走ることしか考えていないサイレンススズカと効率的に勝つ方法を考えるタイプのトレーナー。あと割と理解のある友人一同。   作:サイレンススズカ専属トレーナー

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日常回のサブタイに悩む定期。


一緒におでかけするミホノブルボン

 

 大晦日、私とブルボンはちょっとした買い物のために街に出ていた。

 

 

「ブルボン。これ香りどっちだっけ。こっち?」

「スズカさんが常用しているものであればこちらです」

「あ、それか」

 

 

 ダイワスカーレットが合流し、私達のチームも三人になった。三人といえばいつか学園にあったらしいアオハル杯にも参加できる人数である。マイルのスズカ、中距離のダイワスカーレット、長距離のブルボンでバランスも良い。

 

 というわけで、少しだが物資の買い出しをしなければならない。本来なら私一人でやるべきものだが、ブルボンを連れていくと荷物持ちとメモの役割を兼ねてくれる。非常に賢い子だ。

 

 

「これくらいかな……うん、ありがとうブルボン。じゃあレジ行って帰ろうか」

「はい」

「帰りにどこか寄る? ちょっとならお菓子買っても良いよ?」

「ありがとうございます。是非」

 

 

 いつものパーカーを着てカートを押してくれるブルボン。ぴこぴことウマ耳が動いている。ブルボンも何だかんだでウマ娘なので、食欲旺盛である。ブルボンにしろスズカにしろ他の欲求が強すぎて霞んでいるが、本来甘い食べ物に逆らえるウマ娘など存在しない。ふふん、と少しご機嫌になってカートを押していくブルボン。

 

 

「スズカさんの分も買って届けましょう」

「ダメ。今日は病室にスペシャルウィークが来るから。一人だけ食べられないのも可哀想でしょ」

「では私も」

「だから内緒ね、内緒。病院行かないで神社行くから」

 

 

 店内は混みあっていてレジ前ともなると行列になっている。流石は年の瀬という感じだ。去年は神社に行けたんだけどね、流石に今のスズカを人ごみに連れ出すわけにはいかないし。

 

 一方ブルボンはちゃんと今日から連れていく。お祈りもして来年に備えないと。それからブルボンの実家に行って挨拶をして、それから家に帰る感じで。スズカの実家にも行こうと思ったんだけど、スズカから別に来なくていいですと言われてしまったし。仲が悪いわけじゃないんだろうけど、関係性がよく解らないんだよねあの一家。

 

 

「何が食べたい?」

「候補には何がありますか?」

「何言っても大体食べられるでしょ」

「ではアップルパイが良いです」

「ちょっと遠くなるねえ」

 

 

 一瞬へにょりかけたウマ耳を立たせて、会計を済ませる。他のことは大体できるブルボンだが、セルフレジだけは何もできない。下手に触れて破壊すると洒落にならないから仕方が無いので、私が全部やるのをひたすら見ている形になる。

 

 

「マスター、本日私の実家に来られるということですが」

「うん」

「午後三時過ぎにマスターの携帯に、夕飯の献立についてお母さんから連絡があるそうです」

「……え? 行くの深夜よ?」

「是非と」

 

 

 どうして私の担当ウマ娘は可愛いのに実家が可愛くないんだろうなあ……尊敬度が高すぎるブルボンの家と、やたらと私とスズカの関係を疑ってくるスズカの家。ダイワスカーレットの家もなんかそういう一面があったりしないだろうな。

 

 

 晩御飯は後で何とか断るとして、荷物を車に積んでブルボンご所望のアップルパイを買いに走る。ブルボンの分だけ買って、もぐもぐ食べるブルボンを横に高速へ。やはりというか今回も、空いていそうな神社を調べてある。調べたのは私じゃなくてマチカネフクキタルだけど。

 

 

「マスター、電話です」

「ん」

 

 

 運転は続けつつ、ノールックで左手を差し出す。ブルボンが私の手を握り、自分は触れないように通話ボタンを押す。スピーカーまで押して、それから対応もブルボンがしてくれる。

 

 

「はい。チーム・エルナト、ミホノブルボンです」

『あ、ブルボンさん。運転中?』

「おースズカ。どうしたの」

『トレーナーさん。今スぺちゃんが来て挨拶をって……今日はもう来ないですよね?』

「そうねえ」

 

 

 でもまあ挨拶がしたいならとそのまま代わってもらう。菊花賞、ジャパンカップ、有馬記念と最近負けが続いている……いや、成績自体はめちゃくちゃ良いし、まずそのローテで走れることが凄いんだけど、まあ負けが続いている。しかし、かなり元気そうというか、日々楽しそうにしている。こういうところがトップウマ娘の貫禄というか。仲間が強くなることで自分が強くなることができる、と心から喜ぶことができるのだ。

 

 あの世代、本当に爆発しそうだもんね……二冠ウマ娘、ダービーと秋シニア二着、有馬記念、ジャパンカップから来年は海外。キングヘイローも一着が無いだけでいつも掲示板にいる。最強世代じゃん。

 

 元気な彼女の所信表明や感謝の言葉を聞きながら、こちらも目的地付近まで近付いてきた。

 

 

『と、いうわけなので、また是非よろしくお願いします! 私のトレーナーさんも、何か手伝えることがあればって言ってますから!』

「うん。後でお礼を言っておくわ。スペシャルウィークも頑張ってね。次は春?」

『少し間を空けて休まなきゃって言われちゃいました。トレーニングはしっかりやりますけど』

「それが良いわ。来年も楽しみにしてるからね。春の天皇賞と、有馬記念とか?」

 

 

 大阪杯、宝塚、秋の天皇賞、ジャパンカップはスズカが貰うけど。

 

 

