走ることしか考えていないサイレンススズカと効率的に勝つ方法を考えるタイプのトレーナー。あと割と理解のある友人一同。   作:サイレンススズカ専属トレーナー

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あなたを求めて、サイレンススズカ

 

 十一月二日、記録者、ミホノブルボン。

 

 昨日行われた秋の天皇賞において、スズカさんは、競走中止となりました。

 

 中足骨骨折……私には知識が無く、羅列される医学用語を一字一句記録するのみでした。しかし、話から判断する限りでは、恐らくスズカさんがこれで競走生命を絶たれることはないのだろうと考えられます。深刻ではあるが、一方複雑骨折、あるいは粉砕骨折まで及んでおらず、三か月ほどで十分に回復、復帰も可能だそうです。詳しいことは、マスターも同席して話すとのことでした。

 

 もう少し強く、長く踏み込んでいれば予測不可能な大惨事であった可能性も示唆され、流石のスズカさんも表情を歪めたのが印象に残っています。

 

 

「では、お大事になさってください」

「ありがとうございます」

「あの、トレーナーさんのこともよろしくお願いします」

 

 

 説明を終えた医師と看護師の方が部屋を出ていきます。頭を下げ、エアグルーヴさんも座り直しました。マスターはここにはいません。ベッドの上でギプスを着けたスズカさんと枕元の私、それから、駆け付けてきてくださったエアグルーヴさんだけです。

 

 スズカさんが骨折したと思われる決定的瞬間、マスターは無謀にも観覧席の柵を乗り越えていこうとし、手を滑らせて転落。気を失い、同時に病院に運び込まれています。とりあえず意識が戻るまで、こちらの病室でスズカさんの説明を聞くことになっていました。

 

 

「……肝が冷えるな」

「ごめんねエアグルーヴ。来てもらっちゃって」

「気にするな。これより優先することなど無い」

 

 

 スズカさんは、非常に元気そうです。レース場に倒れ、救急車に運ばれたときから、医師の診察を受け、ギプスを装着し、ベッドに横になった今まで、痛みに眉を顰めつつも、涙を流したり、取り乱すこともありませんでした。

 

 一方、話を聞いている間も落ち着かず、医師の説明にも割り込んで質問をするなど、気を急いているのはエアグルーヴさんです。私は……あまりの出来事にいまだ脳内メモリが処理しきれていません。ただ、説明をマスターに伝えなければという思いと、安堵のみが検出されています。

 

 

「痛みは無いのか」

「うん。痛み止め、ちゃんと効いているみたい」

「そうか……いや、本当に……こう言っては何だが、この程度で終わって本当に良かった……」

「ううん、私もこれで済んで良かったって思ってるわ。もう少しで大変なことになってたって聞いた時は、流石に驚いちゃったけど」

「当たり前だ……こんな時まで呑気でどうするんだお前は」

 

 

 ふふ、と笑うスズカさん。とても、片足を吊るされているとは思えません。私が物語で見たウマ娘は確か、絶望に塗れたような表情をしていたと記憶にあります。しかし、スズカさんは違います。表情にも余裕が見えますし、真意は解りません。

 

 

「それよりトレーナーさんが気になるわ。滑って落ちるなんて、そんなことある?」

「衝動というのは恐ろしいものだな。愛されているようで何よりだ」

「でしょう? 私のことが大好きなのよ、トレーナーさんは」

「はぁ……」

 

 

 ため息を一つ、エアグルーヴさんが立ち上がりました。どうやら、一度トレセンに戻るようです。マスターの意識回復によっては、エアグルーヴさんやスペシャルウィークさんに生活用品を頼まなければなりません。私でも良いですが、現状仮にもスズカさんの身内と呼べるのは私だけなのであまり離れないように、と言われてしまいました。

 

 

「大人しくしているんだぞ、スズカ」

「もちろん。私を何だと思ってるの、エアグルーヴは」

「たわけだ」

 

 

