走ることしか考えていないサイレンススズカと効率的に勝つ方法を考えるタイプのトレーナー。あと割と理解のある友人一同。   作:サイレンススズカ専属トレーナー

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あなたを想って、サイレンススズカ

 

「はあ……眠くなってきました」

「ちょっと。何のための買い物だったの」

「ふふ。冗談ですよ冗談」

 

 

 帰宅後。軽めの夕食をとり、二人でお風呂に入った後だらだらして十二時少し前。お酒とおつまみを広げてテーブルで待機しつつ、早くも送られてくるインターネットからのお祝いの言葉に返しているスズカ。追加でちょこちょこ料理を作っている私。

 

 十二時になればスズカは二十歳になる。まあ別にだからどうしたって訳じゃないけど、やっぱり一つの区切りとして二十歳というのは大きい。

 

 

「焼き鳥焼くけど、スズカは塩とタレどっちにする?」

「塩にします」

「はぁい」

 

 

 ウマ娘におつまみを作るのは初めてだから、加減が解らないなあ。量にしても味付けにしても、どうもね……適当で良いか……? でも、せっかくのスズカの初めてのお酒なんだから、楽しんでほしいし……今からでも外のお店に行くってことにはならないだろうか? 

 

 

 十二時十分前。全部を終わらせてテーブルに料理とお酒を置き終わり、スズカと向かい合って座る。テーブル横の床に並べたたくさんのお酒から、何となくスズカに合いそうなものを……

 

 

「やっぱりビールとか? カクテルも作れるようにしておいたけど」

「トレーナーさんはどれにします?」

「私はこれにするけど……」

 

 

 私は今回はそんなに酔うわけにはいかないので、ほとんどジュースのようなものを買ってきた。それを指差すと、少し迷ってスズカも同じものを取った。

 

 

「じゃあ私もこっちにします」

 

 

 ……まあ、良いんだけど。

 

 

 

 

 

 ────

 

 

 

 

 十二時一分前、かち、かち、と秒針を眺め、小さく左右に揺れるスズカ。何だかんだ言って眠気はあるようだけど、それよりも、楽しそうにしていて何よりだ。早めに注いでおいたグラスの汗を拭き取って、二十秒前に手渡す。

 

 

「ありがとうございます」

「お薬は飲んだ?」

「ばっちりです」

 

 

 十秒前。お酒に鼻を鳴らし、苦い顔をするスズカ。笑った私に向かって少し頬を少し膨らませた。普通のジュースの勢いだとそうよね。でもそのうち慣れるでしょう。スズカは特別甘党ってわけじゃないし、ウマ娘が特別お酒を嫌うなんて例も聞かない。

 

 そして、かちりと日付が変わった。それと同時に、かちんとグラスをぶつける私達。大事そうにグラスを持つスズカに笑いかける。

 

 

「お誕生日おめでとう、スズカ」

「ありがとうございます、トレーナーさん」

 

 

 ぐっと一息に飲み干してしまうスズカ。ぺろりと唇を舐めとり、一瞬首を傾げて、うん、と笑顔になった。

 

 

「美味しくはないですね」

「でしょうね」

「でもこれって飲みやすいやつですよね?」

「そうね、一番飲みやすいのはこれかも」

「うーん……そうすると私、これからトレーナーさんの晩酌には付き合えないかもしれないです」

「良いわよ別に。お酒じゃなくたって一緒にいればそれで。そもそも普段はこういうのあんまり飲まないし」

「ならいいんですけど」

 

 

 それはそれとして次を注ぐスズカ。よく見ておかないと。ウマ娘だし中毒とかはまああり得ないとして、それでも気分を悪くするかもしれないし。だから私は酔えないのだ。私は酔うと泣きながら謝ってしまうらしいから。記憶にはないけど。

 

 並べられた料理をどんどんと口に運びながら、かなり早いペースでグラスを空けていく様子を見るに、まあ大丈夫なんだろうけど。

 

 

 

 

 

 ────

 

 

 

 

「え、そうなの? 全然そういうの興味無いと思ってたわ」

「私のことを何だと思ってるんですか? お化粧くらいしますよ私だって」

「だって私見たこと無いわ、あなたが化粧をしてるの」

「トレーナーさんに会うときはしないですもん」

「どういうこと?」

「別に、大した理由は無いですよ」

 

 

