走ることしか考えていないサイレンススズカと効率的に勝つ方法を考えるタイプのトレーナー。あと割と理解のある友人一同。   作:サイレンススズカ専属トレーナー

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チームエルナト狂気アピ回。スカーレットはいつ加入するんですかね……もう年末なんですけど。


どうしても倒れたいミホノブルボン

 

「……なあスカーレット。なんで俺達隠れてるんだ?」

「静かに。よく考えなさいウオッカ。まずは練習を見ることが大切だと思うの。一部始終をね」

 

 

 次の日、しょうがねえからスカーレットに付き合ってチーム・エルナトの体験に向かったんだけど、何故か坂路コースの陰に隠れることになってた。

 

 

「じゃあ言って見せてもらえば良いじゃねえか」

「私達が見ることによって普段と違うことをするかもしれないわ。それに、見学は断られるかもしれないし」

「見学を断るチームは体験も断るんじゃ」

「しっ! トレーナーさんが来たわ!」

 

 

 よく解らねえけど、まあ俺よりスカーレットの方が頭は良いんだし、スカーレットのチーム選びなんだから好きにすれば良いか。後ろから顔を出すと、おー、いる。エルナトのトレーナーと、ミホノブルボン先輩。二人で坂路に出てきた。

 

 

「うお……すっげえトモ……やっぱ違うなあの人……坂路の申し子ってかっけえ異名が付いてるだけあるよな」

「うーん……ここだとギリギリ会話が聞こえないわね……でも、これ以上近付くと気付かれる可能性が……」

 

 

 ミホノブルボン先輩。今年クラシックに行く世代で、今から主役だって騒がれてる人だ。かなりイカした人だって思う。だって短距離しか走れねえってみんなに言われたのをひっくり返して、絶対に三冠に行くって宣言したらしいからな。実際朝日杯も勝ったし、すげー人だ。

 

 尻から太ももにかけてトモの張りが半端じゃねえ。流石、すげえ鍛えてるな……

 

 んで、トレーナーもすげえ人。ブルボン先輩の他にスズカ先輩の担当もしてるんだけど、それまで成績が良くなかったスズカ先輩が、あの人に出会って覚醒したって話だ。確かに、去年のダービーの映像とか見ても、スズカ先輩からこう、オーラみたいなのを感じなかったしな。運命の出会いってやつか。かっけえ。

 

 なんかタブレットを持ってできる女って感じだな。あんまり怖い感じじゃねえけど。

 

 

「このまま様子を見るしかないわね」

「お、何か話してるぞ」

 

 

 考えてる間に、ブルボン先輩とトレーナーが向き合って何かを話している。見た感じ、何かを主張してるのがブルボン先輩で、トレーナーはそれに首を振ってる感じ。

 

 なんか頼んで、断ってんのかな。トレーニングの話か? 

 

 

「何て言ってんだろうな」

「全然聞こえないわ……まあ大方、トレーニングをどうするかって話じゃない? 物凄いトレーニング量らしいし、減らす交渉かも」

「あんま考えたくねえな、ブルボン先輩がそういうこと言うの」

 

 

 もちろん絡んだことは無いけど、サイボーグとか言われる人だしな。どんなトレーニングも顔色一つ変えずこなすくらいするかと思ったけど……ま、そんなウマ娘がいるわけねえか。スカーレットでさえ自主練の後は辛そうにしてるもんな。

 

 

 しばらく二人は話している。トレーナーの方が腕を組んだりして難しい顔をしてるな。体格が違うし背も同じくらいだから、なんかブルボン先輩の方が主導権を握ってる感じがするけど、まあ逆なんだろうな。

 

 

「くっ……何の話をしてるのかしら……」

「やっぱトレーニングを軽くしてもらおうと……お、決まったか?」

 

 

 しばらく見てると、ブルボン先輩が頭を下げた。トレーナーがやれやれと首を振っている。つまり、ブルボン先輩の案が通ったってことか? スパルタスパルタって割にはウマ娘側の意見が通るんだな。ちょっと意外かもしれない。

 

 

 腕を軽く伸ばしながら、ブルボン先輩が坂路へ。ストップウォッチを持ったトレーナーが出したスタートの合図は大声なので何とかこっちでも聞き取れる。

 

