走ることしか考えていないサイレンススズカと効率的に勝つ方法を考えるタイプのトレーナー。あと割と理解のある友人一同。   作:サイレンススズカ専属トレーナー

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お久しぶりです。所用ありまして遅れました。

スズカメインストーリー来ましたね。月並みになってしまうし感動のあまり長くなるので感想は控えますが、一言言うなら、そもそも回避するルートなんだ……ってのと、タキオンくんはなんでその流れで堂々と曲出してんの?ってとこです。現場からは以上です。


代替機を探すサイレンススズカ

「おはようございます」

「……何してるの、スズカ」

「あ、トレーナーさん。これ、使い方解りますか?」

「何それ」

 

 

 ある日。もうすぐ一か月となり、そろそろ退院もできるといったところ、病室に向かうと、スズカが何やら大きな機械を持って唸っていた。ブルボンは迷わず定位置に向かい、スズカが持つそれをじっと見つめ始める。

 

 

「トレセンから貸してもらったんです」

「へー。ゲームでもするの?」

「いえ、そういうんじゃないんですけど」

 

 

 スズカが持っていたのは、大きめの機械ゴーグル。まあつまりVRゴーグルのことだ。本来はゲーム機に接続して3Dゲームとか、体感ゲームを楽しむためのものだったと思う。あんまりゲームには詳しくなくて、家にあるのもスズカの先頭欲を抑えられないかと買ったウマ娘レースゲームだけなんだけど、それでもCMで見たことがある。

 

 トレセン、そういうのも貸してくれる……というか持ってるんだ。それがまず意外過ぎる。何に使うの、そんなの。

 

 

「そろそろその、私限界で」

「……一応聞くけど、何が?」

「もう走らないと死んでしまうので」

「死なないのよ。走らなくてもウマ娘は死なないの」

「死んでしまうので、せめてこう、体感だけでもと思って」

 

 

 そう言ってスズカが取り出したのは、いつぞや私が渡したカメラ。

 

 

「これと接続して、誰かに代わりに走ってもらおうかなって」

「狂気の発想……ネットに転がってるバイクとかの映像じゃダメなの?」

「エンジンの音が気になっちゃって……」

 

 

 ふーん。まあスズカがそう言うならそうなんだろう。枕元に座り、機械弄りを続けるスズカを眺める。

 

 結構重厚だし、そもそも私の買ったカメラだってそこそこ高い。このゴーグルももしやかなり高級品なのかも。それをぽんと、私に話を通さずに貸すあたりはトレセンがウマ娘に甘いのか、スズカの名声がありすぎるのか。多分後者かな。

 

 

 この間スズカが開催したサイレンススズカ杯もかなり好評だったらしいし。出走していたのは実績が未勝利からG3までだったんだけど、それにも関わらず投票券が飛ぶように売れたらしいからね。理由は解らないけど。後、スズカの実況音声ごとのレース映像がネットに出回っていた。まあ違法なんだけど、たぶんスルーなんだろうな。私も見たけどあんまり良いものじゃないし、公式でそういうのを売ってるわけでもないし。

 

 ……それと、一着だった、えー……ファイネストデイだっけ? 彼女が泣いてお礼を言いに来た。やめてやめて。どうやらサイレンススズカ杯に勝ったウマ娘ということでオープンウマ娘にしてはかなりの支持が集まったらしく、有馬記念のファン投票でもかなりの得票が集まっているらしい。既に内々定というか、恐らく出走できるから勝負服を考えておいて、との連絡が行っているらしい。げに凄まじきはスズカの影響力よ。

 

 

「あっ……できました。たぶんこうです。トレーナーさん、カメラカメラ」

「ん。はいスズカ―、笑ってー」

「にこー……じゃないですよ。持っててください」

 

 

 スズカがゴーグルをはめる。スズカも頭が大きい感じじゃないし、普通の女性よろしくの体型だからどでかいゴーグルは非常に不釣り合いだ。視界が塞がれたことにあわあわしつつも、指でこちらを指してくる。

