走ることしか考えていないサイレンススズカと効率的に勝つ方法を考えるタイプのトレーナー。あと割と理解のある友人一同。   作:サイレンススズカ専属トレーナー

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せっかくなので同時投稿です。デートと見せかけてあんまりデートじゃないやつ。


後輩を回るサイレンススズカⅠ

 

「あ、スズカー。こっちこっちー」

「あ……お疲れさまです、トレーナーさん」

 

 

 ある日。今日明日は聖蹄祭である。ファン感謝祭の一つだけど、こっちはクラスやチーム、果ては個人での出し物がメインになる。たとえばブルボンならお化け屋敷、スカーレット達は飲食店。

 

 スズカ達も仮装喫茶を開いているらしく、ちょっとした会議が終わって合流したスズカはトレセンの制服ではなく綺麗なエプロンドレスを着ていた。勝負服カラーのウエイトレス姿がとてもよく似合っている。

 

 

「可愛いじゃない、衣装」

「ありがとうございます。みんなが張り切っちゃって」

「そりゃあねえ」

 

 

 聞くところによると、スズカはキッチンや裏方を完全に免除されているらしい。人気やら諸々を考えた結果というなら名采配と言わざるを得ない。こんなに可愛いんだから前に出さない方が終わってる。

 

 ……とはいえウマ娘はみんな顔が良いから顔面偏差値はほとんど変わりないと思うけど。私がスズカを特別視してるだけで。教え子だからね。

 

 

「イヤーキャップは自前なんだ」

「本当は取った方が良いらしいんですけど……やっぱり恥ずかしいので」

 

 

 で、そんな人気者のスズカだけど、なんと普通に抜け出すことができた。私と回ると言ったら快諾されたらしい。普段どういう扱いをされてるの、あなたは。

 

 しかしラッキーなことは間違いないので、こうして適当に見て回ることにしている。少なくともブルボンとスカーレットのところは顔を出したいからね。

 

 

「まずはブルボンさんのところですか?」

「だね。他にスズカが行きたいところがあれば行くけど」

「うーん……スペちゃんのところは何かのクイズをやってるらしくて行っても……エアグルーヴは生徒会だし……フクキタルは占いをやってるけど、別に行っても……」

「フクキタルだけ雑じゃない?」

「お客さんが少ないなら顔を出しても良いんですけど、なんでか結構いるんですよね」

 

 

 適当に歩き回りつつ、とりあえず方向だけブルボン達の方に向けておく。かなり人が多いけど、まあギリギリ不快じゃないくらい。やっぱり一般客も多いなあ。土曜日なのに。

 

 そのまま話しながら進むと、ブルボン達の教室が見えてきた。だいぶ改造されてお化け屋敷らしく一角が暗くなっている。めちゃくちゃ頑張ってるわね。子供なら泣くんじゃない。凄い悲鳴も聞こえる。音声素材よね? マジの利用者の声じゃないわよね? 

 

 

「わあ怖そう」

「そんな怖くなさそうな声ある?」

「……まあ、実は別に」

「でしょ」

 

 

 私も平気だし、スズカも全然大丈夫。ホラー映画もグロテスクを含めて全然見られるタイプだ。今さらスズカがお化け屋敷くらいできゃあきゃあ言ってても引く。普段人気のない暗い夜道だろうと墓地のそばだろうとお構い無しなんだから。

 

 

「でもブルボンさん達が頑張ってるんですから、もしかしたらってこともあるじゃないですか」

「もうその言い方が怖くない人の言い方なのよね」

「じゃあ怖くないです。トレーナーさんがきゃあきゃあしてください。怖くて私に抱きついても良いですよ」

「それが、私も全然怖くないのよね」

 

 

 ただ、ブルボンという存在がいるなかで作るお化け屋敷には物凄く興味がある。かなり中心に近い位置にいると聞いているし。

 

 

「あ、い、いらっしゃいませ!」

「あらライスシャワー。受付?」

「は、はい! えっと、これとこれと……あ、えっと、一回に二人までしか入れません!」

「二人しかいないから大丈夫よ」

「あっ、あっ……あの……や、やっちゃった……!」

 

 

