走ることしか考えていないサイレンススズカと効率的に勝つ方法を考えるタイプのトレーナー。あと割と理解のある友人一同。   作:サイレンススズカ専属トレーナー

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前後半に別れています。

前半だけでいつも通り4000文字くらいありますので、そこで読むのをやめていただいても問題ありません。

後半はド真面目です。どうしてこんな注意書きみたいなことを書いているかというと、高低差にしても流石にやりすぎたかなと自分でも頭を傾げたからです。


覚悟を求めるミホノブルボン

 

「いーやーでーすー」

「だーめー」

「……何してるの?」

 

 

 夏合宿を数日後に控えたある日。私は家で、何とかスズカを縛り付けようとしていた。最近は特に用が無くてもうちに来るようになったスカーレットが、リビングのドアを開けるなり乱暴に首を傾げる。

 

 

「た、助けてくださいスカーレットさん、乱暴されてます」

「良かったですね」

「スカーレットさん!?」

 

 

 荷物を置いて、私達が暴れるソファとは別の椅子に座る。うーん、とっても自然。最近はこれくらいじゃ声を荒げることもなくなったわね。慣れたようで何より。何よりか? 何よりではないかもしれない。

 

 

「それで、今日はどうしたんですか?」

「し、縛られるぅ……」

「トレーナー?」

「最近調子乗ってるからお仕置きしようと思って」

「だからといって縛るのはやり過ぎでしょ。バカなんじゃないの」

 

 

 そうは言いつつスズカを助ける気はさらさら無いようで、鞄から教材を取り出して勉強を始めた。この部屋、世界で一番勉強に向いてなくない? 

 

 

「いや、こう……逆に集中できるかなって思って」

「無理でしょ」

「あぅ、あぅ」

「こらーっ逃げるなーっ」

「んむむむむ」

 

 

 スズカにのしかかるようにして動きを封じる。ウマ耳を擽ってあげれば、それだけで力が抜けて抵抗をやめる。身体を起こしてそのままひっくり返し、膝の上に乗っけてロープを構える。

 

 

「ちなみに、調子乗ってるって何をしたの?」

「また勝手に走って、泥だらけでベッドに潜り込んできたのよ」

「うわあ……」

「ち、違うんですスカーレットさん、その、き、昨日はとっても星が綺麗で、車が少なくて、ほんのちょっと走って我慢するつもりだったんですけど、静かでそよ風もあってどうしても我慢できなくてっ」

「何も違わなかったですけど……? ああトレーナー、飲み物貰うわね」

「はーい」

 

 

 流石に私の家ではまだ無断で飲み物を持っていったりはしないらしい。冷蔵庫のものの八割は三人のためのものだから、適当に扱ってもらって構わないんだけどね。もちろん、常識からすれば許可は取るべきなんだろうけど。

 

 

 オレンジジュースを注いでスカーレットが戻ってくる。私はやっとこさスズカの手を後ろ手に縛れたので、次に脚を狙う。まあ、ただのロープなんてその気になれば一瞬で抜けてくるけど、スズカは大人しく転がってくれる。

 

 

「スカーレットさん……助けてください……」

「……身体柔らか……今結構見直しました」

「こんなことで……?」

 

 

 後ろ手に縛った手をくるりと前に持っていくスズカを見て、スカーレットがわお、と口を動かした。見直すの? こんなことで? それはそれで逆に普段どう思われてるの? 

 

 スズカがふにゃふにゃで柔らかい身体を持っているのは何度も見せていたと思うんだけど。でも、見せつけるようにぐるんぐるん前後に手を回すスズカ。何となしにスカーレットも手を組んで、同じように回そうとして、回らずに諦める。

 

 

「お風呂上がりにストレッチとかしようかな」

「そんなに固くないでしょ」

「スズカ先輩みたいになりたいじゃない」

「まあ、それは止めないけど」

 

 

 柔軟性くらいならコツコツやればそのうち身に付くだろう。それくらいのストレッチは自分一人でできるだろうし。

 

