走ることしか考えていないサイレンススズカと効率的に勝つ方法を考えるタイプのトレーナー。あと割と理解のある友人一同。   作:サイレンススズカ専属トレーナー

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生徒会メンバーの強さはいくら盛っても良いとされる。


振り幅が大きいダイワスカーレット

 

「よろしくお願いします!」

「ああ、よろしく。お互いに頑張ろう」

「はい!」

 

 

 ある日。エルナトにエアグルーヴが来て、みんなでターフに立っていた。あとオマケのナリタブライアン。用件はもちろん、前々からスズカを通して頼んでいた生徒会とのスカーレットの腕試し模擬レースだ。オークスは今月末だし、もちろん目標はトリプルティアラとはいえ、オークスはやっぱり気持ちの入り方が違う。

 

 

「ありがとうねエアグルーヴ。三本も貰っちゃって」

「何、ドリームリーグに進んだ身だ、トゥインクルほど間隔も短くない。それより、どうだ、調子は」

「上々よ。今日も良い勝負ができるでしょう」

「ふっ……楽しみだな」

 

 

 彼女にとっては格下との勝負にはなるが、やっぱり生徒会面子からの私への信頼はかなり大きい。私というか、正確にはスズカへの。私がスズカを通して有望だといえば、有望ということで併走が組める。スズカさまさまだ。

 

 気合いを入れてほしいのでわざわざエアグルーヴには勝負服で来てもらっている。もちろんスカーレットもそうだ。スズカに手伝ってもらってアップを始めるエアグルーヴ。で、こっちのスカーレットといえば。

 

 

「ふーっ……ふぅーっ……」

「緊張しすぎです」

「仕方ないじゃないですか……エアグルーヴ副会長と走るんですよ。あの副会長ですよ。オークス勝ち、ティアラから天皇賞勝ちのあの」

「私がルドルフ会長やブライアン副会長と走ったのと変わりません。特に緊張などはありませんでした」

「それはブルボンさんが能天気すぎるんですよ……!」

 

 

 がっちがちに緊張していた。怪我率こそ出ていないが、このまま走らせたら体に悪いんじゃないかってくらい体が固くなっている。実力の半分も出せなさそう。

 

 

「そうだ。私の時のブルボンを見習え」

「副会長。重いです」

「そうか。ところで今度はいつやれるんだ」

「マスターの許可次第です」

「そうか……」

 

 

 馴れ馴れしくブルボンの肩に肘を置くナリタブライアン。ブルボンとの勝負がよほどお気に召したのか、あれからも結構頻繁に絡みがあるらしい。ブルボンも口では断っているが目はギラついているので一触即発というか、私が許可を出したら倒れるまで戦うだろう。狂戦士どもめ。

 

 しかし、それくらいのモチベーションの方が良いというのも事実。ブルボンの精神性はライスシャワー以外については完璧と言える。つまり、自分は弱者なので全力を出さなければ勝てないが、自分ほど努力をした者はいないので全力さえ出せば必ず勝てると私を盲信できている。

 一方、スカーレットは良くも悪くもブルボンほどバカではないので、その盲信度合いが薄い。まあ、他人からすれば十分だと思うけど。

 

 

「大丈夫よ。そう悪いことにはならないわ。ちゃんと良い勝負ができるわよ」

「そうは言うけどね……エアグルーヴ先輩は凄い人なのよ……レースの上手さ、芯の強さ、高潔で高貴……まさに私の理想のような人だわ」

「あまり理想を抱かない方が良いぞ。現実は口煩くて潔癖性だ」

「聞こえてるぞブライアン!」

「ほらな」

 

 

 現実を注視する頭の良さというのも少し問題だ。格下相手に怯えなくなったのは良い。流石のスカーレットも、自分がごく一部の上澄みという自覚はあるだろう。ただ、自分がその上澄みの中でもさらに上位だということの自信がない。