 この子を受付に置くのは人選ミスでしょ、と同時に、こんな子がレースになればあの恐ろしい雰囲気を纏って来るんだからウマ娘は解らない。京都新聞杯も負けたとはいえ、身体は全然なのに気合いと圧力だけは半端じゃなかったのよね。

 

 

「ライス、今戻りまし……マスター、スズカさん」

「お疲れブルボン。ブルボンは何の担当なの?」

「受付です。この時間、ライスと二人で」

「ああ、えっと……うん? 二人も必要なの?」

「はい。私だけだと不安ということで皆さんが選んでくれました」

「違うんです、ライスだけじゃできないかもだからブルボンさんが来てくれて……!」

 

 

 どっちなんだろう。いや、どっちが受付に向いてるか……いやどっちもどっちよねたぶん。事務的なことであればブルボンの方が向いてるのかな……でも時々エラー起こすからなあこのポンコツロボットは。

 

 

「まあ、話はまた今度聞くからさ。とりあえず……それを貰えば良い?」

「はい。ペンライトとイヤホンです。こちらウマ娘用、こちらが人間用です。道中指示がありますので、それまでには着用をお願いします」

「お、音はこれに入ってます!」

「本格的ね……」

「カバー外さないと……」

 

 

 学生のお化け屋敷なの、これが……? 予算とかどうなってるの……?

 

 

「ではライス、どうぞ」

「し、知ってる人の前は無理だよぉ……っ、ブルボンさんがやって……」

「構いませんが、ライスの方が上手ですから。マスターにより良いものを提供してください」

 

 

 仲良いなあと眺めているうち話が纏まったのか、ライスシャワーが咳払いをして、おどろおどろしく私達を見上げた。

 

 

「『昔々。あるところに──』」

 

 

 お化け屋敷の前のエピソード語り……ライスシャワー、めちゃくちゃ上手かった。その表現力で怪談やった方が良いんじゃないのってくらい。終わった瞬間茹で蛸みたいになっていたけど、演じている最中はスイッチ入ってたし。

 

 

 

 ……ああ、まあお化け屋敷そのものは大したことなかったけど。

 

 

 

 

 ────

 

 

 

 

「お、いらっしゃい! 適当に座れよ!」

 

 

 続いてスカーレットのクラス。最初に会うのが知ってる子ばかりなのは普通に幸運だ。ぴっとした燕尾服に身を包んだウオッカが声をかけてくれた。

 

 

「こんにちはウオッカ。そこで大丈夫?」

「おう。ちょうど良かったぜ。さっきまでめちゃくちゃ混んでてよ」

「それは良かった」

 

 

 普段と違う口調のウオッカだけど、たぶんこれが素かな。普段の敬語は割と雑というか、取り繕ってる感が消せてないから。スズカやブルボン、スカーレットの淀みない敬語を聞いてるととても不自然に感じる。

 

 だけどまあ男勝りというか……でも不愉快じゃないのよね、まったく。ただのタメ語はともかくオラついた感じのは得意じゃないんだけど……なんでかな。顔が良いからかな。

 

 

「普通に話すのね、ウオッカさん」

 

 

 席について注文をとると、暇なのかウオッカが戻ってきた。お客さん、少ないけど……口ぶりからしてさっきまでは本当に座れるかどうかも怪しかったんだろう。

 

 お冷やを飲みながらスズカが話しかけると、ウオッカはバツが悪そうに頭を掻いた。

 

 

「スカーレットに言われてて……嫌だったらすんません」

「ううん、良いのよ。私もエアグルーヴに敬語なんか使わないし」

 

 

 スカーレットに言われた、とは。聞いてみると、辺りを見回した後に姿勢を低くして声をひそめる。

 

 

「店をやる時にスカーレットを副長にしちまったんですよ。そしたらアイツ張り切っちゃって。やるなら学園で売上も一番! って言い出して」

「スカーレットがそう言ってるのが目に浮かぶわ」

「そしたらマーチャンが利益も出しましょうって乗ったもんだから、クラス中がガチなんすよ」

 

 

 利益を追求する文化祭なんかあって良いんだろうか。

 

 