 また色々組み替えなきゃ、とテキストに戻るスカーレット。こちらはといえばもう一度後ろ手に戻し、イヤーカバーを取り上げていた。

 

 

「あっカバー……返して、返して……」

「もうこんなことしないなら返すわ」

「……つーん」

 

 

 ふいっとそっぽを向くスズカ。剥き出しにされたのが嫌なのかぴこんぴこんウマ耳は動いているけど、逃げようとはしない。というかやっぱりできない約束はしないのね。

 

 

「そもそもトレーナーさんが悪いんですよ。夏はブルボンさんに付きっきりとか言うから。そんなこと言われたら、じゃあ私は走っていますねって言うしかないじゃないですか」

「じゃあ言えば良いじゃない。なにも行動で示さなくても良いのよそんなことは」

「じゃあ私は走っていますね」

「だーめー」

 

 

 体を伸ばして逃げようとするスズカを捕まえて隣に座らせる。むぐぐ、とむくれながらも、スズカはかなり寄り掛かって斜め下から私を見上げる。

 

 

「何でもダメダメ言ってちゃダメですよ。わがまま言っちゃダメです」

「はいはいわがままわがまま」

「むー」

「痛い痛い痛い痛い」

 

 

 太ももを殴り出すスズカ。さっとカバーを取り返して投げつけてくる。

 

 

「着けてください」

「はいはい」

 

 

 と言ってもイヤーカバー着けるの下手くそなんだけど。言われたからにはやらないと……どこをどう着けるんだ。人間にウマ娘用のイヤーカバーは難易度が高過ぎる。

 

 

「ねえ、今、夏はブルボン先輩に付きっきりって言った?」

「え……うん」

「……私は?」

「……まあ、もちろんトレーニングは見るよ。でもほら、メインというかさ」

「……ふーん」

 

 

 ヤバい。スカーレットがウマ耳を倒してしまった。こちらとしてもスカーレットを蔑ろにするつもりはないのだ。ただ、今年の夏に関しては、もはやブルボンを殺す勢いで鍛え上げなければライスシャワーには勝てない。現在のステータス差であのバ身差に迫っていたのだ。次は無い。

 

 

「あーあ、トレーナーさんがスカーレットさんも悲しませましたー」

「べっつにー。悲しんでないですけどー」

「ほらトレーナーさん。悲しんでます」

「悲しんでないって言ってますよね!?」

「いや、これはスカーレットが露骨なのが悪いと思う」

 

 

 壁掛けの鏡を眺めて、ウマ耳を手で立て始めたスカーレット。むむむ、と立てる度、ぱたんと倒れる。面白いし、事実ややそっちのけにしてしまうのは事実なので、スズカと一緒に近寄って肩に手を掛ける。

 

 というか普通に「お前はついでね」とか言ったらトレーナーとして素質を疑われることをしている。でもスズカがふざけたままということは、そういう意味で本気で怒っているわけでもないんだろう。じゃあ何って、スカーレットが可愛いって話。

 

 

「安心してスカーレット。あなたもちゃんと構ってあげるから。ね?」

「アンタ私のことスズカさんと同じに思ってるでしょ。ペットじゃないのよ私は」

「私もペットじゃないですけど……?」

「脚が速いペットじゃないんですか?」

「脚が……ふふふ、そうですよ。私は世界一脚が速いんです」

「いやいやいや。誤魔化されてる誤魔化されてる」

「え……あっ。もうっ」

「……ふふっ」

「わ、笑った……スカーレットさんが私のこと笑った……!」

 

 

 笑ってないですけど! 笑いました! という二人のやり取りを微笑ましく眺めつつ。私の心も結構和らいでいた。ちょっと、今日は憂鬱でお酒に逃げようかなあとまで思っていたところなのだ。

 

 それというのも、今日ここにはいないブルボン。ブルボンは現在、実家で私が来るのを待っている。ご両親に色々と挨拶をしに行かなければならない日がやって来たのだ。

 

 

