「連れて行っ――え?」
ミーシアの急な申し出に、ベルは固まった。
「はい。《ファミリア》の加入に、私も連れて行って欲しいのですが……宜しいでしょうか?」
「えっと、嬉しいですけど……なんで……?」
そう問われたミーシアは、人差し指を顎の辺りに持っていってうーんと呟く。
「ベルさんなら、英雄になれると思ったからです」
くしゃりと笑い、「でもそれだと二人一緒に加入させてくれる場所がいいですね」と冗談めかしく言った。
優しさに満ち溢れたその表情に、ベルはあ、と呟いて暫し固まる。
「……そう、ですね……それじゃあ、一緒に探しましょうか」
「ありがとうございます!それでは少しお待ち下さい、ハープを片付けますので……」
許可をくれたミーシアはぱっと明るくなり、そのままいそいそと片付けを始める。
ベルはそのハープに目を奪われていた。
髪飾りと同じくらいに白く、弦は透明でふっと切れそう。
「まだ少し時間があるので、ハープについて簡単に説明しましょうか?」
と、そのハープにベルの視線が行っていた事に気が付いたのかミーシアがそんな話題を出す。
「いいんですか?」
「はい!」
それから、ミーシアが片付けながらハープの事を話す。
極西……極東とは真逆の地域で造られ、ミーシアの持つ小さめのハープの何倍も大きいものもあるとのこと。
「私の持つハープは大体2音階分*1までしか無いのですが、大きなもので4音階分*2あるのも見ましたね……」
「えっ、持ち運びとか辛くないですか?それ……」
「はい、その時話した奏者の方も分解するしかないと嘆いていました……その分私のは片付けが楽ですね。音域が狭くて表現しきれないのが難点ですが」
そして、これでよし、と言いながら箱の鍵を閉める。
「準備が出来ました。他の荷物は決まったときに纏めて持っていくので、今はこれで」
そう言い終えて、背中に背負ったハープの箱を軽く叩く。
「解りました、それじゃあ……最初の《ファミリア》に行きましょうか」
「はいっ、どんな所か楽しみです!」
そうして、二人は城壁から降りる。
「まだ沢山の方がいらっしゃいます……はぐれたら大変ですね」
「ですね。そうならないように、少し端の方を歩きましょうか」
「はいっ」
そう言ってミーシアはベルの服の袖を摘む。
ちまっと指で挟んだだけのそれに、どこか恥ずかしさを感じたベルは少し紅くなる。
なおベルはミーシアに見えないようにしているが、少し身長差のあるミーシアには普通にバレているのでお互いに赤面していたのを街の人はほっこりして見ていた。
「なにあの初々しいカップル」「お互い顔赤くしちゃってかーわいぃー」「身長差がてぇてぇ」「これはっ……二次本制作委員会ーっっ!!」「「「ラジャッ!!」」」
後半に騒がしくしてるのは神達である。
――しかし、加入手続きというのも上手くは行かず。
「三時間も回って全部駄目……」
「これほどまでに門前払いされるとなると……ベルさんが疲れるのもわかりますね……」
お互いに道の外れで肩を落とす羽目になってしまう。
「なんでなんだろう……」
「弱く見えてしまうのが駄目なんでしょうか…」
「そうなのかなぁ……」
確かにお互いの服装は「いかにもお金が少ない」と言わんばかりのシンプルなものだ。
「はぁー……どこかに加入出来ないかなぁ……」
そんな事をため息と一緒に吐き出していると。
「君達、《ファミリア》を探しているのかい?」
大通りに面した通路の方から、項垂れる二人を呼ぶ声が。
「え、はい……そうなんですけど……」
「そっ、そうか!ちょっとおばちゃーん!ボクちょっと今日のバイト終わっていいー?」「いーけど明日も働いてもらうよー!」「わかったー!!」
ベルがその声に肯定すると、慌てて引っ込んだツインテールが遠くでエプロンを渡すのが見える。
バイト中だったのだろうか。
「ふぅ……すまないね、二人共」
「あ、いえ、大丈夫です……」
さっさと屋台から離れた少女……と言うにはなんだか神々しさがある人が、それで、と話を戻す。
「《ファミリア》加入に難航しているのなら、ボクの
そして、見る人を惹き付けそうな笑顔で二人にそう問い掛けた。