 まあそれも仕方ないことだ。スカーレットが見ているのは結局完成されたあとのスズカや三冠という頂点に立ったブルボンで、目標もそこ。何を経ても自分の不完全さへの意識は抜けるまい。

 

 こっちは準備もばっちりなので、基本的にはメンタル面での準備をするに過ぎない。何を言っても無駄そうだけど。

 

 

「別に理想を抱くのは構わないけどね。ウマ娘である以上必勝なんてことはないのよ。絶対に勝つ余地がある。じゃなきゃレースなんて成り立たないじゃない。エアグルーヴだって負けてるのよ」

「それはそうだけど……緊張はするでしょ……!」

「大丈夫よ。いつも通り走りなさい。余計なことは考えなくても良いわ」

「そういうわけにはいかないの!」

 

 

 まあ、一回走らせるか。この子いっつも自信失くしてるな。実感が追い付けば全部解決すると思うんだけどね。それもこれもいつもスカーレットの上にいるスズカやブルボン、どうしてか解らないけどずっと強いウオッカが悪いよ。

 

 スカーレットは緊張からか朝から結構身体を温めているのでひたすらメンタルの準備をするだけだ。少し心拍を上げたエアグルーヴがスズカの腕を強めに掴んで戻ってきた。走りに行こうとしたのね、あなた。

 

 

「大丈夫よスカーレットさん。負けても慰めてあげるから」

「勝つ方法を教えてくださいよ!」

「エアグルーヴより速く走れば良いと思うわ」

「それができたら苦労しないんですよ!」

「でも、小手先の作戦で勝てるような人じゃないもの」

 

 

 エアグルーヴとスカーレットが勝負服で走るということで、割とギャラリーも多い。そこで、スズカもいつも通りの暴れ方はできないので自分を抑えるために私の腕を抱いて隣に座っている。心拍数は上がりすぎているが、とりあえず走り出さないだけ頑張っているか。

 

 

「大丈夫よ。エアグルーヴはトップスピードは大したことないから」

「おい」

「それってスズカさんの感想ですよね」

「当たり前でしょ。大したことなかったら今の立場にいないのよ」

「エアグルーヴが勝ってるのはレース運びが上手いからってトレーナーさん言ってたじゃないですか。私とエアグルーヴと、どっちが速いんですか?」

「それはもちろんスズカに決まってるでしょ? どうしてわざわざ言わせるの」

「んふふ」

「頭が痛くなってきたな……」

「バカップルが……人の気も知らないで……!」

 

 

 カップルって言わないで。

 

 

 

 

 ────

 

 

 

 

「どんっ!」

 

 

 せめてスターターとしてターフに立ちたいスズカの手によりレースが始まった。小走りで戻って来ようとして、我慢できなくなってしまうのでゆっくり歩いてくる。

 

 

「良いスタートだ。流石だな」

「でしょう。スカーレットさんの先頭への執念は相当のものです……ですが、かなり抑えて走っていますね。それと重いので退いてください副会長」

「そうなのか……並の先行で振り切れるような奴じゃないんだがな」

「副会長?」

 

 

 私の左でナリタブライアンに寄り掛かられながら分析をし始めるブルボン。レースの舞台はもちろん芝2400m左。私の目としては中距離、人によっては長距離のように扱うような距離だ。スカーレットからして勝とうと思ったら、スタミナ勝負のハイペースの方がまだ勝ち目がある。

 しかし、スカーレットはかなり抑えてエアグルーヴの一バ身前につけている。脚を残しているという点では先行策だ。

 

 

「彼女にああいうことをしちゃいけないのよね。勝てないから。まあ、そもそも格下に負けるような子じゃないんだけど」

「それはそうだろうな。アイツは本物だ。奇策でどうこうなる相手じゃない。正攻法でも無理だろうが」

「エアグルーヴもかなり緩めているみたいですけどね」

「様子見ってところでしょうね」

 

 