 夏合宿でブルボンを可能な限り鍛えるのは決定事項だ。しかし、私自身特に飛び抜けて有能ではないので、その手段はやはりスパルタになる。それこそ、側から見て真似をしているかもしれないライスシャワーごと潰すようなレベルのものを続けることになる。ブルボンの頑丈さがあれば毎日追い込めるだけあって、ベストを尽くそうと思えばそうするしかない。コツコツ成長するとかそういう次元の話ではないのだ。

 

 結局、そこまでしてブルボンがどうなってしまうか私にも解らない。もちろん、見えている怪我率は今も信じている。ブルボンに幾度となくトレーニングをさせたが、怪我は一度もない。

 

 ただ、その結果菊花賞を走り、ブルボンが怪我をしてしまう可能性は否定できない。スズカがそうなったのはウマ娘として越えてはいけない一線だった説もあるから、今のスピードでブルボンがそうなるとは思えないけど……それでも、怯えるくらい許されるはず。

 

 

「今日はスカーレットは泊まっていって」

「え? 私着替えとか持ってきてないわよ」

「良いから良いから。スズカ一人で残すのは寂しいでしょ。この前来たとき洗濯したのが畳んであるから」

「……え? どっか行くの? スズカ先輩を置いて? 私と二人きりにして?」

「ちょっとね」

 

 

 我が家のクッションの投げ合いをするスカーレットが、心底怯えた目でこちらを見た。そんなに? トラウマ持ちすぎじゃない? 

 

 

「……大丈夫ですか? 夜突然走ってきますとか言わないですか?」

「言わないですよ?」

「絶対言うじゃないですか……! 待って、私の手に負えないわよ……!?」

「スカーレットならできるわ。もう慣れたでしょ」

「これに!?」

「これ扱いは酷いですよね……?」

 

 

 落ち込んだような覇気のない愚痴と比べて、スズカは圧倒的パワーでスカーレットを押し倒しのしかかって両手を掴んでいた。スカーレット、勉強はしなくても良いの? 

 

 もちろんスズカもちっとも傷付いてはいないが、引き剥がして私の隣に戻すと傷付いたふりをして膝に寝転がった。ぐりんぐりん寝返りを打って、後頭部を腿に押し付けてくる。

 

 

「まあ、実際今日は大丈夫よ。ね、スズカ」

「はい。ちゃんと待ってますね」

「え……た、体調不良とかですか? 看病の買い出しした方が良いですか?」

「スズカを何だと……いや本気で心配してる? 大丈夫、スズカは今日も健康よ」

「……そう」

 

 

 走らないと言っただけでここまで心配されるんだ、スズカって。

 

 

 

 

 

 ────

 

 

 

 

「お久しぶりです。お世話になっております。お元気そうで何より」

「いえこちらこそ、おかげさまで、何も問題なく」

 

 

 ブルボン家。いつもよりちゃんと着付けたスーツで首が苦しい。ネクタイなんかいつぶりだろう。畳とちゃぶ台でこちらに恭しく頭を下げるブルボンパパに合わせ、私も大きく頭を下げる。

 

 

「どうぞマスター」

「ありがとう、ブルボン」

「お父さん、泣いている場合ではありません。話を聞いてください」

「ああ、すまんね……」

 

 

 今日に限っては私も下から頼む立場だと思っているので、頭を上げられない状況だったが、ブルボンがお父さんに促してくれたので助かった。無限に話が始まらないところだった。

 

 顔を上げたお父さんの目には涙が浮かんでいる。会うだけで泣かれるのもちょっと困るというか、その熱量をブルボンに向けて褒めてあげてほしい……いや、確かこの人達、何日も連続で寝落ち通話できるくらいブルボンを褒めてたな。じゃあ何も言えないわ。

 

 

「それで……今日はどのようなご用件でしょうか。ブルボンを帰したということは、娘が何か粗相でもしましたか」

「いえ、むしろとても良い子で助かってるくらいです。普段のお茶くみとか、生徒にやらせることじゃないんですけど」

「そうですか……いや、この子も塞ぎ込んでいるわけでもなし、まさかとは思いましたが……では?」

「ああ、ええと……」

 

