ライブが終わってから数日経った後、秀は笑顔が増えた。それ自体はとても嬉しいことだけどきっかけを作ってくれたのは香澄さんだと知っている。それがどうしようもないくらい悔しい。まあ、秀と同棲してる訳だし、アタシの方が進んでるから(?)いいけど、それでもやっぱりあの事実を悟ってしまった後となると秀と目を合わせて会話することは少なくなった。アタシの知らない所で嫌がる秀を想像するとゾッとするから考えたくもない。
「透子、もう学校行く時間じゃないの?遅刻するぞ」
「お、おう、そうだな。じゃあ一緒に行こっか」
「いやさ透子。学校行くのは別々にしよう?」
「えっ!?あ、うん。じゃ、アタシもう行くわ!行ってきます」
秀は何かを言いたげな顔をしていたがショックと焦りで初夏の太陽の元に走り出していた。
俺が行ったライブの後から様子がおかしい。妙に素っ気なくなって話しかけられることも少なくなった。自分から話しかけても話題が続かないから少し困る
やっぱり俺と接する事は透子にとって負担だったのか。『姉弟だから』と許容していたがやはりだめだった、そう解釈することしか俺にはできない。
そんなこと考えたってどうしようもない。早く学校に行こう。どうせ今日も対して面白くないのだから。
おかしい。数日前までつまらなかったのになんだか今日は楽しかった。帰ろう、でも家に帰って透子に嫌な思いさせたくないからな。少し遠くを歩こう。
ここは……そうかこないだ来た公園か。あの時は急に話しかけられてビックリした。そういやなんで断らなかったんだろうか。
『あっ!シュウさん』
ん?、今名前呼ばれたか?いやでも俺の名前知ってる人なんて、、、もしかしてあの時のあっちゃんさん!?
『あれ、どうしました?お姉ちゃんがお世話になった者なんですけど……』
「やっぱりあっちゃんさんだ。香澄さんから色々聞いてますよ」
『あはは、嬉しいんですけど、その『あっちゃんさん』ってすごく恥ずかしいんで違うのでお願いします』
「はい…あれ、そういえば俺あっちゃんさんの名前知りませんよ?」
『なるほど。じゃあ改めて自己紹介しますね。戸山香澄の妹の戸山明日香です。秀、よろしくね』
「ああ、うんじゃあ明日香。改めてよろしくお願いします」
『変な敬語。お姉ちゃんが可愛いって言ってた意味がちょっと分かるかも』
ちょ、香澄さん!?前に透子にも言われたような……俺は可愛くありません。
『そういえばさ、秀はなんでこんな時間に制服で公園なんているの?』
「うーんなんとなく。明日香は?」
友達と会う約束してるんだったらわざわざ声かける必要ないのに、声掛けてもらったって思うと嬉しい。でも、明日香には行って欲しくない。ずっとここで話していたい。
「あ、明日香!もうちょっと話せない?」
『うーん、ごめん。もう時間だから話すのはできないけど連絡先交換しよ?そしたらいつでも連絡できるでしょ?』
正直明日香と別れるのは名残惜しいが帰ったら話せるのだから良しとしよう。
『秀、また今度会おうね』
そう言って手を振る明日香はとても綺麗に見えた。
明日香と別れたあと特にやることのなくなってしまった俺は家に帰ることにした。今日も透子は笑顔で家で待ってるんだろう。けどきっとそれはなんの感情もないただの作り笑い、あってもこんな劣化しきっている俺を嘲ているかだ。
足取りが重い、呼吸が辛い、頭が痛い。ダメだ、まずい、こんな所でた、おれちゃ……。
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んっ、暗い。あっ、そうか俺倒れたんだったな。あれ?なんであそこに透子がいるんだ?
「おーい!透子〜」
『あ、秀。弟の分際でよくアタシに話しかけれたね』
透子は何を言ってるのだろう。どういう関係性であろうと弟が姉に話しかけることは至って普通のことだ。……そのはずなんだが。
『圧倒的に下位互換な憐れで惨めな弟クンがなんでもできるおねーちゃんと話せる権利、あると思う?』
「いや、でも、だってこないだまでは普通に話してた……よ?」
『はぁ……なんで理解出来ないかな?そんな頭が悪いなんておねーちゃん残念。そんなの本心な訳ないじゃん。ばーちゃんが秀といてやれって言うから一緒に住んでてあげたけどそれがなかったらとっくのとうにアンタなんか見捨ててるから』
違う、違う、違う違う違う違う違う違う違う違う違う!あれは透子じゃない透子はあんなこと絶対言わない。あれは俺の幻想だ。
『まーだ、信じちゃってる?いい加減気付けっての、アンタの居場所はどこにもないの。そこら辺で野垂れ死ぬ方がまだマシなんじゃない?』
違う、違うんだよ!!俺には……
『じゃあさ、逆に質問。秀はなんのために生きてる?それがないなら息、続けてる意味、ないんじゃない?』
透子であって透子出ないような目の前のやつのことを言い返せずただ棒立ちをして時間が過ぎるのを待つことだけしか出来なかった。