走ることしか考えていないサイレンススズカと効率的に勝つ方法を考えるタイプのトレーナー。あと割と理解のある友人一同。   作:サイレンススズカ専属トレーナー

24 / 249
曇らせについてのご意見をたくさん頂き、ありがとうございます。

こちらとしても、サブタイトルや前書き等注意喚起はしますし、お気に入りから飛んでもまず注意書きが目に入るように改行等工夫して参ります。

まあ本当にやるかは解りませんが。スズカは可愛いので曇らせる必要は無いでしょ(正論)


チーム名には興味の無いサイレンススズカ

「お疲れ様です、トレーナーさん」

「お疲れ様です、たづなさん」

 

 

 ある日。いつものように走りたいとだだをこねるスズカとレジャーシートに座りながら、死にそうになりながら坂路を走るブルボンを眺めていると、たづなさんが話し掛けてきた。

 

 

「用があるなら呼んでもらえたら良かったのに」

「そうはいきません。トレーナーさんは期待の星ですから」

「あはは……ありがとうございます」

 

 

 でもたづなさん、トレセンにいる全トレーナーに同じこと言ってそうなんだよね。トレセンのトレーナーは全員理事長が選んだ有能なので全員期待の星です! とかたぶん平気で言うし。

 

 

「それで、何を……あ、すみませんちょっと」

 

 

 ブルボンが帰ってきた。今日はこれで二本目、既に全身の痙攣が始まっているし汗も尋常ではない。彼女に出せる全力を出させているのだから、一本目から疲労困憊ではあった。

 

 

「はいブルボンこっち来て。よいしょっと」

 

 

 が、私は体力については十分に見ることができる。一応ポーズとして脚を何度か触り、ブルボンの無表情な目を覗き込む。もちろん、彼女がまだ大丈夫だと知ってのことだ。まだ怪我をしない。怪我をしないならあとは根性の話だ。

 

 

「うん。じゃあブルボン、行こう」

「……は……い……っ、ミホノブルボン、続行します……っ」

 

 

 

「……それで、何でしたっけ」

「あ、いえ……面談とか組んだ方が良いんでしょうか……でも……

「たづなさん?」

「いえ、何でもありません。今日はですね……」

 

 

 ごそごそとポーチから書類を取り出すたづなさん。聞こえてましたよ? イカれたことをしている自覚はあるので何も言い返せませんけど。

 

 そんな私の疑いの目は知らん顔で、たづなさんが差し出してきたのは……チーム申請書類。

 

 

「今日はこちらをご記入いただけたらと思いまして」

「え……いや、二人ですよ? まだじゃないですか?」

 

 

 トレセンにおいて、トレーナーというのはウマ娘がいなければ存在できない。一方で、どっちが希少性があるかというと圧倒的にトレーナーの方だ。これは人数の差とハードルの差もある。

 

 トレセンにいるウマ娘は合計すると二千人ほどになっている。入学者希望者が年々増えているというのもあるし、厳しい入学試験こそあるが、理事長の判断で熱意入学なんてものもあるのだ。だから、能力が圧倒的に劣っていて全く勝てないが絶対に諦めないウマ娘なんかもいる。

 

 

 一方、トレーナーはシビアもシビア。厳しい資格試験と理事長からの面接があってやっと中央トレセンに来られるわけで、百人もいるか怪しい。単純計算で一人二十人見るのか。そんなわけがない。

 

 ……多くのウマ娘が、最低限のことしかしない最低保証のようなトレーナーに集中して、まあ勝てずに辞めていくという現実がある。そういうトレーナーも別に悪意があるわけじゃない。むしろ、トレーナーすらつかずにレースに出られないウマ娘を見捨てられない人達だ。

 

 

 と、いう厳しすぎる一面もあり、トレーナー達には何人ものウマ娘を担当することが求められる。そのため、複数人担当を持つとチーム制度を利用できることになっている。

 

 

「ええ、ですが、サイレンススズカさんのトレーナーさんが新しく担当を持つということで、話題性とか……ね?」

 

 