 

 やっぱり私、この人苦手だ。こんなにまっすぐに尊敬されても困る。罪悪感とか、色々。ブルボンだからこそ私はブルボンを無敗二冠まで押し上げることができたのだ。

 

 だけど、今日は頑張らなきゃ。普段のように会話を避けていてはいけない。今日だけはしっかり言わなきゃダメだ。

 

 

「勿体つけるつもりはありません。まずはこちらを」

 

 

 そう言って私が取り出した書類を見て、お父さんと、隣に座っていたブルボン、そして台所から覗いているブルボンママまではっとして目を見開いた。すぐに、お父さんがこちらに縋るような視線を向ける。

 

 

「これは……や、やはりブルボンが何か……」

「いえ。ですが、これも必要なことなのです。私にとっても、ブルボンにとっても」

 

 

 取り出したのは、担当解除願。基本的にウマ娘側から提出されることがほとんどだが、当然私にも出せる。私の名前と、この前紙で隠してブルボンにも名前を書かせてある。あとは保護者欄のみだ。

 

 

「夏合宿を迎えるにあたって、ブルボンと、そしてお二人に、言っておかなければなりません。一度契約解除とし、説明の後、改めてこちらを」

 

 

 そして、担当契約届を出す。これには私の名前は書いていない。二枚を見比べ、なるほど、とお父さんは呟く。一声かけ、お母さんがペンを持ってきた。

 

 

「もちろん、こちらを書かせてもらいます」

「いえ、その前に説明を」

「聞かずとも大体は解ります。ブルボンが、とても嬉しそうに話してくれましたから」

「え?」

 

 

 ブルボンに目を向けるが、何のことか解らないといった様子で首を傾げる。隣でニコニコと笑うお母さんに顔の作りはそっくりだ。エプロンがお揃いでとても可愛らしい、

 

 

「菊花賞、非常に厳しいと」

「な……」

「ライスシャワーというライバルがいて、彼女に勝てないかもしれない。トレーナーにもそう言われたと、聞いています」

「……面目ございません……」

 

 

 机に頭を擦る。ブルボンなら勝てると言い続けて、結果がこれだ。その私が、ブルボンにこんなことを言っているなんて。話が違うと言われても仕方がない。

 

 

「話はまだです。ブルボンは続けてこう言いました。だから、勝つためにこれまでより鍛えなければならないのだと。きっとそれは、トレーナーの意に反しているだろうと」

「……」

「ですから、話は概ね理解しております。夏の合宿で、あるいはその後で、ブルボンが壊れてしまうかもしれない。そういうことなのでしょう」

「……はい」

 

 

 頭が熱くなってきた。吐き気もする。こんなこと、本当はしたくないのに。スズカ以外のためにこんなこと、したくはないのに。

 

 でも、ブルボンが。ブルボンも。もう、ブルボンはスズカのオマケではない。勝たせてあげたいと思った。私の一番はスズカだけど、二番はブルボンだ。二番でも、私の大切なものであることに間違いはない。

 

 

「……話はおっしゃる通りです。練習中の怪我はさせないよう最大限努力します。ですが、レース中どうなるかは断言しかねます。私の一存でこの先に進むわけには参りません」

 

 

 どうなるか解らないというのはもちろん、二度と歩けなくなるような、そんな怪我も含みます。そう言った時、流石のお二人も顔を歪ませた。

 

 

 立ち上がり、深く頭を下げる。私にも覚悟が必要だ。スズカの姿に目を焼かれ、この子のために全部尽くしてあげたいと思ったときのような、そんな覚悟が。逃げられない。選択を避けられない。

 

 

「交渉や、説得をするつもりはございません。私は、現状ではブルボンは菊花賞で勝てないと思っています。任せていただけるなら、それに必要なことをします。妥協の余地はありません。ですが、ブルボンなら、私から離れても引く手数多でしょう」

