走ることしか考えていないサイレンススズカと効率的に勝つ方法を考えるタイプのトレーナー。あと割と理解のある友人一同。   作:サイレンススズカ専属トレーナー

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ケン○ッキーは好きです。骨付きが苦手なので骨無しかビスケットしか食べないですけど。骨無しチキンのお客様~。


食べて制覇するダイワスカーレット

 

「い、いただきます!」

「いただきまーす!」

「いただきます!」

「たくさん食べてねー」

 

 

 ある日。我が家はかなり賑やかになっていた。というのも、スズカがスペシャルウィーク、ブルボンがライスシャワー、スカーレットがウオッカを連れてきていたからである。

 

 前二人はあのオグリキャップに比類する健啖家ということで知れている。ウオッカはそんなことはないがやはりウマ娘、一人いるだけで消費できる食事の量が違う。今日は胃袋が欲しいのでわざわざ呼んだというわけだ。

 

 

「では早速開封しましょう」

「待ってください先輩! 最初ですよ! 運気! 運が一番良い人が開けましょう!」

「良いですね! じゃんけんとかします?」

「しゃあ! 負けませんよ俺!」

「ら、ライスはじゃあ、外に出てるね……? 不運が移っちゃうし……」

「移らないわよ。大丈夫」

 

 

 キッチンにいる私と、リビングのテーブルを囲む五人。テーブルには、大量に並べられたチキンの入った紙箱。キッチンにも既にいくつかあるし、追加注文の用意もある。私一人なら腐らないにせよ一月はかかりそう。これ全部がこの子達のお腹に消えると思うと本当に恐ろしいわ。

 

 

「じゃんけんほいっ!」

「やった! 私の勝ちィ!」

「待てよ! 今のは後出しじゃねえか!」

「判定のブルボンさん、どう?」

「0.2秒ほどの後出しです」

「ほら見ろ!」

「ぐっ……!?」

 

 スペシャルウィークやウオッカはそもそも騒ぐのが楽しいタイプだし、ブルボンも悪ノリまでこなせるタイプ、ライスシャワーも周りがアガれば勢いには乗れる。スカーレットもこのメンバーだともはや猫を被ることをやめているので、五人娘は既にかなり昂ってきている。

 

 どうしてこんなことになったか。この度久々にエルナトに大企業案件が舞い込んできた。私がマネージャーの真似事をして打合せするようなやつじゃなくて、URA上層や理事長が企業さんと話し合うタイプのやつが。

 

 

 その名も、『今日はウマ娘とチキンにしない?』とのことで。要するにファストフードチェーンとのタイアップで、特製セットを一つ買うとウマ娘のブロマイドが一枚貰えるというものだ。ランダム封入の闇はともかく、その対象が近年のクラシック勝ちウマ娘と三冠ウマ娘からということで、当然うちからはブルボンとスカーレットが選ばれたことになる。

 

 

「じゃんけんほいっ!」

「あ……か、勝っちゃった……! ら、ライスが勝っちゃった……!」

「ではライスに先陣を任せましょう」

「ライスさん! 早く! もう待ちきれないです!」

「スペ先輩ステイッ」

「ぁぅ」

 

 

 で、こういう大規模案件は初めてのスカーレットがウキウキになって、コンプするまで食べよう! と言い出した。まあ、ランダムとはいえ種類自体が多くないので、ギリギリ現実的ということで許可。みんなを集めてチキンパーティーとなった。

 

 

「このために朝ごはんのお代わりを二杯にしたんですよ……!」

「食べないんじゃないのね、やっぱり」

「凄いです……! ライスなんかついお腹が空いて三杯も食べちゃったのに……!」

「五十歩百歩でしょう」

「ラモーヌさんラモーヌさんラモーヌさんラモーヌさん」

「ブライアン先輩ブライアン先輩ブライアン先輩」

 

 

「早く食べないと冷めちゃうわよ」

「そ、そうですよね! よ、よーし。開けるぞーっ。う、うぅぅぁ……外れたらどうしよう……!」

「ライス。本日のミッションは全種類のコンプリートです。その意味で一人目に外れの概念はありません」

 

 

 私があの中に交ざると弾き飛ばされてしまうので、スズカと一緒にキッチンにいる。そのうちソファに移る予定だが、流石に給仕は私がしないとね。隣のスズカは何となくこっちにいる。

 

 

