走ることしか考えていないサイレンススズカと効率的に勝つ方法を考えるタイプのトレーナー。あと割と理解のある友人一同。   作:サイレンススズカ専属トレーナー

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これは言い訳なんですけど、別に加入理由とかは極論言えば何でも良いし、丁寧にやると一話一スズカができなくなるので適当に書きました。


無言で圧をかけるサイレンススズカ

 

「……ぅ」

「お、起きた。大丈夫、ダイワスカーレット?」

「ここは……」

「トレーナー室よ」

 

 

 ダイワスカーレットを運び込んだトレーナー室。ベッドに並んで寝かされたブルボンとダイワスカーレットだったが、当然ながらブルボンの方が復帰が早かった。既にかなり回復し、私の簡単なコメントを聞いた後スズカと将棋を始めている。

 

 

「ま、待った……」

「スズカさん、これで四回目です。一手戻しても戦況は変化しません」

「じゃあ三手くらい……」

「それでは勝負になりませんが」

 

 

 ……まあ、ブルボンがボードゲームにおいて最強というのは解っていたことだし、わざわざ喧嘩売ってボコボコにされているスズカには何も言うまい。どうしてブルボン相手にゲームを持ちかけてしまうのか。たぶん会話も弾まないからだろうけど。二人とも聞き側だし。

 

 

「お疲れダイワスカーレット。はいこれ。普通の飲み物と甘いの、どっちがいい?」

「あ……じゃあ甘いのを……」

 

 

 用意していた飲み物を手渡すついでに見ておく。うん、大丈夫。怪我や不調は無いし、驚くことにやる気も落ちていない。根性のある子ね。ただ、疲れは残っているだろうし、現に少しずつしか飲まないダイワスカーレット。まあ、シンプルな消耗は寝れば治る。若いし、ウマ娘だし。

 

 

「ありがとうございます」

「ん。どうだった? 厳しくって言うとこんな感じだけど」

「これが普通ってことですか?」

「厳しくしたんだって。いつもこうじゃないから。本当。今日はリクエストに応えただけというか」

 

 

 絶対に誤解されないように言い含めておく。これで、これがいつもじゃないなら抜けますとか言われたら驚いてしまうけど、トレーニング中や直訴の時より少し雰囲気が柔らかくなっているような気もする。

 

 

「そうなんですね……その、どれくらい、こういうことを……?」

「い、いや、ほとんどしないのよ。こういうことは良くないからね。本当にたまにしかしないから」

「……でも、これでスズカ先輩やブルボン先輩は強くなったんですよね」

「うーん…………まあ……そうかも……」

 

 

 答えにくい質問だ……ブルボンの強さはスパルタから来たもので間違いはない。スズカはスパルタではないが、その速さは才能か、あるいは日々アホみたいに走り続けてきた積み重ねによるもの。どっちも大っぴらに後輩に話すことではない。

 

 

「……その、私、一番になりたくて……だから、どんなことだってするつもりで……」

「そっかあ……」

 

 

 私、何を言えば良いんだ? どうするのこれ。

 

 

「まあ、全然、一番を目指す分には良いと思うわ。応援する。トリプルティアラから、G1をとる感じで」

「……私、一番になれますか?」

「あー……っと……」

「……」

 

 

 やばい。スズカがここぞとばかりに私の隣に座ってきた。理解のある先輩面はしているものの、言いたいことは明白である。真面目に先輩として話すならすぐに口を開くはずで、それをせずぴたりと私の隣に陣取っているのはつまりそういうことだ。

 

 

「……エルナトでは、一番速いウマ娘はサイレンススズカ、というのが、えー、公式見解です」

「え……」

「基本的にスズカが負けるはず無いし、スズカより速い子はいないの。だから、ダイワスカーレットが入っても、あなたを一番と言うことはできないから……それだけ、ごめんなさいね」

 

 