 

 

「今は近いのでリアルタイムで……あ、見えました見えました。じ、自分で自分を見るの、何か不思議な感じですね」

 

 

 じゃあ今、カメラとスズカの視界がリンクしているのか。これ幸いとカメラをスズカの顔に近付けていく。

 

 

「すー」

「わ、わわっ」

 

 

 スズカが驚きのけぞって倒れてしまった。転がったままゴーグルをずらし、目をしぱしぱさせながら私に枕を投げつける。痛い痛い。鼻が。鼻が潰れちゃう。

 

 

「びっくりするじゃないですか」

「可愛いでしょ。これ、私の愛バ」

「むむ……適当に褒めれば何をしても良いと思ってませんか」

 

 

 まったく……と言いながら、またゴーグルをはめるスズカ。許してはくれるんだ。ちょろかわ。やっぱスズカよ。せっかくなのでブルボンにもカメラを向ける。

 

 

「……はっ」

「おお、良いねブルボン。どこで覚えたのそんなの」

「友人が、カメラを向けられたらポーズをとるべきだと言っていました」

 

 

 無表情でピースサイン。見た目は非常に大人っぽいので、色々な要素が混ざって危うくすら見える。でも可愛いのでそのまま……しまった。接続中だからシャッターが切れない。あとでスマホで撮ろう。

 

 

「で、これでどうするの」

「トレーナーさん、私の代わりに走って来てくれませんか。録画とか」

「ええ……無茶言わないでよ」

「私のためですよ? 愛バですよー愛バー」

 

 

 微笑みながら手を振ってくる。可愛い子ぶりたいなら目は見せた方が良いわよ。

 

 というか走るって何。私はこれでも大学時代から一切走ったことの無い一般的な社会人女性なのだ。そうでなくても別に運動は好きじゃないし、特にただ走るなんてなおさらだ。走ることが誇張無く三度の飯より好きなスズカや、トレーニングは攻めれば攻めるほど効果があると思っているブルボンとは根本が違うのである。

 

 

 ただ、まあ一ヶ月我慢できただけでも快挙と言える。折れてるのが腕なら間違いなく脱走していたんだろうけど、流石に脚が折れている状態でっていうのは無理だったか。代替策も悪くないし、協力はしてあげたいけど。

 

 

「だってスズカ、めちゃくちゃな距離を走らせるじゃない」

「そんなことないですよ」

「あるでしょ」

「トレーナーさん。私もトレーナーさんのこと大好きですから。嫌々走ってもらうのは申し訳無いです」

「ほう」

 

 

 スズカが学んだ……? やっと人間は走る生き物ではないと解ってくれたのね。嬉しいわ私。

 

 偉いわね、と頭を撫でると、ふふん、と調子よく喜ぶスズカ。ついに理解し合えたわね、私達。これは二キロくらいのランニングで済むかも。それくらいなら私も頑張るよ。

 

 

「ですので、ここは控えめに十キロくらいでお願いします」

「解散」

「なんでですか!」

「死ぬからでしょ」

 

 

 ゴーグルを外して声を上げるスズカ。やっぱり私達は分かり合えないのね。悲しい。まあ十キロくらいなら素人でも何とかなりそうだけど、私は素人以下なので、めちゃくちゃを言ったスズカの頬をつつく。

 

 

「むっむっむっ」

「そんなに走れません私は」

「十キロですよ? 百キロじゃないですよ?」

「百キロだったら私は二度とスズカの元へ帰って来ないと思うわ」

 

 

 えー、と唇を尖らせながら、スズカはゴーグルをとりあえず私に渡してきた。そもそも私がスズカが満足するようなスピードで走れるわけがないので、この会話は最初から破綻していると言っても良い。一応エンジン音が小さめなスクーターはあるけど、スズカと違って私には道交法とかあるし。いやスズカにもあるけど。

