフクキタルはこれから幸運になっていくってこと?」

「そうなります! ……が、今日のところはラッキーアイテムも手に入らず、少し不安なんですが……」

 

 

 占いになると目を輝かせてくる子だ。それに、私はともかくスズカはまったく興味無さげに私に寄りかかっているのにまったく気にしている様子が無い。こういうところもスズカと仲良くできる要因なんだろうね。お互いにお互いが熱くなる話題に興味が無いというか。どっちも反論されたらさらにヒートアップしそうだし。

 

 しかし、マチカネフクキタルの語るところが本当ならこれから彼女は速くなるのだろうか。それはそれで怖いな。ラッキーアイテムとか調達できなくて良かった気もする。

 

 

 

「ところで、ラッキーアイテムって何だったの?」

「え?」

「もしここにあったら……まあ、フクキタルが気付いてないってことは無いんだろうけど、せっかくだし運勢は良い方が良いと思うわ、うん」

「スズカさん……!」

「あ、でもそこそこにしてね。差し切られたくないし」

「スズカさん!?」

 

 

 スカーレットやブルボンも来て会話は続き、スズカも楽しそうだ。そろそろ五分になる。向こうのトレーナーさんも色々書いていたようだけどこっちに寄って来た。ごめんなさい、女だけで話してて。居づらいですよね。

 

 

「本日のラッキーアイテムは、なんと白いパンツです!」

「……? フクキタル、持ってるじゃない」

「洗濯中でして……トレーナーさんも違うと言うし、着替えに帰ってもらうのも……」

「フク! 変なこと言うんじゃないよ!」

「あだっ!?」

 

 

 彼女のトレーナーがボードでマチカネフクキタルをぶん殴った。おー痛そう。でもこれは君が悪いよ。私、謎に同僚のパンツの色教えられたんだけど。どんな顔したらいいの。顔あっつ。いや恥ずかしすぎるでしょ。気まずくなる前に立ち上がって、とりあえずもう一本をささっと終わらせようと息を吸ったところで、

 

 

「す、すびばせん……」

「あ、でも確かトレーナーさん、今日白でしたよね?」

「!? げほっ、ぐ、えほっ! な、なななななに!? 何言ってるのスズカ!」

「違いましたっけ? あっ」

「あ、ああああ……」

 

 

 

 

 ────

 

 

 

 

 四月十二日、記録者、ミホノブルボン。本日は、スズカさんの友人であるマチカネフクキタルさんの要望で併走トレーニングを行っています。本来私とスカーレットさんは見学でしたが、予定変更により2500mを私も走ることとなりました。

 

 その一本目が行われ、マスターの予想通りスズカさんが勝利して二人が戻ってきました。二人の会話を聞くべく私も雑談に参加していましたが、その会話の終わり際、スズカさんの問いかけから事態は急変しました。

 

 

「あっ……すみません、つい」

「す、すすすす、すず……っ」

「確かそうだったなあって思ったら思わず……」

「~~~~~っ!!」

 

 

 スズカさんが、マスターの下着の色を公表しました。データログ参照。昨日は確かに、スズカさんはマスターの自宅に滞在しています。つまり、入浴も一緒でしょう。その際に確認したのでしょうか。

 

 マスターの顔の上気を検知。ステータス、『混乱』。動作を停止してしまいました。フクキタルさんのトレーナーさんが会話中にもかかわらず耳を塞ぎました。数秒経ち、マスターが顔面を隠しました。会話の中断を確認。続行するべきでしょう。

 

 

「たし」

「ブルボン先輩!?」

 

 

 エラー。スカーレットさんに口を塞がれました。

 

 

「はい」

「い、今余計なこと言おうとしましたよね!」

「いえ、スズカさんの発言について信ぴょう性の評価を」

「何考えてんですか!?」

「おお! すみませんスズカさんのトレーナーさん! ちょっと抱きしめても良いですか!? 運気! 運気を分けてくださいな!」

 

 

 スカーレットさんから解放されましたが、睨まれているので何も言わないことにします。その間にも、フクキタルさんがマスターに抱き着きました。正面から、顔を隠したままのマスターの背に手を回します。

 

 

「えっ」

「いやー、まさかこんなことってあるんですねえ! 流石私、そしてスズカさん!」

「あのフクキタル、抱き着くのは」

「え?」

「あ、えっと……えい」

「わわっ」

 

 

 スズカさんがフクキタルさんを押しのけ、マスターの前を奪いました。後ろに回るフクキタルさんを、私が遮ります。

 

 

「失礼します」

「ああーっ! なんですか!? お願いします! ちょっとだけ! さきっちょだけ!」

「さきっちょ……?」

「ふー……落ち着け私……ここで声を荒げちゃダメ……冷静に……冷静にならなきゃ……」

 

 

 スズカさんと私でマスターを抱きしめたままベンチに戻ります。マスターは変わらず顔を覆ったまま動かないので座らせ、その隣でスズカさんが腕を引いて寄り添いました。フクキタルさんに視線を向けて、むむ、と小さく呻きます。

 

 

「ダメよフクキタル。トレーナーさんに勝手にそういうことしちゃ」

「すみません……まあおかげで助かりました! 一時的とはいえ幸運は私の手にあることでしょう! 行きますよスズカさん! 第二ラウンドです!」

「……やりましょう。絶対に千切るから」

 

 

 そう言って、お二人はコースに戻っていきました。これが終われば次は私が2500を走ることになります。それに備えウォーミングアップを再び行いましょう。マチカネフクキタルさんは私が目標とする菊花賞を勝ったウマ娘です。彼女と長距離で走れることは私自身の成長に非常に有用であると思われます。

 

 

「スカーレットさん。残念ですがマスターをお願いします」

「こ、このトレーナーさんを私に任せないでください!」

「よく解りませんが精神のケアをお願いします」

「公衆の面前で下着暴露されたのをどうやって慰めるんですか!」

 

 

 ステータス、『高揚』。これでまた成長できます。日本ダービーまで日がありません。またマスターに確信していただくために、もっと頑張らなければ。何か話しているスカーレットさんを置いて、私はウォーミングアップを開始しました。

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