英雄の歌姫   作:珱瑠 耀

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五小節目

ぴちょん、という神の血(イコル)が鳴らす軽い音と共に、背中が波打つ。

 

そこからヘスティアがスラスラと人差し指を動かす様は、まるで指揮者。

 

その途中にヘスティアは、ん?と眉を寄せる。

 

なんかくっついてる。

 

正確に言えば、すでに何かが発現されているようなものだ。

 

しかしそこはヘスティア、まぁいっかーと軽い気持ちでそれをぽいぽーいと引き出していく。

 

「……はい、出来っ――ぅえ!?」

 

だから、ヘスティアはその『ステイタス』を見た時に驚いた。

 

――――――――――――――――――――――――

 

ミーシア 14歳 Lv.1

 

力:I0

耐久:I0

器用:I0

敏捷:I0

魔力:I0

 

魔法

《ソング・マジック》

・派生魔法

・起句『【我は奏者、その手を振れ】』

・解句『【我は奏者、かの手は現】』

・追加詠唱、派生詠唱により効果は変化

 

・追加詠唱 前奏曲『【息を吸え。今始まらん】』

 

・派生詠唱《一章 愚者の衣(フール・ドール)

・対象の模倣。

・対象との信頼度により効果に補正。

・派生詠唱『【それは愚者。笑みを纏う我は、旅の最中に偽りを被る】』

 

《》

 

《スキル》

 

――――――――――――――――――――――――

 

魔法枠が二つ、なのはどうでもいい。

 

問題なのはそのうちの一つ、《ソング・マジック》だ。

 

音楽という要素を兼ねた、恐らくこれまで存在し得なかった魔法。

 

そしてその下の、追加詠唱と派生詠唱。

 

どう見ても「これから増える」という布石ではないか。

 

「えっ、ど、どうしましたか……?」

 

「っあぁ、いや……その、魔法が発現していてね」

 

「えっ、ミーシアさん魔法があったんですか!?」

 

えっ、とミーシアが言う前に少し離れていたベルが反応する。

 

「あぁ……だけどちょっと良く分からないから、ベルくんも一緒に考えようじゃないか。ほらミーシアくん、服を」

 

良く分からない、とはどういう事だろう。

 

彼女はいそいそと服を着直し、近くの椅子に座る。

 

「まぁ、これなんだけど」

 

三人が揃い、丸いテーブルを囲む様になった所でヘスティアが紙を置いた。

 

「派生魔法……?」

 

「恐らく詠唱の用途によって大きく変わるんだろう。けど、なんだか複雑だね」

 

ヘスティアの言葉に、三人揃って首をうーんと傾げる。

 

「ですね。しかもこの対象の模倣っていうのも曖昧といいますか」

 

そうなのだ。

 

彼女が言うように、「対象の模倣」だけだと何もわからない。

 

モンスターにも効くのか、あるいは神にも効くのかというところである。

 

「多分神には効果は無いだろうね。模倣できるのは恐らく神の恩恵(ファルナ)を持った人達」

 

「うーん……詠唱してすぐに爆発する訳でも無いでしょうし、何度か実践が必要そうですね」

 

「まぁ、これから分かればいいさ。取り敢えず凄いんじゃないかって事は分かったんだし、今日はパーティーだ!」

 

そのヘスティアの元気な宣言に、二人はおーっと声を漏らす。

 

「となればさっそく拠点(ホーム)に行こうか、二人共!」

 

「はいっ!」

 

元気よくベルが返事を返し、一拍遅れてミーシアも付いていく。

 

後ろに続く彼女の手には、丁寧に折られた『ステイタス』の紙が握られていた。

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