 

「坂路か……やっぱ三本くらいやんのかな。二本だってかなりへとへとになっちまうのに」

「三本……それくらいなら、まあ……」

「強がんなよスカーレット。無理だって」

「無理じゃないわよ!」

 

 

 目が泳いでるスカーレットは放っておいて、え、いや、ブルボン先輩速ぇ。嘘だろ? まるで平地みたいに平気な顔して走ってる。信じられねえ。

 

 しかも、そのままろくに休みもせず二本目に行った。マジ? トレーニングに対してインターバルが短すぎるだろ。怪我が怖くねえのかよ。

 

 

 二本目もブルボン先輩はそ知らぬ顔で走りきった。俺には解る。あれは並大抵じゃねえ。坂路に限らずスタミナを付けるトレーニングってのは半端じゃなく疲れるんだ。あんまり甘っちょろいトレーニングしかしねえから教官のトレーニングはサボってるが、スタミナだけは参加してる。キツいからな。

 

 そんな坂路を二本走りきってなお、ブルボン先輩はまっすぐトレーナーの前に立っている。特に表情が変わってる様子もねえ。これがクラシック本命ウマ娘のトレーニングか。

 

 

「……お、おい三本目か? 本当にやるのかよ?」

「っ……くらくらしてきたわ」

 

 

 休んだ様子はねえ。トレーナーに一言二言言われただけで、すぐに坂路に戻っていった。休まずの三連投。普通じゃ考えられないことだ。キツい云々よりも怪我をするだろ、あんなの。

 

 だが、ブルボン先輩はやっぱり何も変わりはしない。ただ無表情に走っているだけだ。フォームも崩れねえし、スピードも落ちている様子はねえ。ここまでやればスプリンターでも長距離を見られるってことか? 

 

 

「坂路三本……い、いや、できる、できるわスカーレット……一番になるんだから……どんな辛いことでもやらないと……!」

 

 

 スカーレットはスカーレットでなんか呟いてるし。マトモな奴がいないのか? ここ。誰かに見られたらどうするんだコイツ。優等生気取ってるんじゃなかったのかよ。

 

 

「……三本目、終わったみたいだな」

 

 

 ブルボン先輩がまた戻ってきた。流石に少しふらついてるか……? いや、気のせいか……解らねえ。だけど、トレーナーの前に立つと何かを話し始めた。ギブアップか? いや、そりゃ当たり前か。坂路三本とかどうかしてるし。

 

 が、トレーナーは信じられない行動に出た。

 

 

「お……いおい。大丈夫かよ。暴力事件か?」

「これがスパルタかしら……?」

 

 

 トレーナーが先輩の顔を両手で挟んで、威圧するみたいに顔を近付けたんだ。顔が隠れちまったが、ブルボン先輩もぴたりと動きを止めてしまった。

 

 

「……どうしたんだ」

「さあ……」

 

 

 そのまましばらくじっとしてた二人だったが、少し経つと普通に戻り、ぴっと指を指した。それに合わせ、先輩が坂路に……は? 嘘だろ? 四本目? 正気か? 

 

 

「お、おいおい、無茶苦茶だ! 死んじまうって!」

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」

 

 

 隣のスカーレットが混乱して呼吸を荒くして頭を抱え始めた。地獄かここは。まさかさっきのは、嫌がるブルボン先輩を無理やり走らせたってことか? 信じられねえ……が、今日やってるってことはいつもやってるってことで。ブルボン先輩も契約を切らないあたり受け入れてるのか……? 

 

 

「ふ、ふふふ……大丈夫、大丈夫よスカーレット……あなたは大丈夫……きっとできるわ……だってあなたはダイワスカーレットだもの……」

 

 

 スカーレットがイカれちまった。でも気持ちは解るぜ。俺も目の前で起こっていることがまだ理解できてねえ。休まずの四連坂路なんか聞いたことがない。それに、四本目にも関わらずブルボン先輩の走り方はほとんど変わったように見えない。

 

 こんなのを毎日やってるのか……? す、スズカ先輩もか……? 背中に冷たいものが走るぜ。できるわけがねえ……身体がついてきても心がついてこねえ。脚か心かどっちかが間違いなく折れる。

 

 そんなのを見ながら、トレーナーはタブレットに何か話し掛けている。何でもないことなのか? 坂路四本がここでは普通なのか……? 