 

 

「ひ弱……」

「何とでも言いなさい」

「でぶ」

「戦争がしたいの?」

 

 

 あまりにも直球の悪口が来た。言った直後顔を背けて笑っているから冗談なんだろうけど、それはウマ娘間でやるから冗談で済むのよ。ウマ娘は太りやすい子もすぐに痩せるし、体質的な肥満というのがほとんど無い。走ることに特化した種族だからだ。でもほら、私だってさ、日々頑張ってるからさ。食事制限とか。腰回りのことは言わないで貰っていいかな。

 

 

 失礼をかましたスズカのウマ耳を擽り、珍しくけらけら笑う頬をつねる。

 

 

「そもそも頼む相手が違うでしょ。あなた友達がいっぱいいるじゃない」

「みんな有馬記念に出るんですもん。タイキは海外帰りですし、来年も遠征するから忙しいんですよ。パールさん……は、ちょっと任せたくないだけですけど」

「後輩は?」

「……!」

 

 

 視界の端で、ぴこん、とブルボンのウマ耳が立った。すっと私達の視線が向く。変わらず無表情だ。尻尾はぶんぶんだけど、まあ一旦置いておいて。

 

 

「スぺちゃんはジャパンカップと有馬記念に出るって」

「菊花賞から? なにその狂気のローテ」

「グラスちゃんもですし、みんな有馬記念です」

「……まあ、確かに選ばれるんだろうけど」

 

 

 それにしてもスズカの友達がヤバすぎる。有馬記念を何だと思ってるのってくらいぽんぽん出るわね。いかに強い子ばかり友達か、というところ。そこにスズカも……まあ出さないけど、出ることはできたというのだから驚きだ。

 

 

「だからその、頼める人がいないんですよ」

「……!」

 

 

 ぴこん。

 

 

「……ブルボン? 走りたいの?」

「……いえ」

「……これ、気に入ったの?」

 

 

 そういえばさっきから、ちらちらとゴーグルを見ているような気がする。試しに動かしてみると、顔の向きこそ変わらないものの、視線が誘導されている。

 

 

「別に面白いものでもないと思うけど……」

「アニメで見たコックピットの装備品に似ています。興味があるだけです」

「そういう感じ?」

 

 

 相変わらず変なものが好きなのね。男の子みたい。勝負服、ゴーグルとか着けてこないよね? 視界を大幅に遮るものは流石に怒られそうだけど。

 

 

「着けてみる? 流石に頭に着けるだけなら壊れないでしょ」

「良いのですか?」

「まあ……いや、やめとく? 怖いかも」

「むー……」

 

 

 スズカが拗ねてしまった。走る方法についてはまたあとで考えよう。私も流石に何とかしてあげたいからね。バイクの免許とっても二人乗りできないしなあ。なんかその辺のウマ娘にカメラ持ってもらうとか? 

 

 

「じゃあブルボンには私がどこかショップに行って、壊れてもいいゴーグル買ってきてあげる」

「良いのですか?」

「中古だけどね。流石に新品破壊は勿体無いから」

 

 

 あとは、ブルボンとスズカのクリスマスも考えてあげないと。特にブルボンはサンタさんを信じている説もあるし、それで言うと去年は渡せなかったからね。まあブルボンのお父さんが実家で誤魔化したりしてくれたのかもしれないけど。

 

 

「機能追加です」

「追加はされないでしょ」

 

 

 むふー。と胸を張るブルボンと、一転して微笑ましいものを見る目で見るスズカ。年末に向けて、考えることが増えちゃったなあ。頑張らなきゃ。




年末なので少し遅いですがまた誰か増えるかもしれません。この小説がいつまで続くかは解らない(少なくともブルボンシニアまでの展開はある)ので、出したところでその子のトゥインクルを描写できるかは解らないんですが、大丈夫ですかね……?
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