 そう言い残して、エアグルーヴさんが部屋から出ようとしたときでした。はたと足が止まります。遠くの方から、凄い勢いで走ってくる足音。これは人間の、少し小柄ですから女性か子供と判断。

 

 

「エアグルーヴ、ドアから離れた方が良いかも」

「……のようだな。しかし病院を全力疾走とは……奴は何歳だ」

「怒らないであげてね」

「……まあ、また今度にしよう」

 

 

 そう言って、エアグルーヴさんが病室の陰へ消えていきます。足音は病室の外で止まり、そして、勢いよく扉が開かれました。

 

 

「スズカッ!!」

 

 

 やはり、マスターです。病院着ですし、頭に包帯も巻かれていますが、ここまで走ってこられたということは、健康に別状は無かったのでしょうか。そのまま部屋に飛び込み、ベッドの横まで近付いてきます。そのまま、スズカさんに縋るように乗り出しました。

 

 

「スズカ、け、怪我は……」

「え、えと、こ、骨折って……」

「っ……ぅ、ぅえ……」

 

 

 蹲り、マスターがえずいてしまいました。咄嗟に近くにあったゴミ箱を手に取ります、ですが、そのままマスターは頭を床に着け、背中を震わせながら絞り出すように言葉を発しました。

 

 

「ごめんッ……ごめんスズカ……本当にごめんなさい……申し訳ありません……私の、私のせいで……こんな、スズカが、スズカに……」

「と、トレーナーさん、あの」

「私がもっとちゃんとしてれば……スズカのこと、見てあげてれば……こんなことには……」

「え、えと、その」

「私、最低だ……ごめん、ごめんねスズカ……」

「はあ……」

 

 

 マスターのこんな姿を、初めて見ました。思考、エラー。マスターが、スズカさんに、泣いて謝罪を行っています。地に頭を擦りつけたまま、しゃくりあげ、嗚咽交じりに叫んでいます。

 

 私もスズカさんも、何を言うべきかが解りません。見かねたエアグルーヴさんが出てきて、棚にあったティッシュの箱を取り上げました。そのまま、蹲るマスターの背中を思い切り打ちます。

 

 

「この……愚か者!」

「いっ……」

「スズカが困っているだろう。騒ぐだけなら邪魔だから出ていけ。お前もトレーナーならすることがあるんじゃないのか」

「っ……ご、ごめん、エアグルーヴ……」

 

 

 顔を上げ、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになったマスターに、そのままティッシュが差し出されました。痛みで落ち着いたのか、マスターはある程度顔を拭き取ると、枕元に膝で立ってスズカさんの頬を両手で挟みました。マスターが時々行う、謎の行為です。私の知る限り、最もマスターが真剣な表情になる行為です。

 

 

「スズカが……走れない……」

「え? あ、ええと……はい、もちろんそうです……けど」

 

 

 スズカさんの一言に、またマスターの目から涙が溢れました。

 

 

「ごめ……ん……そんな……」

「そ、そんなに泣かないでください……その、確かに残念ですけど、でも」

「だってスズカ、走れないんだよ……私のせいで、スズカが走れなく……なって……」

「だ、大丈夫ですから……そりゃ走りたいですけど、でも……」

「絶対、私にできることは全部するから……! スズカが走れるように、絶対に……」

 

 

 はっとスズカさんが気付いたような顔をしました。そして、また少し笑って、呆れたようなエアグルーヴさんに手で合図を出します。

 

 

「じゃあ、治ったらきっと走りますね。どこまでも走っていきたいです」

「うん……! 好きに走って良いから……だから、スズカ……」

「楽しみです。今からだと大阪杯とかになるのかしらね、エアグルーヴ」

「……バカを言うな。どこの世界に復帰してすぐG1を走る奴が……いや、とても身近に二人いたか」

「え……す、スズカ……?」

 

 

 ……なるほど、二人でマスターをからかおうということでしょうか。確かに、ジョークで緊張が和らぎ、落ち着いて話ができるかもしれません。ここは私も何か言うべきでしょう。