 余裕綽々といった様子のエアグルーヴに比べ、スカーレットはかなり苦しそうだ。無理に緩めたペースで走り、真後ろのエアグルーヴを意識しながら走っているのはストレスも半端じゃないだろう。元々2400はスカーレットにとっても未知の距離、対するエアグルーヴは元々ああいう合わせた上手な走り方ができる子だ。あれでは本当に勝負にならないわね。

 

 

「スカーレットさん……ひゃんっ」

「こら。ダメでしょイライラしたら」

「でも、スカーレットさんならもっと離せるはずなのにわざと……」

 

 

 茶番にも似たその走りにスズカの機嫌が悪くなり始めた。人の走りにまで先頭を求めるスズカもどうかとは思うが、これに関してはブルボンもやや不服そうなのであまり強くは言わないでおく。きゅっと絞ったウマ耳を手で元に戻す。

 

 二人は最終コーナーを回ろうというところ、既にエアグルーヴはペースを上げ、スカーレットの外にぴったりとついている。後ろから並ばれているにしてはスカーレットに気迫が足りない。やっぱりちゃんとスイッチを入れないとダメね。

 

 もう見る意味もないかな、と思っていたところ、三人がぴこぴことウマ耳を動かした。ギャラリーが顔を見合わせている。結構な数が離脱もし始めた。

 

 

「……だ、そうだぞ」

「そんなことはありません。スカーレットさんはオークスウマ娘です。たとえエアグルーヴ副会長が相手だろうと、無謀なはずがありません」

「どうしたの、いきなり」

「いえ、何でもありません。失礼しました」

 

 

 私には聞こえないが、ギャラリーも何か言っているようだ。ブルボンも耳を絞ってしまった。それも仕方無い。最終直線に入り、明らかにエンジンが違う。エアグルーヴが強すぎてスカーレットから何も感じられない。あれを見ればスカーレットを軽んじてしまうのは当然だろう。模擬レースであんなことがあれば、トレーナーだって全員エアグルーヴに行く。間違いない。

 

 

「……っ、ふ、ふぅっ……くっ……」

「どうどう」

「んっ……ふーっ……」

 

 

 そして、完全に先頭を奪われてしまったのを見て背筋を伸ばし乗り出しそうになるスズカ。ぐりぐりとシューズが地面を擦って削っている。その口にドリンクのペットボトルを突っ込んでおいて、頭を撫でて落ち着かせているうち、二人が帰ってきた。

 

 一着はもちろんエアグルーヴ。そして、大きく離されてスカーレット。

 

 

 ……負けるのは良い。相手は女帝エアグルーヴだ。これに関してはブルボンであろうとまだ勝てないだろう。彼女にはジャイアントキリングを一切許さない鋭さがある。正道を突き進み頂点に立ったウマ娘はやはり違う。シンボリルドルフもそうだ。

 

 ただ、負け方は選びたいよねって話で。

 

 

「で? 終わったが、この後はどうするんだ。まさか終わりじゃないだろう。これで終わりならブルボンが推すわけがない。こっちは仕事を置いて来ているんだぞ」

「ブライアン……お前は元々書類仕事などやらないだろう」

「向いていないからな。アンタの方が早いし正確だろう」

 

 

 帰ってきたエアグルーヴ。競り合いが一切無かったからか、あまり消耗しているようには見えない。後ろでスカーレットは膝に手をついているが、うーん、どうしようかな。

 

 

「おいスズカ。これはどういうことだ」

「どうって……?」

「言わせる気か?」

「そ、そんなに怖い顔しなくても……大丈夫よ、たぶん……」

 

 

 エアグルーヴも簡単すぎてちょっとむすっとしているし。まったく。じゃあ、本番に行きましょうか。うちの子達ってば本当に面倒ね。それもこれも、モチベーションの維持手段として内部での煽り合いを容認した奴が悪いのよね。つまり私。でもしょうがないじゃない。この子達、勝ち気だけで生きてるんだもん。