 

 

「できるかなあ……ママ……できるわスカーレット……頑張れ……」

「帰ってきた……あとはダウンして終わりか」

 

 

 収穫は……まあ、あった。あったが、スカーレットがそれに適応できるかは別の話だ。精神が壊れかけたスカーレットを引っ張って部屋に戻ろうとして、そこで、二人がまだ何かしていることに気が付いた。

 

 

「……あれは」

 

 

 帰ってきて、流石に倒れちまったブルボン先輩。それを受け止め寝かせると、少し何か話した後、トレーナーはベンチに戻って水筒を持ってきた。蓋を開けて、近付いて手渡

 

 

「おい! おかしいだろ!」

 

 

 さずに、顔面に水をかけた。思わず大声を出しちまったので慌てて隠れる。やべえチームだ。スカーレットのこと、もしかしたら本気で止めないといけないかもしれねえ。スカーレットの親御さんとかに言えば何とかなるだろうか。

 

 にしても疲れて倒れてるウマ娘に水をぶっかけることがあんのか? そんなことがあって良いのかよ。トレセンとか怒った方が良いんじゃねえの? 

 

 

 しばらく体を隠し、こっそりと覗く。ちょうどブルボン先輩が立ち上がり、また顔をぐっとやられていた。まさか、おい、流石にそれは……

 

 

「……い、行った……五本目……!」

「あ、ああ、あああ……」

 

 

 騒ぐスカーレットに構う余裕もない。信じられねえ。しかもまだフォームが崩れていない。行かせるトレーナーもイカれてるが、これで走れるブルボン先輩もイカれてる。今すぐ行って止めてやりてえが、二人の間の話も聞こえてねえし、それを受け入れているからこそ契約をしているわけだし……いや、ブルボン先輩が強く反抗できないタイプって可能性も……くそっ、意味が解らねえ。

 

 

 また先輩が帰って来た。今度は減速した瞬間ふらつき始めて、そのままトレーナーのところへ惰性で走って、ふらつく勢いでトレーナーごと倒れた。さ、流石に終わりだよな……? もうやらないよな……? 完全に倒れて動かなくなっちまったぞ……? 

 

 

 心配したが、流石にこれで終わりみたいだ。トレーナーが先輩の下から這い出して、ブルボン先輩を起こして、背負ってどこかへ歩いて行った。見届けてから隣のスカーレットを……うおっ。

 

 

「大丈夫、大丈夫、大丈夫…………!!!!」

「……」

 

 

 声震えてるとか言ったらぶん殴られそうだったので、やめておくことにした。体験、俺も一緒にトレーニングするのかな。やべーな。生まれて初めてトレーニングから逃げたいと思ってるな、俺。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────

 

 

 

 

 

 

「マスター。本日のトレーニングですが」

「うん」

「特別コースを希望します」

 

 

 出たわね。

 

 

 ある日のこと、ブルボンがいつもの坂路トレーニング前にそんなことを言い出した。

 

 

「だめ」

「しかし」

「いやしかしじゃなくて」

 

 

 特別コースというのは私が冗談で名付けたら正式名称になってしまった、ブルボン向けの……まあ隠さず言ってしまうけど、倒れて気を失うまで追い込むトレーニングのことである。本数とタイムを調整して、精神を無視して身体の限界までやる、私自身もあまりにも残酷なので滅多にやらないものである。というか普通にやりたくないでしょこんなの。

 

 

「前回の特別コースから既に二週間が経過しています」

「いやブルボン。時間を取れば良いってことじゃなくて」

「本日の体調、モチベーション、両者ともに最高を記録しています。やるなら今日です、マスター」

「でも今日はクリスマスの買い出しをするって言ったじゃない。やめとこ? ね?」

「当該時刻までに回復が可能です。お願いします」

 

 

 しかし、ブルボンはこういうことをすぐに言う。彼女は朝日杯でも成功体験を積み重ねてしまった結果、トレーニングは過酷なら過酷なほど良いと思っている。なまじ何回もやっているしそれが可能な体を持っているため、こうして定期的に倒れるまでやるトレーニングを求めてくるのである。

 

 

「……ブルボン重いから嫌よ」

「確かに体重は微増傾向ですが、マスターの食事制限通りです。想定の範囲内の増加では?」

「……んもう」

 

 

 頑固な子ね。誰に似たの。スズカか? 

