走ることしか考えていないサイレンススズカと効率的に勝つ方法を考えるタイプのトレーナー。あと割と理解のある友人一同。   作:サイレンススズカ専属トレーナー

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宗教上の理由でスズカにデバフや回復は積めない(加速と速度アップのみ)のでチャンミの育成が非常に大変です。ふええ……地固め継承できないよぉ……


後輩で遊ぶサイレンススズカ

「んー……あ?」

 

 

 翌朝。目が覚めると目の前にブルボンが眠っていた。死んでるんじゃないかってくらい安らかに目を閉じて、でもよく見ていると非常に規則正しく寝息を立てている。睫毛なっが。どいつもこいつもウマ娘は美人ばっかりだ。

 

 シャットダウンしたアンドロイドの寝間着を少しだけ直してあげて、寝返りで振り向くとスズカ。こっちはこっちでどこか微笑んでいる。眠り姫どもめ。私の自尊心を削って何が楽しいんだ。

 

 

 そしてまあここにはいないスペシャルウィーク。いなくてよかった。流石にセミダブルに三人は狭い。スズカと寝るために買ったベッドだけど、大人しくダブルにしておけばよかった。今度キングに買い直そう。

 

 ちなみにスペシャルウィークも昨日の時点ではベッドで寝る気マンマンだった。スズカ達と同じく人と寝ることに抵抗がないタイプだったようだ……けど、寝相が悪く私を蹴り飛ばしてしまうということで断念。あのスズカが真顔で「やめた方が良いと思います」と言ってきたのが印象に残っている。

 

 

 時計を見て、まあ良い時間なので起き上がる。リビングの床で来客用の布団が見るも無残にぐちゃぐちゃになっていた。こわ。

 

 トイレを済ませ歯を磨き洗顔、着替えと一通り終わらせる。ご飯は……まあ作るか。絶対足りない人間サイズの朝ごはんを作るのはスズカが好きだと言うからだけど、一応四人分のご飯を早炊きにかけておいて。

 

 

「んー……何にしようかな」

 

 

 適当に料理は作りたいけど、今日はあまりにも材料が豊富なんだよね。ウマ娘サイズの料理は疲れるから朝からなんて作らないけど、普通に晩御飯作るつもりで昨日買ってきてるからなあ。多めになっちゃうけどまあ食べられるか。

 

 

 手早く調理開始。二人分は一人分に毛が生えただけなんだけど、四人分ともなるとちょっと大変だ。まあこれでもそこそこ料理は得意だし、お味噌汁も作って……最後玉子を巻く前に三人を起こそうかな。

 

 

 ということで火を止め、卵を割る前に寝室へ。いまだに眠るスズカとブルボンの側に座り、まずはブルボンから。大きめの耳に触れるか触れないかまで指を伸ばし、ふわりと触れる。そのまま髪を撫でながら頬まで降りて、それでも変わらない表情に口を開く。

 

 

「ブルボン?」

「はい」

「きゃあぁあぁっ!!?」

 

 

 本気で起こすつもりはなかった。あー可愛いなあって呟くみたいに名前を呼んだだけだったのに、ブルボンがぱちりと目だけを開いた。驚いた末叫びながらベッドから落ちる。びっくりした……何してくれるの。めちゃくちゃ腰打ったんだけど。

 

 

「んー……なんですかトレーナーさん……朝から……」

「い、いや、あ、ごめんスズカ、起こしちゃったね……ぶ、ブルボンが……」

「ブルボンさんが何かしたんですか?」

「いえ、呼び掛けを受けましたので、起動命令と判断して起動しました」

「ね、寝てたよね……」

「トレーニング後のものは回復のための緊急スリープです。通常シャットダウンであればマスターの命令を聞き逃すことはありませんので」

 

 

 そんなんでその寝起きは普通に怖いんだけど。体を起こしてふんすと胸を張る。私の貸した寝間着が千切れそうになってるって。

 

 私の叫び声に目を覚ましたスズカが、大きく伸びをしながらどや顔ブルボンを見る。そして、騒ぎすぎですよ? と私を叱った。ごめん。でもびっくりするじゃん。

 

 

「そんな、パソコンだって立ち上げるのにもう少しかかるわよ」

「体調管理のため、起動もシャットダウンも一瞬で行えるよう努力しています」

「ロボットじゃん。え、じゃあブルボン、シャットダウン」

「シャットダウンします……ぐぅ」

 

 

 どさ、と仰向けに倒れるブルボン。

 

 

「起動」

「ミホノブルボン、起動します」

 

 

 がば、と上体を起こすブルボン。

 

 

「シャットダウン」

「シャットダウンします……すや」

 

「起動」

「ミホノブルボン、起動します」

 

「シャットダウン」

「シャットダウンします……すぅ」

 

「起動」

「ミホノブルボン、起動します」

 

 

 スズカが遊び始めた。いや、ブルボンも本当に寝てるか解んないけど。下半身を微動だにせず上半身を起こすその腹筋に驚くばかりだ。悪戯に触ってみる。起動のタイミングで……うわかった。金属じゃん。

 

 

「シャットダウン」

「シャットダウンします……すやぁ」

 

「起動」

「ミホノブルボン、起動……起動シークエンスにバグが発生しました。再起動失敗。原因を捜索中」

「あースズカが無理するからブルボンが壊れちゃった」

「ふ、ふふっ……も、もしもし? 起動してくださーい」

 

 

 二人で笑いながらブルボンの鼻をぽちぽち押してみる。ブルボンがふざけるなんて珍しい。何度か押していると、ぱっと目を開いた。

 

 

「電源ボタンが十度押されました。ミホノブルボン、爆発します」

「物騒な機能ね」

「残り五秒」

「有無を言わせない早さ!」

「ふっ……ふふっ……」

 