 

 発破をかけようと思って立ち上がる私。あまりの惨敗にその場で俯くことしかできないスカーレット。と、スズカが私を引き留めた。

 

 

「せっかくですしエアグルーヴに言わせましょう」

「……おい、まさか」

「大丈夫、どんな言葉が一番やる気が出るか、ブルボンさんが一番知ってるから。ちょっとめちゃくちゃ言っちゃうかもしれないけど許してあげてね」

「解るのか?」

「お任せください。我々はお互いにモチベーションの解放には自信があります」

「ほう……よし、やってくれ。思いっきりな。女帝様もそういうのは得意だぞ」

「ブライアン!」

 

 

 スカーレットのやる気スイッチなんて一つしかない。でも、ちょっと気になる。スズカやブルボンは身内だけど、そうではない憧れの大先輩に煽られた時スカーレットはお利口さんと猛獣のどっちが出てくるのか。

 

 ブルボンの内緒話でそれを伝授されてしまうエアグルーヴ。うわあ、嫌そう……彼女は性格はキツい……というか、口調が強くて生真面目だからキツく感じてしまうだけで、スズカと話しているのとかを見るに優しいし、人を煽ったりするのは本当に苦手そうなのよね。

 何ならナリタブライアンが言ったら? そっちの方がキャラが向いてるんじゃない? 

 

 

「ルドルフじゃあるまいし、口で戦うのは苦手なんだ。それより大丈夫か? 目標に言われるのは心に来るぞ。やる気を失くしかねん」

「問題ありません。スカーレットさんはその程度で走りを止めるウマ娘ではありませんので。何を言っても必ず向かってきます。副会長、全力でお願いします」

「そうそう。スカーレットさんはちょっと強く言うくらいでちょうど良いのよ。頑張ってね、エアグルーヴ」

「くそ……お前達、しばらく恨むからな」

 

 

 可哀想なエアグルーヴ。うなだれるスカーレットのもとに向かい、ふう、と息をついた。

 

 

「おい、スカーレット」

「は……は、はい……すみません副会長、私、次はもっと上手く……」

「いや、もういい。底は見えたからな」

「えっ……」

 

 

「板についてるじゃない、エアグルーヴ」

「副会長、後で動画ファイルを送ってください」

「任せろ」

「あなた達ねえ……」

 

 

 元々圧の強い子だから、上から目線がよく似合う。本当に、性に合わないことをさせてごめんね。挑発とかするような子じゃないのにね。ナリタブライアンの撮影については後で個人的に叱ってね。

 

 

「お前の実力は解った。これ以上やっても無駄だ。今日はこれで終わりにしよう」

「っ、で、でも私……」

「これ以上走って何になるんだ」

 

 

「卒業したら女優とか良いかも」

「言えてる。見てみたいもんだ」

「味方陣営の女幹部などどうでしょう。窮地に陥った仲間を救出しようとする主人公の出撃を正論で咎める作劇上の悪役です」

「どんなドラマを想定してるの……?」

 

 

 空気感が違いすぎる。

 

 

「がっかりだ。スズカも、お前のトレーナーも目が鈍ったな」

「っ……」

「だがまあ、クラシックレースは期待しているぞ」

 

 

 お前ほどのウマ娘なら、掲示板入りくらいはできるだろう。最後のとってつけたようなフォローが、深くスカーレットの心を抉ったらしい。ブルボン、かなりエグいこと言わせるのね。明日が怖いなあ。これで負けたらまたスパルタを強要されるんだろうな。

 

 

「おお……気合いが入ったな」

「でしょう。スカーレットさんはややメンタルが不安定ですが、その分不屈の精神性がありますから」

「流石よね」

「これでもうちょっとマシな勝負になるかもね」

 

 

 再びスターターとして向かうスズカ。スカーレットもかなりキているようだが、ギャラリーもいるし大先輩エアグルーヴ相手ということで即座に噛みつきには行かない。黙ってスタート位置に立つ。