「えいっ!」

「む……マチカネフクキタルさんですか」

「あ、そうか。フクキタルも入ってるのね」

「スズカ。世間では有名な菊花賞勝ちウマ娘よあの子も」

「いつの間にか勝ってましたし……じゃあ私達も開けましょう」

 

 

 友達に対してのリアクションが冷たすぎる。本当にマチカネフクキタルに対して扱いが雑よね、あなた。ラッキー狂いが一枚目ということでテンションが上がるリビングには目もくれず、こっちの箱を一つ開ける。

 

 

「……あ、フクキタル」

「嘘でしょ?」

「びっくりですよね」

 

 

 いつものセーラー服勝負服で決めポーズを取るマチカネフクキタル。とはいえ、慣れている私達は彼女の顔を見ればすぐに解る。これはあんまり運勢の良くない日に撮ったものね。幸先は良くないかも。一セットでも結構量あるし。

 

 

「トレーナーさんは何食べます? ビスケット?」

「流石に一つくらいチキンを食べるわよ」

「一つで良いんですか?」

「油はお腹に良くないもの」

 

 

「さあ食べましょう!」

「三箱くらいまず開けておく? 二つしか入ってないし」

「そうしましょう」

 

 

 ただし、運勢を越える胃袋がある場合は除く。一瞬で消えていくチキンを見ながら、私は十口くらいかけてチキンを頬張った。

 

 

 

 

 

 ────

 

 

 

 

「やった! 来た! ラモーヌ先輩!」

「おお! じゃあこれでティアラは制覇か?」

「エアグルーヴさんがまだです」

「エアグルーヴはさっきこっちで出たわよ」

「な、ならコンプリート、だよね?」

「このまま行きましょう!」

 

 

 ば、化物……! 

 

 

 食べ始めてから一時間。私はチキン二個で普通にお腹が膨れていて、飲みものをちょびちょび飲みつつビスケットを齧ることしかできていない。しかし、ウマ娘達は一口目と変わらないペースで食べ進め続けていた。

 

 

「あ、エアグルーヴだ。これで二枚目ね」

「あなたもよく食べるわね……」

「そうですか?」

 

 

 スズカも七箱目に手をかけている。一切ペースを落とすことなくぱくぱくと口に運ぶ姿はやはり別種族と言わざるを得ない。明らかに体重以上だろうと栄養が偏ろうと問題なく食べられる、ウマ娘七不思議の一つである。

 

 

「あ、トレーナーさーん! 麦茶のお代わりくださーい!」

「はーい。ちょっと待ってねー」

 

 

 適時追加を運びつつ、ソファで時間を潰すことしかできない。

 こんなに大食いなのに食べ方が異様に綺麗なのよね。食べまくってる割には箱は一つ一つ潰してくれてるし、食べカスも纏めて袋に捨ててくれている。

 

 

「っ……くあーっ! ブライアン先輩だーっ!」

「三枚目でしたっけ? よく出ますねブライアン先輩も」

「あの方はどこにでも現れて勝負を挑みますから、それが反映されている可能性があります」

「え? ライスは会ったことないけど……」

「私もありません」

「俺もねえっす」

「あーあ。ブルボン先輩が外の人にマウントとったー」

「待ってください。誤解です」

 

 

 何なら早食いって感じでも無いし。一口一口味わっているはずなのに私の五倍速い。スズカもニコニコしながらえげつないスピードで食べているし。全部可愛くもぐもぐしてるのにね。

 

 

「スズカ?」

「んむ……む……ぁむ……はい。どうかしました?」

「ううん。呼んでみただけ」

「はあ」

 

 

 でも口に多めに入れてしまうスズカのもぐもぐは可愛い。食べてる最中だから頬を突きたい欲を抑え代わりに口を拭く。もぐもぐごくんしてて可愛いねえ。スズカは喉まで可愛い。

 

 

「あと誰が出てないんですか?」

「スペシャルウィークさんとスカーレットさん、それからルドルフ会長と、シークレットの私です」

「めちゃくちゃシークレットのネタバレするじゃないすか」

「……失礼しました。シークレットの封入内容は秘密です」

「まあまだ通常版との違いは解らないですし」

 

 

 暇すぎてスズカを愛でることしかできない。封入率は知らないけど、均等なのかな。三冠組はレアとかあるか? 