 ね? じゃないが。

 

 

「まあ、別に……断る理由はありませんけど……人数を増やせとか言われなければ」

「それは安心してください。しばらくは私らの方が何か言うことはありません。まあその、志望する子は来るかもしれませんけど……」

「…………それはまあ、しょうがないですけど」

 

 

 チーム制度を組むと、まずチームとして部屋が貰える。今私は共用のトレーナールームに机を持っている状態だが、荷物は私の家とか貸しロッカーとか、あるいはスズカの部屋を使っている。

 

 それに、チームとして予算も配分される。複数を担当しているトレーナーにより頑張ってもらって、より多くのウマ娘が活躍できるようにするわけだ。

 

 

「承けていただけますか……?」

 

 

 あとはまあ、トレセンの興業もある。チームを組むと……うちで言うとスズカとブルボンを抱き合わせでグッズ展開できたり、写真撮影とか、まあ、色々。個人報酬ではなくチームにお金を払う形になり、向こうとしては商売がやりやすくなる。ソロアイドル数人より、一ユニットアイドルの方が扱いやすいわけだ。

 

 

「……まあ、まあ。承けます……はい。これを提出したら良いですか?」

「ありがとうございますっ。ええ、提出してもらえたらこちらで処理しますので。早急に!」

 

 

 では! とたづなさんが去っていく。私は少し前に戻ってきていたブルボンの脚に触れつつ、ぼーっとして書類を読むスズカ達を交互に見る。

 

 別に二人は何も考えて……いやブルボンは疲れきって考えられないだけだけど、スズカは何も考えてないし何も気にしていないだろうなあ。スズカにとっては少しだけど収入が減るんだけど。

 

 

「チーム……チームってことにしとく?」

「どちらでも良いですよ? 今の関係が変わらなければ……」

「むしろ、はぁっ……ち、チームを組むことで……問題は……起こり得ない、はず……です……」

「まあね」

 

 

 二人が良いなら良いかあ……どうせこういうので稼ぐお金はレース賞金に比べたら誤差で、ファンサービスやトレセンへの還元が主だし……元々スズカはそういうの好きじゃないからたくさんはやらないし。

 

 私達もね、トレーナーは超高給、ウマ娘も学費は高いけど設備は充実しているし賞金の配分も良い……これくらいはやらないとね。

 

 

「まあ書いとくね。ブルボンは昼はこれで終わり……いや、二分待ってもう一本行こう。さっきラスト少しペース落ちてたからしっかり保ってね」

「はい……承知しました、体内タイマーを修正し、次は対応します」

「でもそうかあ、チームかあ」

 

 

 名前を付けるのか……トレセンのチームは星の名前から取るのが普通なので、空いている名前を調べるところからやらないといけない。

 

 オリジナルなら何でも良いんだけど。チームスズカでも良いし、チームブルボンでも……それはスズカファンに刺されそうだな。

 

 

「スズカはどんな名前が良い?」

「私は……別に……これって言うのは……」

「だよねえ」

 

 

 ブルボンの走りを見るスズカ。スズカがそういうのに口を出すとは思ってなかったけど。というか、ブルボンもそんなことは言うまい。私が一人で考えるのか……

 

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……ま……スター……、完遂……しまし……ぅ……た……」

「ああほら戻しちゃうって。喋らなくて良いから」

 

 

 次走ったら絶対に怪我をする。そんなレベルに追い込んだブルボンも帰ってきた。疲れと酸欠で吐きそうになりながらも私の前で直立はするブルボンの背中を擦り、スズカと協力してトレーナールームに連れ帰る。ここでしばらく休ませて、夜になったらまた走る。私とブルボンでなければ死ぬ練習量で、ブルボンを強引に勝ちに導くのだ。

 

 

「じゃあスズカも自由に……走らなければ自由にしてて良いからね。今日のプールは夕方だから」

「はい。あの、その……走っても」

「今だめって言ったよね???」

 

 

 いつものやり取りを挟みつつ、それならばと途端に私の膝に倒れ込むスズカ。右膝はスズカ左膝はブルボンで、もはやトイレにも行けない。終わった。あと足がむくむ。ヤバすぎ。