「良いじゃないですか、やりましょうよ」

「えー……まあ、変なものじゃないと思うけど、何か抵抗とか無いの? 写真集よ写真集」

「別に良いですよ。肌を見せるんじゃないんですから」

「ああ、肌を見せるのは嫌なんだ」

「人によります。トレーナーさんになら良いですよ」

「それはアピールのつもり? 流石に今更すぎて何も思わなかったわ今」

「……私も言ってて思いました」

 

 

「移動手段はどうしようかしらね」

「え? 考える必要あります? 私達には脚がありますよね」

「いくら何でも北海道は無理でしょ」

「できますよ」

「適当言わないで」

「根拠ならありますよ。涼しい方が長く走れますよね。北に行くほど寒くなるんだから、つまり走り続けることができます」

「寒くて走るどころじゃないでしょ」

 

 

「えー……嫌でーす」

「そんなこと言わないで、お願いスズカ。その方がスカーレットも良いトレーニングになるわ」

「だって走れないんですよね。ただ指示を出すだけで」

「何か問題があって?」

「私が走れないことそのものが問題なんですよ」

「後輩に申し訳ない物言いね」

 

 

「はいトレーナーさんが違います。やっちゃいましたね。トレーナーさんが悪いですよこれは」

「違うね。スズカが悪いわスズカが。私悪くないって」

「でも今トレーナーさんが私が遅いって言いました!」

「スズカのツイートが遅いって言っただけでしょ!」

「私の動きが遅いってことですよね!」

「指がね!」

 

 

「へー。そうなの。スズカの倍。それは凄いわ」

「でしょう。凄いんですよスペちゃんは。たくさん食べてる姿が可愛いんです。まあ食べ放題に行くと大体トレーナーさんに怒られますけど」

「それはスペシャルウィークの責任なの? 食べさせた周りの責任でしょ」

「だから四人はみんなで正座します」

「スズカは?」

「……?」

「笑って誤魔化さないの」

 

 

「美味しいですよ、スペシャルデリシャスウルトラ爆盛りにんじんパフェ」

「にんじんがある時点でスイーツとして成り立ってないのよね」

「味音痴……」

「何て言った? あなたのご飯の八割は私が作っているのを忘れないでね。次からにんじん入れてあげないから」

「あっごめんなさい、それは勘弁してください」

 

 

「にこっ」

「あー可愛い。本当に可愛い。天然記念物」

「この写真ウマッターにあげて良いですか?」

「酔ってSNSを使うのはやめて」

「酔ってないですよ」

「どの口が言うか、このっ」

「ひゃっ、やめ、やめ……く、くすぐったい……っ」

 

 

「おつまみ無くなっちゃいましたね」

「追加作ろうか? もう少しなら作れるけど」

「うーん……もうちょっと飲みたい気持ちもありますけど……トレーナーさんももうちょっと飲みません?」

「私はダメよ。これ以上飲んだら記憶飛んじゃうから」

「もう少しだけ、ね、ね?」

「えー、でも……」

「お祝いですから」

「うーん……じゃあちょっとだけ……とりあえず、おつまみ作るね」

「お願いしまーす」

 

 

 

 

 

 ────

 

 

 

 

 

「トレーナーさん? 大丈夫ですか?」

「何、スズカ……」

 

 

 一時半。少し飲みすぎたかもしれない。スズカにお酌をされて嬉しくなって行きすぎてしまった。でも、一応、何となく理性が残っているような気もするし、まだ明日まで記憶が残るような感覚がする。そろそろ私だけでもノンアルコールに切り替えよう、という判断もできる。なんとか。

 

 そんなとき、立ち上がろうとした私をスズカが引き留めた。いつの間にか私の隣に座っていたスズカが、私を巻き込むように倒れこむ。普段寝るときのように抱きついて、私の胸元で囁いた。

 

 

「酔っちゃいました」

「でしょうね」

「どうですか? 何か感想とかありますか? 今なら何をしても誰も怒りませんよ」

 

 

 ふぅ、と息を吹き掛け、私の首筋に口をつけようとするスズカを片手で拒否して押し返す。頬を撫で、私の代わりに私の指をその口に差し出した。

 

 

「それを言われたくらいで私が何かをすると思う?」

「……思いませんけど。でも、何かの間違いが起こってくれれば良いなあって。そうしたら、トレーナーさん、ずっと私と一緒ですよね」

「スズカの将来のパートナーが、スズカの過去の交際経験で嫌な顔をするような人だとは思いたくないけどね」

「トレーナーさんが最初で最後なので関係ないですよ」

「あなたの最初も最後も、もっとあなたのことを大事にしてくれる人に渡しなさいね」

 