 

 

「……じゃあ今日やったら年内は終わりね。絶対ダメだからね」

「解りました。ありがとうございます」

 

 

 頭を下げるドМサイボーグ。なんで私、これで感謝されてるの。今から担当ウマ娘が気を失うまで追い込むんだけど。ブルボンの目がキラキラしているあたりイカれた子なんだなあって感じ。誰がこんな子に育てたの? お父さんか? 

 

 

 でも仕方が無いし説得している間も寒いので、指示タイムを少しだけ遅くしておく。言いつけると、すぐにストレッチの後走り出していった。ますますスズカに似てきたなあ、あの子……でもまあ、勝手には走らないだけ良いのか……? それに、走れば走るだけ強くなるのは確かなんだし、スズカとは事情が違うけど。

 

 

「……あ、スズカに電話しなきゃ」

 

 

 忘れるところだった。久しぶりにブルボンのトレーニングを見たいとのことで、ビデオ通話の準備をしたのだ。通話をかけるとスズカがすぐに出た。

 

 

『遅かったですね、トレーナーさん』

「ごめん忘れてた。見える?」

『見えますけど……え? 今忘れてたって言いました?』

 

 

 アウトカメラでブルボンを映しつつ、何やら騒ぎ出したスズカを宥めておく。仕方ないでしょ。ブルボンと色々あったんだから。

 

 

『今日もいつもと一緒ですか?』

「いや、少し遅くしてる。今日は倒れるまで走るって言うから」

『え……羨ましい……私もやりたいです』

「うそでしょ」

 

 

 あーあ、とため息をつくスズカ。この子を誰がこんなにしたの? ブルボンか? 

 

 

「言っておくけど怪我から復帰しても倒れるまでとかスズカにはやらないからね」

『どうしてですか? ブルボンさんは良いのに?』

「でもスズカはスズカじゃん」

『差別……!』

 

 

 酷いです酷いですと騒ぎ出したスズカ。スズカがやったら死んじゃうってそんなの。あれはブルボンの丈夫な体と類まれなる精神力があってこそできるものなんだから。絶対にダメだからね。

 

 

『でも一回くらい……お試し、お試しなら』

「絶対ダメ」

『むぅ……走った後そのまま寝るのが一番気持ち良いんですからね』

「あなたはそれで何回私のベッドシーツをダメにしたの?」

『尊い犠牲だと思います』

 

 

 いつも通りスズカの話を聞きながら、ブルボンにとりあえず三本やらせる。ここまではいつも通りだ。これで終わるにしてもかなりスパルタ気味というか……本来何本も毎日やるとかいう練習じゃないからね、坂路って。ブルボンは特異体質だから毎日これで済んでるけど。

 

 

「お疲れブルボン。セルフチェック?」

「疲労度イエロー、思考プロセスは正常に稼働しています。十分に行動可能です」

「そうねえ」

 

 

 いつもより提示タイムが遅いだけあって、結構余裕がありそうだ。設定間違えたかな。私の想定よりブルボンに根性がある。一応見てみるけど怪我率も無い。上気した頬っぺたを持って目を覗き込む。うん、大丈夫。全然行けるわね。行かせたくはないけど。

 

 

「よし、じゃあ行ってきなさい。タイムを昨日と同等に戻すわ。ラスト一ハロン、平地でスパートもかけなさい。良いわね」

「了解しました」

「行きなさい」

 

 

 合図とともに再び走り出すブルボン。これでまだ耐久力……ウマ娘に耐久力なんて言い出すのはおかしいけど、上がってるのよね。スタミナや根性とは別に。どれだけ過酷なトレーニングに耐えられるか、みたいな能力が。私が勝手に言ってるだけで見えないけど、でもたぶんある。そのうち聞いたこともないトレーニングをしないと満足できない体にならないかお姉さんは心配です。