 

 スズカがお腹を抱えて笑っている。なんとも言えない絶妙に飛んだ表情で、ブルボンの無慈悲なカウントダウンが始まる。

 

 

「三、二、一……ぼーん」

「迫力が無さすぎるでしょ」

「くふ、ふふふっ……」

「ご安心ください。そのような機能は搭載されていません。メカジョークです」

「知ってるわよ」

 

 

 すっと体を起こしたブルボン。笑い転げるスズカを見てさらにどやる。ウケました、とでも言いたげなブルボンに何を言うべきか思い付かないので撫でておく。とても満足げにしてくれたブルボンとくすくすしているスズカを連れて、私達はリビングに向かった。

 

 

 なお、スペシャルウィークはこの騒ぎの中すやすや寝ていた。図太いね、君は。

 

 

 

 

 ────

 

 

 

 

「美味しいです!」

「あ、うん。良かった」

 

 

 朝食。ウマ娘にとっては朝ごはんまでの軽食でしかなく、私にとっては大事な食事。だが、スズカやブルボンは自分の分を半分も食べていなかった。何故か。

 

 

「はい、あーん」

「あーん……んむんむ……」

 

 

 スペシャルウィーク餌付け大会が突然に始まったからである。満面の笑みでご飯を食べるスペシャルウィークと、そんな彼女にテーブルから無差別にご飯を食べさせるスズカとブルボン。いつかブルボンにもやったことあるな、これ。

 

 

 スペシャルウィークはお腹がペコペコだったらしく、自分の分を平らげた後お腹を物凄い勢いで鳴らしていた。トレセンへ行っての朝食まで我慢しようとした彼女だったが、それを面白がったスズカにこれ見よがしにニンジンを差し出され敗北。

 

 最初は遠慮していたが、冷静に考えてこんな量の朝食あってもなくても変わらないし、スズカ達も料理そのものより楽しければ良いと知りタガが外れた。今となっては次々に差し出されるご飯を美味しい美味しいと食べるマシンになってしまった。ご飯食べるロボットと走るロボットとただのロボットがいるな、この家。

 

 

「トレーナーさん、ニンジンありませんか?」

「そこにあるでしょ」

「丸一本のやつです」

「ええ……食べないでしょ」

「スペちゃんは丸ごと生ニンジン大好きですよ?」

 

 

 嘘でしょ。でも気になるので持ってきた。スズカに渡すと、躊躇い無くスペシャルウィークの口に突っ込んだ。

 

 

「んむんむんむ」

「わー……食べてる……」

 

 

 ウマ娘的には普通なのかな。ブルボンやスズカは食べないし、にんじん○○みたいな料理のにんじんだってちゃんと加工は入ってるのよ。本物の生にんじんを食べてる……うわあ……信じられない。

 

 

「美味しいですよね?」

「む? はい。美味しいですよ?」

「そうなの……」

 

 

 スペシャルウィークがそう言うなら良いけど。料理はした方が良いと思うけどなあ私は。私も自分の分を食べきり、私より先に食べ終わった全員分の食器を片付ける。ウマ娘と食べると絶対に残りが出なくて良いなあ。しかも三人ともちゃんと丁寧に食べるから、食器がとても綺麗で助かるわ。

 

 

 スズカの持つにんじんをリスみたいに食べ進めるスペシャルウィークとそれを見つめるブルボン……を見ながら簡単に食器を洗っておく。

 

 

「歯磨いて着替えなね。コースは十時だからね」

「はい。早く食べてスペちゃん」

「あむあむ」

 

 

 私の準備はできてるし、後は待つだけ。ベッドの片付けでもしようかな。布団も脇に避けただけだから畳まないと。あとは食材の整理をして、あと……まあそれくらいか。スペシャルウィークは知らないけど他二人の準備は早いし、十時前からアップができるなこれは。

 

 

 三人が食べ終え、動き出す。それを見守りつつテレビをつける。やはりどこのニュースもワイドショーもダービー特集だ。大本命は……割と割れている。ウマ娘レース評論家達がスペシャルウィーク達の名前を挙げ、強さを力説している。

 

 でも、論調としてはエルコンドルパサーが優勢かな。やはり距離も長いし直線も長いし、逃げのセイウンスカイの評価はそこまでか。スペシャルウィークとエルコンドルパサーが抜けている。キングヘイローも推されてるな。

 

 

 流石にテレビ越しの顔写真でステータスは見えない。媒体を通すにも一つくらいにしないといけないか。どうだろうな。勝てるかな、スペシャルウィーク。勝って欲しいけどね。スズカも喜ぶし。

 

 

「トレーナーさん、シャワー使いますね」

「良いけど何したの」

「スペちゃんの寝癖がどうしても直らないので……」

「そう。好きにしてー」

「はーい」

 

 

 スズカの大事な後輩だし、勝たせてあげたい……が、結局今日でスペシャルウィークの特訓も終わりだ。流石に延長はできない。直前までトレーニングができるのはごく一部……ブルボンにはさせるつもりだけど。

 

 スペシャルウィークのことを知らなすぎてアドバイスもできないし、祈るばかりなのが残念だ。スズカにはああ言ったけど、そのスズカだって自分で考えている訳じゃないからね。伸び脚の仮説だって私が勝手に言ってるだけだし。

 

 

「マスター。準備完了です」

「ん。ブルボンも飲む? コーヒーかココアかジュース、どっちが良い?」

「ジュースで」

「はいりんごジュース」

「…………」

「ブルボン?」

 

 

 コップを差し出す私に、またふふん、と微笑むブルボン。

 

 

「流石はマスター。朝はりんご、完璧です」

 

 

 聞いたかスズカ。私の勝ちだぞ。

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