 

 

「トレーナーさん。手の位置に気を付けてください。拭いたとはいえその手で尻尾に触ったらいくらトレーナーさんでも怒りますよ」

「あ、ごめん。ごめんって。睨まないで? ビスケット食べる? あーん」

「睨んでません……あーん……んーっ……」

 

 

「ちなみに確率って均等なのかな?」

「そう仮定するしかないでしょう」

「で、十四種類だろ? つーことは……? ブルボン先輩、確率って……」

「一種類につき0.07142857142857142857142857142857……」

「バカ! 桁数指定しないとブルボン先輩壊れちゃうでしょ!」

「ブルボンさん! ストップストップ! 計算終わり!」

 

 

 ぱくぱくとチキンを口に運びながらわちゃわちゃとやっている五人。尻尾に触れると怒るがそれ以外なら怒らないスズカが八箱目から通常ブルボンを引いた。

 

 通常ブルボンはいつもの勝負服に、右手だけを突き出した決めポーズ。無表情だがそれも可愛い。通常版でも十分価値があると思う。ブルボンに関しては三冠を取った以上これからのコラボ展開でもかなり露出が増えると思うし、スカーレットもトリプルティアラを取ればそう。

 

 

「やっぱりなかなか出ませんね、シークレット」

「そりゃそうですよ。ちなみに今日出なかったら後日リベンジですからね」

「……なんか、今になって怖くなってきました。私物凄い太っちゃいません?」

「ご安心ください。太ってもエルナトのトレーニングにより三日で減量可能です」

「怖すぎますって」

「慣れたら癖になるよ?」

「んなもん癖にしたくないんすけど」

 

 

 私のトレーニングを怪しいトレーニングみたいに言わないで。

 

 

 

 

 ────

 

 

 

 

「あーっ! もう食えない! ごちそうさまでした!」

「あらもう限界……? 情けないわねウオッカ」

「無茶言うなって……どれだけ食ったと思ってんだ……」

 

 

 さらに一時間。変わらないペースで食べ続ける先輩三人と、そう大食いでもないクラシック二人の差が出来始めた。お腹を膨らませて倒れるウオッカと、ちゃんと座ってはいるがさっきから一切手が進んでいないスカーレット。

 

 

「休んでおいて良いですよ。もう少し食べられますから」

「あ、スカーレットさんだ。見てスカーレットさん。出たよ」

「ちょっと……今リアクションを取る余裕がないです……」

「これでシークレットを残すのみですね」

 

 

 スペシャルウィークとライスシャワーの手は止まらないし、ブルボンもゆっくりではあるが食べ続けている。人間の食欲の差もかなりあるが、ウマ娘ではさらにだ。よくトレーナー内の勉強会でオグリキャップとタマモクロスが引き合いに出されるやつね。

 

 スズカもとっくに食べるのをやめて、私の膝の上でぐったりとしている。食べてすぐ寝ても問題ないのもウマ娘の凄さよね。

 

 

「食べすぎた……ウオッカがバカみたいに煽ってくるから……」

「はあ!? 先に煽ったのはお前だろ!?」

「アンタの表情ぐぁぐっ……ちょ、ちょっとやめましょう。流石の私もトレーニング以外で吐くのは嫌」

「トレーニングでも嫌であれよ。なんでトレーニングなら許せるんだよ」

「勝手に出ちゃうのよ」

 

「あー解ります。出ちゃいますよね結構簡単に」

「うん……一回くらい出しておくと逆に楽になったりね」

「正常な生物としての反応ですから、我慢しない方がコンディションにも良いかと」

 

「お前の先輩イカれてるって」

「アンタのダービーの先輩よ。見習ったら?」

 

 

 二人して並んで倒れるスカーレットとウオッカ。大体食欲は同じくらいか。ウオッカはどちらかというと華奢に見えるけど……スカーレットが隣にいるからか。服がぱつんぱつんだもん。

 

 

 にしてもシークレット出ないわね。買ってきたやつはほとんど食べちゃって、あと三箱……五箱か。五箱しかないのに。

 

 

「残り五箱だから、それが無くなったら終わりねー」

「えーっ。まだ全然食べられますけど……」

「怪物……」

「いや本当に」

 

 

 もはや早い者勝ちで開けているので、大食い三人が一つずつ一気に開ける。口に頬張りながら次を行けるのはなんかもうフードファイターとかでしょ。

 

 

「せーのっ」

「ブライアン副会長です」

「私です! 私!」

「メジロドーベルさんだ……!」

 

 

 いい加減何枚も被ってくればリアクションも無くなってくる。一切嫌気を見せることなくさらに食べ進め、ナゲットなんかはもうポップコーンくらいの勢いで口に運んでいる。本当に美味しそうに食べるものね。ブロマイドもほとんどコンプリートみたいなものだし、今日は平和に終わりそうね。