「ウオッカの口調はなんで?」

「あー……よくわかんねえっすけど、素でいた方が人気が出るってスカーレットが言うもんで。別に変わらないと思うんですけどね」

「一般の方は素の方が良いんじゃない? 確かに人気は出るかも」

「だと良いんすけどね」

 

 

 しばらくウオッカと話していると、キッチンがあるであろう裏からスカーレットが声をあげた。

 

 

「できました、ウオッカ、持っていってー」

「おー。じゃあ持ってくるから待っててくれな」

 

 

 にっと笑ってウオッカが配膳をしてくれる。これは……ウマ娘の顔に耐性がないとやられちゃう可能性があるわね。厄介客とか招きそうだけど……まあ輩ってのは自分が危なくなる相手には手を出さないものだ。物理的にもトレセン的にも、ウマ娘に手を出したら自分が死ぬ。

 

 パンケーキとジュースが来た。ウオッカがサービスでシロップをかけてくれたので美味しく頂く。なんやかんや出来立てなので美味しい。学生の飲食店ってやって良いの、こういうの。普通に私もやりたかったわ。写真展示とかじゃなくてこういうキラキラしたやつ。

 

 

「スカーレットさんにも一言声をかけようと思ったんだけど、忙しそうね、それじゃ」

「そうかもですね。仕入れとかはマーチャンが全部やって、裏はスカーレットが回してるから。おかげでこっちは休みが多くて助かってますよ」

「スカーレットさんがそれで良いなら良いのだけど……」

 

 

 スズカが秒で食べ終わり、私を待ちながらスズカが話してくれている。スカーレットのことだから、それを負担と思ってもいないんだろう。ウオッカはこう言っているけど、他の子もスカーレットに押し付けられてラッキー、とはなっていないはずだ。ウマ娘だからね。

 

 

「あ、でもそういや、エルナトの人が来たら教えてって言われたんだった。ちょっと良いすか、スズカ先輩。他の対応もしないとだし」

「もちろん。頑張ってね」

「あざっす。ゆっくりしていってくれよな」

 

 

 丁寧に頭を下げ……ようとして、普通に敬語で話してることを思い出したのか、それともただ格好をつけているだけなのか、ぴっと指を振って立ち去った。かっけえ。

 

 

「……今のはかっこよくなかったっすか?」

 

 

 台無しだよ。

 

 

 

 

 ────

 

 

 

 

「お疲れトレーナー。よく来てくれたわ」

「うん……そりゃ来るけど」

「じゃ、宣伝してくれるわよね?」

「ぐいぐい来るなあ」

 

 

 良い感じに人目を抜けた場所で、スカーレットに壁ドンされている。手じゃなくて肘。顔ちっか。そんでぎゃんかわ。

 

 

「スズカ先輩のアカウントでちょちょいっとツーショあげてくれたら良いから。ね?」

「全力過ぎない? これ学生の文化祭……」

「良いから」

 

 

 ハートマークでも付きそうな勢いで有無を言わせないスカーレット。ヤバい、この子あまりにも本気すぎる。なんとしても客を回すという意志を感じる。

 

 

「本番は日曜日よ。もちろん中身も充実させるけど、宣伝も必要不可欠よね?」

「あ、あんまりそういう客の引き方は感心しないというか……」

「お店の宣伝に店員が写ることの何が問題なのよ? 大丈夫、そういうサービスがあるわけじゃないから。写真だって小さい子や学生としか撮ってないし」

「そういうサービスって言わないで?」

「そもそもトレセン内で変な奴なんか動けないわよ」

 

 

 それはそう。日本一のアスリート兼アイドルが一堂に会しているのだから、基本対策はトレセン側が色々やってるし、すぐに警備員も飛んでくる。

 

 

「じゃあ写真……え、スズカじゃなくて?」

「どっちが良いか考えたんだけど……スズカ先輩がいるって勘違いさせたらケチがつくかなって。その点トレーナーなら服的にも間違いないし、アンタ顔が良いんだからバッチリよ」

「そういう話かな……?」

 

 

 でもスカーレットが是非と言うので写真は撮った。ほっぺたくっつけて二人の手でハート作った。マージで恥ずかしかったので二度とやらねえ。




いつも感想ありがとうございます。今回二話同時ですので、感想を書いていただける際は個別でも纏めてでも歓迎しております。
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