プロットもなかったし設定も殆ど知らないまま映画版と支部百科の知識だけで書いたので、一発ネタのつもりで続ける気は無かったのですが、「続き書け」という感想がいくつかあったので書いてみることにしました。
多分2~3話書いたら失踪します。
【
兇暴な姿の彼女たちはそう名乗った。
「ヴ、ヴェノム?! じ、じゃあ、あんたがアメリカを騒がせてた……っ!!」
ビュフウォッ!!
しかし、男の言葉は最後までは続かなかった。視認不可能な速度で伸びた腕が顔の真横を通り過ぎていったのに、呑気に言葉を続けられる猛者はそう居るまい。一拍置いて、すぐ脇の壁が跡形もなく粉砕されているのを認識し、状況を理解する。
「……さっさと行って。死にたいなら、無理強いはしないけど」
「ひっ、ひぃぃぃい!!」
男は一も二もなく駆け出した。一瞬すらこの場にいたくはなかった。その場に居合わせただけの哀れなあの男は、この夜の出来事を生涯忘れることはできないだろう。
「……それで? 今までだんまり決め込んでたあんたは何の用? そこにいるんでしょ? みんなの偶像さん」
響は振り向きもせず、背後にいるであろう存在に向けて声をかけた。
「…………」
「出てきなよ。別に取って食おうって訳じゃないんだから」
「……ばれていたのね」
「そりゃあ、そんなに殺気丸出しじゃ、隠れようとしてるのかすら怪しいレベル……だよ。で? やりに来たなら相手、するけど」
響はシンビオートを纏い直す。
「……なら、要件を言いましょうか。【VENOM】……いや、立花響。貴女の身柄を拘束します。その力―――ヴェノムと共に身に纏うそのシンフォギアは、貴女が持っていて、そんな風に使っていい代物ではない」
「……へえ」
「抵抗するというのならば、多少手荒な真似をさせて頂きます」
「……ふぅん」
「聞いているのか……?!」
どこ吹く風といった態度の響に、翼は苛立ちを露わにする。その苛立ちは口を開いた響のセリフで、更に深まることとなる。
「…………ねえ」
「何かしら」
「……あなた達程度の力で私が捕まると、本気で思ってる? 一人二人は超人級がいるかもしれないけど、私はその程度、何度も相手してる。逃げに徹して振り切れないわけないでしょ?」
「……随分と舐められたものね。でも、それが事実だというのであれば、試してみると良いわ」
翼は、何時でも攻撃に移れるようにアームドギアを構える。だが……。
「なら、そうさせて貰う。じゃあね。鬼ごっこがしたいなら勝手に追いかけてくれば?」
響はそれに躊躇なく背を向けた。
かかってくるよう挑発したつもりだった翼は、余りにも素早く逃げに転じた響たちに反応することができなかった。
「んなっ……!」
「じゃあね。みんなの偶像さん。次は遭わないことを祈ってる」
「待ちなさ……ッ! もういない……。すみません、逃げられました」
『そうか……。分かった。そのまま帰投してくれ、翼』
「申し訳ありません、指令……」
『いや、いい。むしろ俺は、彼女自身の方が心配だ。こうも信用されていないとは……』
「はい……ですが、私は彼女を……」
翼は歯噛みする。何故彼女が奏のギアを纏っている? しかも、ヴェノムなどという得体の知れないものまで上にかぶせて! 許せなかった。そのギアは、そんな風に使っていいものじゃない!
『気持ちはわかる、なんて無責任なことぁ言うつもりはない。だが、彼女が二課に協力してくれれば、心強い戦力になってくれるはずだ。それに……彼女の保護も目的の一つなんだ。どうかこらえてくれ、翼』
「叔父様……分かっております。それでも、納得できないんです。彼女のせいで奏は……ッ! っく……今は、時間をください」
『……ああ。できるだけ早めに帰ってこいよ』