 

 

「マスター。スズカさんは今年の終わりまでに足に改造手術を施し、来年は私と同じサイボーグとして生まれ変わります。通常の三倍で動くことが期待できます」

「……?」

 

 

 失敗しました。

 

 

「……失礼しました。マスター、スズカさんは全治三か月、そこからリハビリが長引いても、来年の春には復帰が可能です」

「え……は、走れないって……」

「ちゃんとお話は聞かなきゃダメですよ? 少しの間だけです。安心ですね、トレーナーさん?」

 

 

 これが……羞恥心……? バッドステータス、『滑った』……? 

 

 

「よ……かった……スズカ……」

「はい。良かったです。だからそんなに泣いちゃダメですよ? それに、さっき言質取りましたからね。治ったら好きに走って良いって。ふふ、どうやって走ろうかな……」

「ふっ……スズカ、お前はいつまでも学ばないな。お前のトレーナーがそんなことを」

「うん……たくさん走ろうねスズカ……好きに走って良いからね」

 

 

 ぴたりと私達の動きが止まります。マスターの顔が見えません。俯いて、スズカさんの手を静かに取りました。スズカさんの瞳孔が僅かにぶれ、表情が固まりました。

 

 

「どうやって走りたい?」

「え、うーんと……そうですね、あんまり、ここっていうのは無いですけど……」

「好きなことを言ってね。日本一周でも世界旅行でも、必ず連れていくからね」

「本当ですか? 良いこと聞いちゃいました。ふふ、楽しみです」

 

 

 ログに無いやり取りが行われています。マスターも混乱中なのでしょうか。元々マスターやスズカさんの言動を予測できたことなどありませんので、そう驚くことではない……かもしれません。

 

 

「……まあ、何だ。とりあえず医者の所へ行ってこい。お前の容態の話もあるのだろう」

「あ……そうね。ありがとうエアグルーヴ。もう少しいてくれると助かるわ」

「まあ……別に構わんが」

「うん……じゃあスズカ、すぐに戻るからね」

「はい、行ってらっしゃい、トレーナーさん」

 

 

 手を振って、マスターを見送るスズカさん。そして、マスターが部屋から出ていくと、ふう、とため息をついて、僅かに首を傾げました。それを見て、エアグルーヴさんが口を開きます。

 

 

「……すまない、スズカ」

「何、突然?」

「いや……」

「トレーナーさんのことなら気にしないで。私のことも。心配してくれるのは嬉しいし、味方になってくれるって言うのも心強いけど……」

「しかし、私はお前の背中を」

「エアグルーヴ?」

 

 

 エアグルーヴさんの言葉を遮って、スズカさんが非常に強い語気で言いました。直後の言葉にはそれはありませんでしたが、しかし、確かにスズカさんが……これは、ステータス『怒り』……? ですが、私の知るそれとはかなり違うような感覚があります。

 

 

「あなたも勘違いしてない?」

「……」

「私は自分で決めて走ったの。エアグルーヴのためでも、トレーナーさんのためでもなくって」

「……だが」

「いつもみたいにしてほしいの。速くなりたくて無茶をして、怪我をした私を叱ってほしいの」

「……スズカ」

「良いから」

「……そうか」

 

 

 一言だけ残して、エアグルーヴさんはそれきり日常会話に戻っていきました。お二人の考えは依然解りませんが、スズカさんが望んでいるのであれば、それが良いのでしょう。私も何も言わず、普段通り、スズカさんの横に座っていました。

 

 

 

 

 

 ────

 

 

 

 

 

 

 スズカさんの負傷から一週間が経ちました。

 

 この間、チーム・エルナトは非常に忙しく動いていたみたいです。私もできるだけスズカさんの隣には居たいけど、私は私で菊花賞に向けてトレーニングをしなきゃいけないので、あんまりお見舞いには来られていません。スズカさんのトレーナーさんも、あんまり来られていないそうです。それにしてはいつもブルボンさんはいて、眠そうにしていますけど。