 

 どうやらスズカは、ウマ娘にしても結構お酒に強い方なのかもしれない。体温こそ上がっているが意識ははっきりしているし、力加減も完璧だ。絡んでくるのはいつものことだし、良い感じに落ち着かせて、それで、

 

 

「トレーナーさん以上に私達を大事にしている人なんていませんよ。絶対」

 

 

 なんだか、様子が変だ。

 

 

「ね、ですよね、トレーナーさん」

「……何が言いたいの? それもアピール?」

「ええ、そうですよ。アピールです」

 

 

 私にしておきませんか、と、スズカは小さく呟いた。それから、私の首に腕を回し、再び首筋に近づいてくる。少し痛みが走るくらいの力加減と、少しずつ体勢をずらして、私のうえに乗ろうとするみたいな動き。

 

 完全に私に乗っかると、跨がるように脚を広げて、私に縋る。ととと、と指だけが後ろから迫ってくる。少しでも気に入らないことを言えば、そのまま首を折るとでも言うかのように、少しだけ私の頭を揺らす。

 

 

「あの二人と一緒にいても、トレーナーさんは苦しいだけですよ」

「誰のことを言ってるの?」

「解ってるくせに。トレーナーさん。私、知ってますよ。トレーナーさん、最近、たまに吐いてましたよね。胃薬の数も増えましたし、食も細くなりました。味付けもちょっとだけ変わりましたね」

 

 

 ぐっと引き寄せ、私のことを抱く。甘い酒の香りのする口元が、私の耳元まで来た。

 

 

「ぼーっと考え事をしている時間が増えました。夜、魘されることも一度や二度じゃないですね。寝言が増えましたよ。眠りが浅い証拠です。お肌も少し荒れてます。抜け毛も増えましたよね」

「……それが、何?」

「何度も言ってますよね。トレーナーさんはトレーナーに向いてません。無理なんですよ、トレーナーさんが私以外を見るのは。なんでか解りますか? みんな、私より遅いからです」

 

 

 スズカの言うことは、事実だ、全て。そして、その原因だって、他ならぬ私自身、解っている。

 

 

「二人のことは大事です。二人に、ライスさんやウオッカさんとの勝負を避けろとは言えません。でも、トレーナーさんはもっと大切です。じゃあどうすれば良いか解りますよね」

「……解らないわ。私はあの二人のトレーナーだから」

「そうですか? でも、トレーナーさんは私のことが世界で一番好きですよね?」

 

 

 それはそう。でも、何となくはっきり言ってはいけないような気がしたので黙っておく。それでも、スズカには伝わった。

 

 

「じゃあ、あの二人を捨てて、私と一緒にどこかに逃げませんか」

「……スズカ」

「私は、一番速いですよ。絶対にもう、トレーナーさんを不安にはさせません。誰が相手であっても私が勝てば良いし、私はレースなんてもう出なくても良いんです。ただ、トレーナーさんと走っていられれば何でも良いんですよ。私だけを見ていれば、トレーナーさんはこれから、何も考えないで良いんです」

 

 

 ブルボンは、スカーレットも、強敵との戦いをやめられない。それはウマ娘の運命であり、本能であり、友情だ。誰もいないターフで一着になっても意味がない、全力を賭したならば、負けても死んでも良いと本気で考えているような子達だ。

 

 人間にその本質は解らない。だけど、それに理解は示したい。そうしたいなら、そうさせてあげたい。だから、やる。それが、通常のトレーナーの思考だ。そこに迷いがないのが、あそこにいる狂人達だ。

 

 

「トレーナーさんが望むなら、私は今すぐ引退します。スペちゃんとの約束も、ブルボンさんやスカーレットさんの憧れも、全部捨てて良いんですよ。私を見てトレーナーさんが褒めてくれれば、それ以上はいらないですから。優勝レイも歓声もいらないです」

 

 

 だが、私にはそれができない。数字で、勝てないと気付いてしまうから。ううん、きっと、私と同じ目を他の誰かが持っていたら、私より上手く使っていたんだろう。ブルボンも、スカーレットも、今よりもっと強くなっていたはずなんだ。

 私が弱いばかりに、三人に、『トレーナーを気遣う』なんて、世界で一番無駄なことをさせている。何度も何度も三人の覚悟に触れて、その度に次は頑張ろうと覚悟を決めて、それでも、私の中の何かが、三人を地獄に落とすことを拒否している。

