「結局、教えて下さったのは有り触れたものばかりでしたね」
聞いてみても、じゃが丸くんが好きだとかそういうものしかない。
「それはそうなんだろうけど……まぁ、しょうがないか……」
そうぼやくベルは、はぁーとため息をこぼした。
その顔は仄かに赤みが差している気がする。
「……それはそうと、ベルさん」
「どうしたの?」
「なんで私をおぶってるんですか?」
ピタリ、とベルの足が止まった。
「いや、その……エイナさんが、『ミーシアちゃんが足に怪我をしてるから、ホームまでおんぶしてあげて』って……」
「なんっで……もうっ、エイナさんのばかぁ……」
また誰かにおぶられるのか、と受付嬢に苦言を呈しながら、正直何も悪くないベルの肩をぽかぽかと殴る。
「い、痛っ、ミーシアッ、待って落ちるから!?」
「そもそもベルさんもベルさんで好きな人がいらっしゃるのにエイナさんに『大好き』とか言ってしまって何がしたいんですかっ、ハーレムでも作る気ですか……」
呆れながらも殴る手は止まらない。
「ちょっ、それはその場の勢いで言っちゃっただけでっ、ていうかハーレムはおじいちゃんが浪漫だって……」
「ベルさんのお祖父様はどんなタラシなんですか!?」
「タラシ……間違ってないかもしれない、かも?」
話によれば、ベルの祖父は時偶にこの場に居ない誰かに身震いしていたという。
「……ベルさんはそうならないで下さいね」
「き、気を付けるよ……ところで、今日の夜ご飯なんだけどね」
顔の赤みを消したベルは、歩みを再開して背中に問い掛ける。
「そうですね……バッグを置いていってしまったので、貯金から少し出しましょうか……」
そう、三階層にバッグを丸々置いていってしまったのだ。
これでは換金もままならない、という事なので今回は貯めていたお金を―――
「それなんだけど、今日は神様と三人で『豊穣の女主人』っていう所に行かない?」
おっと、外食の誘いのようだ。
「豊穣の……あ、あそこですね」
そこは十中八九ミアお母様の所だろう。
「ミーシア知ってるんだ?」
「はい、たまに演奏させて頂いてるんです」
たまに、といっても月に二、三度ほどだが、バイトのお礼として弾いたことがある。
しかし最近は御無沙汰だったから、丁度いいかも知れない。
「そうだったんだ……そこのシルさんって方にどうですかって言われてさ」
「そうなんですね。なら……私も久し振りにミアお母様にご挨拶したいですし、行きましょうか?」
ここ最近の思い出も、たくさん増えた。
アーニャさんやリューさんと話すのもいいだろう。
「うん、じゃあちょっとだけ早く帰るね」
そう言ってよっこいしょ、と背負い直したベルは、先程よりも早い足並みでストリートを進んでいく。
「……ふふ」
その間にどことなく出た笑みを、ミーシアはベルに言わなかった。
「ねーおかーさん、あのおんなのこおんぶされてるー」「こらっ、そういう事を言っちゃいけませんっ」「兎が歌姫をおんぶ……!?」「おいっこれは……早くっ、二次本製作委員会ーーーっっっっ!!」「「「ラジャーッ!!!!」」」
…………周りはいつもどおり騒がしかったが。
「ふぅーーーーーん」
「え、あの、神様」
「それで、そのシルって娘にデレデレしてその豊穣の女主人とかいう所にベルくん達は行くんだね」
「ヘスティア様も来ていただけないのですか……?」
「生憎だけど、バイトの打ち上げがあって行けないんだ。二人で
ほらほらはよ行け、と言わんばかりに二人に更新したステイタスを見せる。
そのステイタスをベルとミーシアは共有することになった。
「……なんですかこの数値は」
「引かないで!?」
見えたのはベルの異常な成長。
ミーシアとはもう200もステイタスの成長値が離れているかもしれない。
耐久は結構低いがそれを補うレベルに突出した敏捷が、「こいつは兎だ」と比喩している様。
それから、自分のステイタスを見る。
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ミーシア 14歳 Lv.1
力:I0→I2
耐久:I0→I9
器用:I0→I20
敏捷:I0→I4
魔力:I0→I37
魔法
《ソング・マジック》
・派生魔法
・起句『【我は奏者、その手を振れ】』
・解句『【我は奏者、かの手は現】』
・追加詠唱、派生詠唱により効果は変化
・追加詠唱 前奏曲『【息を吸え。今始まらん】』
・派生詠唱《一章
・対象の模倣。
・対象との信頼度により効果に補正。
・派生詠唱『【それは愚者。笑みを纏う我は、旅の最中に偽りを被る】』
・派生詠唱《二章
・魔法の発動。
・使用魔法の威力は使用者の魔力値の1/2になる。
・派生詠唱『【それは魔術師。絶えず未熟な我こそ、無価値を見出す】』
《》
《スキル》
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……まぁ、これが普通だ。
むしろベルの成長を見たらこちらの上昇はしょぼいと言える位。
「……あれ、ミーシアの魔法」
「えっ?」
と、ベルのステイタスに若干嫉妬していると、横から声を掛けられる。
魔法、と言っていたが…………
「……………………ふ、増えて…ま、ひゅ」
もう一度魔法欄に目を通した私は、声が裏返る事も気にせずにそう呟いた。