 

 

「そういえば、トレーナーさん」

「何?」

「スペちゃんが、今度一緒に走りませんかって言ってくれたんです」

「言って()()()?」

「あっ……()()()()()()()()()

「ふぅん……」

 

 

 ぷいっ、と顔を逸らし、私のお腹に抱き付くみたいに隠れるスズカ。まあ、相手はスペシャルウィークだ。スズカにとっても……まあ、直属の後輩はブルボンだが、初めての後輩はスペシャルウィークだし。叶えてあげたいけどね。

 

 

「まあ、良いけど……あの世代に強い逃げウマなんていたっけ……?」

「みたいです。確か、ええと……何とか……かんとか」

「何も伝わってこない……」

 

 

 まあ、後で調べておこう。スペシャルウィークが警戒するんだからよっぽど強いんだろうし。それにしたってスズカ相手は過剰だけど。

 

 そういえば、グラスワンダーはどうしてるかな……そろそろ立ち直ったかな……? グラスワンダーのトレーナーから何も連絡はないから、トラブルも含めて何も起こっていないというのが無難な解釈か。

 

 

「まあ良いか。せっかくだしスペシャルウィークにも友達連れてきてって言っておきなね。あの子は先行か差し型だし、人数は多い方が練習になるから。距離は、じゃあ……2400くらい? まあ、出るレースに合わせようか。先頭ぶっちぎっておいで」

「わぁっ……トレーナーさん、好きですっ」

「これで言われても嬉しくないわね……?」

 

 

 とは言いつつ愛バに好きと言われれば嬉しい。撫でてあげよう。二人撫で比べである。贅沢だ……スズカの方が慣れてるから気持ち良く感じるね。

 

 

「いつが良いですかね……?」

「いつでも良いよ。向こうの都合で」

「解りました。言っておきますね」

「それまでスズカはランニング我慢ね」

「…………明日やります」

「それは無理でしょ」

「ひゃぅっ」

 

 

 スズカにはデコピンを、すやすやブルボンにはナデナデを。ごつんごつん頭突きを始めたスズカのウマ耳を指で弄くりつつ、パソコンで使われていない星の名前を調べていく。

 

 

「……結構あるけど……うーん……」

「チーム名ですか?」

「うん。まあ浮いても困るし星の名前にするつもりだけど」

「んん……せっかくだしおしゃれな方が良いですよね?」

「それはそう」

 

 

 とはいえ、星の名前なんか詳しくないし……α星くらいは有名だし聞き覚えはあるけど、たった二人でα星の名前を埋めるのも申し訳無い。スズカは実績を冷静に見ると結局G1二勝であり、最上位にはいるがトップではない。ただ、強い勝ち方と見てて気持ちの良い走りをするからここまで人気が出たのであって。

 

 

 じゃあ……名前の響きとか……お、星言葉なんてのもあるのか。

 

 

「これ良いね。星言葉。花言葉みたいでおしゃれじゃない?」

「『機敏』とかですか?」

「何それ?」

「アルストロメリアの花言葉ですけど……」

「花の名前も知らないもんなあ」

 

 

 

 

 

 

 ────

 

 

 

 

 

 

 そして。

 

 

「じゃあたづなさん、よろしくお願いします」

「はい。部屋の確保はできてますので、清掃の方を呼んだらすぐに使っていただけますよ。もちろんこちらで呼んでおきますので」

「解りました。ありがとうございます」

 

 

 トレーナー、私。実績あるウマ娘はサイレンススズカ一人、これから実績を上げるウマ娘がミホノブルボン一人。まだたった三人だけど、このチームでどこまでも逃げていく。

 

 理事長室でたづなさんに書類を提出した後、私は心の中でそんな決意を固める。

 

 

 ……まあ、どんなにカッコつけたところで、所詮トレセンのお金のためのチーム結成ではあるんだけど。

 

 

 

 

 

 

 ──チーム『エルナト』、始動──ッ

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。