走ることしか考えていないサイレンススズカと効率的に勝つ方法を考えるタイプのトレーナー。あと割と理解のある友人一同。   作:サイレンススズカ専属トレーナー

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どうやら逃がさない方のスズカの人が言及してくれていたらしいです。向こうと違って大した物語性はないので、進みが速いのも多少はね。というか私個人的にはこれでも遅いと思ってるくらいだったわ。

今回は短め。


領域まで辿り着かないサイレンススズカ(毎日)

 迎えた毎日王冠。普段なら何の問題も起こらず、ただ一着を取ってくるスズカを見送り出迎えるだけだけど、今日は少し空気が違った。

 

 

「どう、スズカ。調子は」

「……うん、とっても良いです。たぶん……これなら……」

 

 

 そう、普段は目標も何も無くひたすら楽しく走るだけだが、今回についてはスズカに明確な目標が出来てしまっている。すなわち、『スピードの向こう側』に到達するということ。恐らく本番のレースでしかたどり着けないと思われる、スズカにしか解らないどこか。

 

 

「はぁ……ふぅ……ふー……っ」

「緊張してるの?」

「楽しみなんです。どんな気分なんだろうって……そう考えたらドキドキしてきちゃって」

「そうねえ……私は正直あんまり解らないけど」

 

 

 理解はできないが、スズカがそれを求めているなら、というくらいの気持ちで、うきうきわくわくのスズカを見送った。G2ということでトレセンの体操服に身を包み、深呼吸を繰り返していたスズカ。

 

 スズカの調子はいつもと同じ、つまり絶好調だ。そもそも勝つか負けるかの話にはならない。そこは疑いの余地はないし、未来永劫疑うことはないのだと思う。

 

 

「見えたらどんな感じか私にも教えてね」

「はいっ。必ずこの目で確かめてきますっ」

 

 

 いつにもなく始まる前にぎゅうっと抱きつくスズカ。既に体温が上がり始めていた。それだけはその、やめてほしいんだけど。

 

 

 

 

 ────

 

 

 

 

「ん……早い。攻めたわねグラスワンダー」

 

 

 レース展開には言うことなんてない。強いて言えばグラスワンダーは、今日は恐らくレースではなくスズカに勝ちに来ている。あまりにも仕掛けが早い。

 

 最終コーナーで先頭をとられていたら負け、かといって逃げ策をうつことはできないし競り合うスタミナは無い……だから、ロングスパートでスズカを止めようと思ったのだろう。けど甘い。

 

 

 早仕掛けとはいえ差しの位置からその加速力じゃ届かないよ。もしシンボリルドルフが同じことをしていればかなりいい作戦だったけど……現状のグラスワンダーのスタミナとパワーではただ脚を吐き出すだけで終わる。

 

 かなり前まで詰めて行ったがそこでゲームオーバー。スズカのスパートが始まり、どんと距離が離れていく。

 

 

 そして、スズカは……ダメだ。ここから見ている感じではたどり着いたのか着いていないのか解らない。あくまで本人の気持ちか? スピードは普段のスズカの伸び脚を超えるものはない。コーナーで伸び、さらに直線で伸びる。完璧なスズカのレースだ。エルコンドルパサーがずっと二番手にいるが、あれはもうこれ以上上がれない。

 

 

 ……終わってみればやはりスズカが圧勝したに過ぎない。しかし、失礼ながら今回の私達の見るべきところはそこではない。帰ってくるスズカを扉の前で出迎える。

 

 

「お帰り、スズカ。楽しかった?」

「ただいまです、トレーナーさん……んんっ」

「あっつ……見えたの? スズカ」

「んふ……ん……トレーナーさん、冷たい……」

 

 

 帰ってきたスズカを抱き締め、目を覗き込む。体温、心拍数ともにあり得ないほどに高まっている。顔が赤い。あの時と一緒だ。とにかくそのまま手を引いて座らせる。飲み物を手渡し、熱が下がるのを待つ。

 

 

 ……これだけは本当に、何とかならないか。元々伸び脚だってどう考えても身体に悪いに決まっているんだ。これはスズカだけではない。他の全てのウマ娘にも言える。自分のスピード以上のものを出して全く問題ないなんてはずがない。

 

 スズカの場合はそれに加えてこれだ。私の目をもってしてもそれは解らないが、寿命を縮めてたりしない? 大丈夫? 

 

 

「……? トレーナーさん? どうしたんですか? 浮かない顔ですけど……」

「え、いや……何でもないのよ。それでスズカ、どうだった? スピードの向こう側は」

 

 

 聞くと、スズカはしょんぼりとして私の膝に倒れ込んできた。んー、と擦りついた後、くるりと仰向けになって胸に手を当てる。

 

 

「それが、また入れませんでした」

「え……でも」

「見えたんです。すぐそこにあったんですけど……ちょっと足りなかったかな……」

「足りなかった?」

「まあ……たぶん?」

 

 

 残念ね、とスズカには言いつつ、ちょっと安心している自分がいる。応援……してたけどさ。こうしてもう一度入りかけのスズカを見ると、やっぱり身体に悪いんじゃないかって思ってしまう。

 

 

「そう……ほらスズカ、目を閉じて……それっ」

「ひゃんっ、ふ、ふへへ、ふふふへっ、な、なんですか、突然んふふふふっ」

「レースは終わったんだから怖い顔しないの」

「え、でも」

「良いから」

 

 

 それにこのまま、スズカがどこかに行ってしまうような気がする。私に甘えるスズカではなくて、逃亡者サイレンススズカから戻ってこられなくなる。少しくすぐってふにゃふにゃにしておく。

 