 

 

「……二人で生きていきませんか、トレーナーさん。私を連れていってください」

 

 

 そして、取り返しのつかない言葉をスズカに言わせた。

 

 

「……どうしろって言うの?」

「どうします? 言っておきますけど私は本気ですよ。今すぐスマホを壊して、二度と誰とも連絡を取れなくなっても良いです」

「…………そんなこと言わないで、スズカ。友達は大切にしなさい」

「大切にしてますよ。でも、それより大切なんです。いつか死んじゃいますよ、トレーナーさん。私のために死ぬならともかく、他の人のためは嫌です。これ以上苦しんでほしくないし、傷付いてほしくないんです」

 

 

 少し起き上がり、今度は私の目の前へ、スズカの少し上気した顔が近づいてくる。私も生娘ではない。今何をすれば何が起こるか、火を見るより明らかだ。

 

 鼓動が高鳴る。スズカには向けないと決めていた気持ちが頭をもたげ、衝動になって私の背中を押す。スズカの体調や、スズカの気持ちよりも、絡んだ身体の感触に意識が行きそうになる。やっぱり私は、ろくでもない人間だ。絶対に許されない。私の気持ちでスズカの人生を縛ることだけは、絶対にあってはならない。いつか、スズカを捨てるときが来る。私が決意を保っている間に。

 

 

 ……でも、あと少しだけ。私がクズだったとして。それでも、二人が私を信じてくれているのは事実だから、それは見届けたい。スズカもそうだ。解っている、ような気がする。全て気が付いているような気がするけど、知らないことにして、いつか、誰かに、スズカを渡さなければならない。

 

 

「ね、トレーナーさん」

「……そうね、スズカ……あなたと遠いところに、今すぐにでも逃げ出したいわ」

 

 

 二人には悪いけど、スズカと二人に向ける信頼は格が違う。スズカと一緒にいれば、私の心配ごとは九割解決するだろう。だから、この手を取るのが、私の正解だ。

 

 

 しかし、残念ながら、私はもう負けている。ブルボンを負けさせられないという思考の中なら逃げていたかもね。こればかりはあの時の私に同じことをしないと解らないけど。

 

 でも、現実に、私はもう大丈夫。うん。大丈夫。何があってもきっと、笑って二人を追い込める。それを二人が望む限り。もう体も治った。

 

 

 だから、逃げる必要がない。

 

 

 

 

「三月までにそれを言われていればね」

 

 

 スズカの頬に、私の頬を軽く当てる。髪を束ねて背中に流す。両手でスズカの顔を挟んで、できるだけ笑った。

 

 

「……ですよね。そう思いました」

 

 

 こてん、と私の胸元に倒れるスズカ。横を向いて、はあ、と大きくため息をついた。

 

 

「言えないですよ。ブルボンさんだってあんなに頑張ってるのに」

「向いてないのはあなたもじゃない? 無意識ならともかく、意識的に人に冷たくするのは無理よ」

「……む……勢いで行けると思ったんですけど」

「お酒に頼って本心を言うのはマトモな人間の考えじゃないわね」

 

 

 全ての雰囲気が霧散し、力の抜けたスズカを持ち上げる。思ったより酔いが来てて、力が入りにくい。それでもまあ、可愛いスズカのためなのでそこそこ頑張って、元通り二人で並んで座る。かなり熱の上がったスズカの頬を撫でると、ふひゅ、と間抜けな音がして空気が抜けた。

 

 ひとまず、ここまで。あとは二人がいなくなった時に考えることだ。スズカのことを愛している私が、スズカの人生の邪魔をしないように。こんな気持ちをスズカに向けないように。スズカに迫られて、邪な目を向けてしまった私は、本当に、ああ、弱い存在だ。最低だ。

 

 

「残念だったわね」

「……ええ、とても残念です」

 

 

 この子に欲を向けてはいけない。なのに、ダメだ。唇に目が行く。あんなに覚悟をしたつもりだったのに、いざ寸前まで行って逃すと、惜しくなってしまう。次は無いかもしれない。

 

 

「……ところでトレーナーさん。トレーナーさんって、こういうお酒は飲んだことありますか?」

「え?」

 

 

 私が自分のなかの欲と戦っていると、幸いにスズカが日常会話を振ってくれた。たくさん買ったはいいがほとんど並べただけで終わってしまったお酒のなかから、かなり度数の強いものを持ち上げる。