 

 

『走りたい、走りたいです……』

「見なきゃ良いのに……」

『せめて人が走ってるのだけでも……もう頭がおかしくなりそうで……』

「怖いこと言わないで?」

 

 

 画面にかじりつくみたいに顔を近付けてくるスズカ。近い近い。難儀な子ね。私だったらこんなことしないけど。ダイエット中に飯テロ動画見るみたいなものでしょ? 流石に頭が悪すぎる。スズカがやりたいならやれば良いけど、それにしたって。

 

 

「まあ、指を咥えてみてなさい。明日は病室からは出られるわよ」

『走れないんじゃ意味無いです……』

「そう言わないの。ブルボンのご飯、楽しみでしょ?」

『それはまあ、楽しみですけど……うぅ……走る……』

「もう……」

 

 

 へにょへにょの可愛いスズカの声を聞きつつ、こっちではブルボンが帰って来た。流石にふらついている。そのまま私に寄りかかって来たので受け止めて、寝かせる。シートとか持ってきておけば良かったな。

 

 

「大丈夫、ブルボン」

「思考プロセスは大幅に低下……残存体力はレッド、私の判断ではステータス、行動不能です……」

「じゃあ終わりね」

「……マスターが続行不可能だと断言できるのなら」

 

 

 じゃあ、ってやめるとブルボンに後から怒られてしまうかもしれないので、しっかり見ておく。怪我率は出ている……が、私もちゃんと学んできている。これくらい数字が低ければ、少し休めば何とかなる。もう一本行けるわね。

 

 水筒を持ってきて蓋を開ける。しまった、ストローを忘れてきた……どうやって飲ませる……いや、かけるか。

 

 

「かけるよブルボン」

「はい……」

 

 

 普段からやってるし、ブルボンも平気な顔で受け止めている。むしろ気持ちよさそうにしているので、上手く呼吸を止めさせないように位置とタイミングを見計らいながら頭を冷やす。誰かに見られたら誤解されそうな気もするけど、これでブルボンは水分補給できてるから。本人はこれで満足してるし、起き上がるのも回復の邪魔だから面倒とか言う子だからねブルボンは。

 

 水筒を半分もかけ、脚に触れる。目みたいな超能力は無いけど、まあ軽いマッサージや触診くらいならできるし。改めてブルボンを見る。うん、怪我率が消えたわね。ギリギリまで追い込むにはこういうことをしないといけないのだ。もう大丈夫よ、とブルボンの手を引いて起こし、ほとんど負荷を変えずに五本目を指示。ブルボンが走り出した。

 

 

「流石にフォームが崩れてきたわね」

『ですね。スピードもさっきのだと厳しい感じがします』

「まあ、それはしょうがないわ。これで帰ってきたらたぶん落ちるからね。もう切るわねスズカ。ちゃんと病院食食べるのよ」

『食べても走れない食事に何の意味が……?』

「嘘みたいな考え方ね」

 

 

 通話を切る。冗談なのか本気なのかいまいち解らないのが本当に怖い。まあ流石に冗談だろうけど。いくらスズカでも走らないなら食べなくて良いとかは言わない……言わないよね? この間残していたのは本人の言う通り体を動かしていないからお腹が空かなかっただけだよね? 信じるよ? マジで。

 

 そして、帰ってくるなり倒れたブルボンを抱きかかえる。抱きかかえるというか、押し倒される。よく頑張ったわねブルボン。これでしばらくは無茶なことを言い出さなくて済むかな。おぶってトレーナー室へ戻る。体がこう……がっちりしてきたわ。もちろん、ウマ娘はどんなに鍛えようが筋肉が極端に肥大化して……つまりボディビルダーみたいになることは無いので、女の子の体ではあるんだけど……それでも筋肉の付き方や密度、張りがそんじょそこらのウマ娘と違う。そりゃ勝てるわけだよ。

 

 

 それからブルボンが目覚めるのを待ち、私達はクリスマスパーティーの買い出しに向かった。クリスマスプレゼントのオマケ、そろそろ書いとかないとね。

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