「……解りました。少しだけ、ブルボンと話す時間をいただきたい」

「……車で待っております」

 

 

 ずきんずきんと心臓が痛む。もう引けなくなった。いや、もちろんブルボンが私を選ぶなんて確証はどこにもないし、親御さんがいるならもっとだけれど。

 

 車に戻ってエンジンをかけ、スマホを取り出す。スズカ、もう寝てるかな。今何してるかな。

 

 

「……あーあ」

 

 

 嫌だなあ。辛いなあ。ウマ娘に関われば関わるほど、こんなことばっかりだ。スズカ一人が精一杯だったのかな。

 

 でもなあ。楽しいんだもんなあ。みんなでいてさ……みんなが勝ったら嬉しいんだもんなあ……やめられないなあ……なんて。

 

 

 少しの間、虫と蛙の声がしていて。しばらくして、車のドアが開いた。

 

 

「……ブルボン?」

「マスター。書類については二枚ともこちらで焼却しました」

「何も焼かないでも良くない……?」

 

 

 パジャマにエプロンから私服に着替えたブルボンが乗り込んで、扉を閉める。私の手を取って、私の指でエアコンをつけた。

 

 

「行きましょう」

「……話は良いの?」

「はい」

 

 

 今生の別れみたいな雰囲気のなか、ブルボンが良いと言うので走り出す。すっかり夜道になって、カーステレオもつけないので、ブルボンが息を飲む音まで聞こえた。

 

 

「お父さんは、私に走ってほしくないと」

「……そう」

「夢は大切ですが、無事に生きていくことの方が親として嬉しい、そうです」

「……でしょうね」

 

 

 私もきっと、スズカに同じことを思うだろう。本人に言うかは別として。

 

 

「ですが、最終的には私の選択に委ねると。よって、こうしてマスターについていくことにしました。菊花賞に勝てるまで帰ってこなくていい、だそうです」

「そっか」

 

 

 ブルボンが珍しく、車のシートに完全に背をつけている。がたんと車が揺れ、首が動いてこちらを見つめた。

 

 

「私はマスターを心から信頼しています。菊花賞に勝てないというのは私の実感も伴った結論であり、マスターの教えでもあります」

「そうね」

「それを覆すためであれば、あらゆるリスクを受容する必要があります。どんなことが起こっても、私はそれを受け入れます。三冠ウマ娘になるためです」

「……ん。ありがとうね、ブルボン」

 

 

 田舎からちょっと田舎を通って高速に乗る。

 

 

「高速道路に入り戻れなくなった段階で伝えてほしいという伝言もあります。お母さんも含めて両親からです」

「何?」

「この菊花賞でたとえ私が死ぬことがあっても、それを理由に謝りに来ないでほしい、謝るなら、菊花賞を勝てなかったことだけを言ってほしい、だそうです」

「おっもいなあ……色々……」

 

 

 もう少し軽い人達だったら、今ごろ一人で帰ってたんだろうけど。笑おうとしたとき、ブルボンが何かを言った。ライトだけでは顔も見えないし、声が聞こえなかったので少し身体を傾ける。

 

 

「ごめん、聞こえなかった」

「運転に集中してください。事故で死ぬ気ですか」

「それはマジでごめん。めっちゃ気を付けてるから」

「ふふ」

 

 

 ……今笑ったな? 

 

 

「もう一つ、マスター。これは個人的な意見ですが」

「なに?」

「冗談でも本気でも、契約解除のことに触れるのはやめてください。思考回路のエラー、強制停止がかかります」

 

 

 可愛いなあ、ブルボンは。私はブルボンを抱き締めるためだけにPAに停まった。いつになく、ブルボンの鼓動は早かった。

 

 

 

 

「スズカさんに匂いを問われます」

「消臭剤とか買う?」

「……いえ。無対策で帰りましょう。反応が楽しみですから」

「いや、買おう」

「いえ、買わずに帰りましょう」




最近のブルボン、情緒育ち過ぎ説。次回夏合宿編、大幅ナーフ予定。
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