 もちろん……事実どっちもスズカなわけで、「こんなのスズカじゃない!」なんて言ってしまったら私がメンヘラなだけだけどさ。私はスズカありきだけど、スズカは私ありきではない。ぶら下がっているのは私だ。

 

 

「……トレーナーさん? あの」

「ううん。ほら、ライブに備えて少しでも休んで」

「あ、はい」

 

 

 ちょっとがっかりしているスズカ、それにこれまでの言動でも、スズカがそれを楽しみにしていることはよく解る。止めてもしょうがないし、私はスズカのトレーナーだけど、普通の関係性じゃない。

 

 

「そんな顔しないの。次はすぐに天皇賞があるじゃない。そこならたぶん何とかなるわよ」

「あ、いえ、うん……そうですね。今度こそ、ですよね」

 

 

 その日のライブのスズカはとても可愛かった。いやいつもか。いつもだったわ。

 

 

 

 

 ────

 

 

 

 

「んむ……んー……美味しいです」

「そう? 良かった。たくさん食べなね」

「あい」

 

 

 その夜。私はスズカを連れてご飯を食べに来ていた。たまにはがっつり食べたいと言うので、お肉を食べに来ている。ウマ娘に対して食べ放題焼肉をするという正気ではない店はそう多くないが、探せば結構ある。もちろん笑ってしまう額だけど。

 

 私が焼いたそばからカルビがスズカの中に消えていく。すご。もう私そんなお肉食べられないって。いや食べられるけど一秒で太るもん。

 

 

「そういえばトレーナーさん。さっきグラスちゃんから連絡があったんですよ」

「ん、何だって?」

 

 

 グラスワンダー、いい線行ってたんだけどね。場合によってはって感じだった。ステータスが足りないのが惜しい。結果として正攻法で来たエルコンドルパサーの方が上ではあった。終わった後の彼女の、この世の全てを呪っているみたいな表情がめちゃくちゃ怖かったもんね。

 

 

「いや……物凄い丁寧に謝られまして」

「え?」

「その、侮っていましたとか、無礼を働きましたとか……よく解らないので、まだ返信してないんですけど」

「ええ……?」

 

 

 何を考えているのか解らなすぎる。侮るも何も戦術としては悪くなかったと思うんだけど。そういう意味では正面から来たエルコンドルパサーの方が侮ってはいるよ。無礼に関してはマジで解らないし。

 

 

「そのうち直接言いに来るみたいです」

「ひえっ」

 

 

 や、やめてね? 無いと思うけどなんか、この勢いだと平気で頭丸めるくらいやりそうで怖い。こっちはマジで何も失礼を働かれた覚えはないんだけど、彼女的には何かやってしまったんだろう……か? 

 

 

「ま、まあ……別にあの子は圧はあるけど悪い子じゃないし……」

「怖がり過ぎじゃないですか……?」

「まあ……そうなんだけど」

 

 

 日に日に尊敬度が高くなってきてるような気がするからさ、あの子……ブルボンがG1勝ったら爆発するんじゃない、あの子。いやマジで。

 

 

「あ、トレーナーさん、もう五皿くらい頼んでも良いですか?」

「え? うん、ま、まだ食べられるの……?」

「はい、全然……六分目くらいです」

 

 

 お皿、頭の上まで積まれてるけど。平皿よ。何人前頼んだかもう覚えてないし。でもまあお祝いだし、これが食べたいって外で言うことはあんまり無いしね。でもブルボンは連れてこなくて良かった。良かったって言うか、珍しくスズカが二人が良いって言って来ただけだけど。

 

 

「ところでスズカはさ」

「はい?」

「なんで今日は二人でって言って来たの」

「ん……さあ?」

 

 

 一杯に膨らんだ頬を飲み込んで首を傾げるスズカ。

 

 

「何となく……ですかね? トレーナーさんと二人が良いなって」

「何となく……そっか」

 

 

 何となくで焼肉を食べられなかったブルボンとは。まあ後日連れて行ってあげよう。スズカの気まぐれは今日に始まったことじゃないし。走ることしか考えてないないとかそれ以前にどこか抜けているというか……天然なところもある子だからね。何となくで二人っきりを選んだくらいでは私も驚かないよ。

 

 

 その後、スズカが満足するまで食べさせて、部屋で二人で眠った。いつもよりくっついてくるスズカは不思議に思いつつも、暖かな彼女を抱きしめて眠った。




今回のアンケートは次回更新までのものになりますので、是非ご回答ください。

次回から天皇賞編です。元々この作風でやるのは賛否のあるものですが、スズカを主役にする以上避けるつもりはありませんので、せめて書き方については問いかけることを決め前回のアンケート(削除済み)も行いました。

大きく分かれたので曇りの度合いについては好きにやります。タイトルで見て解るようにして、終わった後にも簡単な纏めを入れますので苦手な方はご自衛ください。

さて、天皇賞編で書きたいことは大体十二話くらいになります(予定)。ですが、恐らくこれで行く場合一話当たりの文字数は今と同等か、今より少なくなります。場面転換が多い、くらいのイメージで考えてください。
更新速度は正直そこまで変わらないと思いますので、読まない方や流し読みする方にとっては長らく更新停止と変わらない状態になると思われます。そもそも話数が多くなって読みにくいって方もいると思います。どちらかといえば私もそうです。

ですので、「文字数を問わない十二話」か、「一話当たりを長めにして五話以内」でのアンケートを取ろうと思います。どちらを選んでも展開は変わりませんので、お気軽に投票をお願いします。また、感想でも言いたいことがあれば受け付けます。その際は、一応話への感想もあった上でやっていただけると反応がしやすいのでお願いします。
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