 

 

「どんっ」

 

 

 ゲートくん五号が開く。エアグルーヴはもちろん変わらない素晴らしいスタートだが、ここで、スカーレットは違った。

 

 

「おお……良いぞ。そうだ」

 

 

 ハナから飛ばし、エアグルーヴを引き離していく。さながらスズカのような大逃げに近しい。エアグルーヴもわざと控えたので、その差が露骨に開いていく。

 素晴らしい。やっぱりスカーレットはこうしてこそだ。本人はそれを認めないだろうが、スカーレットの勝負根性は生半可な先行策には向いていない。冷静に作戦通り控えることも可能だし、根性に任せて逃げを打つこともできる。逃げしかできない二人とは違うのだ。

 

 

 ぐんぐんとエアグルーヴを突き放して飛ばしていくスカーレット。さっきより明らかにペースは上がっているが、遥かに楽そうに走っている。相手がエアグルーヴだからって自分をよく見せようとしちゃいけないのよね。

 

 

「ああいう子に育てたのはトレーナーさんですけどね」

「違うし……スカーレットはずっとあんな感じだったし……」

「責任を取ってあげないといけませんね。私は第一なら何でも良いですよ」

「何の第一?」

「何だと思います?」

「……」

 

 

 快調に飛ばすスカーレットに対し、何かを感じ取ったのか早めにペースを上げたエアグルーヴ。流石に差が詰まっていく。勝てない。それは間違いないが、どれだけ粘れるかが違うだろう。今のスカーレットならば、さっきのように並ぶこともなくかわされることはない。

 

 

「ひっ……」

「はいはい」

 

 

 そして我を忘れかけるスズカ。私に強めに抱きついてくる。二人の差が縮まっていく。流石はエアグルーヴ、直線に向いた頃には既に横に並んでいた。ぴたりと横につけて圧力をかけながらスカーレットの意識を外に膨らまないことに向かせ加速を阻害している。うっま。

 

 だが、今回のスカーレットは違った。

 

 

「……ほう驚いた。本当にやるじゃないか」

「でしょう。スカーレットさんはそういう方です」

 

 

「くっ……」

「あなたもスカーレットを褒めるとかないの」

「直視しているだけむしろ褒めて欲しいくらいですけど……!」

 

 

 エアグルーヴ相手に粘る粘る。スピード負けしていてさらに後ろから捲られているのにも関わらずぴったり真横から先に行かせない。流石の根性だ。惚れ惚れするわね。

 

 もちろん、能力の差はどうにもならない。数秒間粘ったスカーレットだったが、200を切った辺りで大きく離されていった。

 

 

「期待できるな」

「そうでしょうそうでしょう。スカーレットさんは素晴らしいウマ娘です」

「ふーっ、ふぅぅーっ……あっこれダメだトレーナーさん、無理無理無理」

「落ち着いてスズカ。せめて口調は保って」

 

 

 スズカが衝動に負けないようにブルボンに任せ、スカーレットのもとへ。予定では三本だったがこれで終わりかな。消耗が半端じゃない。ゆっくりとスカーレットの顔を包み込み上を向かせ、覚悟に満ちた瞳を覗き込む。

 

 

「お疲れ、スカーレット」

「とれ……な……」

「落ち着いて、深呼吸。私をよく見て。しっかり息をして」

 

 

 超至近距離でスカーレットと顔を合わせる。少しずつ炎が消えていき、身体が跳ねるような心拍が落ち着いていく。それと同時に疲れがどっと押し寄せてきたのか、倒れこむように寄りかかってくる。

 

 

「落ち着いた?」

「ええ……よく考えたらそうよね、先輩があんなこと言うわけないわ。台本はアンタ? それともブルボン先輩?」

「ブルボン」

「後で先輩のプリンを奪っておくわ。絶対にね」

 