『……中距離はスズカさんが浚うってことですか?』

「バレた?」

『必ずスズカさんに勝ってみせますから。私達みんなの悲願なんですからね』

「怖いこと言うなあ」

 

 

 実際スペシャルウィークとグラスワンダーあたりは怖いのよね。有馬記念で勝ったのはグラスワンダーなんだけど、実力だけを見るならどう考えてもスペシャルウィークが勝つべき勝負だった。それでもグラスワンダーは届いたのだ。ダービーでのスペシャルウィークVSエルコンドルパサーでも同じようなことが言える。

 

 つまり、あの二人は、実力を気合で覆すことのできるタイプ……つまりマチカネフクキタルみたいなタイプなんじゃないかって話。そうなると状況次第ではスズカを下す可能性も出てくる。それは本当に怖いわ、私。

 

 

『安心してください、トレーナーさん。そんなことにはなりませんから』

『スズカさんまで……絶対勝ちますからね……負けませんから……!』

 

 

 声しか聞こえないがご機嫌に煽るスズカ。仲が良さそうで何より。そろそろ到着するので切るわね。

 

 

 

 

 

 ────

 

 

 

 

「あー……あちこち痛いわ……」

「マッサージしましょうか」

「大丈夫よ。それよりブルボンは平気?」

「問題ありません」

 

 

 神社。大晦日の日が沈んですぐということで、マチカネフクキタルに祈りながら来た少し小規模な神社は、割と空いていた。マトモな神社か? これが……と驚きつつ、ちゃんと祈祷はやってくれた。そういう知識は人一倍あるというのは伊達ではなかったらしい。

 

 私の体が座布団一枚の正座に耐えられなかったのはともかく、あまり開いていない出店の中から適当に食べ物を買って車に戻っている。

 

 

「時間ありそうだし、どこか大きいところも行こうか」

「良いのですか?」

「そんな遠くないし。たくさん祈った方がご利益だってあるでしょ」

 

 

 よく知らないけど、たぶんそうじゃないかな。膝いっぱいにご飯を並べて平らげるブルボン。晩御飯だしもうちょっと食べられるだろう。もっと栄えているところに行った方が出店も多いし、お御籤だけ引いて帰ってくるとかでも良い。

 

 ファンの人に会ったら面倒……とかは思っていたけど、今はあながちそうでもないんじゃないかと思っている。朝日杯も勝ったことだし、ブルボンはしつこく三冠路線に進むと言い切っている。ここでついてくれるファンはたぶん、それを応援してくれる人達だろう。交流も、まあマイナスではないんじゃないかな。

 

 

「来年はもっと忙しくなるしさ。良いんじゃない。一人の神様だけじゃ背負いきれないかもしれないでしょ」

「神様は全能ですから、平気だと思いますが」

「細かいことは良いの。三冠なんて取ったらスズカの比にならない評判が立つのよ。ブルボンならなおさらね」

「……確かに、そうかもしれません」

 

 

 スズカはただ強いウマ娘であって、その身にタイトルは無い。まあG1勝利数は大変なことになっているけど、三冠……特に無敗三冠となればその名誉は比にならない。それを来年ブルボンが取ると。すげえ。

 

 

「そのために頑張らないとね、ブルボン」

「はい。これからは特別コースも頻繁に行いましょう」

「それはダメ」

「なぜ……?」

 

 

 なぜ、じゃないでしょ。

 

 

「言っておくけどブルボン。もういらないって。もうスパルタしなくても良いんだってば。もうスタミナも十分だから」

「今度はスピードが不足しているとマスターが言ったはずです」

「そうなんだけどね? でも違うじゃんそれとこれとは」

「能力を上げるにはトレーニングが最適です」

「もー」

 

 

 ほにゃほにゃ食べながら生意気を言うブルボンの頬を横から潰す。慌てて飲み込むブルボン。一瞬止まったものの、何事も無かったかのように食事を再開してきた。

 

 

「しかし」

「食べながらでないと話せんのかおのれ」

「失礼しました」

 

 

 ごくん。

 

 

「成長のためには人以上のトレーニングが必要です。お父さんも、マスターもそう言った発言をしました」

「私は言ってないって」

「私の会話ログには言ったとあります」

「私のログには無いのよ」

「記憶力においてマスターに劣るとは思っていません」

「このっ、ぽんこつロボット! この口か? この口がいけないのか?」

「んむむむ」

 

 

 頬っぺたを挟んで上下に動かす。寒さで少し赤らんだブルボンが、されるがままに頷いた。

 

 

「とにかくダメったらダメだからね。絶対ダメ」

「しかし」

「しかしじゃなくて」

 

 

 ブルボンがスズカみたいになってきたな。謎理論で押し切ろうとして無理ならbotになるスズカと違って、ブルボンはずっとbotだけど。とにかくしかしで押し切ろうとしてくる。毎回そこで口を挟む私がいけないんだけど。

 

 

「そんなことしなくてもブルボンは強いんだからね」

「しかし私の強さとはトレーニングによって得られたものです」

「そ……う言われると何も言えないわね」

 

 

 スズカだけじゃなくてブルボンとの言い合いにも勝てるようにならないといけないのか、私は……? 

 

 

「……まあ百歩譲ってそれはどうでも良いけど、ブルボン」

「良くはありませんが」

「ダイワスカーレットにそれを言うのはやめてね。一応言っておくわよ」

「真実を伝えるのは重要です。特に彼女は強くありたいと思っているようですから。既に何人かにも言っています。トレーニングは全てを解決すると」

「……あちゃー」

 

 

 やってしまったね、ブルボン。だからうちのチームがイカれてるみたいな扱い受けるのよ。

 

 一度チームの決まりを作らなければならない、と強く実感しながら、私達はブルボンの実家へと向かった。

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