 私がそう言うと、ダイワスカーレットは露骨に落ち込んだ様子で目を伏せた。でもその、そればかりは私も嘘をつくわけにはいかないし、私が一番大切なのはやっぱりスズカだ。

 

 

「……ブルボン先輩も解っててここに?」

「解って、というのは、スズカさんが一番速いという事実についてですか?」

「……はい」

「理解しています。比較については正確にはできていませんが、マスターがそう分析したのであれば恐らくそうなのだと思いますし、私の体感でもそうです。もちろん、それに甘んじるつもりはありませんが」

 

 

 将棋盤を片付けつつ平気な顔で言い放つブルボン。隣のスズカがちょっと反応したが何も言わない。偉い。

 

 

「私はそれとは無関係に、私が三冠をとれると言ったマスターに師事しています。マスターやスズカさんがどうあろうと無関係にここにいます」

「ブルボン……」

「もちろん、いつかスズカさんには勝ちます」

「っ……」

 

 

 どうどうスズカ。反応しないの。挑発される度に乗ってたらキリが無いから。

 

 

「……スズカ先輩が一番……」

「もちろん、来てくれるならダイワスカーレットの一番良いようにするわ。でも一番はスズカなの。ごめんね」

「スズカさんが……一番……」

 

 

 ヤバいかな。ちゃんと言っておかなきゃいけないのと、隣にいるスズカの圧に負けてつい本音を話しちゃったけど。ビビっている私に対し、しかし、ダイワスカーレットは数秒考えこんだ後、ふう、と一息ついて、何も言わずに部屋から出ていった。

 

 ……なんだ? 断るにしても何か言うでしょ流石に。何のつもりで無言で退室したんだろう。流石に意味が解らなくて嫌な気持ちにもならない。

 

 

「どうしたんですかね?」

「さあ……どこに行ったんだろ」

「あ、外にいますよ。ドアの前です。足音が聞こえないので」

「あ、そうなの……そうなの? なおさらどういうこと?」

 

 

 私にはさっぱり解らないけど、スズカもブルボンもドアの方を見てウマ耳をぴこぴこ動かしている。一回部屋を出て……断り文句とかを探してるのかな。向こうから申し込んで向こうから断るんだし、言いにくいのかも。私は基本何されてもスズカが気にしないなら気にしないし、スズカも大体のことは気にしないので、「やっぱやめますわ!」くらいでも普通に許せるけど。

 

 

 しばらくそのまま待っていると、再び扉が開いた。今までになく澄ました顔で、今度は座る私達の隣に立つ。うわでっか……じゃなかった。

 

 

「……決まった?」

「……スズカさんが一番のウマ娘なんですよね。それって、会長さんとかよりもですか?」

「そうだけど」

「……じゃあ、スズカさんに勝てたら私が一番ってことで良いんですよね?」

「え」

 

 

 それは無理でしょ、と言おうとすると、横からスズカの手が伸びた。口を塞がれたので、私も喋るのをやめる。なんだ。今話すべきじゃないのか。スズカがそう思うならそうなのか……な? 

 

 

「そうですけど、それがどうかしました?」

 

 

 私の代わりに返事しないで?? 

 

 

「……トレーナー。私、決めたわ」

「……何を?」

 

 

 スズカの手を退ける。ダイワスカーレットがさっきからちょこちょこ敬語が取れてるのはどうしてだろう。こっちが素? 気弱だけど根性があるみたいな……私の見る目が間違ってた感じ? 

 

 

「私の目標は、一番になることにする。だからそのために力を貸しなさい」

「えっと」

「ゆくゆくは!」

 

 

 私の言葉を遮って、ダイワスカーレットは言った。

 

 

「ゆくゆくはスズカ先輩にも勝つから……! ここで、スズカ先輩を追いかけることにするわ!」

 

 

 ……ええ……? 