 

 

「もう菊花賞ね……スぺちゃんは大丈夫?」

「はいっ。調子は良いし、トレーナーさんからも十分仕上がっていると言ってもらえましたから!」

「これで勝ったら二冠だもんね。日本一にまた近付くわ」

「むむ……スズカさんに勝てるまで日本一なんて言えないって言いましたよね。意地悪してますか?」

「ふふ。ごめんなさい。でも、それじゃいつまでも日本一になれないから撤回したら? って言ったわよね?」

 

 

 スズカさんは怪我をした後も何も変わっていなくて、本当に良かったです。こういう話になるたびに絶対に勝つんだって気持ちになって、トレーニングにも本気になれます。やる気に満ちますね。

 

 一方で、スズカさんのトレーナーさんは変わってしまった……というか、私は事故があってからほとんど会っていないんですが、どうやらかなり忙しくしているみたいです。取材とか記者会見とか、理事長さんとのお話とか……あんまり病室にも来られていないって話です。

 

 幸運なことに……って、私が言うのもおかしいですけど、幸運なことに、世間からスズカさんのトレーナーさんへの反応はそこそこ温かいようです。この前エアグルーヴさんに会った時教えてもらいました。トレセンやURAは、スズカさんの怪我を運命的な悲劇として大きく取り上げることで二人を守ろうとしたらしいです。それに、お二人が何度もかかったお医者さん、私も一度診てもらった方で、めちゃくちゃ凄い方らしいです。その他にも色んなお医者さんが、原因は全く解らない、前触れもなかった、と発表したらしくて。

 

 良くない憶測もあるみたいですけど、とにかく、スズカさんのトレーナーさんがトレセンを辞めるようなことにはならないだろうと私のトレーナーさんも言っていました。

 

 

 私にも何度か変な人から取材の申し入れがありました。いつもならトレーナーさんが勝手に断ってくれるんですけど、今回はスズカさんを守るためにも、と、ずっと元気だったということを話しました。本当にレース以前のスズカさんには何の不調も無かったらしいですし、むしろ調子が上がっていたので、それについては本当に解りません。

 

 

「でも、今回もスカイさんが出るんでしょ? どう?」

「どう……うーん……私のトレーナーさん曰く、距離が長いので後ろからの私の方が有利って言ってました。でも、スカイさんはああ見えて色々考えてて、今回も作戦を練ってくるかもしれないです」

「まあ、そうね……あんまり、作戦についてはスぺちゃんにアドバイスはできないけど……」

「……スズカさんがレースの作戦でアドバイスしてくれたこと、ありましたっけ?」

「スぺちゃん……? どうして突然辛辣になったの……?」

 

 

 いや、まあ……スズカさんは速いし、見習うところも多いし、心から尊敬してるんですけど……真面目なアドバイスとか相談はちょっと……菊花賞で逃げ切る作戦とか聞いたら、速く走れば良いとか言うでしょ。

 

 

「じゃあ、菊花賞で逃げ切るために何してくると思います?」

「え? えー……お、追いつけないくらい速く走れば……」

 

 

 ほらね。スズカさんにレースの走り方については聞かないようにしています。あんまり意味無いので。逆に心構えとかは見習わなきゃいけないんですけど。

 

 

「そう言うと思ってましたもん」

「うそ……むむ……」

「それに、そんなことスズカさんにしかできないですよね?」

 

 

 スカイさんがそんなことして来たらもう……まあ、それはそれでなんかわくわくしますけど、そういうのはスズカさんで十分なので……

 

 

「スズカ? ごめんね、遅くなって」

「あ、トレーナーさん」

「あ、こんにちは、お邪魔してます」

「あらスペシャルウィーク。ありがとうね。こんにちは」

 

 

 話しているうち、スズカさんのトレーナーさんがブルボンさんを連れて入ってきました。何かスズカさんが頼んだのか買い物袋を持っています。ブルボンさんはそのままとことこと歩いていき、スズカさんの枕元、窓際の席に座りました。いつもながらすっごく眠そうですね……