 

 

「次開けますよー」

「誰が開けます? 二箱」

「ライスはいいよ……二人で開けて?」

「では開けましょう」

 

 

 そしてラスト二箱。ブルボンとスペシャルウィークが開けるらしい。流石に最後なので全員で注視しておく。箱を開き、個包装のカードの封を切る。

 

 

「大丈夫? フクキタルに電話しておく?」

「フクキタルさんしか出なくなったりしません?」

「良いおまじないを知ってるかも……あ、もしもしフクキタル? 今電話大丈夫?」

『スズカさん……助けてください……』

「何、どうしたの? 何かあったの? 今から行った方が良い?」

『どうしても私のブロマイドが出ません……!』

 

 

 プツッ。

 

 

「フクキタルのことは忘れましょう」

「あ、はい」

「では開けます……残念。スカーレットさんです」

「理解はできますけど人を外れ扱いしないでください」

「ラスト! これがラストですよーっ!」

 

 

 最後、スペシャルウィークの封が切られる。切り札のようにばっと抜き去ったそのカードには、勝負服で少し屈み、中腰でこちらを睨むブルボンと、背中合わせに大の字に立ち、ナイフを抜いて横顔まで振り向いたライスシャワー。

 

 ブルボンたっての希望でねじ込んだシークレットのミホノブルボンカード、『限界への挑戦 ミホノブルボン&ライスシャワー』である。シークレットの内容を決めても良いと言われたブルボンの第二案が採用された形だ。第一案は私のお姫様抱っこだったので断固として拒否した。

 

 

 ブルボンの桃色のオーラエフェクトと、ライスシャワーが纏う蒼炎のエフェクトが対照的に輝き、キラキラ加工で二人の目に炎が宿っているように見える。チャレンジャーミホノブルボンとラスボスライスシャワーがよく表現できている、真実を知ると燃えるタイプのデザインだと思う。通常版ブルボンは何の捻りもない立ち絵だからなおさら。

 

 こんなことをして良いのかは議論の対象となったらしいけど、他ならぬ当人が良いと言って撮影したのだから良いのだろう。ちょっとネットは燃えてたけど。

 

 

「やったーっ!! 揃いましたよ!」

「ミッションコンプリート……けぷっ」

「やったね!」

「揺らさないでください、ライス」

 

 

 これにてコンプリート。最後に開けたチキンも無事スペシャルウィークとライスシャワーが食べ切り、ちょうど良い感じに挑戦は終わった。飛び跳ねる勢いのスペシャルウィーク。どうしてこの子はこんなに元気なのかしら。ライスシャワーもほとんど顔色が変わらないのが恐ろしい。ブルボンはお腹を大きくして倒れてしまったし。

 

 でも良かった、一日で終わって。一店舗で買い占めるわけにはいかないから、何店舗も回って買い揃えるだけでも大変なのよね。簡単にテーブルを片付けて、恐らく動けないだろう数人を引きずって退かす。

 

 

「まあ、今日は寝なさい」

「うす……」

「二人は一緒の布団で良い?」

「あー……うん……もうそれで良いわ……」

 

 

「スペちゃんは帰れそうね」

「はい。腹ごなしがてら軽く走って帰りますよ」

「良いわね。じゃあ私も」

「スズカは大食いしてないでしょ」

「ぁぅ」

 

 

 布団は二枚しかないが、私のベッドは三人で眠れるのでこれで良し。スカーレットとウオッカは一緒で良いし、三人は私スズカブルボンがベストだろうし、かと言ってスペシャルウィークとライスシャワーを一緒にするのはちょっと申し訳ないし。

 

 

「でも、私もいっぱい食べましたけど……?」

「あなたは適正量でしょう。この子らは信じられないくらい食べたのよ」

「スペちゃんにとっては八分目ですよ!」

「それはそうですね」

「嘘でしょ……?」

 

 

 まだ余裕があるんだ……震える。それはそれとしてスズカのランニングは許さないけど。

 うちの二人がダウンしているなか、私は何とかスズカを宥め、予定通りブルボンも連れて三人で寝ることとなった。うちに来た時点でライスシャワーは少なくともブルボンと寝ることを覚悟していたようで、次の日、ライスは変な子だ……と嘆いていたのだった。




オークスとダービーが近付いてきています。
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