 

 

 

 

 

 

 

 ────

 

 

 

 

 

 

「と、いうわけで……ダイワスカーレット、正式加入ー」

「わー」

 

 

 ぱちぱちと拍手するスズカとブルボン。書類を揃えたづなさんに提出し、今日は夕方のトレーニングが取れていないということでそのままみんなでご飯を食べに来ている。何度かお世話になっている、ウマ娘に高値とはいえ食べ放題焼肉を出しているやべー店である。スズカもブルボンも破滅させるような量を食べないので来店を許されている節はあるけど。

 

 とはいえ到底人間ではありえない量を注文し、あらかた揃ったところで号令をかける。急遽とはいえ歓迎会のようなものだ。

 

 

「これからよろしくね、スカーレット」

「よろしくお願いします!」

「結局どっちが素なの、あなたは」

 

 

 スカーレットの口調はずっとふわふわとしている。基本的には丁寧語、トレーニングの時や加入を決めた時はかなり強めの口調で来ていた。てっきり素を見せた以上、それからはそっちで来ると思ったんだけど。黙々と肉を焼いては食べ続けるブルボンから一定の肉だけは守りつつ、スカーレットは少し眉を顰めた。

 

 

「……たくさん人いるし。さっきトレーナー、ここ、よく来るって言ったじゃない」

「よく来るね」

「……そういうことよ。チームの中ではもう、隠しても仕方ないけど」

 

 

 小声でそれだけ言いつつすっと目を細めたスカーレット。そっかあ、以上は言えず、ぱくぱく消えていく肉を眺める。ああ、そういう感じなの。いたわこういう子、同級生にも。その子はどっちかって言うと嫌われてたけど、スカーレットは素を見てもあんまりイヤミな感じがしない。ウマ娘だからかな。

 

 

「あ、ほらスズカ、口に付いてるって……何その目は」

「……トレーナーさんはあれですね。おばかです」

「お? なんだ喧嘩か?」

「解ってないならなおさらですぅー。おばかなトレーナーさんはお肉を食べなくて良いですよ」

 

 

 せっかく拭いてあげようとしたのに。ダメだこいつ、みたいな目で見なくても良いじゃない。箸を伸ばし、明らかに自分ではない肉を掴むスズカ。

 

 

「あっスズカ先輩! それアタ……わ、私のお肉、なんですけど……?」

「えっあっ、ごめんなさい、こっちだったかしら」

「それは私が焼いていたロースです」

「あ、あれ?」

「私のを狙ってるなら無駄よ。焼いてないから」

「ず、ずるです……」

 

 

 嫌がらせ失敗。大して賢くないのにそういうことをするからよ。逆にスズカが育てた肉を横取りすると、むむむ、と頬を膨らませておしぼりを顔面に押し付けてきた。熱い熱い。というかメイクが。引きはがすついでに膨らんだ頬を摘まんで空気を抜いておく。

 

 

「ぷひゅ」

「残念ね。冷静に考えてみなさい。ウマ娘が焼肉をしているところに割り込める人間がいるわけないでしょ」

「むぐぐ……」

「何誇ってるんですか……? 別に悔しがるところでもないし」

「ふんだ……トレーナーさんなんて知りません」

「今のそんな拗ねることでした?」

 

 

 ほら見なさい。スカーレットが呆れた目でこっち見てるでしょ。色々隠す気ある? 一応今のところのスズカは越えるべき高い壁なんだけど。一気に天然ほわほわウマ娘になっちゃうでしょ。悔しくないの? 

 

 

「マスター。同じものを十皿お願いします」

「あい」

「私もくださーい」

「はい。スズカは?」

「……二十食べます」

 

 

 珍しい。スズカが一番注文している。ずっとそわそわしている感じがするけど。というか食べられる……食べられるか。ウマ娘だもんね。でもあんまり飛ばすと出禁になっちゃうから気を付けてね。

 

 そうして歓迎会を終え家に帰っても、スズカの機嫌はちょっと斜めだった。

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