 

 

「調子はどう? 痛くない?」

「はい。全然平気です」

「そう。これ、甘いもの買って来たから……スペシャルウィークもどうぞ」

「良いんですか!? わぁ、ありがとうございます!」

 

 

 ありがたく……大福ですね。大福をいただき、スズカさんと一緒に頬張ります。うん、美味しい! じゃなかった、一応席を退かないと。スズカさんの枕元には、流石にトレーナーさんがいるべきですよね。

 

 

「ああ、良いよスペシャルウィーク。すぐに出なきゃいけないから」

「そうですか?」

「うん」

 

 

 立ち上がった私を引き留め、トレーナーさんは窓のブラインドを開きました。かんかんの秋晴れが、病室に差し込みます。

 

 

「今日は良い天気よ、スズカ」

「ですね」

 

 

 ……最初に見た時は、なんか少しやつれてしまっているようで心配だったんですが……ただ疲れているだけでしょうか。伸びをするトレーナーさんは、前に見た時とあんまり変わらないような気がします。

 

 

「こんなにお天気だと、走りたくなりますね。こっそり走りに行っちゃいましょうか」

 

 

 ……いつものが始まる前に部屋から出ておこうかな。いや、微笑ましい感じがして良いんだけど、ほんのちょっと気恥ずかしいというか、やり取りをブルボンさんがじっと見ているのも不思議な気持ちになるし、それに、

 

 

「看護師さんに怒られちゃうかもね」

「……じゃあ止めといた方が良いですね」

「そうよ。治ったら好きに走れるんだから」

 

 

 ……おや? 

 

 

「ふふっ。ですね。楽しみにしておきます」

「ん。じゃあごめんね、もう行くから。次来るときは長めにいられると思うから、またその時ね」

「はい。楽しみにしてますね」

 

 

 私が黙っている間に、忙しそうにスズカさんのトレーナーさんが出て行ってしまいました。私の勘違いでしょうか? なんかこう、は、始まると思ってたんですけど……

 

 

「……はぁ」

「あの、スズカさん? その……え? どうしたんですか?」

「うーんと……うん、まあ、あんまり気にしなくて良い……かな。どうすれば良いか、私も考えてるところなの」

「はあ……」

 

 

 スズカさんが少し俯いて、目を閉じました。指先だけで胸を撫で、前に垂れた髪に触れます。ぴこぴこと耳が揺れて、流し目を私に向けました。

 

 

「……スぺちゃんは」

 

 

 ぽつりと呟きます。

 

 

「私が作戦を考えたら手伝ってくれる?」

 

 

 スズカさんがいつになく真剣な顔をしています。少しびっくりしました。二人とも、やっぱり何かおかしいです。話していればスズカさんは普通ですけど、でも、こんなに真面目に言われたのは初めてです。何度か併走を頼まれたことも、トレーナーさんを説得するのを頼まれたこともありますけど……どっちも、走ることで頭がいっぱいな感じでしたし。

 

 

「……スぺちゃん?」

「あ、は、はい」

 

 

 でも、何にせよ私が言うことは一つです。私の憧れ、最強のウマ娘、スズカさん。スズカさんには元気でいてほしいし、いてもらわないと困っちゃいます。いつかスズカさんにも勝たないといけないんですから。だから、私は覚悟を決めてスズカさんの手を取りました。

 

 

「何でも言ってください。スズカさんのためなら私、何だってやりますから!」

「……ありがとう。じゃあその、行ってほしいところがあるのだけど。これ、渡してくれる?」

 

 

 そう言って、スズカさんが枕元からメモを取り出しました。それを受け取って、一度読もうとした私を、こら、とスズカさんが止めました。

 

 

「見ても良いけど、トレーナーさんには内緒ね」

「は、はい!」

 

 

 部屋を駆け出します。トレーナーさんが帰ってくる前に、渡して帰ってこなきゃ……!

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