―――新しい出会い、そこから早くも一週間が経った。
「こっちは全部終わったよー!」
「寄せておいてくださいー!」
あれから時間が経てば、少しずつミーシアのスキルも見えるようになっていた。
「対象の模倣」、それはヘスティアが予想していたものとなんら遜色がなかった。
できるのは
自分はまだLv.1なので、完璧に模倣できる限界は同じレベルまでだ。
その上のレベルも出来るには出来るが、対象との差があればあるほど精度は落ち時間も数秒単位となってしまう。
まさに愚者の模倣、というべきか。
今は一日一回使用して魔力を上げるようにしているが、なんだか悲しいものだ。
そんな彼女は今、三階層の半ばで少し大きめのリュックを背負ってベルが取り出した魔石やドロップ品を拾っている。
最初はビビってゴブリンにまで負けかけたベルも、一週間もすればそこらへんは余裕の様だ。
そんな彼はスピード型で、すれ違いざまの一撃や回避を得意とするアタッカー。
そしてミーシアはサポーターと、
これにはエイナ*1も
そんな二人は周囲への警戒を怠らず、それでも緊張しすぎない程度に言葉を交わす。
「もう少しでいっぱいになりますね」
「それじゃあそろそろ戻ろっか。多分昨日と同じくらいだと思うし」
そう。
気付いた人も多いかと思うが、ベルのミーシアに対する敬語が抜けたのだ。
ミーシア自身は敬語がデフォルトで抜けないことからそのままだが、ベルの敬語が抜けた事で二人の距離は少し縮まったように見える。
そうして二人で踵を返す、その直後。
「……――ォオ、―――ッオォォ」
三階層に似つかわしくない、低い声が聞こえる。
「っ!?」
その声を聞き逃さなかった二人は、その後から次いで来る足音に警戒する。
「……ねぇ、ミーシア」
「もしかしなくても、ですよね」
二人が見るのは、絶対に来るはずがないイレギュラー。
遠くの曲がり角から、ミノタウロスが身体を出す。
その曲がり角はこちらに続く道しか無い為、ミノタウロスは。
「グルォォォァァァァァッッッ!!!」
ベルとミーシアを視界に入れた。
「べっ、ベルさん!逃げましょう!!」
そう急かす様にベルの方を向くミーシアは、ハッとする。
「あ……ぁっ……はぁっ……はぁっ……」
ベルが恐怖で動けなくなってしまったのだ。
「っ、ベルさんっ!!」
「っ!?はっ、はっ……ご、ごめっ、ん…ミー、シア」
「良かったです、正気を……今は逃げる事だけ考えましょう!魔石も少しずつ投げれば大丈夫な筈です!」
これはエイナの入れ知恵だ。
「――うんっ、ごめんっ!」
前傾姿勢になったミノタウロスを横目に、二人は足に力を込めて走り出す。
そして。
「グルァァァァァァァァァッッ!!!」
間もなく、ミノタウロスが突進してくる。
「は、早っ…追いつかれる…!」
Lv.1と討伐推奨Lv.2だとその速度は歴然。
10秒も経たずにその距離を半分にまで詰められる。
「ま、魔石……えいっ!!」
その間にミーシアが魔石を投げて気を逸らすが、何故か魔石には目もくれずに突貫してくる。
そのうちの一つが、角に掠りパリンと砕けた。
「ひっ……ベルさんっ、ごめんなさいっ!!」
こんなのじゃ無理だと理解したミーシアはバッグを置いて走る。
しかし軽装になった彼女が全力で走っても、どうにもならないくらいには距離が狭くなっていた。
「と、飛んでっ!!」
そうして壁が近くなった時、ベルは思いっきり叫んだ。
反射的に左の分かれ道に飛び込んだミーシアは、すぐに起き上がってその場から離れる。
その直後、目の前の横壁に赤黒い物体が突っ込んだ。
爆弾でも使ったような音を響かせて、煙がたつ。
「はぁっ、はぁっ、はぁ……」
早く逃げなきゃ、そう立ち上がったその時。
ユラリ、と土煙から影が。
「っ……」
それを目視したミーシアは後ろを向き、地面に片手をついて走り始めの体制を取る。
向こうで影がぐぐぐと縮んだ。
すぐさま地面を蹴り、空気が少なくなった体内で響く脇腹の鈍痛に耐える。
向こうの影がふっと上に見えた。
ステイタスの全力を尽くして早くトップスピードになれと足を回す。
向こうの土煙からミノタウロスが飛んできた。
その二秒後、もう一度ドゴォンという音。
飛んできたミノタウロスが、ミーシアの近くで着地したのだ。
「がふっ!」
運悪くその攻撃を受けた彼女は地面を転がり、3回バウンドしてうつ伏せに倒れる。
「げほっ、ごほっ……ぁ」
そうして、顔を上げた彼女は。
「フシュルルルゥゥ……ッ」
ミノタウロスと、目が合った。