『なんで居るんだよ。なんだよその笑顔!』
その言葉は冷たくて鋭かった。自分の弟から発せられた事だと理解出来ない程に。月に1回しか会うことは出来なかったけど、それでもアタシにとっては大切で可愛くて、心の支えだった。温かく、少し気持ち悪い感覚が頬を伝う。ああ、アタシ今泣いてるんだ、情けないなぁ。
秀に嫌われた、そう思うだけで胸が苦しくなって涙がひっきりなしに溢れてくる。涙で視界がハッキリしない秀の姿がぼんやりとだけ映る。
何故かいつの間にかに秀の方に歩み寄っていた。
「シュウ、アタシの事キライ? 頼りないお姉ちゃんは嫌いになっちゃった? ねぇ、答えてよ」
「すまん、ちょっと頭冷やしてくる」
そう言って秀はまた外に出てしまった。引き止めるためには今のアタシには力が抜けすぎていた。
俺は何してんだよッ!! 姉に会えてうれしかったんじゃねえのかよ。なんで、あんなに悲しそうな顔させてんだよ。これだったらお祖母様にも身体にも無理した意味なんてねーじゃん。本当に呪われてんじゃねーの? そんなんもうどーでもいいけど。
あー、大分暗くなっちまった。帰るか……まだ居るかなぁ?
「あのっ、すみません。ちょっと質問いいですか?」
「あ、俺ですか? 答えられることならいいですよ」
「ありがとうございます。実は……」
どこかに行ってしまった姉を探しているらしい。少しだけ、本当に少しだけだけど羨ましかった。こんな遅くまで探してあげられる妹も、こんなに心配されている姉も。
そんな話は置いといて残念ながら俺が力になれることはない。なのに、協力したい。何故かそう思ってしまう。そう思ってしまうぐらいにこの子には何かある。それに俺は惹かれてしまったのかもしれない。
それから数十分探していると聞いていた特徴とピッタリ合う人が居た。本当に猫耳着いてたんだ、え、あれ本物なの?
「あの、もしかしてカスミさんですか? あの、妹さんが探してましたよ。携帯貸すんで電話してください」
「ありがと! 実はスマホの電源落ちちゃって困ってたんだよね。おまけに道に迷っちゃったし」
「そりゃ力になれて良かったです」
カスミさんは無事妹さんと交信が取れた様で此処に来るそう。合流するまで待っていよう。
「あの、こんな暗いのに協力してくれてありがとう。お礼とかはできないんだけど名前だけでも教えてくれない? 後でご縁があるかもしれないからさ」
「そういや名乗ってなかったですね。俺、シュウっていいます。自分で言うのは恥ずかしいですけど
「全然恥ずかしくないと思うよ? だってシュウ君、カッコイイもん。初めて会った人に手伝うなんて滅多にできることとは思えないしね」
「ははっ、ありがとうございます。あ、妹さん来たみたいですよ。じゃぁ、これで俺は帰ります」
「待って!! あ、あっちゃん来ちゃった」
「来ちゃったじゃないよ、お姉ちゃん。あれ、さっきの人は?」
「いまさっき帰っちゃってさ。あれっ、もういなくなっちゃった!」
「はぁ、まあいいですよ。生きていればきっとまた会えるでしょうし。真っ暗だしさ、早く帰ろう?」
帰り、遅くなっちまったな。透子が帰ってなければいいけど。はぁ、家に着いた。入ろう。
「ただいま。遅くなってごめ『おかえり!! もう大丈夫なの?』さっきはごめん。離してくれ、息苦しい。」
「あはっ、そうだ。それでね、コンビニ弁当食べるつもりだったんしょ? アタシがご飯用意しといたからさ、2人で食べよ?」
「態々作ってくれたの? ありがとう。じゃあ食べよっか」
知ってる人が作ったご飯は初めて食べた。すごく美味しくて、箸が止まらない。もっと、もっといっぱい食べたい。この暖かさをもっと前から知りたかった。
今、この瞬間が嬉しい分その分だけ昔を恨んで、憎んでしまう。そんなこと無意味だとわかっているのに。
「秀? そんな勢いよく食べたら喉に詰まっちゃうって。誰も取らないんだからゆっくり食べなよ。もう、可愛いなぁ」
「頭撫でるな、飯食えねえ。てかさ、いつ帰るの?」
「泊まっていくよ? いいっしょ?」
「床で寝るんならいいけど。ベットも布団もねえよからさ」
「うー、秀と寝れるんならしゃーなしか……」
「一緒には寝ねぇよ? 冬じゃないんだし暑いだろ」
「ふんっ、ならばーちゃんにある事無いこと言いふらすかんな」
「あー、はいはい。一緒に寝ますよ。隣に来てください」
「ヤッターじゃあ、そこまで言うなら隣で寝てやろう」
どうやら家の姉は俺が思っていたより面倒臭い人間らしい。