 

 

「何回かはあるけど」

「どうでした?」

「いや、もう一口で酔っちゃうわよ。飲んだときは毎回記憶が無いもん」

「じゃあ、飲んで倒れたりとかはないんですね?」

「え、まあ……そうだけど」

 

 

 私の大学時代の友達も何も言っていなかったし、たぶんただ悪酔いするだけなんだろう。毎回家にはちゃんと帰れていたし、病院のお世話になるようなことにはならないはず。

 

 

「そうですか、じゃあ良かったです」

「え?」

 

 

 そう言って、スズカは酒瓶の蓋を開けた。同じように鼻を鳴らすと、よほど堪えたようで目をぎゅっと閉じて慌てだす。何をしているの。まさか飲む気? 今から? もう大分飲んだし……まあ、どうせ中毒にはならないんだし、今から限界ギリギリまで飲んでおくのも一つの経験か……いやでも、万が一ってこともあるし……

 

 

「ぅぇ……」

 

 

 私が躊躇っている間に、スズカは酒瓶をそのまま呷ると、頬を膨らませて酒を飲み始めた。いやスズカ、その飲み方は普通に危な──

 

 

「んっ」

「んっ……!?」

 

 

 ──ふっと、目の前までスズカが迫っていた。

 

 

 

 

 ────

 

 

 

「……いったぁ……っ」

 

 

 目が覚めると、私はいつも通り全裸だった。スズカに介抱してもらうといつもそうだ。脱がせて身体を拭いた辺りで面倒になってそのまま一緒にベッドに入ってしまう。案の定、スズカは普通に服を着て眠っていた。時刻は……あら流石私、朝八時。

 

 昨日の記憶が無いってことは相当飲んだのね……なんでそんなに飲んだんだろ。始まったときは飲まないつもりでいたんだけど……たぶんスズカがほろ酔いの私を良い感じに唆したのね。

 

 

 起き上がり、一度伸びをする。ちょっとお酒が残っているかもしれないし、少し休んでからトレセンに行こうかな。

 

 

「んん……ぁ……トレーナーさん……?」

 

 

 と、スズカを起こしてしまったらしい。スズカがどれくらい飲んだかは解らないけど、まったくお酒が残っているようには見えない。いつもの寝起きのスズカだ。流石はウマ娘ね。あと、どれくらい飲んだか把握してないってことは私がいた意味無いじゃない。何してるの私は。

 

 

「おはようスズカ。体調はどう? よく眠れた?」

「おはようございます……」

 

 

 黙って両手を差し出すので、それに応えてスズカを持ち上げて起き上がらせる。目を数度擦ってから、こっちをじっと見つめる。

 

 

「ごめんねスズカ。私、めちゃくちゃ飲んじゃったでしょ。全然昨日のこと、覚えてなくて」

「ふふ。ですね。大変だったんですよ。またトレーナーさん泣き出しちゃうから」

「本当に申し訳ないわ……ちなみにスズカは?」

「わたしもあんまり覚えてないですね。たくさん飲んだので」

 

 

 スズカにおつまみの提案をして、ついかで台所に立った辺りまでは覚えてるんだけど……何があったらそこから泥酔できるの私は。

 

 

「まあでも、色々解りましたから。次は大丈夫ですよ。やり過ぎません」

「……やっぱりスズカが飲ませたのね」

「トレーナーさんが勝手に飲んだんです」

「嘘を言うなーっ」

「ふぁふぁふぁ」

 

 

 頬をつねって黙らせる。間違いなくやられている。もう。アルハラ気質なのかしらこの子。心配だわ。

 

 

「じゃあトレーナーさん。朝ごはんを作ってください。その間に私は走ってきます」

「よくこの流れでぶっ込んでこれたわね」

「機嫌が良いんですよ」

「理由になってないわ」

 

 

 何を作ろうかな。まあ、スズカの好きなものを含めつつ、私の二日酔い対策のご飯も作ろう。

 

 んー……にしても頭痛い……本当にお酒は控えよう……。




トレーナーさんが一番危ないのはほろ酔いの時で、ちゃんと酔うと何を言われても全部の提案を泣いて拒否するので問題が消えます。

スズカさんがお酒を飲めるようになったので、前々からちょっとやりたかった番外編をちょくちょく書くかもしれません。その影響で更新が遅れても許してください。
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