 

 キレるのが早い割に妙に冷静ですぐに落ち着くからこうやって遊ばれるんだけど、気付いてないんだろうか。気が付かないでいてね、可愛いし扱いやすいから。

 

 ぐっと強めに私を抱き締めた後完全に落ち着いてエアグルーヴに向き直るスカーレット。今回は流石のエアグルーヴにもある程度の消耗が見られる。力が入ったのね。

 

 

「ごめんなさいエアグルーヴ先輩! 私、不甲斐なくて……」

「……そう卑下するな。驚いたぞ。まるで別人のようだった」

「その……少し、かっとなってしまって……」

「そういう教育を受けてきたんだ。仕方ないさ。それで勝てると言われているんだろう? だったら恥じるな。感情のまま走るのも戦術の一つだ」

「先輩……!」

「私は好かないがな」

「先輩……?」

 

 

 あらお茶目。

 

 

 

 

 ────

 

 

 

 

「で、これはどういう状況なんですか?」

「ああ、スカーレットが負けまくったせいでスズカが限界よ」

「それは……どうしよう、謝るのも何か嫌ですよね」

 

 

 スズカを羽交い締めにする私、それごと引きずるスズカ。ブルボンが腕を掴んでくれているので何とかなってはいるが、何故か掴む対象が私の腰なので控えめに言って身体が張り裂けそうだ。

 

 

「ちょっとだけ、ほんのちょっとだけですから……ほんの一、二、三、四、五、六、七時間で帰ってきますから……」

「ブレが大きすぎる……」

「おい。ブルボンをちょっと貸してくれ」

「お前は空気を読めブライアン」

「放して、放して……! 心臓が張り裂けそうなんです……」

「張り裂けそうなのは私の身体なんだけど……」

 

 

 もはや慣れ親しんだ痛みと暴走するスズカ。これは止められなさそうね。残念。私の命はここで終わってしまいそう……痛っ……!?

 

 

「今ぶちって言いませんでした?」

「言ったな」

「スズカさん、後遺症だけは残さないようにしてくださいね、こっちも困るので」

「まあ、本望だろう。スズカをこんなにした原因の一端はこいつにもあるんだ。責任を取らせろ」

「もうちょっと私の心配をして……!?」

 

 

 こっちは今切れたのが筋繊維かスーツかめちゃくちゃ心配してるんだからね。

 

 

「全部スカーレットさんが悪いんです、圧勝していれば私もこんなことしなくて済んだんですから!」

「無茶言わない!」

「ついに身体が浮き上がったぞ」

「ああ、もうダメですねこれは……」

「帰るぞブライアン。後のことはアイツが何とかする」

「手伝ってくれても良いじゃない! ねえ!」

 

 

 薄情な奴らめ。ありがとうございました! と挨拶をしてエアグルーヴを見送り、直後、多くのギャラリーに囲まれるスカーレット。キャラを崩せないのはともかく、みんなに褒められるのは悪い気はしない。そのまま、私が振り切られても戻っては来なかった。

 

 

 後日、チームエルナトが変わったことをしていたと噂になった。しかし、それ以上の細かいことは精査されず、私達の悪評が無くなることはなかった。何でだよ。ちゃんと見てよマジで。いややっぱ見なくても良いや。応募が増えても困るから。




ルドルフ
レース:★★★★★
舌戦 :★★★★★
指導力:★★☆☆☆

エアグルーヴ
レース:★★★★★
舌戦 :★☆☆☆☆
指導力:★★★☆☆

ブライアン
レース:★☆☆☆☆
舌戦 :★☆☆☆☆
指導力:★☆☆☆☆

(マルゼンスキー)
レース:★☆☆☆☆
舌戦 :★☆☆☆☆
指導力:★★☆☆☆

(ミスターシービー)
レース:★★☆☆☆
舌戦 :★☆☆☆☆
指導力:★☆☆☆☆
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